No.274 東日本大震災 特別紙面 - 復旧に向け、協力体制を

東日本大震災 特別紙面
復旧に向け、協力体制を

 3月11日午後2時46分ごろ、三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の地震により、東日本大震災が発生した。震災から1週間が経過しても、被災地との連絡がつかない地域が多くあり、情報収集が困難な状況にある。本紙は18日現在、東北地方エリアの主な宿泊施設の営業状況を調べた。東北運輸局ではホームページでホテル・旅館の営業状況を発表している(16面に掲載)。業界内では、一日も早い復旧に向け義援金による支援や、協力体制づくりが始まっている。

【本紙取材班】

【被災者受入れの動きも】

 観光庁は17日現在、登録ホテル・旅館について「重大な人的被害の報告は入っていない」と発表。14日時点で日本旅行業協会(JATA)の報告によると、震災地域を訪れていた旅行者は約4100人。うち、安否確認済みが約1600人、安否確認中が約2500人と公表したが、17日現在、安否確認中は約60人。

 訪日外国人旅行者については、日本政府観光局(JNTO)がインフォメーションセンター(TIC)で電話問い合わせに24時間対応している。

 福島県・穴原温泉の「匠のこころ吉川屋」では、地震発生後、水道管に亀裂が生じコンベンションホールが水浸しになった。電気・水道・ガスが使えなくなり、浴場のタイルが剥がれ落ちるなどの被害があった。当日は200人ほどが宿泊していたが、フロント職員が宿泊客を安全に誘導。翌12日には個人客を中心にバスを手配し東京まで無事に送ったという。吉川屋は4月1日から営業再開する予定だ。

 宮城県・松島海岸の松島ホテル大観荘は、ガラスの割れなど軽微な被害があったが、電気は3月15日の夜に復旧した。ガスも復旧済みで水道は4月3日ごろの復旧予定。電話、FAX、インターネットは3月20日に復旧、4月中旬の営業再開に向け準備中という。

 自治体や温泉地では、群馬県みなかみ町のように被災者を受け入れる動きも出てきている。

被災地の主な宿の営業状況

 

※ 詳細は本紙1414号または日経テレコン21でお読みいただけます。

【宿泊・観光施設様】震災関連 状況・被災者受入・融資関連リンク(3/29更新)

旅館・ホテル、観光・食事、土産物施設のみなさまへ。

東日本大震災に関連し、周辺の震災状況把握や被災者受け入れ、融資、雇用に関する情報リンクを下にまとめました。必要に応じてご参照ください。

被災状況

■東北地方太平洋沖地震に伴う東北運輸局管内の公共交通機関の運行(航)状況、主なホテル・旅館の状況について(東北運輸局)
wwwtb.mlit.go.jp/tohoku/saigai110311.htm

宿泊施設の被災者受け入れ

■【観光庁プレスリリース(平成23年3月25日)】宿泊施設における県域を越えた被災者の受入体制について
www.mlit.go.jp/kankocho/news06_000092.html
観光庁は厚生労働省等の関係省庁と連携し、旅館・ホテルにおいて県境を越えた被災者の受入れを支援することとしました。具体的には、
[1] 災害救助法の制度を活用し、観光庁において、関係団体や自治体の協力を得つつ受入先となる旅館・ホテルを確保することにより、被災自治体が避難所を他県に求める際の助けとなるよう尽力します。この際、移動手段の確保についても支援します。
[2] 被災された方々に宿泊及び移動に関する負担は生じません。避難所を要請した県が負担した上で、国が必要な財政措置を講じます。

■各県、旅行業者等による被災者向け支援に関する情報(観光庁)
www.mlit.go.jp/kankocho/topics06_000025.html
こちらは上記の災害救助法に基づく支援措置ではなく、善意の情報提供をまとめたもの。具体的な宿泊施設の利用条件等は申込者が確認する。

融資関連

■【政府系金融機関の融資についてのお問い合わせ】平成23年東北地方太平洋沖地震を受け、日本政策金融公庫、日本政策投資銀行、商工組合中央金庫において、融資についての相談窓口を設置しています。(財務省)
www.mof.go.jp/20110311tohoku_jisin/sk230311.htm

