アドベンチャーツーリズムは「人生を豊かにする旅」 地域経済にも効果を ATシンポジウム
2020年11月24日(火) 配信
アドベンチャーツーリズム協議会は10月30日(金)、「ツーリズムEXPOジャパン 旅の祭典in沖縄」で、アドベンチャーツーリズム・シンポジウムを開催した。世界規模で旅行市場が落ち込むなか、早い回復が期待される〝アドベンチャーツーリズム(AT)〟について、観光振興の方向性や沖縄の事例を参考に議論が交わされた。
「沖縄におけるアドベンチャーツーリズムの可能性」をテーマに、モデレーターは、日本アドベンチャーツーリズム協議会理事でJTB総合研究所主席研究員の山下真輝氏が、パネリストは沖縄コンベンションビューロー(OCVB)企画・施設事業部企画課主査の酒井達也氏、ジャンボツアーズ・インバウンド事業部の谷村祐気氏、日本アドベンチャーツーリズム協議会理事でアルパインツアーサービス代表取締役社長の芹澤健一氏、アドベンチャーツーリズム協議会理事で長野県観光機構代表理事専務理事の野池明登氏が登壇した。
山下氏は、ATの在り方について「単なる冒険旅行ではない。自然や文化に向き合い、人生を豊かにする上質な時間を過ごす旅」と語った。
□自然や文化の保護を
ATの国際機関「アドベンチャートラベル トレードアソシエーション(ATTA)」は、ATの定義について、自然との触れ合い、フィジカルなアクティビティ、文化交流のうち2つ以上が主目的の旅行としている。
さらに、最近では「地域の自然や文化を体験する、手段としてのフィジカルアクティビティという考え方がある」と山下氏が補足した。そのうえで、地域の中小事業者や地域住民に経済的・社会的観点でのサスティナブル(持続可能)な効果が残せること、自然や文化を保護・活性化することに貢献していることが重要な要素だとしている。
ATのキーワードは、①斬新・ユニークな体験②自己変革を起こせるような体験③健康④チャレンジ⑤ローインパクト――を挙げた。AT参加者の特徴については「自然や文化の保全に対して意識が高く、自分が参加している旅行が地域にとってローインパクトであることを重要視する。これらは、ATに限らず〝旅の本質〟である」(山下氏)と整理した。
□ストーリー性伝える 課題はガイド育成
長野県観光機構の野池氏は、長野県の大自然と山の幸、歴史に育まれた文化、鮮明な四季は強みだとし、これらを生かす観光戦略が〝AT〟であると述べた。一方で、重要な課題として「ガイドの育成」と「国内コーディネーターの育成」を挙げ、「本物の価値を参加者に的確に伝えることができるガイドが必要だ」と述べた。
理想のガイド像として、基礎的知識から物語性を語ることで、参加者に期待以上の感動を提供できるガイドが求められるとした。国内コーディネーターは、海外エージェントの連携や、現地ガイドとの連携、ツアーのアレンジができるコーディネーターと関係性を築くことが重要だと語る。
□沖縄のAT 高い潜在能力
OCVBの酒井氏は沖縄とATについて「2018年度の観光庁広域周遊事業を受託したことが、我われの〝AT元年〟だと考えている」と述べた。そのうえで「沖縄は空手発祥の地と言われている。今後、ATと空手をつなげていけるのではないか」と期待を寄せた。
ジャンボツアーズの谷村氏は、20年度国立・国定公園誘客推進事業に採択されたツアーの1つ、慶良間諸島国立公園のツアーには、地元ガイドによるまち歩きや、旧道ハイキング、海洋生物の観察、地元の食材を使ったバーベキューなどを組み込んでいる。「アクティビティ、自然、文化交流体験のATの3要素のすべてを取り入れた」と説明した。谷村氏は「ATは沖縄のインバウンド市場の中で、かなりポテンシャルがある。より磨きをかけて、満足してもらえるようにしたい」と意気込みを語った。
アルパインツアーサービスの芹澤氏は「インバウンドにとって日本は魅力にあふれている国」と述べ、欧米人は日本に新しい旅のカタチを求めているとした。そのうえで「地域には文化、郷土料理、人の暮らしがある。それはATの中に含めることができる。日本の素材は海外に負けていない」と力を込めた。