「津田令子のにっぽん風土記(61)」ペットから学び癒される日々~ ペットシッター編 ~
2020年5月27日(水) 配信
「幼いころから動物や昆虫、爬虫類、両生類問わず大好きでした」と満面の笑みを浮かべるのは、2012年7月にペットシッターSOS練馬店を開業した清水祐子さん。地域に棲みつく猫ちゃんを我が家に招き入れることから始まったという動物との共存生活。元気のない子たちを見ると子供ながらに、どうしてあげたらよいのだろうと病気の本を探しては試行錯誤しながら世話をしていた。
「『あなたは何でも拾ってきてしまう』と頭を抱える母親に対して父は、ウサギや鳥たちのためによく小屋を作ってくれました」。猫ちゃんだけでもこれまでに50匹は一緒に暮らしてきたというのだから無類の動物好きというのがうかがえる。
祐子さんは、東京・板橋生まれで現在練馬に居を構える。ご近所さんや、町会の方々との触れ合いや、神社の氏子さんたちとのお祭りのお手伝いなどを通して、人とのつながりや絆を大切にする環境で育った。幼いころの濃密な人間関係を経て「自分が育ててもらったように誰かのためになること、関わった方々のお役に立ちたいという気持ちが強くなったのかもしれません」と振り返る。
高校卒業後、トリマーの資格を取った。ペットサロンや動物病院で働いていたが、手を酷使する職業柄、手首を痛めてしまい、5~6年異業種での事務系勤務を経験することになる。その後、ありとあらゆる動物の世話をするという幼少期の夢を手に入れ現職に就く。
川端康成が「わが犬の記 愛犬家心得」のなかで、「わが犬のために自分の神経を忘れることは、やはり出来ない。…例えば、私の家とほど近いお住居の藤井浩祐氏のように、庭に出てゐた犬達を土足のまま寝床へもぐりこませるといった風なことは、私にはできないのである。」と記している。犬好きを自称する文豪でさえ、無条件に何もかにも招き入れることを拒んでいたようすがわかる一節だが、彼女は違う。何もかも、誰でも彼でも無条件に動物を招き入れてきた。そして彼らが生きていくことの意味を自分の生き方に重ね合わせてきた。全力で動物(ペット)のお世話をし、飼い主の気持ちに寄り添う清水さんに何度となく接するにつけ、これぞ天職だとつくづく思える。
ときに寄り添い、ときに深い印象を残して通り過ぎていった地域の犬(猫)、室内犬(猫)、お客様の犬や猫たち。彼らと出会い、彼らのご家族の方々との語らいや闘病を通じ心動かされた祐子さんが、ペットから学び癒される日々は未来へと続く。
津田 令子 氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。