「津田令子のにっぽん風土記(78)」南伊豆の名店・おか田の挑戦~ 静岡県・南伊豆町編 ~
2021年10月17日(日) 配信
美しい海と山、温暖な気候に恵まれた南伊豆湊に創業1985年の郷土割烹料理店「おか田」はある。お父様の時代から金目鯛など新鮮な魚料理を出す店として多くの観光客を受け入れてきた。
2代目店主の岡田正司さんは今年4月、「1人でも多くの方々に自慢の金目鯛の煮付けを食べていただきたい」との思いから、金目鯛の煮付けセットお取り寄せ便の販売を始めた。早速取り寄せ、同封されていた美味しい食べ方のメモを見ながら温め食べてみた。
1・5㌢はある肉厚の身を一気にほぐし、口に入れるやいなや、以前おか田で食べたときの感動が瞬時に蘇ってきた。「何という美味しさだろう」と思わずうなってしまう。
翌日、注文の電話を入れ大阪の友人宅に贈っていただいたのだが、「これほど魚の芯までしっかり味付けされた煮付けは食べたことがないわ。伊豆に旅したことを思い出している」と、すぐさまメールが入った。
岡田さんは、「食べる際は冷凍庫から取り出して8~10分ぐらい湯煎して召し上がってくださいね。冷凍調理品なので到着後1カ月以内に」と電話で教えてくれた。その通りに温めただけなのに、ここまで感動できるのは作り手の想いが商品にきちんと伝わっているということだろう。社長自らの発案でコロナ禍を乗り切ってこられたのだ。
土産品の商品開発をいち早く手掛け、時流の変化に果敢に対応される岡田さんのチャレンジ精神と前向きで明るいお人柄が、金目鯛に乗り移っているようだ。「みんな『美味しかったよ』と褒めてくれるだけで満足なんですよ」と話す。
6月からは「日本一高いコロッケ」と銘打って、伊豆地方で獲れる世界最大のカニ、タカアシガニをふんだんに使ったコロッケのお取り寄せ便も始まった。「日本一高いというのがミソなんですよ。高級コロッケとネーミングしてもピンとこないので、1個500円という価格を逆手にとっちゃいました」。このコロッケにはタカアシガニのほぐし身が1個当たり30㌘も入っているのだ。庶民的なそれとはちょっと違うというのがお分かりいただけるのでは。
「僕は料理にストーリーを作り出していくようにしています。定食のようにごはんとお味噌汁があるだけではなく、金目鯛や伊勢エビ、タカアシガニはストーリー立てをしやすい。必ずお客様との会話が盛り上がり、『また来ます』って帰ってくださいます」と満面の笑みで語る。
津田 令子 氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。