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〈旬刊旅行新聞8月1日号コラム〉もう、8月 生命力にあふれた蝉の声に夏を知る

2020年8月1日
編集部:増田 剛

2020年8月1日(土) 配信 

生命力にあふれた蝉の声に夏を知る(イメージ)

 もう、8月なのだ。7月の東京はずっと雨が続き、新聞校了日の今日も雨が降っている。

 
 今年は季節の移り変わりを感じる機会が極端に少なかった。外出時には常にマスクをしているため、それぞれの季節に咲く植物が発する強烈な香りを感じることもあまりなかった。

 
 ニュースも暗い話題ばかりが多く、気づけば、夏真っ盛りの8月になっている。

 

 
 先日、やはり午前中に雨が降っていたが、溜まっていた洗濯物を干そうとベランダに出たときに、山の稜線に沿って青空が見えた。

 
 「真っ青な空を見たのは、本当にどれくらいぶりだろう」としばらく空を眺めていた。

 
 乗る機会が減っていたオートバイを出して、久しぶりにエンジンをかけた。懐かしいエンジン音と振動が全身に伝わってきた。かすかに震える燃料計を見ると、ほぼ空状態だった。

 
 それで、近くのガソリンスタンドに行き、レギュラーガソリンを満タンにして宮ケ瀬湖までの自然に囲まれた、自分のお気に入りのツーリングコースを走った。これが今の私の一番の気分転換なのだ。

 
 交通量が極限まで少ない一本道を、誰とも会わずに、オートバイで走り抜けることで、知らぬ間に蓄積していたストレスが発散されていくのを感じる瞬間なのである。

 
 すると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 
 蝉の声だった。長く続く梅雨の湿った土の中で、飛び立つ日を待ち望み、そして一瞬、晴れ渡った空に夏を感じ取ったのだろう。もう、待ちきれずに、地表に現れ、力の限り鳴き始める。私は生命力にあふれた蝉しぐれを聞きながら、今年初めて、夏という季節の到来を感じた。

 

 
 そういえば、「旅行新聞バイク部」が今年5月に発足したものの、新型コロナウイルスの感染拡大や、長い梅雨もあり、ほとんど活動が行われていない。現状は自主練がメインである。

 
 ただ、このコロナ禍で公共交通機関をできるだけ避けようと思ったときに、オートバイの存在価値も少しは高まっているのではないか。「いつでも乗れる」という心理的な余裕だけでも、精神的な癒しにつながっている。

 
 現代は、クルマを所有しないでシェアする傾向が強くなっている。クルマを所有することを負担に感じる人たちには、便利なシステムで、これからの社会も、おそらくその流れが広がっていくのだと思う。

 
 一方で、クルマやオートバイの所有にこだわる人たちもいる。乗らないときにも経費はかかるし、故障したときには整備をしなければならない。

 
 だが、愛着が湧いてくるというのは、所有の利点でもある。高級車やスポーツカーなどカッコイイ必要はない。オンボロ大衆車であっても、パワー不足でスピードがノロくても、可愛いらしく思えてくる。

 

 
 しばらく乗らないでいると、エンジンの回転もイマイチで、不機嫌な印象を受ける。それでも、なだめすかしながら乗っていると、調子と機嫌を取り戻すことも多々ある。

 
 とくにオートバイはエンジンの振動が乗る者の全身に直に伝わってくるので、無言の会話を楽しみながら、旅をすることができる。目的地よりも、旅の過程を楽しむには、最高の相棒である。

 

(編集長・増田 剛)

 

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