プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選

第38回
プロが選ぶ
日本のホテル・旅館100選発表

 旅行新聞新社が主催する第38回「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」、第33回「プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」、第22回「プロが選ぶ優良観光バス30選」と選考審査委員特別賞「日本の小宿」10施設が決まった。総合100選は、石川県・和倉温泉の加賀屋が33年連続1位に選ばれ、全体では震災を乗り越えて東日本・東北の施設の健闘が光った。部門別の上位入賞、各賞入選施設を紹介する。表彰式は1月18日、東京・新宿の京王プラザホテルで開かれる。

(2、3面に関連記事)

東日本・東北が健闘、加賀屋が33連覇を達成

 「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」は全国1万6800の旅行会社(本社主要部門、営業本部、支店、営業所を含む)に投票用紙(専用ハガキ)を配布。昨年10月1―31日までの投票期間中に「もてなし」「料理」「施設」「企画」の各部門で優れていると思われる旅館・ホテル、観光・食事施設、土産物施設、観光バス会社を選出してもらった。11月28日には、旅行業団体関係者や旅行作家、旅行雑誌編集者らで構成される「選考審査委員会」が開かれ、100選ランキングが決定した。

 「ホテル・旅館」の総合では、加賀屋(石川県・和倉温泉)が今年も1位に選ばれ、33年連続1位の記録を達成した。

 2位は日本の宿古窯(山形県・かみのやま温泉)、3位は稲取銀水荘(静岡県・稲取温泉)、4位は白玉の湯泉慶・華鳳(新潟県・月岡温泉)、5位は水明館(岐阜県・下呂温泉)、6位はホテル秀水園(鹿児島県・指宿温泉)、7位は草津白根観光ホテル櫻井(群馬県・草津温泉)、8位は萬国屋(山形県・あつみ温泉)、9位はホテル鐘山苑(山梨県・富士山温泉)、10位はあかん湖鶴雅リゾートスパ鶴雅ウィングス(北海道・阿寒湖温泉)となった。1位の加賀屋と2位の日本の宿古窯は第1回から38年連続でトップ10入選。3位の稲取銀水荘は昨年の4位から1ランクアップ、6位の秀水園は昨年の8位から2ランクアップした。10位のあかん湖鶴雅リゾートスパ鶴雅ウィングスは昨年の12位から2年ぶりにトップ10に返り咲いた。

 また、新たに5軒の施設が総合100選に入選。9割以上の施設が総合100選への入選を維持し、100選旅館の経営努力が光る。今年は、東日本・東北の宿が19施設ランクインしたなか、12施設がランクアップ、4施設が昨年と同順位と、震災を乗り越えて健闘している。

 部門別では、「もてなし」部門は昨年17年ぶりに首位を奪還した加賀屋が2年連続の1位に輝き、「料理」部門は第10回から28年連続1位を誇るホテル秀水園が記録を伸ばし29連覇を達成した。「施設」部門は白玉の湯泉慶・華鳳が連覇を果たし、「企画」部門は日本の宿古窯が16年連続で1位に選ばれた。

 第33回「プロが選ぶ観光・食事施設100選」の1位は浅間酒造観光センター(群馬県・長野原)、2位は伊達の牛たん本舗(宮城県・仙台)、3位は平泉レストハウス(岩手県・平泉)4位は佐久乃おぎのや(長野県・佐久インター)、5位はザ・フィッシュ(千葉県・浜金谷)、6位はサッポロビール園(北海道・札幌)、7位はSUWAガラスの里(長野県・諏訪)、8位はアサヒビール園(北海道・札幌)、9位は山一コーポレーション(静岡県・沼津)、10位はマザー牧場(千葉県・鹿野山)の順。マザー牧場は2年ぶりのベスト10入りとなった。

 「プロが選ぶ土産物施設100選」の1位は浅間酒造観光センターで、9年連続で観光・食事と土産物の両部門で1位に輝いた。2位は蔵元 綾 酒泉の杜(宮崎県・綾)、3位はいちごの里(栃木県・小山)、4位はえびせんべいの里(愛知県・美浜)、5位は御菓子御殿(沖縄県・読谷)、6位は上杉城史苑(山形県・米沢)、7位は庄内観光物産館ふるさと本舗(山形県・鶴岡)、8位は庵古堂(群馬県・伊香保)、9位は焼津さかなセンター(静岡県・焼津)10位はお菓子の壽城(鳥取県・米子インター)が選ばれた。御菓子御殿が昨年の8位から3ランクアップ、お菓子の壽城が初めてトップ10にランクインした。

