【特集No.497】 ペットツーリズム推進へ “愛犬×旅行”隠れるニーズ掘り起こせ
2018年7月11日(水) 配信
愛犬家はペットを家族と捉え、共に旅を楽しみたいと考えている。しかし、実際に愛犬と旅行をする人は少ない。ペットと泊まることができる宿は増えているが、数は不足気味。ペットと遠出する環境の醸成も課題の1つとなりそうだ。インバウンドが好調さをみせ、年間で初の3000万人超えも射程にはいるなか、今回は国内市場におけるペットツーリズムに取り組む事業者らに話を聞いた。【平綿 裕一】
□市場規模は722万世帯、二の足踏む飼い主多く
愛犬と共に旅行や宿泊を楽しむペットツーリズムの拡大が、もう一歩というところだ。ペットフード協会の調査によると、2017年の犬と猫の推計飼育頭数全国合計は1845万頭。このうち犬は892万頭だった。犬の飼育世帯数は721万7千で全世帯の約13%が飼育していることになる。市場は大きいが、未だ愛犬との旅行に二の足を踏む飼い主は多いという。
ペット宿の施設数は国内で約2千軒といわれている。これまでは人気がない部屋の稼働率を上げるために、ペット連れを受け入れるなど消極的な姿勢が少なくなかった。食事とサービスの質も低く、飼い主が満足できる施設は需要に追い付いていなかった面もある。
一方、訪日外国人旅行者には劣るが、ペットツーリズムに勢いが出てきている。
「近年、愛犬と同伴可能な宿泊施設が増えている。ターゲットとして市場の再認識が進んでいる」。ペット宿ドットコムを運営するぐらんぱうの藤野宇一郎社長は期待を示す。1999年からペットと泊まれる宿泊施設の掲載を始め、今は800軒ほどに増えた。飼い主との交流イベントも行い、ペット宿のコンサルティングやペットツーリズムの推進などに尽力している。
ペット宿は現在、高級志向が流行りだ。レジーナリゾートは17年に長野県・軽井沢に、18年は滋賀県・琵琶湖と千葉県・鴨川に、愛犬同伴可能なリゾートホテルを開業。カジュアル志向の「わんわんパラダイス」を運営するセラヴィリゾート泉郷は、今春に山梨県・山中湖にワンラク上のブランドをオープンした。今後は静岡県・伊豆、滋賀県・琵琶湖周辺に同ブランドの開業を見通す。
飼い主の意識も明るい兆しがみえてきた。ペットがいると旅行できないといった固定概念がなくなりつつあるという。藤野氏は「(施設不足などで)愛犬との旅を諦めていた層が、『愛犬と旅行にいけるのか』と思いはじめている」と推測する。
同社が6年前に行った全国調査で愛犬と旅行したことがある人は約40%だった。このうち、宿泊旅行の経験者は約半数に留まる。一方で、旅行未経験者に今後の同伴旅行の意向を聞くと、約48%が行きたいと答えた。大きな潜在的な需要層が隠れている。……
【全文は、本紙1719号または7月18日以降日経テレコン21でお読みいただけます。】