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「津田令子のにっぽん風土記(63)」絆を感じる安曇野に思いを馳せて~ 長野県安曇野市編 ~

2020年7月19日(日) 配信

神竹灯の点灯式に参加する本橋さん
NPO法人ふるさとオンリーワンのまち 理事 本橋 範子さん

 東日本大震災の日に、取材で安曇野を訪ねていた本橋さん。「この10年、毎年安曇野を訪ねています」。

 
 忘れもしない2011年3月11日午後2時46分18秒。当時NHKの連続ドラマ「おひさま」のロケ地となっていた安曇野。ちょうどそのロケ地を歩いているときに何の前触れもなくその瞬間はやって来た。地面がぐにゃっと浮き上がった感触は、今でも鮮明に覚えているという。
 
 「そのときに同行いただき、お世話になった当時の安曇野市商工観光部観光課長補佐の白澤勇一さんは現在、市の観光協会の専務となり、再び安曇野の観光の担い手として活躍されていると聞いています。あの日のことを振り返ると思い出すのは、人の優しさと温もりです」と本橋さんは語る。
 
 「夏に訪ねたときは大王わさび農場の三連水車周辺の清々しさと、ご案内いただいた濱広報室長さんの笑顔が印象的でした」。日本有数のワサビの名産地としても知られる安曇野。美しく豊かな水資源を利用してワサビの栽培を行っている「大王わさび農場」は、日本一広いワサビ農場を有し、敷地内に飲食店や体験施設などを備えた大規模な観光スポットで、北アルプスの麓に広がる牧歌的な田園風景が広がる湧水の里だ。
 
 繰返し安曇野を訪ねるのは「この地には、日本の原風景と思われる場所がたくさんあるから。何度訪ねても、新しい発見があり、眺めるだけで癒されます」。
 
 さらに冬の安曇野の行事として欠かすことのできない穂高神社で行われる「神竹灯(かみあかり)」は、神聖な気持ちになると話す。「みんなで灯りをつけることで一体感を感じ、何よりも幻想的で、心が洗われる」という。冬空の下、甘酒が振る舞われ、白玉入りのお汁粉をいただくと、身も心も一気に温まっていく。
 
 境内を囲み、灯りを眺め、神々しい気持ちになっていると「近くに寄ってもっとあったまりな」などと地元の方が声を掛けてくださる。コロナ禍で訪ねることが叶わない今だからこそ、改めて安曇野との縁と絆を感じつつ、「1日も早く状況が落ち着き、再び訪ねることを心待ちにしています」。
 
 生まれも育ちも東京下町の本橋さんは「私にはふるさと(田舎)がないので、安曇野は第二のふるさとのような存在なのかもしれませんね」と笑顔が輝く。インタビューを終え、昨日届いたばかりだという、安曇野に店を構えるさかた菓子舗の「おやき」の入った紙袋片手に、颯爽と街中へ消えていった。
 
 

 

津田 令子 氏

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

 

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