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ロケ実績を観光資源に 人を呼び込む仕掛けとは

2021年2月17日
営業部:後藤 文昭

2021年2月17日(水) 配信

 地域に人を呼び込む手段として、また地域が交流人口を増やし、地域経済を循環させるための手段としてロケツーリズムが注目されている。

 コロナ禍で家で過ごす時間が増え、メディアでの露出が大きな宣伝効果を生み出している地域もある。

 ロケ実績はうまく活用すれば、新たな観光資源を生み出すことや、企業価値の向上にもつながる。

 ロケツーリズム協議会で版権処理などのノウハウを学び、活用している千葉県茂原市と神奈川県綾瀬市、リーガロイヤルホテル東京のロケ実績の生かし方に注目し、ウィズコロナ時代の観光地づくりも考えた。

茂原市

ロケ地マップとパネルでおもてなし

 千葉県茂原市は2月9日、市内のロケ地を巡るモニターツアーを行った。シーン写真やロケ当時の裏話とともに市内を巡ったほか、21年春以降に全国公開予定の映画「今はちょっと、ついてないだけ」の撮影現場も公開。案内には市が整備した「音声ガイド」も併用した。

 同ガイドは、映画監督の柴山健次氏がシナリオを書き、アイドルの佐武宇綺さんがナレーションを担当。GPSと連動しており、ロケ地に着くと、そこで撮影された作品の情報や裏話などを聞くことができる。

 ツアーは榎町商店街、市役所、旧西陵中学校、旧新治分館、茂原公園を巡った。

 映画「浅田家!」などの撮影が行われた榎町商店街には、ドラマ「あなたには帰る家がある」のロケ地「大和屋旅館」や、ドラマ「パパがも一度恋をした」のロケ地「河野写真館」などが密集。

 市役所1階ロビーには、撮影に訪れた俳優のサインなどを飾るコーナーが設置されている。飾られるサインなどは作品の放送、放映に合わせて変更し、可能な場合は放送日なども公開。展示の変更時には、SNS(交流サイト)を通じ情報を発信している。

 市内でも人気の撮影スポット「旧西陵中学校」では、特別に内部見学を実施した。ドラマ「青のSP(スクールポリス)―学校内警察・嶋田隆平―」(毎週火曜午後9時、カンテレ・フジテレビ系 全国ネットで放送中)などの撮影に使われており、ドラマ「チア☆ダン」撮影時のまま保存されている部屋もある。

青のSP シーン写真

 ツアーの昼食は、「古民家居酒屋もんしち」のロケ弁を用意。栄養士が監修した弁当は、千葉の食材をふんだんに使用し、彩も鮮やか。

 参加者からは、「ロケ地として巡ると、普段とは違う発見がある」、「ロケ地が集積されてきていることが実感できた。来た人をもてなすグルメも早急に開発したい」、「一度作品の舞台になった場所を見てから作品を見返すと、より作品への愛着が湧くので良いツアーだと感じた」などの声が上がった。

なりきりを楽しむ参加者

 ツアーを実施した茂原市は、ロケ地パネルの設置やロケ地マップの提供など、魅力的なロケ地周遊ルートを提案する。既存の観光資源や地元商店を組み込むことで、ロケを入口に茂原市の魅力を発信している。

 市は、今回実施したツアーで得た意見なども踏まえプレミアムなツアーの企画も検討する。さらに地元タクシー会社も、ロケ地を巡るツアー造成の考えを示している。

ロケ誘致のホンネ ~田中豊彦市長~

 ――市長の目から見た地域の変化は。

 ロケ地となることで、日常の風景が魅力的なものになる。多くの人に訪れてもらい、地域が活性化していくことに加え、市民と一体となって受け入れ、協力していくことで地域のにぎわいが生まれています。

 未来を担う子供たちが、好きな俳優が茂原に来たことや、テレビに知っている景色が映ることを喜び、地域への愛着が高まっていることも感じます。

 ――ロケツーリズムを実施しての手応えは。

 市民にもこの取り組みが徐々に認知されており、地域のにぎわいにつながってきていると感じます。また、映画のワンシーンなども権利処理をしっかり行うことで地域資源として活用することができ、地域の魅力の向上につながっています。引き続き、積極的なロケ誘致で「ロケの聖地 茂原」として実績を積み重ね、行きたいまち、住みたいまちとなるよう取り組みます。

綾瀬市

ロケ地ツアーの一コマ

 観光地ではないまちに市外から人を呼び込み、魅力に触れてもらい、地域活性化につなげていく手段の1つとして、ロケツーリズムを採用した神奈川県綾瀬市。2014年に、「市」と市民団体「あやせ市ブタッコリ~ロケ隊(ブタロケ隊)」が「綾瀬ロケーションサービス」を立ち上げ、ロケ誘致に取り組んでいる。

 さらに、ロケ地巡りで綾瀬を訪れた人がグルメも堪能できるよう、ブタロケ隊と商工会、市が3年の歳月を費やし、ご当地グルメ「あやせとんすきメンチ」を開発。綾瀬産の豚肉を贅沢に使った、綾瀬の郷土料理「豚すき」を具材にしたオリジナルメンチカツで、差し入れた撮影隊からも好評という。16年度からは市内店舗で販売し、4年で約7万3千食を販売した。 

