【特集No.580】国際観光施設協会の研究進む、疲弊する観光・地域を救え
2021年4月29日(木) 配信
新型コロナウイルス感染症の収束が見えないなか、町じゅう旅館・ホテル、ウィズコロナ時代の設備、ワーケーション、フェーズフリーなど6つのテーマの研究を進める国際観光施設協会(鈴木裕会長)。すべての研究に共通するのは、苦境に立たされる観光業界と地域を救いたいという思い。4つのテーマを研究する各分科会のトップに研究成果や今後の展開などを聞き、ウィズコロナ時代の観光産業の変容を探った。
【後藤 文昭、長谷川 貴人】
□町じゅう旅館・ホテル
旅館観光地分科会 会長 川村 晃一郎氏
宿起点に地域内を結合
旅館観光地分科会(川村晃一郎会長)が進める「町じゅう旅館・ホテル」は、ホテルや旅館を起点として、まちの施設やイベント、人をテクノロジーでつなぎ、周辺の活性化や地方創生を目指す構想だ。さらに「タビマエ」、「タビナカ」、「タビアト」で分断されている各種サービスを結合することで、「移動」面の課題解決も目指す。
サービスの結合や移動の快適性向上には、乗換案内アプリでMaaS事業を展開しているジョルダンの「J―MaaS」を利用する。川村氏は同MaaSの利点を「各交通事業者が提供するMaaSと違い、さまざまな交通機関と地域を網羅しているので、利用者が本当に必要な情報を得ることができる」と説明。「このMaaSにローカルな交通事業社なども参画してもらえれば、1つのQR決済で地域内を快適に移動できる」との考えを示す。
同分科会は今年1月、東京都台東区にある行燈旅館で実証実験を行った。ジョルダンの乗換案内アプリ内に広告を掲載し、そこから宿のホームページに誘導し、予約できるようにした。
宿のロビーには、デジタルサイネージを設置し、女将おすすめの周辺スポットを動画で紹介。気に入ったスポットをタッチすると、より詳細な動画やアクセスを見ることができる仕掛けだ。
さらに講師を招き、スマートフォンカメラを使った写真教室も実施。参加者が撮影した写真に行燈旅館とハッシュタグを加えインスタグラムに投稿すると、宿のホームページにも表示される。これによって宿は、常に最新の情報をHP上に掲載できる。
こうした仕組みを構築しながら川村氏は、「肝になるのは、自治体や宿泊施設、観光団体などに元気になってほしいという各社の思い。『町じゅう旅館・ホテル』の仕組みは、このコロナ渦で疲弊した地域の立て直しにも寄与できる」と話す。タビアトまでケアでき、リピーターも生み出せるほか、画一的なサービスをつくることが目的ではないため、「色々な人に加わってもらい、それぞれにあった仕組みを一緒に構築したい」と語る。……
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