旅のUDアドバイザー開講1周年記念 「私の旅のユニバーサルデザイン」③ 旅行業界に必要な資格の1つに――ブルーム・アンド・グロウ トラベルコンサルタント 髙浪 嘉奈子氏
2021年11月4日(木) 配信
私の母は、25年近く車イスユーザーです。今から14年前に海外個人旅行で、車イスの母と一緒にラスベガスに行きました。機内でもインシュリン投与が必要だったため、書類などの準備は正直大変でした。
それでも、現地空港・ホテル・ショッピングモールでの移動のストレスもなく、何より旅先で障害がある人に対しても健常者と変わらずに接してくれたことに、母だけでなく、同行した当時未就学の娘を含む家族も、とても喜んでいました。
学生時代に観光学を学び、某航空会社のグランドスタッフとしての勤務経験もあったので実現できたのだとは思いますが、この経験はまさに、ユニバーサルツーリズムへの対応が、事情により旅行に制約を感じている人だけでなく、同行者や家族の利便性の向上、満足感につながることを確信したものでした。
現在、私が勤務する芦屋のブルーム・アンド・グロウは旅行会社ですが、受付カウンターやパンフレットがありません。メール、電話、本店サロンにて、じっくり時間をかけて“世界に1つしかないオーダーメイドの旅”を、お客様と一緒に作り上げることを大切にしている会社です。
トラベルコンサルタントであるスタッフには、業務知識とコミュニケーションスキルが求められます。旅行の目的・趣味嗜好など失礼のないよう、お客様のご希望をしっかりとお聞きします。
例えば一昨年、奥様が第3子を妊娠中で小さなお子様連れのご家族様のシンガポール旅行をプランニングさせていただいた際には、専用車の手配をお勧めしました。妊婦さん特有ですが、移動により普段以上にお腹が張る場合があること、子連れだとどうしても多くなる荷物を一時的に置いておけること、「お子様がぐずった時にも助かりますよ」とアドバイスしました。
近い将来アフターコロナでは、今まで以上に旅行をすることへの意識の変化が生まれると言われています。安心・安全な旅行が全世界のスタンダードになり、プライバシーやソーシャルディスタンスへの意識が高まり、よりパーソナライズされたものが好まれるでしょう。
旅のユニバーサルデザインにおいて、お客様によっては、趣のある純和風旅館であっても和洋室(ベッド)が利用しやすかったり、大浴場の手摺りの有無が重要だったり、個々のニーズや必要とされる配慮がそれぞれ異なるため、お客様ご自身が判断できる材料を提供することがとても大切です。
それぞれのお客様に合ったご旅行を一緒に考えることができるコンサルティング型は、ユニバーサルデザインに打ってつけのスタイルだと信じています。そして、旅のユニバーサルデザインアドバイザーが、これからの旅行業界に必要な資格の1つとなることを、切に願っています。