環境省「地域内外の協力が必要」 第6回温泉地サミット開催
2021年10月19日(火) 配信
環境省は10月8日(金)、オンラインで第6回温泉地サミットを開いた。コロナ禍での健康志向の高まりやワーケーションの需要が増加するなか、さらなる温泉への誘客をはかるためには「地域内外の協力が必要」と考え、「温泉地と地域の課題を解決する」をテーマに、宿泊施設や自治体、大学教授などが議論し、方策を探った。
登壇者は亀や(山形県鶴岡市)社長の阿部公和氏とハートビートプラン(大阪府大阪市)社長の泉英明氏、東洋大学准教授の内田彩氏、古滝屋(福島県いわき市)当主の里見喜生氏、大分県・別府市市長の長野恭絋氏、東急の交通インフラ事業部MaaS担当課長の森田創氏の6氏。司会は國學院大學教授の下村彰男氏が務めた。
討論の冒頭、下村氏は「コロナ禍でもさまざまな関係機関が温泉利用を促進するが、各温泉地は厳しい状況が続いている」との認識を示した。別府市長の長野氏に行政の立場から、温泉地での課題解決に向けた意見を求めた。
別府市では、昨年実施されたGo Toトラベルキャンペーンについて、市民からも「一部批判的な声もあった」。これを受け、長野氏は「収束後に市民全体で安心して観光客を受け入れてもらえるように」と、PCR検査センターを設置したことを紹介した。
一方で、さらなる来訪につなげるための工夫として、「市民の協力を得て、湯の花が入ったはがきサイズの箱を家族や友人などに送ってもらい、別府温泉が忘れられないように魅力の発信を続けた」という。
東急は「コロナ禍でリモートワークを気軽にしてもらおう」と、静岡県・伊豆などにある同社グループの宿泊施設や交通機関などを予約できるMaaS「Izuko」を展開している。
同社課長の森田氏は「コロナ禍で、オンラインでも仕事ができることが明らかになった。観光地にとっては、新たなお客を呼び込むチャンスになる」と需要の拡大に期待を込める。
東洋大学の内田氏も同様に「テレワークの普及で温泉地を訪ねる観光客が増える」と考える。日本各地で温泉が湧くことから、「温泉のほかに、現地の食や着地型プログラムの造成」を促す。
温泉地域内の課題については、亀やの阿部氏が意見を述べた。
湯野浜温泉の各宿は2005年ごろまで、目指す方向性はまとまっていなかった。現状に危機感を覚えた若い世代の従業員は、100年後も変わらない価値を創出する「湯野浜100年計画」を策定した。
一方、資金の工面が難しかったことから、温度の高い源泉の熱を、シャワーなどの水道水を温めることに利用する環境省の補助事業に応募。同時に源泉を管理する会社「湯野浜源泉設備保有」も設立した。
さまざまな事業を成功させるなか、より結束力が高まり、「同計画を達成するための策略を練る会社を創設できた」と地域内連携の意義を説明した。
都市デザインを行うハートビートプランの泉氏は、長門湯本温泉(山口県長門市)の再開発の実績を持つ。
観光客が日中、温泉街にまったくいないこともあったため、川床やカフェなどの新設に加え、ライトアップイベントを開いた。「温泉地の雰囲気を現代に合わせてアレンジすると、これまであまり来ていなかった若者が訪れるようになった」と成果を強調する。
東日本大震災時に、被災者などを受け入れた古滝屋の里見氏は、近年頻発する自然災害で、宿泊施設が果たす役割について、「避難所や、復興にあたる工事関係者の拠点にできる」と述べた。
「早急な復興のために、地元の人とコミュニケーションを築く場所の大切さを感じた」と話す。「温泉があり、個室で仕切られているため、避難所よりも快適に過ごせる」ことも利点だ。
□現代版湯治の普及を 全国大会開く
同日には、健康や寿命の延伸、ストレス解消など現代に合った湯治文化の普及で、新たな需要の創出を目指す第3回「チーム新・湯治全国大会」も開催した。
冒頭、同チームの活動報告として、健康開発財団所長の早坂信哉氏が、昨年16カ所の温泉地で実施した効能の調査について発表した。
同調査は利用客へのアンケートで入浴後に得られた効能を聞いたところ、90%以上から疲労やストレス、憂鬱な気分の解消につながったとの回答を得た。
チーム員の活動報告では、大分県別府市で湯治を行うシェアハウスを運営する「湯治ぐらし」代表の菅野静氏が、お客の体調や体質から最適な温泉を案内する「みんなの保健室」を紹介した。
同保健室をSNS(交流サイト)などで発信した結果、1軒のシェアハウスがインターネット環境を提供するビッグローブ専用のワーケーションスペースとして、活用することになった。
ビッグローブからは「社員の健康をはじめ、仕事へのモチベーションにつながった」との反響があったと伝えた。
入浴剤を開発しているバスクリンの東原好克氏は、利益の一部を湯治場に還元していることを発表した。
包括連携協定を結んだ乳頭温泉組合(竹内貴祐組合長、秋田県仙北市)とは09年3月に、バス湯めぐり号の導入を支えた。
冬は大雪で車によるアクセスが難しいため、閑散期だったが、「雪を心配せず、通年型の温泉地になれた」と話した。
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同サミットでは温泉の保護、温泉の採取などで発生する天然ガスによる災害の防止と温泉の適正利用で、とくに顕著な功績を収めたことを表彰する、温泉関係功労賞表彰を開いた。
表彰者は次の通り(敬称略)。
松之山温泉組合(新潟県)▽小平悟朗(中央ホテル会長)▽小早川優(兵庫県環境審議会温泉部会特別委員)▽石田啓祐(徳島県環境審議会温泉部会長)▽渡邊公一郎(福岡県環境審議会温泉部会委員)▽皆生温泉観光(鳥取県)▽静間清(広島大学客員教授)▽伊藤恭(孝寿会理事長)