【特集No.607】リーガロイヤルホテル東京 ロケで収益確保と事業多角化へ
2022年3月31日(木) 配信
リーガロイヤルホテル東京(中川智子社長〈取材当時〉、東京都新宿区)は1月14日(金)、旅行新聞新社が取材活動などを通じて見聞きした観光業界の取り組みの中から、創意工夫の見られるものを独自に選び、表彰する「日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー2021」のグランプリを受賞した。コロナ禍で営業ができなくなったバーやレストランを撮影用に積極的に貸すだけではなく、ロケ用に独自のガイドラインも作成していることが高く評価された。中川社長をはじめ、縄手典子氏と金子由夢氏にも詳しい話を聞いた。
【木下 裕斗】
□新顧客開拓、本業も売上増 休業施設活用し他館とも相互送客
ロケ誘致は、テレビドラマのほかに、映画やCM、バラエティー番組などを対象に行う。近年は、ネットフリックスなどのインターネット動画配信サービスで放送するドラマ撮影での利用も増えているという。
リーガロイヤルホテル東京は1994年のオープン当初から、「ホテルの本業のお客に迷惑を掛けないことを前提」に、全6カ所のレストランやバーをはじめ、客室やロビー、結婚式場、車寄せ、廊下、駐車場、エレベーターなどを貸し出してきた。
中川社長は「希望があれば、制服と名札も貸与した。従業員には急きょ、エキストラとして出演してもらったこともある」と積極的な姿勢を示す。
同ホテルは豪華なシティホテルをイメージした内装が人気で、これまでTBSテレビ系列で放送された日曜劇場「半沢直樹」や、西武鉄道のCM「2016年秋冬『とびら』篇」などの撮影で使用されてきた。昨年は、約120件を受け入れた。
開業当時には、多くのシティホテルが関東で営業していたため、「関西を中心に展開していたリーガロイヤルホテルグループの知名度を、テレビなどへの露出によって向上させる」狙いでロケ誘致を始めた。
コロナでも積極誘致宿泊減少分を補う
同ホテルは新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年以降、不要不急の外出自粛要請などを受けて、需要が激減した。
宿泊については、19年の平均客室稼働率は約90%だったが、21年には約42%まで落ち込んだ。さらに、東京都などから、夜に酒類の提供を控えるよう求められ、レストランなどの飲食施設を休業。このうち、セラーバーは今年3月22日(火)まで、営業を停止した。
稼働率の向上のほか、新型コロナウイルスの拡大で全国にある多くのロケ地で受け入れが停止したなかで、「制作サイドから撮影可能な現場を探すことに苦労している」ことを聞いたため、販売促進チームは制作陣へのセールスにより力を入れた。
こうした結果、20年に約1800万円、21年に約1600万円を売り上げた。
制作サイドが感染防止のため収録回数を減らしたことで、両年の業績はコロナ禍前の19年の2000万円から、減少したが、「ロケによる売上はホテルの業績に大きく貢献した」(中川社長)と一定の評価をしている。
さらに、中川社長は「コロナ禍でも貸し出したことで制作サイドとの信頼関係が深まった」と話す。
さまざまなロケ受け入れに対する配慮もテレビ関係者などに認知され、ホテル名も放送の最後に流れるスタッフロールに掲載されたことで、新しい会社からの利用も増加した。……
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