■【中小企業者の方へ】災害復旧貸付の実施、特別相談窓口の設置など被災された中小企業の皆様に対し、必要な情報を提供します。(中小企業庁)
www.chusho.meti.go.jp/earthquake2011/index.html

雇用関係

■平成23年東北地方太平洋沖地震に伴う労働基準法等に関するQ&A等(厚生労働省)
www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000016exl.html

 

遅れのお詫び

お知らせ

 東日本大震災の影響で、印刷所とのスケジュール変更、道路事情による配送の遅れなどによって、本紙1414号(3月21日付)のお届けが一部地域で大幅に遅れることが予想されます。お詫び申し上げます。

12年度福島大型CP、4月からプレ事業

佐藤知事(中央)とキャラクター「キビタン」(左)
佐藤知事(中央)とキャラクター「キビタン」(左)

 福島県大型観光キャンペーン推進委員会(委員長=佐藤雄平福島県知事)は2月21日、2012年度を本番として、前後併せて3年間で展開する「福島県大型観光キャンペーン」の実施計画を発表した。プレ事業と位置付ける今年4月からは、福島空港就航都市からの誘客拡大や着地型観光の推進に取り組む。

 事業は福島県、および官民で構成される「うつくしま観光プロモーション推進機構」が実施する。キャッチフレーズは「旅すればふるさと ほっとするふくしま」。キャンペーンでは(1)県民の地域への愛着意識向上(2)300件の地域からの企画提案(3)観光客満足度80%以上(4)年間宿泊者数785万人(09年比10%増)――の4点を目標に掲げている。

 大型キャンペーン期間中(12年度)は、300以上の体験プログラムなどの特別企画も実施する。各プログラムは「まなび」「食」「いやし」などのテーマ別にも広く紹介し、地域や目的などさまざまな切り口で福島の魅力を紹介する。目玉企画として、福島在住の作家・冲方丁さんの吉川英治文学新人賞受賞作「天地明察」を題材にした周遊ツアーも実施する。

 福島県では県下を3地域に分け、中通りの「うつくしま奥の細道『花・街・道』観光キャンペーン」、会津の「極上の会津観光キャンペーン」、浜通りの「うつくしま浜街道観光キャンペーン」の3事業を実施している。これら地域キャンペーンを柱に、特別企画で事業を盛り上げる。

会員増強に注力、外客対応が商売発展に

国際観光日本レストラン協会第54回通常総会

 国際観光日本レストラン協会(津田暁夫会長、241会員)は2月23日、東京都内で第54回通常総会を開いた。社会貢献活動を通した協会の認知度向上や、会員増強による協会の基盤強化、訪日外客が増加していくなかで対応の強化、公益法人制度改革に伴う一般社団法人認可への対応などを11年度の重点事業とした。

 津田会長は会員増強について「まだ実現できてはいないが都道府県に最低1軒の飲食店はある全国組織にして、会員間の親睦を深めていきたい」と語った。訪日外客への対応については、訪日外客の個人旅行客のうち57%が「食事が目的」と回答するアンケート調査結果をあげ「本物の料理を食べたいという方がいかに多いか。外客に対応できるようなメニューやサービスを何か1つでも備えて力を入れて行くのも商売発展につながるのでは」と語った。

 また、09年に協会創立50周年記念事業として夏休み期間に開催した親子体験食味大会は、10年も協会入会員の34店で開催し、583人が参加した。津田会長は「子供たちに日本の素晴らしい食文化に触れてもらい、さまざまなことを学び、食べ、体験してもらう会。マスコミにも多く取り上げられ、反響は大きかった。こういう活動を通して協会の認知度を高めていくのが一番。11年も継続実施していきたい」と語った。

MICE総研を設立、国際会議の誘致や企画など

 大型国際会議や展示、イベントや会議場の管理・運営を主な業務とする「コングレ」(隈﨑守臣社長、東京都)はこのほど「一般社団法人MICE総研」を設立、2月25日から事業をスタートさせた。

