「津田令子のにっぽん風土記(79)」「鉄道で地域振興を」~ 鉄道編 ~
2021年11月13日(土) 配信
古賀学さんは、かつて日本観光協会(現・日本観光振興協会)総合研究所で初代所長を務めるなど数々の地域振興に携わってきた観光業界のスペシャリストだ。
1872(明治5)年10月14日の新橋横浜間に鉄道が開業して、来年150周年を迎えるにあたり、さまざまなプレイベントや記念ツアーなどが予想されるなか、古賀さんは、日本鉄道保存協会のメンバーと来年に向けてのイベントの企画を検討している。観光業界全体を巻き込み、「鉄道開業150周年」という節目の年を盛り上げることで「全国の鉄道ファンのみならず、旅が好きな人たちも鉄道旅を見直すきっかけになる年になるのでは」と話す。
自らを“郷鉄(さとてつ:鉄道と郷の関係を楽しむという古賀さんの造語)”と公言する古賀さん。「鉄道は、車窓風景、駅弁、行動者や乗り合わせた人との会話などの楽しみ満載ですが、その基本は鉄道と郷とのより良き関係の中にあると思います。それをつなぐのが駅だともいえます」と語る。
JRが実施している駅からハイクや、SLを使ってのイベントなど駅を基点にした活動も大きな魅力になっているという。「例えば、地域の農家の方とタッグを組んだ大井川鉄道のツアーでは、SLに乗ってもらい駅を降りて地元の食材を使った食事を提供し地元の方と語り合う。またSLに乗り次の駅を目指すなど参加者から大変好評だった」そうだ。
鉄道に乗ることで地域のことをより深く知ることができる。古賀さんは「こういった試みは間違いなく観光による地域振興になっている。また、このような視点が重要になる」と断言する。「イベントとの相乗効果が鉄道利用を促進させ、鉄道の重要性を再認識させることにつながっていく」。
紅葉シーズン真っ盛りの今、おすすめの路線は「地元の方に連れて行ってもらった只見線の会津桧原駅周辺です。ちょうど只見川の淵から鉄橋を軽く見上げるような感じの地点なのですが、地元の人にしかわからない隠れたスポットで、風もなく美しい風景でしたね。とくに只見川に映る只見線は美しかった」と笑顔になる。
来年は、只見線が全線開通になり、関連地域活性化の新たな起点となることを期待し待ち望んでいるという。
全国には、数知れない鉄道の絶景ポイントがある。それらを乗りつぶし絶景ポイントを探しているという古賀さん。この冬は、どの路線のどの駅を目指すのだろうか。
津田 令子 氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。