ウィラー、観光MaaSアプリ始める 各交通や体験の予約決済がひとつに
2019年7月22日(月) 配信
WILLER(村瀨茂高代表)は7月19日(金)、主催した「MssS Meeting 2019」内で、観光MaaSアプリケーションのサービス提供を8月から始めると発表した。各交通モードをつなぐだけでなく、アクティビティも選んでルートに組み込める。アプリ内では、検索・予約・決済が一元的にできる。東北海道と京都丹後鉄道(グループ会社)沿線地域の2地域で始め、「観光MaaSの第一歩」(村瀨氏)とする。同社の考えるMaaSを2021年までに日本全国で、将来的はアジア・アセアン地域などの海外展開も目指す。
サービス名は「WILLERSアプリ」。地方が抱える観光における2次交通不足や、インバウンドへの対応の解決策とする。すでに国土交通省の新モビリティサービス推進事業に採択され、今後は定額制での提供も視野に入れているという。
同アプリでは、出発地と目的地の2地点だけでなく、途中5カ所までの経由地を指定して調べることができる。経由地は駅や空港、バス、タクシー、観光地のほか、レストランバスやカヌーといったアクティビティが選べる。それぞれの滞在時間も設定することが可能で、デジタルチケットにも対応する。
具体的には、旅マエにおける情報収集や旅程・ルートを検討したのち、交通や体験などを含め最適なルートにして提示する。ルートはお気に入りとして登録でき、異なる体験と交通も一括して予約決済できる。
旅ナカでは目的地までのガイドツールとして機能する。旅ナカで新たに行きたい場所ができた場合は、設定済みルートに組み込め、再度最適なルートを検索してくれる。
一方、対象地域の道東では、約200プランの体験・アクティビティを用意する。関係事業者は多岐にわたる。釧路市をはじめ2市6町1村の計9の自治体と、JR北海道ら交通事業者9社のほか、DMOも参画する。ルートは釧路から摩周、知床五湖や網走までつなぐことができる。
海の京都と呼ばれる京都府北部エリアでは、約100プランの体験・アクティビティを提供する。沿線地域の9つの自治体、交通事業者3社のほか、観光関係者も手を組む。城崎温泉や富岡、福知山、宮津・天橋立、西舞鶴などのエリアを結ぶ予定だ。
なお、10月からは、アプリを多言語化(英・中)する見通し。対象OSはIOSとAndroid。
□MssS Meeting 2019 100年に一度の交通革命
MssS Meeting 2019内では、ウィラーにおけるMaaSの展開についても発表があった。
「インフラがサービスに変わるとき、人々の生活が変わる。交通もインフラだったが、100年に一度の交通革命が起きている」。あいさつに立った村瀨氏は、変革期が訪れていると強調した。
同社はMaaSを進めていくうえで、地方部の路線バスや鉄道などの公共交通を基軸とする。ただこれら公共交通でカバーしきれない3つの「空白」を埋めていくとした。
3つの空白は「空間的」「時間的」「経済的」となる。「解決のためには、4つの柱を考えている」とし、都市間高速バスとオンデマンドシェア、定額モデル、自動運転を挙げた。
すでに同社ではそれぞれ手を打っている。グループのウィラーエクスプレスでは都市間高速バスを、オンデマンドシェアと自動運転では、シンガポールで実証実験を始めている。定額制に関しては8月から始めるWELLERSアプリ内などで想定している。
村瀨氏は「3年前からMaaSの構想を考えていた。世界を回り、改めて日本には技術があると感じた。これまでの日本の交通の安全安心や定時制などの品質。これらをMaaSに組み込めば、世界で展開していけるのではないか」と意気込んだ。
来賓の田端浩観光庁長官は「FIT(個人旅行者)が増えているなか、アクセス改善は不可欠だ。2次交通などの課題に対して、MaaSには期待している。ただ、まだ始まったばかり。行政や交通事業者、観光関係者などの垣根を超えて、官民一体で行う必要がある」と述べた。