「観光革命」地球規模の構造的変化(281) 大阪・関西万博の開幕
2025年4月12日(土) 配信
大阪・関西万博がいよいよ4月13日(日)に開幕する。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに6カ月間開催される。約160の国・地域のほか企業や文化人らの展示館が点在し、最新技術や文化芸術の発信が行われる。
本来はいのち輝く未来社会への夢を育む万博であるが、前評判は非常に良くない。毎日新聞が2月中旬に実施した世論調査では「万博に行きたいと思う」は16%、「行きたいとは思わない」が67%。ある月刊誌は開幕直前に「大阪万博『大失敗』にまっしぐら:巨額赤字を埋めるのは『国民の血税』」という厳しい批判記事を掲載。
想定来場者数は2820万人で、前売り入場券の販売目標は1400万枚であったが、1月末時点で55%しか販売できていない。そのため開幕前から赤字が危惧されている。
万博は国家的事業と位置付けられ、会場整備費や安全対策費などに1千億円の国費が投入され、そのうえに会場周辺の道路・港湾・下水道などのインフラ整備に10兆円以上の資金が必要で、それに対しても巨額の国費投入が想定されている。
莫大な税金を投入する国家的事業なので早くから国民に的確に情報提供を行い、万博を大成功させることが必要不可欠だ。しかし万博の実務を担う「2025日本国際博覧会協会」の上層部に元政府高級官僚が居座り、実働部隊は官民寄せ集め集団で機能不全に陥っているようだ。このままでは誰も責任を取らないままに万博が大失敗し、万博に関心の無い国民もそのツケを払わされることになる。
本来であれば「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマの下で、次代を担う子供たちが科学技術や地球環境問題や生命の尊さなどに関心を持つ絶好の機会になるように事業運営がなされるべきだ。万博には世界各国からの出展が行われるので国際交流が円滑に実施されることも大切だ。さらに万博は新しいビジネスが芽生えるチャンスでもあるので若手起業家の着想に期待したい。
万博会期中には大きな人流が生じるので旅行者が大阪を起点にして日本各地を訪れることができるように旅行業界の頑張りに期待している。
万博関係者は汚名返上の意気込みで会期中の事業運営・情報提供・トラブル防止に全力を尽くし「大阪万博『大成功』にまっしぐら」にしてもらいたい。

北海道博物館長 石森 秀三 氏
1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。