MaaSは「行けない場所に行くためのツール」(WILLER 執行役員 中島 正陽氏)
2021年1月26日 (火)配信
地域住民や旅行者個々の移動ニーズに合わせ、複数の公共交通や移動サービスを組み合わせ、検索・予約・決済などを一括で行う「MaaS」。観光などとの連携により、地域の課題解決につながると期待される。京都府などで利用できるアプリをリリースしたWILLERに、アプリのあり方や今後の展望を聞いた。
我われは、検索や予約、決済を含め、誰もがストレスなく移動ができるためのツールがMaaS だと考えています。
長距離を移動する列車や高速バス、エリア内を走っている路線バス、自宅から1マイル程度を移動するオンデマンド交通がシームレスにつながり、自家用車などを使わなくても皆さんがストレスなく移動できることは大切です。
こうしたなかで一般に言われるような「生活型」や「観光型」など、 MaaSを細分化して考える必要はないと私は考えています。
旅行者も地域の方が日常的に使用する移動手段も同じモビリティを使うことになるからです。
また、観光だけで交通体系が成り立つエリアは限られていて、生活があっての観光だと思っていますし、地域にとっては観光が生活の重要なファクターの一つにもなっています。両者を別々のものとして考えるのではなく、地域としてMaaSのようなシームレスに移動できる仕組みを持つことができれば、誰もが使い続けられるツールになります。
さらに、MaaSを梃子にすることで、交通の最適化や都市の在り方、まちづくり、経済活性化までもが可能になるとみています。
当社がリリースしたMaaSアプリは、京都府北部と兵庫県北東部を走る京都丹後鉄道沿線エリア、南山城村エリアと、11月中旬にアプリをアップデートした北海道のひがし北海道エリアなどでご利用いただけます。
「誰もが行きたいところにストレスなく行ける」ことを目指し、既存の交通事業者とも連携しながらサービスを考えています。
アプリでは、トヨタの超小型パーソナルモビリティ「i―ROAD」などの新しい交通手段の提供や、共通の観光地に行きたい人を相乗りさせるサービスを提供するなど、既存の交通サービスを統合するだけではなく、新しいサービスを生み出すことを目的に捉えています。
アプリを作る際に重要なのは、利用者の目線に立ち、何が最適なのかを意識することです。
例えば、地元の隠れた名店のような本当は行きたいけれどなかなか行けない場所に行くための交通手段として使われたり、毎日の生活の中で必要なスーパーや病院に簡単に移動できたり、小さなお子様がいる在宅勤務のお母さんが、夕方に仕事が終わると子供を保育園に迎えにいき、帰りにスーパーによって帰るという毎日の大変だった移動がスマートに行える。このようなストレスのない移動を提供することで、経済活動を活性化し、経済を回す一助になるようなMaaSをこれからも開発していきたいです。
また、MaaSを考えるうえでは、「都市」と「地方」を分けて考えることも大事だと思っています。
大都市では今後、コロナ禍でテレワークをする人が増えるなか、自宅周辺約2㌔の近距離圏の移動も考えなければなりません。一方地方部では、地域住民の移動手段の確保が大きな使命です。
今後は、両者の課題を解決させるために、一歩踏み込み商業ベースで自走できるさまざまな取り組みに挑戦していきたいです。