 22回を迎えた「プロが選ぶ優良観光バス30選」では、はとバス(東京都大田区)が12年連続で1位。2位は名阪近鉄バス(愛知県名古屋市)、3位は名鉄観光バス(愛知県名古屋市)、4位は山交バス(山形県山形市)、5位は日の丸自動車興業(東京都文京区)、6位はアルピコ交通(長野県・松本市)、7位は遠州鉄道(静岡県浜松市)、8位は新潟交通観光バス(新潟県新潟市)9位は三八五バス(青森県八戸市)、10位は三重交通(三重県津市)が上位入選を果たした。

 選考審査委員特別賞「日本の小宿(にっぽんのこやど)」に推薦された10施設は2面で紹介している。

 

沖縄の新たな試み ― 琉球文化の発信強化

 新春早々、涼しい沖縄に向かった。沖縄では、これまでの青く美しい海や自然に囲まれた南のリゾート地・沖縄というイメージだけではなく、琉球王朝時代に生まれた琉球独自の歌舞劇「組踊」やエイサーなどの伝統文化を、若手演出家の創作によって目玉となる「新しい魅力的なコンテンツ」として再生させ、沖縄に観光客を誘致しようという動きが出てきている。全国に5カ所しかない国立劇場の1つ、「国立劇場おきなわ」で6つの歌舞劇を観たが、修学旅行生向けにピッタリの内容の演出や、海渡る風に吹かれ、屋外で松明の闇夜に、泡盛を飲みながら観劇したいものまで多種多様であった。

 地元・沖縄県民にもやや敷居が高く、いま一つ馴染みが薄かった国立劇場おきなわが、13年度から本格的に修学旅行生を受け入れる方針だ。

 沖縄の修学旅行の目的の1つに、「平和学習」がある。ひめゆりの塔に代表される沖縄戦などが思い浮かぶ。しかし、現在、日中韓の間で領土問題が大きくクローズアップされているなかで、琉球王国時代に組踊が創作された歴史的背景などを学ぶことで、従来の沖縄戦跡での学習以外に「平和」や「外交」を考える新たなコンテンツになるのではないかと、国立劇場おきなわも受入れに積極的だ。

 「夜に松明に照らされた屋外の舞台で、泡盛を飲みながら観劇したい」と感じた私であるが、読谷村の「体験王国むら咲くむら」では、琉球武家屋敷を舞台として、庭から「組踊」を観劇する試みが行われる。敷地内の琉球料理が食べられる「レストラン」と観劇を組み合わせたプランが可能か、また適当な料金設定や、時間帯についてなど、視察ツアー参加者にさまざまな意見を求められた。

 2泊3日の修学旅行の旅程の中に、国立劇場での観劇を組み入れてしまうと、沖縄観光の経済効果としてはプラスにならない。3泊4日に延長されるのならば大歓迎であるが、なかなか難しい。修学旅行生が宿泊するホテルの宴会場の夕食時に、舞台を設けて観劇するというのが一番現実的だが、その分コストが上積みしてしまう。

 琉球芸能は力を持っている。今後時間をかけてハワイのフラのように、「組踊」も沖縄に無くてはならない観光のコンテンツに成熟してもらいたいと感じた。

(編集長・増田 剛) 

【発表】第38回(13年)プロが選ぶ100選

旅行新聞新社(石井貞徳社長、本社・東京都千代田区)は1月11・21日(合併号)発行の「旬刊旅行新聞」と自社ホームページで、第38回「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」の入選施設を発表しました。総合100選では、東北地区から19軒の宿がランクイン。うち12軒が昨年より順位を上げ、東日本大震災からの復興を印象付けました。個別に見ると総合100選は加賀屋が33年連続で首位を獲得。その記録をさらに伸ばしたほか、ホテル秀水園が料理部門で29年連続1位を獲得しました。

