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「津田令子のにっぽん風土記(77)」黙旅(MOKUTABI)のススメ~ 街歩き編 ~

2021年9月11日(土) 配信

街歩きを「黙旅(MOKUTABI)」で
トラベルキャスター 津田令子

 1人でも多くの方に「街の魅力」と「街歩きの楽しさ」を、お伝えしたくて、トラベルキャスターとして年間100本以上の街歩きの講座を企画し、講師として受講者さんを街へ誘っている。街歩きを、小さな旅と捉え非日常とするならば、私はそれを日常(街歩きを仕事)にしてから、かれこれ四半世紀を超えた。これまでに訪ねた「街」は延べ2500カ所を数える。

 
 そんな街歩きに、変化が起きた。昨年の春以来、新型コロナウイルス感染症によって度重なる緊急事態宣言が発令され、美術館、博物館などの休館や、団体見学不可の施設が増え、訪ねる場所は徐々に狭められていった。国や都が決めたことなので致し方ない。それならば、とメインの訪問先を施設ではなく、屋外で楽しめる場所へとシフトした。

 
 具体的にはパワースポットめぐりや、神社仏閣探訪。公園や庭園、商店街を訪ねるスタイルだ。さらに人数制限をしながらも見学可能な博物館などを探し、密になりづらい訪問先へと変更した。

 
 街歩きの最中は、間隔を開けてのウォークを心掛ける。マスクを外すことなく、ランチをいただく際には、いわゆる黙食厳守の感染予防の徹底ぶり。

 
 参加者に「なぜ、コロナ禍でも参加するのか」と聞けば、「街があるから」「自分の責任で、密を避け参加している」「街歩きで気分転換を」などとおっしゃる。

 
 リモートによる街歩きの企画を考えてみたが、馴染まない。「実際に、みんなと一緒に街を歩くから楽しいのであって、行った気分になって映像を見るだけでは目的が達成できない」と評判は、良くなかった。

 
 そこで考えた。実際に街を歩くことに変わりはないのだが、可能な限り人と話さず、黙々と、しかも堂々と街を歩く(旅に出る)ことにしようと。「黙旅(MOKUTABI)」と命名し、PRしていこうと思ったのだ。

 
 「この時期に何人もの人たちが行列をなして何やっているの」という目で見られるのは、実につらい。マスク越しとはいえ、建物や花々の説明も小声で遠慮がちに。しかしルールを守って人目を憚ることなく、気持ちよく、うしろ指を差されることなく、みんなで黙々と歩く。説明文はプリントを配って読んでいただく。そういう街歩きだったら誰も文句は言うまい。

 
 コロナ禍だけではなく、これからも街歩きや、自分を見つめ直す旅行のなかで「黙旅(MOKUTABI)」を推奨していきたいと思う。

 

津田 令子 氏

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

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