被災地の生産者を支援する農業支援2000プロジェクト。全国の農産物直売所などのネットワークを活用して、安全性が確認された農産物を販売し、被災地農家の生産活動を支える。4月16、17日、長野県安曇野市の農産物直売所で福島県産の農産物販売支援から始まった同様の取り組みは、ゴールデンウイークにかけてさまざまなチャリティーイベントとして全国に広がった。各会場は「食べて応援できる」と多くの人が訪れた。農産物の完売も続出するほどの盛況ぶりで、被災地の生産者を元気づけた。
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4月16、17日、安曇野市内で「千年の災害に負けない農業支援プロジェクト」が行われた。プラザ安曇野など5カ所の農産物直売所特設会場で、福島県産の農産物、加工品を販売。福島からも生産者や直売所経営者、地産地消シェフなどが参加し、売り子として店頭に立った。イベント2日目の昼にはすべての商品が完売。売り上げは102万8555円に上った。
会場を訪れた人からは、「福島がんばれ、と願うしかできなかったが、野菜を買うことで応援できてうれしい」「安全なのはわかっているから風評被害に負けないで」といった声が福島県の生産者にかけられた。生産者の1人は「このタイミングで福島のものを販売してくれることがありがたい。本当に売れるのかという心配があったが、このイベントで消え去ったような気がする」と語った。
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4月30日、NPO築地食のまちづくり協議会などが中心となり、東京・築地の波除通りイベント特設会場で、築地チャリティーイベント「がんばろう日本!元気を出そう!築地から」が開かれた。500円ワンコイン市では、築地場外市場各店の選りすぐりの逸品が集結。売り上げは全額義援金として被災地へ寄付された。チャリティー塩ちゃんこコーナーには武蔵丸親方が登場。自ら販売も行い、多くの来場者を引き付けた。そのほかタレントのヨネスケ師匠や元バレーボール全日本代表の益子直美さんなど各界の著名人が応援に駆け付けた。
被災地支援コーナーでは、福島県の「素材広場」、栃木県の「秋山農場」「蕎楽しらさぎ」、岩手県陸前高田市の「田舎のごっつお」、茨城県常陸太田市、坂東市、千葉県旭市などが出店。農産物などの販売を行った。
長い歴史を持つ築地市場のなかで直産販売が行われたのは初。築地は関東大震災後に自然発生的にできた市場でもあり、「産地があっての築地」と築地市場の店主たちが考え、今回初の産直イベント実現となった。
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ゴールデンウイーク期間中の5月4、5日は、東京都・葛西臨海公園で「農業支援2000プロジェクトin葛西」が開催。福島県から南相馬・相馬市の生産者、会津若松市の「素材広場」「山際食彩工房」、茨城県から「ファーマーズマーケットほくそう」、特用林産振興会、栃木県から「マルシェ栃木」の生産者などが出店した。20人の野菜ソムリエも販売をサポートし、野菜にひと手間加えた試食を出すと、売り上げも一気に伸びた。
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そのほかGW期間中に、「ふらっと美山」(京都府南丹市)、「道の駅かなん」(大阪府河南町)、「道の駅クロスロードみづき」(広島市尾道市)などで被災地の応援販売も行われた。全国各地に支援の輪は広がりを見せている。
被災地の生産者、直売所組織と全国の直売所など販売先を結ぶコーディネート役を担うのが都市農山村漁村交流活性化機構。通称、まちむら交流きこう。髙橋正夫プロジェクトきこう部長はイベントについて「なんとか被災地を助けたいという、明確な目的意識を持った方に買いに来ていただいた。完売するところもあり、反響は大きかった」と語る。
まちむら交流きこうは、市と農山漁村の交流を推進する、農林水産省の外郭団体として半官半民の立場にある。「農業支援2000プロジェクトは、公的な応援がないと難しい。まちむら交流きこうは、全国の直売所との関係は長く、生産者と直売所、個人と個人を仲介するのに向いている。農林水産省をはじめ、各県の農政局などの担当者との調整役もできる」と話す。
同機構は、農業支援2000プロジェクトへの賛同者を募集。
問い合わせ=電話:03(4335)1983。