旅館100選は全国の旅行会社による投票を集計し100選施設を選出するもので、観光業界新春のイベントとして38年の歴史を誇ります。投票は昨年10月に全国の旅行会社(旅行業登録1種、2種、3種)の本社、支店、営業所など1万6800カ所に、投票案内を掲載した「旬刊旅行新聞」と投票用紙(専用はがき)を直接送り、実施しました。返信いただいた投票はがきを集計し、「もてなし」「料理」「施設」「企画」の部門ごとの100選および、4部門の合計点からなる「総合100選」が決まりました。

同時に「第33回プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」、「第22回優良バス30選」も発表し、観光・食事、土産物の両部門で群馬県・長野原の浅間酒造観光センターが、バス30選では東京都・大田区のはとバスがそれぞれ1位の座を獲得しました。

■第38回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選(総合トップ10入選施設)

順位          館名 (県・地区名)

1 位加賀屋(石川県 和倉温泉)

2 位日本の宿古窯(山形県 かみのやま温泉)

3 位稲取銀水荘(静岡県 稲取温泉)

4 位白玉の湯泉慶・華鳳(新潟県 月岡温泉)

5 位水明館(岐阜県 下呂温泉)

6 位ホテル秀水園(鹿児島県 指宿温泉)

7 位草津白根観光ホテル櫻井(群馬県 草津温泉)

8 位萬国屋(山形県 あつみ温泉)

9 位ホテル鐘山苑(山梨県 富士山温泉)

10 位あかん湖鶴雅リゾートスパ鶴雅ウィングス(北海道 阿寒湖温泉)

総合(11位~100位)、部門(もてなし、料理、施設、企画)、観光・食事施設、土産物施設、優良観光バスの各入選施設につきましては弊社ホームページに掲載しています。

■表彰式・祝賀パーティー
1月18日(金)には東京・新宿の京王プラザホテルで、入選施設や来賓、招待者を交えての表彰式と祝賀パーティーを開催します。
日時:平成25年1月18日(金)
    表彰式 11:00~
    祝賀パーテイー 12:00~
会場:京王プザホテル5F コンコードボールルーム
    東京都新宿区西新宿2-2-1 電話03-3344-0111

ドイツ駐日大使ら招聘、群馬県の温泉文化など体験ツアー

(左から)欧州連合(EU)のハンス・ディートマール・シュヴァイスグート駐日大使、岡村建部長、ドイツのフォルカー・シュタンツェル駐日大使
(左から)欧州連合(EU)の
ハンス・ディートマール・シュヴァイスグート駐日大使、
岡村建部長、
ドイツのフォルカー・シュタンツェル駐日大使

草津町にて森林ウォーキングを楽しんだ
草津町にて森林ウォーキングを楽しんだ

 群馬県の魅力を海外に発信し、訪れる外国人観光客を増やそうとドイツの駐日大使らが群馬県の草津温泉に招かれ、森林ウォーキングや草津名物の「湯もみ」などを体験した。

 草津温泉を訪れたのは、ドイツのフォルカー・シュタンツェル駐日大使と、欧州連合代表部(EU)のハンス・ディートマール・シュヴァイスグート駐日大使ら5人。一行は11月17―19日の2泊3日の日程で、群馬県内各地の観光名所を巡った。ドイツ大使は磯部温泉・磯部館と草津温泉・奈良屋に2泊し、EU大使は草津温泉での会食から合流し奈良屋に1泊した。

 最終日の19日には、熱の湯で草津名物の「湯もみ」を体験。大使らは湯けむりが上がる会場内で、湯もみ板を見よう見まねで操りながら、地元の人たちとの交流を楽しんだ。シュタンツェル駐日大使は「群馬県には素晴らしい温泉がたくさんあり、とても興味深かった。ドイツにも温泉に入る習慣があるので、多くのドイツ人が好んで来ると思う」とコメント。

 今回、大使らを招聘した群馬県旅館ホテル生活衛生同業組合青年部の岡村建部長(みなかみ町・法師温泉長寿館)は「現在、全国的にアジアからのインバウンドの誘致が盛んだが、群馬県青年部は、昔から生活の中に温泉を利用し古い伝統を伝える文化が根付いているヨーロッパの客層に狙いを定め、まずはヨーロッパの駐日大使に群馬県に来ていただき、群馬をまるごと味わっていただこうと考えた。今回はその取り組みの第2弾で日本を代表する草津温泉で両大使を引き合わせ、古き良き温泉文化を体験していただいた。ドイツ大使には世界遺産候補の富岡製糸場を見学していただいた後、温泉マーク発祥の地である磯部温泉も堪能してもらった。群馬県には11種類ある泉質のうち9種類が存在する。群馬をもっと深く知ってもらい、海外から多くの方々に何度も来ていただきたい」と抱負を語った。