 コンベンション事業で培ってきたノウハウと経験を生かして、MICE事業の実態調査や研究、MICEの新商品や仕組みの開発に取り組んでいく。

 具体的には、国際会議・国内会議・展示会の誘致や資金計画、企画、立ち上げに関するサポート業務のほか、学会事務局業務の受託、学会事務局による学術会議の自主運営のコンサルティングなどを行う。

 〒102―0083東京都千代田区麹町5―1弘済会館ビル 電話:03(5216)5010、FAX:03(5216)5011。

「量」から「量+質」へ、今夏目途に閣議決定

 観光庁の溝畑宏長官は2月25日に開いた定例会見で、見直しを進めている観光立国推進基本計画について「夏ぐらいの閣議決定を目指したい。量から量+質へ」と見直し内容について話した。

 2月10日の交通政策審議会観光分科会で素案を提出。先に報道したとおり、基本的な数値目標は、現行の5目標のうち「日本人国内観光旅行の1人当たり宿泊数」を省き、新たに観光地の魅力向上をはかるため「国内観光地の旅行者満足度」を加える方針だ。溝畑長官は「今まで量的な指標が多かったが、満足度やホスピタリティなど質的な指標を導入したい」と話した。また、「若年層への旅行喚起」も盛り込む模様で、「政府だけでなく、地方、民間も含めて旅行ムーブメントを興したい。観光を日本経済再生の起爆剤に」と語った。

毎日の計測が意識改革に、エコ達人村セミナー

エコデザインの必要性を説く中山会長
エコデザインの必要性を説く
中山会長

 国際観光施設協会(中山庚一郎会長)は2月22―25日、東京ビッグサイトで開かれたホテレス・ジャパンにエコ達人村を設け、旅館・ホテルの経営者からエコ対策についての相談を受け付けた。最終日の25日は、「水光熱量30%削減への挑戦」をテーマにセミナーを開いた。

 新潟県・月岡温泉のホテル泉慶の飯田武志社長室長は、デマンド(使用電力)管理や、給湯機のハイブリッド化、動力系統のインバータ化など、エコ対策の取組みを紹介。デマンド管理の警報やランプは裏方ではなくフロントの裏など、全社員が見えるように設置し、想定電力を超えそうな場合、社員がすぐに対応できるようにした。「都市ガス、電力料金は3年前からすさまじい勢いで高騰しており値上がり分を償却するのでいっぱい。経費削減まで実現できていないのが実情」と語った。

 ホテルニューオータニの設備を担当する熊木義雄課長は05年から2年間、約100億円規模の投資を行い、ホテルの改修を行ったハイブリッドホテルシステムプロジェクトなどを紹介。エコガラスや、最新の耐震設備の導入、屋上緑化、スカイレストランのオール電化などの省エネ対策に取り組んだ。「国や都が定める温室効果ガス削減の義務も年々厳しくなる。削減義務を達成できない場合、売買で賄う必要が出てくる。現状のままで試算すると年間6、7千万円。社内にエコ対策の委員会を設置するなど、社員の意識改革から始めている」(熊木氏)。

 企業側からは、山下設計の倉田雅史環境設計部門グループ長と大星ビルシステムズの基盤開拓グループの柳川賢一グループ長が事例紹介。倉田氏は「自然エネルギーを活かし建物をどう工夫できるかに我われの出番がある」とし、具体例として京都の町屋の知恵をあげ「風の通り道を確保した造りや、地盤冷気の利用、高天井からの冷気の排除など、夏を旨とすべしといわれる日本家屋の原点」と紹介。「宿泊施設のエネルギー使用は、空調関連が約50%。自然エネルギーを活かすことで30%の経費削減も可能。エコを楽しみ、自然と親しむ考え方も大事」と語った。

