「津田令子のにっぽん風土記(83)」「安心安全な空間」を心掛けて~ タクシー乗務員編 ~
2022年3月15日(火) 配信
流行を意識しながら、個性的に彩り多くのお客を呼び込むために欠かすことのできない百貨店やブティックのショールーム。そのデザインや設置の仕事を経て、今の仕事について20年になろうとしているベテランタクシー乗務員の矢吹正夫さんにお話を伺った。
矢吹さんの勤務する杉並交通がある浜田山は、京王電鉄井の頭線の駅がある人気の高級住宅街だ。場所柄も手伝って、毎日のように無線で呼んでくださる常連客へのおもてなしなど、一人ひとりのお客にあった対応を心掛けているという。
会社のモットーは、開業以来「安全、確実、快適、親切」を合言葉に、社員一同、交通事故防止と安全運転の徹底に努め、お客様のニーズに応えることだという。
東京都内には、現在約4万6000台ものタクシーが登録されている。そして日々、お客の獲得合戦が行われているのだ。現在、杉並交通グループはタクシーとハイヤー合わせて約300台を保有し都内でもトップクラスの台数を誇る。コロナ禍でも順調に売上を伸ばしているという。
「1カ月に一度は、空け番の帰りに大宮八幡宮に寄って手を合わせています。業務中の安全運行やお客様の安全、それに孫が元気に過ごせるようにね」と話す笑顔が印象的。乗務のない日に、大好きなお孫さんとのドライブや買い物が息抜きになっているという。
矢吹さんの会社では、コロナ禍における対策(取り組み)として4つの基本的感染予防対策を行っている。1つ目は、運転席と後部座席の間にL字型の飛沫防止セパレーターを設置する。2つ目は、座席や手すり、タブレットなど不特定多数の利用者が頻繁に触れる部分の消毒の徹底。
さらに3つ目は、運賃の受け渡しなど直接接触の機会を減らすべくキャッシュレス決済の推奨、そしてお客様の協力のもとにマスクの着用や積極的な窓開けなどを行っているという。
会社挙げての取り組みとは別に、各乗務員の対応はコロナ前以上にお客に対しての「心配り」や「気配り」が必要になっている。「コロナ禍では、遠方から医療を求めてやって来られるお年寄りなどは、多くの人との接触が避けられない公共交通機関の利用に尻込みする方々が増えています。このため、大学病院など大きな病院に、付け待ちすることを心掛けています」と矢吹さん。「この機会に1人でも多くの方にタクシーの安全性を理解いただくことも重要だと思っています」と語る。
津田 令子 氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。