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「井川今日子のおもてなし接客術(43)」 コロナ禍中のおもてなし

2020年6月13日
編集部:木下 裕斗

2020年6月13日(土) 配信

 コロナ禍中(収束前)に再開する宿泊施設では、接客場面ごとに3密「密閉・密集・密接」のどれが問題になるのかを考え、3密を避けることを前提とした対応策を考える必要があります。

 「密閉」は、窓やドアを開けるなどして回避できます。「密集」も、時間帯を区切るなどすれば、ある程度は防げます。「密接」は、口頭での説明をなるべく省き、紙面や動画での説明に切り替えれば、密接する場面を少なくすることができます。工夫次第では3密を回避した接客対応は十分できそうです。

 このように「宿側でコントロールできる」のは良いのですが、問題は「宿側でコントロールできないこと」への対応です。

 そもそも、感染の疑いのあるお客様の入館をどう防ぐかは、悩みの種ではないでしょうか。入館時に検温を行う動きも出てくると思います。ただ、検温の体制を整えても、発熱があるお客様をどう扱うかまで、考えておかなければなりません。

 とくにビジネスや、予定を合わせて企画した知人との旅行の場合は、体調不良を隠してでも旅行をしたいと考える人が多いのではないでしょうか。

 発熱が確認されたお客様が、検温を担当したスタッフを、時には強引に言い含める、という場面が出てくるのではと容易に想像できます。

 館内の公共スペースでのマスク着用要請に従っていただけないお客様にどう対応すれば良いのでしょうか。

 滞在時間の短い展望台や展示館などの観光施設であれば、体調不良や感染防止に協力しない人には、外で待ってもらうなどの入場拒否ができるでしょうが、宿泊の場合は、そう簡単にはいかないでしょう。

 新型コロナウイルスの封じ込めに成功している台湾の宿泊施設では、公式サイトのトップに次のようなお知らせがありました。

 「*ホテルでのチェックイン時、お客様へ体温測定の協力をお願いします。*もし37・5度以上の発熱、また咳などの症状があった場合、ホテルスタッフが医療手配のお手伝いを致します。*ホテルには保健局への届け出の義務があり、お客様の入場を拒否する権利が御座います」。

 発熱者を隠して宿泊させた場合は、宿泊施設にペナルティが課せられることや、宿泊施設に宿泊拒否権があることを明確にし、医療手配を手伝うことまで定められていることが分かります。

 日本の宿泊施設にも同様の権限を持たせ、宿泊客に周知させないと本当の意味での感染防止策は講じられないと思います。

 良くも悪くも国民に「要請」しかできない日本。宿泊施設を始めあらゆる業界の施設側が、利己的な消費者に屈せずに徹底した水際対策を講じられるようにし、スタッフが安心しておもてなしを提供できるよう、時には「強制」も必要であると考えます。

井川 今日子 氏

おもてなしコンサルタント 井川 今日子 氏

大学で観光学を学んだ後、船井総合研究所を経て、10年に観光文化研究所入社。全国の旅館や観光協会を中心に、女性の感性を活かした集客・固定客化支援で活躍中。商品戦略や販売促進、現場接客サービスなど多岐にわたり提案。

 

 

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