 昨年12月までに136作品のロケを受け入れた綾瀬市は、ロケ誘致の取り組みを「市民に知ってもらい、ロケ誘致に協力してほしい」、「市外に発信し、本市の魅力を知るきっかけにしてもらいたい」と、市ホームページなどで撮影実績の公表、市役所1階でのサイン色紙やポスターの展示などを行いPRした。

 17年度からは、全国で初めてシーン写真入りロケ地パネルの設置を進め、現在までに17基を設置。シーン写真の使用許可はさまざまな権利が絡むためハードルが高く、交渉の定石もないため、都度、作品PRなど最大限の協力を誠実に行うことで、利用協力を打診している。

 これまでに4回実施した「綾瀬市ロケ地ツアー」は、延べ151人が参加、毎回定員の2―3倍の申し込みがある人気企画だ。市役所や市内のロケ地、ロケ地パネルを巡るツアーで、昼食時には実際にロケで提供されたロケ弁を味わえる。

 参加者からは「普段入れない所にも行け、撮影の裏話も聞けた」、「身近な綾瀬が有名になりうれしい」、「ロケ地を巡るだけでなくスタッフの方々が色々な趣向を凝らした演出を見せてくれ、とても楽しかった」などの声が寄せられている。

ロケ誘致のホンネ ~古塩政由市長~

 ――市長の目から見た地域の変化は。

 作品のクレジットに「綾瀬市」の名が掲載されることで、誇りを感じる市民が増えていると感じています。ロケ誘致により、「住んでいて良かった」との声も聞かれ、市民の綾瀬市に対する愛着が着実に高まっていると感じています。

 ――ロケ誘致の難しさは。

 東京都内からの交通の便の良さが売りですが、近年では近隣市もロケ誘致に積極的に取り組むようになっており、ロケ誘致のライバルが増えていると感じています。そのようななかで本市を選んでいただくには、事前調整の細やかさから、当日の撮影を円滑に進める支援まで撮影しやすい環境を整えることが大変重要だと認識しています。

 ――ロケツーリズムを実施しての手応えは。

 他の自治体の皆さんは観光名所などがあり、ロケ誘致が直接ツーリズムにつながりますが、本市では有名な観光地が少ないために、ロケ地を観光地とすることで誘客を目指しています。今後もさまざまな観光事業と連携し、新たな観光を創出しながら、他市にはない綾瀬市ならではのロケツーリズムを推進し、ファンを増やしていきたいと考えています。

リーガロイヤルホテル東京

セラーバー

 リーガロイヤルホテル東京(中川智子総支配人、東京都新宿区)は、1994年に開業した。リーガロイヤルホテルグループは関西を中心に展開しており、開業当時は東日本での知名度は高くなかった。このことから同ホテルは知名度アップの方策としてロケ誘致に乗り出し、今では年間で約120件のロケを受け入れ、経済効果は2千万円を超えるという。

 ロケの受け入れに際しては、宿泊客やレストランの利用客に迷惑をかけないよう、「ガーデンラウンジ」などのレストランは営業時間外としている。今では利用者も撮影を楽しみにしており、「今日は何を撮影しているの」などと声を掛けられることも多いという。

 ロケ誘致の実績は、知名度を上げる以外にもさまざまな利益をホテルにもたらしている。

 修学旅行で利用した子供たちがロケ現場を目にして喜ばれることが多く、「御校が宿泊されているときに、ロケが行われるかもしれませんよ」が教育旅行の誘致の際にウリになっている。

 また、ホテルのホームページにロケ実績を掲載しているため、ホテル業界に就職を希望する学生が「○○が撮影されたホテルで働きたい」と志望動機を語ることも多い。さらに職場がロケ地として使われることで、「好きな俳優と同じ空間で働ける」など、従業員のモチベーションを上げる効果も生み出している。

 新型コロナウイルス感染症の流行拡大によって一時ドラマ制作は止まったが、現在はロケも再開。ホテルでは、「半沢直樹」や「大恋愛〜僕を忘れる君と」などの撮影に使われた「セラーバー」が休業中であることから、より積極的にロケ誘致を展開。客室の撮影時に稼働率が下がっていることもあり、周りの客室との調整などにかかる時間が大幅に減少し、ロケの決定率が上がった。

 一方でシーン写真の使用など権利処理の問題があり、ロケ実績を今後どのように活用していくかがこれからの課題。ロケで使用したレストランにそのシーン写真を飾り、同じ席で同じ料理を楽しむなどの体験型商品を生み出すことで、ホテルに来る楽しみをさらに膨らませていきたい考えだ。

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「ロケ実績を観光資源に 人を呼び込む仕掛けとは」への1件のフィードバック

  1. シティーセールスの手段としてロケツーリズムに取り組んでいる地域は、官民の仲がいいように感じます。自分達の住む町作りに、住民が参画がしやすい取り組みですね。ワンシーン写真があるのとないので臨場感が全く違います。世の中が停滞しているコロナ下でも、コロナ感染予防策をしっかり講じて地域の観光資源作りに取り組みたいですね。

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