英国のEU離脱 ― 日本観光の“真の実力”が量れる
英国が6月23日に行った国民投票の結果、EU離脱が決まった。1989年11月9日のベルリンの壁崩壊に匹敵するくらいの大きなインパクトがあった。「EU残留派がやや優勢」という事前の予想もあったが、フタを開けてみると、歴史的な決断となった。一方、スコットランドはEU残留を望む方が多数を占めており、今後、連合王国の分裂すら懸念される。
実際、英国のEU離脱の決定は、単に英国と、独、仏など他のEU加盟国間の亀裂にとどまらず、ロシアや米国、日本、中国、中東、ASEAN、アフリカ、中南米まで世界中のパワーバランスや、枠組みに、やがて大きな影響を与えるはずだ。顕在化はしていなくても、国際社会は水面下で軋み合っている。一つの箍が外れ、世界はさらに不安定さが増す空気が漂う。
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英国のEU離脱が決まった瞬間から、安定通貨の円が買われ、一気に円高となった。テレビのニュースでは、「輸出産業に大きな打撃が出るのではないか」と、経団連の会長や、町工場の経営者などに挙って取材をかけていた。
私が見たニュースのなかでは、観光業界への影響を大きく報じている番組はなかったが、英国のEU離脱の決定は、観光業界も大きな影響を与える。
昨今の訪日外客数の飛躍的な増加は、円安要因が大きい。今後もインバウンドがこれまでのペースで拡大していくのなら、それは真に日本の観光の力がついてきている証左となる。
地道な努力のうえで、観光客が少しずつ増えていくことは理想的であるが、いきなり観光客が増えていくのは、“ブーム”や“バブル”の可能性があり、警戒が必要だ。その意味で、全体的に嵩上げされた外客増加も、円高によって真の実力が量られる。
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しかし、今回の英国の国民投票は、おそろしさも感じた。国民投票は平等ではあるが、一時のムードによって大きな、目に見えない高揚のうねりが現れる。EU離脱の結果が出たあとに、自分たちが下した決定の大きさに気づき、もしかしたら残留以上に厳しい現実や未来が待っているのかもしれないと、後悔している人も多いと報道されている。もしも、今、再度同じ国民投票をすれば、まったく別の結果が出るかもしれない。そう考えると、安易に国民投票に訴えるのも難しい、と感じた。それに、国が二分する危険もはらんでいる。地域によって、あるいは富裕層と貧困層、高齢層と若年層など、あらゆるところに分断の危険性を内包する。
今回、EU離脱派は高齢層に多く、残留派は若年層に多いという分析も出ている。
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以前、由布院温泉観光協会会長の桑野和泉氏が、まちの将来を考えるメンバーは、20代や30代など若い世代に任せるべきであるというような話をされていた。60代以上では、30年先、40年先のことを考えることが難しいからという理由だ。
日本は65歳以上の割合が26・7%を占める。航海に例えるなら、まもなく下船する人たちである。しかし、航海は続く。新たな航海は、その時々の人たちによって決められる方が健全だ。7月の参議院選は選挙権が18歳まで下がる。この国の未来決定に、しがらみのない、鋭敏な10代の視線が加わる。まちづくりも、宿づくりも次世代を担う新しい視線が入っているだろうか?
(編集長・増田 剛)