「味のある街」「九十九餅」――志むら(東京都豊島区)
2020年6月7日(日) 配信
NPO法人ふるさとオンリーワンのまちの役員会の帰りに、久しぶりに目白の「志むら」に寄ってみた。目的は1つ。持って行きたい手みやげの上位にもランキングされている名物「九十九餅」を買うことである。
目白には、学習院大学をはじめたくさんの学校に美術館や博物館などインテリジェンスあふれる施設が多い。この界隈を1時間ほど歩けばエレガントな小旅行にでた気分になれる。
JR山手線の目白駅を降りて目の前の信号を渡る。左に100㍍ほど歩くとその店はある。1939(昭和14)年創業の志むらだ。青山から目白に移ってきたのは45年だという。駅に近いということもあっていつ訪ねても混んでいて活気のある店である。
1階は和菓子の販売、2階と3階は甘味処になっている。甘味処といっても、しょうが焼定食、赤飯弁当、野菜カレーと甘くない人気のメニューもそろっている。
なんといってもこの店の看板商品は「九十九(つくも)餅」だ。説明書きによれば、《全卵をふんだんに使った「こし」のある求肥の中に、口あたり良く煮含めた虎豆を入れ、ほのかな甘味を生かす柔らかな餅に無糖の風味良い黄名粉をまぶしてあります。先代より受け継いだ満足感のある味をお召し上がり下さいませ》とある。
あんみつに欠かせないうすいピンク色と淡いグリーンの求肥を好む人は多い。この店の求肥は、もっちり感となめらかさが絶妙なのである。「ねっとり」でもなく「べったり」でもなく「ぬっちり」した餅という感じだ。
その中に甘く煮込んだ虎豆がころころと溶け込むように入っている。それだけでも充分美味しいのに、その上にたっぷりきな粉がかかっているのだからさらに味に奥行きがでてくる。
甘味処のメニューに「九十九アイス」というものがある。名前のとおり真ん中にドーンとバニラアイスがある。その周りに九十九餅がごろごろ転がっている。たっぷりのきな粉がかけられている。実に和と洋のいいとこ取りのメニューだ。
(トラベルキャスター)
津田 令子 氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。