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「旅のユニバーサルデザインアドバイザー」受講開始から1年に想う 竹内 敏彦氏「合理的配慮義務化への備えを」

2021年10月4日
編集部

2021年10月4日(月) 配信

竹内 敏彦氏 日本国際観光学会 福祉観光研究部会部会長 JTBトラベル&ホテルカレッジ講師

 ユニバーサルツーリズムを学ぶ資格、旅のユニバーサルデザインアドバイザーが開講してこの9月で1年が経った。
 
 一般社団法人ケアフィット推進機構が認定し、基本的な介助技術も学ぶこの資格に、当部会はその立ち上げから関わりを持ってきた。
 
 この1年、休館して講習を実施した老舗旅館、添乗員派遣会社の社員や、観光系の学生をはじめ、介護施設や病院勤務のスタッフなど多くの学びを提供した。もちろん、旅行会社からも志の高い多くの社員が受講している。
 
 しかしながら、旅行会社からはその数が限られているという。旅行業界は、「備えあれば患いなし」と認識しながら、このマーケットの重要性も分かってはいるが、行動が伴わない。もしかしたらコロナも影響し、旅行業務自体への想いや求心力が弱まってきているのではないか。そんなことまで危惧してしまう。
 
 このような現況でも、世の中は待ったなしである。先般、合理的配慮の提供を民間事業者にも義務付ける「改正障害者差別解消法」が公布された。これまで民間事業者には努力義務とされていた合理的配慮が義務化される改正法が、公布日(2021年6月4日)より3年以内に施行されるのである。
 
 合理的配慮とは、一言でいえば「個々のお客様からの要望」である。不当な差別的取り扱いの禁止に加え、合理的配慮の提供も義務化される。つまり、障害のあるお客様のリクエストに何も応えないことは法律違反となるのである。そして、個々のリクエストはお客様の権利である。3年以内にこの法律が施行され、丸腰で対応する旅行業界に危機感を抱かざるを得ない。
 
 もちろん、かなえられる要望とそうでない要望がある。できないものはできない。それは致し方ない。しかしながら、先ずは承り、最適案をお応えする。合理的配慮とは、「企業の最適案」でもある。よって、合理的配慮とは、「個々の事業者の企画、演出、商品、収入、倫理、社員教育といった『企業価値そのもの』といえる」のである。
 
 それでは、個々のお客様からの要望に応え、企業価値を高めていくにはどうすれば良いのであろうか。それには「備えあれば」、つまり事前準備が必要となる。
 
 個々の意思の表明に対して提供されるのが合理的配慮である。よって事前準備の精度が高ければ、合理的配慮の精度も高まることとなる。そして、個々に対する合理的配慮が徹底すれば、合理的配慮の求めは減少する。逆に、事前準備の精度が低ければそれだけ合理的配慮の内容が多岐にわたることになるのである。
 
 障害のあるお客様を含め、すべてのお客様の希望をかなえたい。その想いはすべての旅行会社がいだく願いであろう。
 
 東京2020オリンピック・パラリンピックによって、「多様性と共生社会」がテーマ化された。コロナで先が見えなくても、必ず夜は明ける。旅行業界は、そのときのための基礎力を養っておかなければならない。旅のユニバーサルデザインアドバイザーとして備えよう。一人ひとりの社員の学びが、共生社会の推進に貢献することになるのだから。

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