【南信州の旅「遠山郷」】日本人の魂揺さぶる「霜月祭」
2019年2月5日(火) 配信
長野県・南信州観光連携プロジェクト会議(中島一夫代表)は昨秋、観光PRイベント「南信州の旅 in 銀座NAGANO」を主催した。南信州の下條村出身である峰竜太さんをメインパーソナリティに迎え、南信州の魅力を紹介したほか、「南信州の旅~観光モデルコース四季」を発表した。この観光モデルコースの中から一度行ってみたかった「遠山郷の霜月祭見学プラン」を選び、昨年12月13、14日の2日間、長野県飯田市(上村・南信濃)の「遠山郷」を取材した。
【古沢 克昌】
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取材1日目はJR飯田駅で集合。南信州広域連合の担当者と「遠山郷」に向かった。今回の取材は、毎年12月に行われる「遠山の霜月祭」を現地視察することが最大の目的。
厳しい自然に囲まれて、人々はつねに「神」の存在を感じながら生きてきた。その象徴である遠山の霜月祭は、湯立て神楽の古式と両部神道の呪術性をいまに伝える国指定重要無形民俗文化財である。村人が神官や舞い手となり、夜を徹して祈りや舞を繰り広げる。「寒い・眠い・煙い」の三拍子がそろったこの奇祭は、古代から脈打つ日本人の魂を揺さぶるのだ。
日中は「下栗の里」を散策、山道を歩いてビューポイントを目指した。日本のチロルと呼ばれる絶景地「下栗の里」は標高800―1100㍍に存在する。最大傾斜38度の傾斜面に点在する耕地や家屋は遠山郷を代表する景観を作り上げ、2009年には「にほんの里100選」にも選ばれた。展望台に到着するとテレビCMで一躍有名になった山の急斜面にへばりつくような下栗集落全景を見渡すことができ、思わず歓声を上げてしまった。
下栗の里では、昼間から行われている拾五社大明神「霜月祭」を見学し、和田宿の「民宿なかい」に移動した。「イノシシ鍋」の夕食を早めにいただき、休憩後間もなく、本日のメインである和田諏訪神社「霜月祭」の見学を開始した。
遠山の霜月祭は、長野県飯田市遠山郷(上村・南信濃)に伝承される霜月神楽。その名のとおり旧暦霜月にほぼ相当する新暦12月に、現在は9カ所で開催される。社殿中央に設えた釜の上には神座が飾られ、湯を煮えたぎらせて神々に捧げる。祭りの最大の見せ場では天狗などの面が登場。「火の王」「水の王」などが煮えたぎる釜の湯を素手で湯切りし、禊ぎの湯をふりかける。1年の邪悪を払い、新たな魂で新年を迎えるのだ。午前0時過ぎに祭りが終了した。
取材2日目は昔ながらの商店が立ち並ぶ和田周辺を散策。龍淵寺は中世の豪族遠山氏の菩提寺である曹洞宗の寺で、境内の大杉のふもとには遠山氏の墓がある。龍淵寺の境内に湧く「観音霊水」は、環境省の「平成の名水百選」にも選ばれている。カルシウムとマグネシウム、炭酸水素を非常に多く含むバランスのとれた名水。すぐ近くにある「殿町の茶屋」は、地元女性グループが作るよもぎとそばの「ふじ娘饅頭」が名物。午前中に行かないと売り切れてしまうのでご注意を。
続いて木沢エリアに移動。上町、下栗、和田を結ぶ秋葉街道の要所に位置する宿場町で旧木沢小学校の木造校舎を見学。1932(昭和7)年に建てられ、2000(平成12)年に廃校となった。地元住民の手で保存され、資料館やイベントスペースとして活用されている。入場無料、年中無休。
現地視察の最後は、遠山温泉郷「かぐらの湯」で立ち寄り入浴。源泉温度は約42・5度、飲むと独特の塩味があるナトリウム・カルシウム塩化物温泉。大浴場、広々とした岩の露天風呂、サウナなどを完備する。営業時間は午前10時―午後9時(受付8時30分まで)。定休日は木曜(祝祭日は営業)。料金は大人620円、小人310円。
かぐらの湯内の食事処「ゆ~楽」では、2018年12月1日から温泉で養殖したトラフグ「秘境遠山の神ふぐ」のコース料理も食べられる。