「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(112)嘆くよりできる「考動」を 考動は勇気を与える
2020年5月7日(木) 配信
多くの人が利用するホテルや旅館、レストランには、フロントやレジ周りなどに多くの消毒液が設置されています。ただ、あまり意識もなく、使う機会はほとんどありませんでした。
最近は意識して入店、退店時には使うようにしていますが、他の人の使用状況を見ると、残念ながらそれほど多いとは思えません。多くの人に使用する習慣がないのではないでしょうか。
日本の宿泊施設、飲食店などは、すでに衛生面を非常に厳しく管理しています。必ずというほど使用したテーブルは布巾で拭き、食事前にはおしぼりが提供されます。当たり前の環境の中で、私たちの健康は守られていたのです。だから、設置された消毒液に意識がなかったのかもしれません。
先日、宿泊予定のホテルにタクシーで向かいました。ホテルに入ったとき、入口に置かれた消毒液の前で「消毒にご協力をお願いします」と、スタッフから声を掛けられたのです。
新型コロナウイルス流行初期は、ホテルでこうした対応はまだ少なかったです。チェックインを終え、エレベーターのボタンを押すときに思ったのは「安心感」でした。接触感染としてバスや電車のつり革、ドアノブ、エスカレーターの手すり、スイッチなどが危険といわれていました。エレベーターのボタンなども気になっていたのです。
過剰反応かもしれませんが、そうした接触を減らすことで、感染もしくは媒介してしまうリスクを考えると仕方のないことかもしれません。それだけに、入口で除菌された人が館内にいると思うだけでも、少しの安心感を得ることができたのです。
航空会社のラウンジには、サービスでパンやおむすびなどが置いてあります。ある日、そのコーナーにロープが張ってありました。提供をやめたのではなく、四方から取りに行ける入口を1カ所にして、ラウンジスタッフが消毒液を持って、食事を取りに来たすべての人の手の平に散布していたのです。飲食店でも同様の行動に出逢いました。
ただ置いておくだけで、使用はお客様任せではなく、目の前のお客様のために、他のお客様のために、そして社員のために、こうした行動こそが必要なのではないかと感じたのです。
専門家ではないのでその効果は分かりませんが、厳しい環境を嘆くだけではなく、私たちにできることを実行していく強さが求められています。想像を超えるコロナの影響下に誰もが不安な毎日を送っているなか、考えて動く「考動」を現場で実行される姿を見掛けると、大きな勇気をもらえます。皆さんの考動が周りにいる人々を元気にするのです。
コラムニスト紹介
西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。