【特集No.593】Airbnb 田邉泰之代表に聞く 好事例つくり、「健全な市場」に変化
2021年10月11日(月) 配信
住宅宿泊事業法(民泊新法)が2018年6月に施行され、3年が経過した。違法民泊の横行で、騒音やゴミ処理のトラブルなど地域住民に不安が高まるなか制定された同法は、営業日数を180泊までに制限するなど、民泊の普及に向けた壁となっている。Airbnb(エアビーアンドビー)Japanの田邉泰之代表は「民泊産業は健全な市場になった」と自信を見せ、「観光業に寄与する好事例を広めることで、さらに普及させたい」と意気込む。3年間の取り組みと今後の方針を聞いた。
【木下 裕斗】
□関係人口の増加で地域活性化へ 騒音などトラブルは動画で防止へ
民泊の届出住宅数は民泊新法施行後5カ月の18年11月には、1万269軒だった。それから約3年が経過した21年8月には、1万8579軒と約1・5倍となった。「Airbnbで掲載する物件数と利用者数は現在、非公開だが順調に推移している」(松尾崇広報部長)と説明する。
サラリーマンなどが副業として民泊物件を運営するために、新築で民泊施設を建てたり、古民家をリノベーションして運営するケースが近年、増加しているという。
旅館業法で営業日数が制限されない「簡易宿所」として、営業許可を得る民泊施設が増えているのも大きな特徴だ。これを受け同社は、各施設を紹介するページで、営業形態を掲示している。
簡易宿所については、旅館やホテルと同様に住宅街や学校などがある住居専用地域に、開業できないことが都市計画法で定められている。
一方、宿泊者名簿の作成義務、衛生を保つための設備のほか、消防法で定められた消防設備の設置義務などの内容は、民泊施設とほぼ同じというメリットがある。
◇オンライン体験 「収束後に訪問を」
同社と登録する宿泊施設は、手作りのベーグルなど、ホストこだわりの料理の提供や農業、茶道などの体験に最も力を入れている。
消費者に各体験などの魅力を感じてほしいと願うホストは多い。
田邉代表は「一部のホストは営業日数の制限がない簡易宿所として営業している」と語る。
コロナ禍では、多くの施設が、巻き寿司づくりや、生け花企画などオンラインで実施可能な体験を行っている。同社は、「コロナ禍でも新たな収入源を生み出し、新型コロナウイルス収束後に、現地を訪れてもらう」方針だ。
田邉代表は施行後の3年間について、「掲載施設軒数はコロナ禍直前の19年9月20日(金)~11月2日(土)に開催されたラグビーW杯まで、順調に増加してきた」と振り返る。
その後、期待が膨らんだ、東京2020オリンピック・パラリンピックでは、「イベントホームステイで物件の増加をはかる計画だったが、無観客試合となったことを受けて、自治体ごとの判断で見送る例が多くなった」と話す。
コロナ禍前、ビジネスホテルが、都市部で乱立し、宿泊予約が難しかったなか、民泊は代替手段として注目された。
一方で、違法民泊が蔓延り、騒音やゴミ処理など多くのトラブルが発生し、地域住民に不安を与えていた。
多くの既存宿泊業者も、しっかりとした法整備がされるまで民泊の普及を歓迎していなかった。
新法施行直後から、民泊経営を始めている旅館経営者もいるが、最近になって、一部の旅館経営者が地域活性化の一環として、地域の空き家を民泊として活用することを検討している。
田邉代表は「今後も各自治体やDMOとコロナ後の新しい旅行のあり方を提案する。好事例づくりで、より健全な市場へと変えていきたい」と強調する。……
【全文は、本紙1845号または10月15日(火)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】