観光庁、新DBで違法民泊排除 旅館数 短期で公表も可能に
2019年3月29日(金) 配信
観光庁は4月から、住宅宿泊事業(民泊)における違法民泊排除に向け新たなデータベースの運用を始めた。同庁の民泊物件と厚生労働省の旅館業法に基づく宿泊施設、内閣府による特区民泊の認定物件の情報を一括管理する。仲介業者にデータベース情報を提供し、違法物件の締め出しを強化する。併せて3省庁が管理していた情報を定期的にDBを更新することで、毎月旅館ホテル数などを公表できるようにした。短い期間で施設数などの動向を把握し、今後の施策に生かしていく方向だ。【平綿 裕一】
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「仲介サイトに掲載されている違法物件は、ほとんどが無くなるはずだ」。観光産業課民泊業務適正化指導室長の波々伯部信彦(ほほかべのぶひこ)氏はデータベース運用に期待をかける。DBは違法物件排除が肝だが、所管する省庁が異なる宿泊施設の一元的な把握に役立つ。
届出は原則として同庁の民泊制度運営システムを使うため、事業者の各情報はシステムのDBに日々更新されている。今回は厚労省と内閣府が所管する宿泊施設情報のDBも新たに作った。各自治体の担当者に、月末までの施設数を翌月半ばまでに更新してもらう。
これにより民泊・特区民泊・簡易宿所を含む旅館ホテルなどの宿泊施設数が、1カ月ごとに把握できるようになる。データの具体的な公表方法については関係省庁で調整している。時期は月の第3週目辺りを予定する。早ければ4月に1回目の数値を公表する見通し。
DBの運用開始を前に、3月に省令とガイドラインを改正した。仲介サイトに違法物件が掲載されないように、確認に必要な情報や方法を見直した。仲介業者の掲載物件における確認精度を上げる狙い。ともに施行日は4月1日となる。
省令で、民泊事業者が仲介を委託する際に、届出番号や商号・名称、物件所在地などの通知を義務付けた。これまでは届出番号だけだった。
ガイドラインでは、仲介業者が掲載物件の適法性を確認する方法などを示した。確認方法は2通り。1つは都道府県などから送付された各書面の写しなど。もう一方はDBの情報となる。2つのいずれかで、事業者から通知された情報が同一か確認・照合し、掲載することとした。
DBの情報は観光庁が両省からのデータを更新したあと、仲介業者に提供する。なお、届出後すぐの物件は、DBに情報がない場合があり、観光庁か都道府県らに個別に確認してもらう。
このほか、仲介サイトに届出番号など適法性に関する情報を表示することとした。
観光庁によると、昨年9月時点で違法と疑われる物件は6585件あった。前回調査から全体に占める割合は減ったが数は増えていた。届出番号は本物で実在の物件が異なっている、いわゆるなりすましなどが横行していた。
仲介業者を介さないSNS(交流サイト)での違法な取引なども散見される。「根深い問題だが、現場でのゲリラ的な取り締まりも必要。DBによって違法民泊の絶対数が減れば、個別の事案に対応しやすくなる。引き続き関係省庁との連携して排除していく」(波々伯部氏)。
一方、届出件数は右肩上がりで増えている。2019年3月15日時点で、届出件数は1万4701件(うち事業廃止済みは642件)だった。施行日の2210件からおよそ6・7倍となった。波々伯部氏は「このままのペースが続けば、年内には2万件の大台に乗る」と意気込む。
簡易宿所の営業許可施設数や特区民泊も増加傾向にある。とくに特区民泊は18年3月末で666施設1994居室だったが、19年1月末で2046施設6144居室にまで増えた。このうち大阪市だけで1933居室5609居室と9割以上を占める。
ただ届出物件数をみると、大都市圏と一部の地方部への偏りが顕著だ。届出件数の約1万4千件のうち、1位は東京都で5088件(うち23区:4889件)で3分の1以上を占める。2位は大阪府で2265件(大阪市:2115件)、3位は北海道で2093件(札幌市:1679件)。京都府は493件だが、簡易宿所の営業許可施設数は昨年8月末時点で2627件だった。
「本来、民泊は日本の生活文化などを楽しめる体験型の宿泊コンテンツで、地方部でこそ馴染むはず。我われとしても成功事例の収集・公表しはじめたところ。ぜひ活用してほしい」という。
民泊を活用する動きには、複合的な地域関係者との連携が必須だ。外国人旅行者を呼び込む外資系仲介業者や地域住民、古民家などを再生する管理業者も絡んでくる。違法民泊の排除だけでは、健全な民泊の普及は進まない。さまざまなプレイヤーを巻き込み、地域ごとに連携をはかれるかが、普及へのカギになりそうだ。