 柳川氏は、照明の見直しだけで約28%の経費削減を実現した群馬県・水上温泉の水上館の事例を紹介。工事費用1600万円、施行後の年間削減費用は700万円。費用は2年4カ月程度で回収できた。CO2削減は年間132トンにのぼる。「基本に立ち返り、メンテナンスを見直すだけで経費削減は期待できる」と語った。

 中山会長は旅館・ホテルで使われている水の使用量について「客1人当たり1日平均446リットル。家では300リットルだが旅館になると850リットルを超えているところもある」と報告。「計測が基本。そこからアイディアも生まれてくる。毎日計測することで、スタッフ全員に節水意識が生まれることが大事」と強調した。最後に「エコ達人村が目指しているのは、土地それぞれの自然状況を全部考慮してエコデザインしていくこと。そこまでいかなくてはいけない」と語った。

入浴着着用“ウェルカム”のネットワークづくりを

 乳がんなどの患者さんは、温泉入浴をするとき、自然の心情として「タオルなどで身体の傷跡を隠したい」と思う。だが、現在は県条例によって浴槽内にタオルやスポンジを持ち込むことが禁じられているため、乳がん患者は温泉に行っても、人が少ない夜中にこっそりと入浴するしかない。また、自由貸し切り・24時間入浴可能など限られた条件の中から、温泉地や旅館を選ばなくてはならないのが現状だ。

 NPO法人J.POSH(日本乳がんピンクリボン運動)は、乳がんや、やけどなどによって身体に傷を負った多くの人たちが、以前と同じように家族や友人たちと温泉旅行に行ける環境づくりを目指している。

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 衛生管理上問題のない入浴着を着て、大浴場に入ることを歓迎する温泉旅館などが数多く名乗りをあげることで、各地域に幾つもの温泉のつながりができる。「乳がんを患ったことで心を閉ざし、ふさぎこんでいる全国の多くの女性たちにとって、自分たちを歓迎してくれる温泉旅館が広がることは、とてもうれしいこと」とJ.POSH副理事長・事務局長の松田壽美子さんは語る。

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 長野県・昼神温泉の17の旅館・ホテルは4年ほど前から、入浴着を着用しての大浴場利用を歓迎している。また、石川県・和倉温泉の女将の会も、昼神温泉の取り組みに強い関心を示して、視察を行ったという。

 「現状では入浴着での入浴がNOの温泉旅館も、YESに代わり、やがてWELLCOMEになることを願う」と松田さんは話す。

 J.POSHは、女性にやさしい温泉地や旅館が、全国各地域にネットワークを張り巡らす「温泉ウエルカムネットワーク」づくりに取り組んでいる。将来的には、政府公認のステッカーやロゴマークなどを作成し参加施設はステッカーやロゴマークを掲示することで、宿や温泉地全体のイメージが上がるという相乗効果が得られるネットワークを目指している。

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 今年1月17日には、総務省地域力創造グループ地域振興室長、厚生労働省健康局生活衛生課長、国土交通省観光庁観光産業課長が連名で、各都道府県・各政令指定都市・市などの局長宛てに「乳がん患者の方が専用の入浴着を利用して気兼ねなく温泉に入れるような観光地の拡大に向けて、民間団体の活動を支援し、潜在的な観光需要の喚起をはかる」ことを求める文書を送付した。関係省庁が連携して、高齢者や障がい者、乳幼児を抱える家族などすべての人々が旅行をしやすくなる「ユニバーサル観光」の推進を後押ししている。

 温泉旅行に行きたいのに「行けない」「行きづらい」人たちの潜在需要を掴んでいくことが、今後、温泉地の生き残りを左右するはずだ。

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 今のところ入浴着の需要が少ないため、1着4―5千円と、治療費などで経済的な負担の大きい患者にとっては、少し割高になっている。今後、女性にやさしい「温泉ウエルカムネットワーク」が全国的に広がることによって、水着のようなおしゃれな入浴着が出てきたり、入浴着を作るメーカーが参入し増えることも期待される。

 「温泉ウエルカムネットワーク」への登録申込み、問い合わせは、J.POSH 電話:06(6910)2900 (担当・松田壽美子)まで。

【増田 剛】