風評を乗り超える、観光推進国民会議に600人

山形市で開く

 日本観光振興協会が事務局を務める「震災復興 観光推進国民会議 山形フォーラム―風評被害を乗り越えて―」が12月7日、山形県山形市で開かれ、約600人が参加した。講演やパネルディスカッションを行い、観光での東北復興は第3ステージを迎えるなかで、さまざまな分野の連携の重要性や、単なる回復ではなく、新しい魅力の創造の必要性などを語り合った。

日観振・西田会長
日観振・西田会長

 冒頭、西田厚聰議長(日本観光振興協会会長)は、「震災から1年9カ月が経ったが、東北地域の観光需要はまだ大変厳しい。山形県や秋田県は直接、震災の被害がなかったにも関わらず、風評被害で思うように回復していないのが実情だ。2011年度の山形県の観光客数は前年から10・2%減、403万人減の3539万人となった。現在は県内でも地域によって低迷と回復が混在しているため、全体としての解決が難しい」と報告。今回、東北の観光需要が最も落ち込む冬の時期を捉え、フォーラムの実施で「早期の観光回復と観光関係者が一丸となる契機にしたい」と強調した。

 また、開催地の山形県・吉村美栄子知事が駆け付け「2014年に山形デスティネーションキャンペーン(DC)が決定した。これを起爆剤に国内外からの誘客に向けて官民あげて全力を尽くしたい」とあいさつした。

 フォーラムは東北観光推進機構の高橋宏明会長が東北の現状報告を行ったほか、観光庁・井手憲文長官による基調講演や、各分野からパネリストを迎えたディスカッションを実施した。

東北観光推進機構・高橋会長
東北観光推進機構
高橋会長

 そのなかで、高橋会長は東北の宿泊旅行統計は震災前の水準を上回っているが、観光中心の宿泊は8割程度の戻りだと示し、「純粋な観光目的の旅行客増加をはかることが喫緊の課題。とくに、東北の宿泊者は域内が40%を占めるので、東北以外からの誘客とリピーター増加をはかることが重要だ」と語った。このほか、インバウンドは震災前の5割、教育旅行は7割と各分野の動向や対策も示した。今後は、東北のDCが続くことや東北が舞台のテレビ、映画の放映など話題が多いことをあげ「さまざまな企画と連動しながら、一丸となって取り組めば大きな効果が得られると期待している」と語った。

 井手長官は東北観光博は今年度で終了することに触れ、「国の予算はつかないが、来年度以降も何らかの形で残していきたいと検討している」と述べた。また、震災復興だけではなく、オフピークとなる冬期の観光需要喚起として、2月28日まで冬まつりを中心に、冬の東北を全国的にPRするキャンペーンを展開していることも紹介した。

「100選」表彰式当日に早朝セミナー、1月18日、新宿・京王プラザホテル

昨年の「100選」表彰式
昨年の「100選」表彰式

「有名店に学ぶ売場づくり」

 旅行新聞新社は「第38回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」「第33回プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」ならびに「第22回優良観光バス30選」の表彰式・パーティーを1月18日、新宿の京王プラザホテルで開催します。表彰式は午前11時から、新春祝賀パーティーは正午からそれぞれ開きます。

前回の「NIPPON MONO ICHI」展示会のようす
前回の「NIPPON MONO ICHI」展示会のようす

 今回は表彰式に合わせて、旅館・ホテルの売場を見直し土産品の販売拡大を目指す「売場改革プロジェクト」の一環として、100選表彰・祝賀パーティー会場で、中小企業基盤整備機構が支援し開発された、全国のモノづくり事業者の商品展示販売及び商談会「NIPPON MONO ICHI」を開催します。

 これは旅館・ホテルやドライブインなど、売店で販売する商材発掘や開発に結びつく手掛かりになればと、前回に引き続き開催するもの。とくに今回は出展数も倍増します。さらに流通業界の専門家を招いて「早朝セミナー」も実施し、その極意を学ぶ機会も設定しました。

