農協観光、当期純損失の赤字縮小 経営基盤の確立に取り組む
2022年7月8日(火)配信
農協観光(清水清男社長、東京都千代田区)が6月28日(火)に発表した第33期(2021年4月1日~22年3月31日)決算によると、当期純損失は16億7029万円(前期は51億2136万円の損失)を計上し、昨年度から赤字幅を縮小した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、引き続き旅行需要が激減。これを受けて、昨年策定して2年目を迎えた「経営再生計画」を見直し、生き残りに向けた「事業継続計画」として、経営基盤の確立に取り組むとした。
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取扱高は前年同期比5.4%増の84億9802万円、営業収益は同13.5%増の13億6347万円、経常損失は23億7029万円(前期は44億4616万円の損失)と、前期実績を上回ったものの厳しい結果となった。
事業概況としては、旅行事業を補完する取り組みとして「農業人材活用事業部」を設置。労働力不足解消のための支援を行う「労働力応援事業」と農業と障害者就労をつなぎ、企業が後押しする「農福連携事業」を始めた。また、全国の支店では、全国の名産品などの「物品販売」や、ワクチンの職域接種の運営受託などにも取り組んだ。
一方で、「経営再生計画」(21年4月~24年3月)で事業継続をはかるべく、従業員、店舗の削減や役員報酬、給与の見直しをはじめとした費用の大幅削減に取り組んだ。事業資金の調達のため、東京都千代田区と新潟県長岡市に所有していたビルを売却し、全国農協観光協会からの長期借入などを行った。このほか、財務体質の強化を目的に、18億円の資本金を今年3月1日付で1億円への減資を実行したが、旅行事業の激減を補完することができなかった。
□2期連続の債務超過、経営再生計画を見直し
農協観光は、新型コロナウイルス感染拡大の長期化により非旅行事業の取り組みを進め、固定費の削減、事業資金の調達に努めてきた。しかし、旅行需要の激減が大きく影響し、当期純損失の計上により2期連続の債務超過。これを受けて同社は、2年目を迎える「経営再生計画」を見直し、生き残りに向けた「事業継続計画」(22年4月~24年3月の2カ年)として、経営基盤の確立に取り組むと発表した。
他社にはない専門性、特異性を発揮し、「食と農」に特化した事業運営を行い、旅行業に限定しない新たなビジネスの構築を進める。旅行事業では、個人需要に対応すべくWeb宿泊販売システムの導入や、SNS(交流サイト)発信の強化などに取り組む。さらに、この事業展開を効果的に促進するため、事業体制を見直し、JAの各種活動に貢献する「JA活動支援事業」や、食と農を基軸として地域活性化に貢献する「地域共創事業」に特化し、支店の後方支援を行うとした。
□全取締役が任期満了、櫻井宏会長が再任へ
なお、同日に東京都千代田のJAビルで22年度株主総会を開き、取締役20人全員が任期満了による役員改選を行った。農協観光会長の櫻井宏氏(全国農協観光協会代表理事会長)をはじめ計18人を再任。新任は、青森農業協同組合代表理事組合長の雪田徹氏、全国農協青年組織協議会参与の柿嶌洋一氏が就いた。
冒頭、櫻井会長は「経営面における喫緊の課題である債務超過の解消に向け、固定費の削減や資金流出の抑制、代金の事前回収の徹底などに取り組み、事業継続に向けた各種支援要請を行っていく」と明かした。