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アレックス・カー氏講演、ゼロドルツーリズムに危機感 量より質の「観光管理」を 【読売Bizフォーラム東京】

2019年8月21日
編集部:平綿 裕一

2019年8月21日(水) 配信

会場のようす。フォーラムは8月20日に東京・読売新聞ビルで行われ、当日は旅行会社の担当者や観光関係者らが多く訪れた

 読売新聞社グループの読売調査研究機構は8月20日(火)、第1回「読売Bizフォーラム東京」を開いた。テーマはインバウンドとオーバーツーリズム(観光公害)。講師の東洋文化研究家であるアレックス・カー氏は、景観を損ねる看板などの視覚汚染や、地域にお金が落ちないゼロドルツーリズムに危機感を示した。今後は観光公害対策としても、「量より質」の「観光管理」が重要になると強調した。

 近年、日本を訪れる外国人旅行者は急増。2018年は3119万人で5年前と比べ3倍ほどとなり、国内ではとくに地方部で人口減少や高齢化が進むなか、「観光の力で救いがみえてきた」(同氏)とする。

講演をするアレックス・カー氏

 一方で、外国人旅行者を受け入れる際、日本特有の課題も目立つようになった。日本には風光明媚な観光地も多いが、「派手な看板や多くの電柱、電線などが景観を壊してしまっている。この『視覚汚染』は避けるべきだ」(同氏)と指摘する。

 無電柱化は海外に後れを取っている。国土交通省によれば、パリ、ロンドン、香港、シンガポールの無電柱化率は100%だが、東京23区で8%、大阪では6%に留まっている。「美しい景観を目指していくことは、訪日外国人旅行者だけでなく、地域住民のためにもなるはずだ」と語った。

欧米やアジアの主要都市と日本の無電柱化の現状 ※国交省HPより

 

 ゼロドルツーリズムについても警鐘を鳴らした。観光ツアーで、バスやガイド、立ち寄るレストラン、土産屋が域外資本によるものであれば、地域経済に利潤は生まれにくい。「東京・渋谷のスクランブル交差点もゼロドルツーリズム。外国人旅行者は多く訪れ混雑しているが、渋谷の街にお金は落ちていない」。

 大型クルーズ船も同じ傾向にあるという。宿泊や食事などは船内ですまし、地域にお金が落ちにくいうえ、受入側の負担も大きすぎると懸念点を挙げた。

 さらに、急増する外国人旅行者は地域の受入能力を超え、一部で地域環境や住民生活などに影響を及ぼすようになった。混雑やマナー違反、ゴミの問題なども出てきており、これら観光公害に対しては「観光管理」の必要性を繰り返した。

東京・浅草で本堂を囲う塀に座る外国人旅行者

 人込みやマナー問題の管理方法として、日本ではパンフレットや看板を置くが、海外では罰金制度などもあるという。

 適切な価格設定も課題だ。近年、日本のマチュピチュと呼ばれ人気を博す竹田城跡(兵庫県)は、観覧料金が大人1人500円しか掛からない。外国人旅行者にも人気の富士山は、入山料が「任意」で1千円の徴収のみ。

 同氏は、「今後は『量より質へ』をより意識することが大事。管理していかなければならない。何もせず、政府目標の4千万人、6千万人の外国人旅行者が訪れるようになれば、観光立国ではなく観光亡国になってしまう」と述べた。

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