新燃岳風評被害からの脱却
霧島市観光の将来像を語る
鹿児島県と宮崎県にまたがる霧島連山・新燃岳が1月26日に噴火してから、直接の噴火被害や降灰もほとんど無い霧島温泉のホテル・旅館が、連日のテレビ、新聞報道による風評被害で、宿泊キャンセルが続くなど観光業界を中心に大きな打撃を受けている。そこで、地元行政と観光関係者に、霧島温泉の現状や桜島と霧島連山に囲まれた大自然、歴史文化、空港、高速道など交通の利便性など、魅力的な観光資源を生かした「霧島市の観光将来像」を語ってもらった。
【司会=関西支社長・有島 誠】
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〈座談会出席者〉
前田 終止氏(霧島市長)
奈良迫 英光氏(鹿児島県観光プロデューサー)
徳重 克彦氏(霧島市観光協会 会長)
蔵前 壮一氏(霧島温泉旅館協会 会長)
花俣 幹男氏(霧島国際ホテル 社長)
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――新燃岳と霧島温泉の現況は。
■前田:今年1月26日の噴火活動から、爆発的噴火は13回。それ以降は約1カ月半の間、小規模な噴火はあるものの、爆発的噴火はない。3月22日には、半径4キロだった警戒範囲が3キロに縮小され、宮崎県のえびの高原に通じる県道1号線も開通した。
残る懸案事項は、韓国岳、大浪池の登山解禁だけだ。関係者の調査では、登山道などは今までと全く変わらず、噴石も見られなかったという。安全性を最優先に考えながら、入山時期について専門家の意見を聞き検討している。
一方、風向きにより噴石や降灰の被害が大きい高千穂峰への登山は当分の間無理と考えているが、登山口にある高千穂河原への道路の降灰除去を進め、ビジターセンターや駐車場の解放に向けてできる限り努力したい。宮崎県都城市などへの降灰も1カ月以上ほとんどない。
■徳重:霧島のこの1年を振り返ると、まず口蹄疫で昨年7月の霧島温泉宿泊客が30%減という過去最大の影響を受けたことから、10月1日から行政と観光関係者、地域が一丸となって「いざ霧島!!100万人キャンペーン」を展開し、12月には100%近くまで回復した。3月には九州新幹線開業も控え、さあ、これからという時に噴火が起こり、2月1日には空振被害で霧島市全体が爆発の影響を受けているように報道された。
1月26日から2月22日までの宿泊・日帰り客のキャンセルは約2万7千人。霧島温泉の宿泊者数は、2月だけで前年比約64%減と落ち込んだ。観光復活を目指し頑張っているが、東日本大震災でさらにキャンセルが発生した。行政と宿泊施設などの各団体が一体となり、温泉を無料開放する「にっこり入浴の日」を設け、いつもと変わらない霧島を知っていただくイベントを展開している。
■蔵前:霧島温泉の観光客は年間420万人。観光客とは交流人口のことで、今回の噴火で観光客が皆無となるような体験をした。ホテルや旅館だけでなく、ゴルフ場や見学・体験施設などさまざまな施設に影響が及んだ。「にっこり入浴の日」は久しぶりに入浴客でにぎわい、温泉街の飲食店や観光施設に一次的に活気が戻り、観光客のありがたさを改めて実感した。
■花俣:今一番の問題は雇用。助成制度を受けながら解雇を避ける方針でやっている。ただ長引くと体力勝負になる。3月には個人客が徐々に戻っているが、団体はまだ厳しい。
■奈良迫:今回の噴火で霧島の観光客が最も減少したが、指宿、鹿児島市も影響があった。県と観光連盟では2月1日に福岡でランチミーティングを開き安全をPRしたほか、福岡のエージェントやマスコミ、東京のメディア系旅行会社などに状況を説明。3月4、5日には東京、大阪のエージェント、マスコミの招へい事業も行い、現地の安全を確認してもらった。
※ 詳細は本紙1417号または日経テレコン21でお読みいただけます。