 セミナー対象者は旅館・ホテル、ドライブイン100選の入選施設をはじめとする観光関係者。早朝セミナーは100選表彰式当日の午前9時から、同じ東京・新宿の京王プラザホテル本館5階コンコードボールルームで行います。当日はセミナーのほか、「NIPPON MONO ICHI」担当者による商品展示会の事前見学も行いますので、セミナー聴講希望の方は奮ってご参加ください。締切は2013年1月11日、参加費は無料。

 早朝セミナーのテーマは「有名店に学ぶ、魅力的な売場づくり」。講師は今秋の東京店新装オープンで話題にもなった大丸松坂屋百貨店の経営企画室スタッフ、寺井孝夫氏で、効果的な売場づくりの社内研修なども行われています。

 申し込み・問い合わせ=電話:03(3834)2718。

ひとり旅が各世代へ、13年国内旅行は微増

日本交通公社 旅行動向シンポ

黒須宏志主任研究員
黒須宏志主任研究員

 日本交通公社は2012年12月12日に「第22回旅行動向シンポジウム」を開き、主任研究員の黒須宏志氏が旅行マーケットの最新動向と2013年の展望について講演した。13年の国内観光旅行は旅行量が微増、消費単価は微減、海外旅行者数は12年比2・7%増の1900万人、訪日外客数は同8・4%増の900万人と予測した。

 国内観光旅行市場では、JTBが10月に行った旅行者動向調査をもとに、12年の国内旅行マーケットを分析。(1)飛行機を利用した旅行の増加(2)1カ月以上前の予約比率の増加(3)オンライン予約比率の伸びがやや鈍化(4)ひとり旅と友人・知人、カップル旅行などの増加(5)夏休み・年末年始など繁忙期と平日の旅行がともに増加(6)2―4泊の旅行の増加――などの特徴をあげた。黒須氏は「平日の旅行増はシニアが牽引し、1泊から2―4泊へと需要が移行しつつある」と語った。

 LCCを利用した旅行は、(1)旅行頻度の低い層ほど利用率が高い(2)収入階層の低い層ほど利用率が高い(3)20代の利用率が最も高く40代以上の利用率が低い(4)泊数の長い旅行ほど利用率が高い(5)ひとり旅の利用率が最も高く家族旅行が一番低い――と分析した。

 13年の国内観光旅行市場は、旅行量が微増、消費単価が微減と予測。「質重視による単価上昇の要素が働く一方、オンライン化、間際化、LCCなどによって低単価層が拡大する」と分析。トレンドとしては(1)オンラインシフトはやや減速しつつ進む(2)前もって休みを取り旅行を計画する人の増加(3)一方で休みが取れた時にすぐ旅行する間際予約の増加――をあげ、「ひとり旅が幅広い世代に広がり、『リセットの旅』などがキーワードになってくる」と話した。

 一方、海外旅行市場では12年の海外旅行者数は1850万人と推計。11年10月―12年9月の性年代別旅行者数増減データを示し、「国内はシニアが中心だが、海外では脇役。40、50代のビジネス需要や円高を受けた20代女子が伸びている」と語った。方面別ではベトナム、シンガポールが好調で、FIT化で消費単価は微減。13年の海外旅行者数は1920万人を予測するも、航空座席供給量を好調なインバウンドと分け合う関係で、最終的には12年比2・7%増の1900万人と予測した。

 インバウンドでは、12年の訪日外客数を830万人と予想。「13年の鍵はアジアになる」と話し、13年のアジアマーケットを予測した。(1)足元の経済不安にも関わらず、中国人の旅行意向指数はさらに上昇(2)中国を除く北東アジアの他の主要市場は減速しつつも堅調な成長を維持(3)東南アジアはインドネシアがリード、タイは2ケタの伸びを回復、シンガポールは減速の可能性――などをポイントにあげ、「アジアマーケット全体としては伸び率が微減となるだろう」と解説。13年の訪日外客数を前年比8・4%増の900万人と予測した。

