ナイトタイムエコノミー検討へ、有識者会議開く
2017年10月25日(水) 配信
観光庁はナイトタイムエコノミー(夜遊び経済)などの体験型観光の検討を始めた。各省庁と連携し課題を洗い出し、来年3月までに提言をとりまとめ、必要な取り組みを来年度の予算要求に反映させていく。2016年の訪日外国人旅行消費額のうち、「娯楽サービス費」は全体の3%(4275円)と割合が低く、課題が残る。観光資源の体験メニュー充実と、その体験満足度向上を掛け合わせ、地方誘客や訪日滞在での消費の底上げを目指す。
観光庁は20年までに、訪日外国人を4千万人、地方での外国人延べ宿泊者数を7千万人、消費額を8兆円に目標を据える。このため、ユニークベニュー利用促進などの観光資源を広げる取り組みや、テーマ別観光などの体験メニュー増加、多言語解説整備支援などの満足度向上に取り組んでいる。
ただ「娯楽サービス費」は2016年の訪日外国人旅行消費額のうち、全体の3%と低い。訪日外国人1人当たりの消費額は同15万6千円だが、20年に20万円(8兆円割る4千万人)まで引き上げなければ目標は達成できない。
これらを踏まえ、今後は観光資源の体験メニュー充実は「野外アクティビティ」「新たな日本文化・生活体験」などを議論。満足度向上に対しては「チケット購入の簡易化」「ナイトタイムの有効活用」などを検討していく。
英国・ロンドンではナイトタイムエコノミーの取り組みが進んでいる。同庁資料によると、ロンドンの夜間市場は年間4兆円の経済効果、125万人の雇用を創出。16年8月からは地下鉄の24時間運行を始めている。
一方、日本は出遅れた。改正風営法が昨年6月23日に施行され、自民党のナイトタイムエコノミー議連が17年4月に発足したばかりだ。日本の夜間市場規模も不明。委員からも「(ナイトタイムエコノミーの議論が)やっときたか」と声を漏らした。訪日客を取り込むのは世界各国との競争となる。日本に滞在しなければ、体験できない夜間市場のコンテンツ創出がカギとなりそうだ。
このほか日本の旅行業界の商慣習への苦言もあった。日本の宿泊施設の予約可能な期間は、世界と比べ短い。「業界としてグローバルスタンダード化に取り組むべきだ」(日本観光振興協会・天野啓史常務理事)。
同会の総括で、田村明比古長官も「従来の観光事業者の都合だけでは、課題は解決できない。今後は需要側の視点を中心に据えて議論をしていかなければならない」と、新たな目線で取り組んでいく考えを示した。