 また、第1部の旅行マーケットレビュー2012ではリサーチ・アンド・ディベロップメントの野口秀樹リサーチ&ソリューションズ部長をゲスト講師に招き、「消費者意識は震災を挟んでどう変わったか」について講演。野口氏は、震災前後数年間の消費者意識の調査データを示し、「震災による消費者意識の変化はほとんどが一過的な『揺らぎ』だった。『内食化の進行』『個人生活の重視』『安全・安心への志向』などは震災前からの影響で、震災がその傾向に新たな意味を付け加えた」と話し、「『喜び』や『感動』など感情を体験できる空間にはお金を払う、という傾向が強まっている」というオリエンタルランドの上西京一郎社長の分析を紹介した。

「加賀屋塾」開く、次世代担う若手旅館経営者集結(旅館経営人財育成アカデミー)

加賀屋・小田禎彦会長
加賀屋・小田禎彦会長

旅館が日本の元気取り戻す

 旅館経営人財育成アカデミー(理事長=小田禎彦・加賀屋会長)は12年12月10―12日まで石川県和倉温泉の加賀屋で、若手旅館経営者を対象に、オープンセミナー「加賀屋塾」と経営力強化セミナーを合同で開催した。小田理事長による講演「次世代を担う旅館業界若手へのメッセージ」や、JTBの田川博己社長の特別講演「旅館・ホテルとのWIN&WINの道筋を考える」などを実施したほか、加賀屋の搬送システムなどバックヤード見学会を行った。同アカデミーの研修事務局はJTB能力開発内に設置している。

 小田理事長は「これまでは、ものづくりの国日本と呼ばれていたが、これからは、おもてなしやホスピタリティなどかたちにならないソフトウェアが日本の閉塞感を払しょくすると期待されている」とし、「我われ旅館業が日本の元気を取り戻していく役割を担っていかなければならない」と語った。さらに、旅館業の定義・使命は「お客様の抱える問題解決」とし、「これを誰よりも上手く解決することが商売の優勝劣敗を決める。旅館業でその一番大切なポイントは人の心、おもてなしの部分ではないか」と語った。

JTB・田川博己社長
JTB・田川博己社長

 JTBの田川社長は「昭和30年代、日本のものづくり企業の創業者たちは最初から技術を世界に売り込んだわけではないと思う。自分を売り込み、その裏付けとして日本の持つ技術力を売り込んだ。最初は『人』ありきだった」と強調。「しかし、最近はどうもモノありきだと感じる。製造業で日本は韓国との競争で負けているが、技術力で負けているわけではない。韓国は大統領とともに『韓国チーム』として海外にセールスに行く。その人脈のなかでセールスし、売上げを伸ばしてきた。日本はいつのまにか、『人を売る』という部分を忘れてきたのではないか」と述べ、「我われは交流文化事業を推進していくうえで、もう一度、人の流れをつくり、そのうえで物流を築いていくことが大切だ」と語った。

 

(左から)内藤氏、手島氏、小夜子さん
(左から)内藤氏、手島氏、小夜子さん

 第2部は産業技術総合研究所サービス工学研究センター副研究センター長の内藤耕氏がコーディネーターを務め、加賀屋の常務総支配人の手島孝雄氏、客室係責任者の小夜子さんとパネルディスカッションを行い、加賀屋のパントリー改革によるコスト削減の取り組みなどを紹介した。その後、パントリーや搬送システムなどバックヤードの見学会を行った。夕刻からは、部屋食による加賀屋のおもてなしを体感した。

 翌11日からは、JTB総合研究所常務の髙松正人氏らを講師に、経営マーケティング戦略や、売れる仕組みづくりなどを学んだ。

第1回セミナー開く、新潟県瀬波温泉・汐美荘で(ピンクリボンの お宿ネットワーク)

パネルディスカッションのようす
パネルディスカッションのようす
畠ひで子会長
畠ひで子会長

 ピンクリボンお宿ネットワーク(会長=畠ひで子・匠のこころ吉川屋女将)は12年12月11日、新潟県村上市の瀬波温泉「夕映えの宿 汐美荘」で会員と地元新潟県内の宿泊施設・観光関係者などを対象にした第1回ピンクリボンのお宿セミナーを開いた。同ネットワークの現在の会員数は宿泊施設62、旅館組合などの団体4、企業13の79会員。宿泊施設の総数では200軒を超える。

 畠会長は「会が発足して間もないが、問い合わせが事務局に殺到しており、改めて関心の高さや期待の大きさに身が締まる。ピンクリボンの宿が安心マークとして全国に広がって行ければ」とあいさつした。

 

 

桜井なおみさん
桜井なおみさん

 その後、7月の設立総会でも参加したNPO法人HOPEプロジェクト理事長の桜井なおみさんが「旅の楽しさと宿に求めるもの」について講演。また、富山中央病院看護師長で乳ガン看護認定看護師の酒井裕美さんが「患者さんの現況と旅の大切さ」について発表した。

 「すべての人が旅を楽しむために」をテーマにパネルディスカッションでは、パネラーに畠会長、桜井さん、酒井さんをはじめ、乳がんを患った経験を持つ湯本旅館(長野県渋温泉)女将の湯本英里さんが参加し、患者への対応や宿泊プラン作りなどについて、ほかの参加者も交えて意見を出し合った。

 

 

酒井裕美さん
酒井裕美さん

 その後、懇談会が行われ、出席した会員施設や団体会員、会員企業などが情報を交換した。

 ※2月1日号で詳細を掲載予定。

 

 

 

 

アミューズ登録取消、累積規程の登録取消は初(観光庁)

 観光庁は12月19日、11月3日に中国・万里の長城ツアーで日本人3人の死亡者を出した旅行会社アミューズトラベルに対し、登録取消の処分を下した。同社は20日に廃業予定だったが、観光庁はそれにストップをかけ、あくまで登録取消にこだわるスピーディーな対応となった。これにより、同社と役員は5年間、旅行業の登録ができなくなった。また、観光庁では今後、処分基準の厳格化も検討していくという。
【伊集院 悟】

18日聴聞会は陳述書のみ
18日聴聞会は陳述書のみ

 観光庁は12月19日、旅行業法第19条第1項にもとづき、アミューズトラベルに対し登録の取消処分を下した。

 旅行業法の違反事項について観光庁は大きく分けて5点挙げている。第1に、10月28日―11月5日の万里の長城ツアーにおいて、旅行の安全確保のために必要な計画の作成と実施に関して的確な管理・監督ができていなかったことを挙げた(旅行業法第11条の2第1項違反)。詳しくは(1)下見などをせず、コース設定における情報収集が不十分(2)一部地域で携帯電話の電波が届かないことを認識していたが、衛星電話や無線機器の準備をせず、連絡体制に問題があった(3)気象状況などによる旅程変更や引き返しの判断など、営業所と現地の連絡の仕組みができていなかった――など。また、10月7日の富士五湖周辺へのツアーで貸切バス事業者から交付された必要事項を記載した運送引受書を保管していなかったことも挙げた。

 第2に、万里の長城ツアーで取消料やツアーサービスに含まれる内容など、取引条件の説明を旅行者に充分に行っていなかったこと(旅行業法第12条の4第1項違反)、第3に、同ツアーの広告の際に、国土交通省令で定める事項を表示しなかったこと(旅行業法第12条の7違反)を挙げた。

 第4には、同ツアーで前日に雪の予報が出ていたのに雨具や簡易テントなどの準備もせず、旅程の変更や中止など、企画旅行の円滑な実施のための措置を講じなかったこと(旅行業法第12条の10違反)、第5には、9月4―13日のオーストリア・チロルへのツアーで、国内の旅程管理研修しか修了していない添乗員を海外に添乗させたこと(旅行業法第12条の11第1項違反)を挙げた。

 以上の違反事項による不利益処分は、第1の違反で36日間、第2の違反で6日間、第3の違反で18日間、第4の違反で6日間、第5の違反で6日日間の合計72日間の業務停止処分。高速ツアーバス事故後に施行された「累積60日間以上の業務停止で登録取消をできる」規程により、登録取消を通達した。

 同社は12月20日に廃業申請していたが、観光庁はあくまで登録取消にこだわりスピーディーな対応を取った。廃業であればいつでも旅行業の再登録が可能だが、登録取消処分であれば、同社と役員は5年間、登録ができなくなるという制度の違いが関係する。12月18日の聴聞会で同社は陳述書のなかで反論したが、観光庁は認めず、同社の廃業前の登録取消処分となった。累積規程による登録取消処分は初となる。

 今後観光庁では管理・監督の徹底や処分基準の厳格化などを検討するという。