No.327 日本旅館協会発足記念対談 - 連携を密に国内観光活性化

日本旅館協会発足記念対談
連携を密に国内観光活性化

 10月に一般社団法人日本旅館協会(佐藤義正会長、3381会員)が設立したことを受け、佐藤義正会長と井手憲文観光庁長官との紙面特別対談を実現。観光庁は9月に観光産業政策検討会を立ち上げ、産業の強化に本腰を入れ始めている。2つの宿泊主要団体が1つになったことのメリットや、日本旅館協会と観光庁との連携、国内観光活性化へ向けての取り組みと展望、宿泊業界の産業強化に向けてなど、今後の観光業界を語り合った。

 

【司会進行=旅行新聞新社社長・石井貞德、構成=伊集院悟】

「合理的な宿泊費」も重要 井手氏

地域が一体で長期滞在を 佐藤氏

 ――国際観光旅館連盟と日本観光旅館連盟が合併し、日本旅館協会が設立されました。おめでとうございます。旅館・ホテル業界の大きな2つの団体が1つになったメリットは?

佐藤:まず、宿泊業界自身としては、観光旅館の団体が1つに集約され会員数が大幅に増えたので、分母(基盤)が大きくなり、さまざまな事業に取り組みやすくなりました。事業の選択と集中の考え方をより一層進めやすくなりました。また、観光業界全体におけるメリットは、観光振興を目指す旅館の団体が1つにまとまったので、窓口が一本化し、団体がより強力になり、国内外の誘致活動に一層弾みがつくことだと思います。

井手:長年の課題であった両団体の合併が、関係者のたゆまぬ努力で実現したことは誠に喜ばしいことです。両団体は類似の活動をし、重複する会員も多かったので1つにまとまったことで、さらに宿泊業界・観光業界を盛り立てていってほしいです。1プラス1が2ではなく、3にも4にもなるよう、観光庁も連携して取り組んでいきたいです。

 

※ 詳細は本紙1484号または11月27日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

山形でフォーラム、風評払拭と訪日拡大(震災復興観光会議)

 日本観光振興協会が事務局を務める「震災復興観光推進国民会議IN仙台」(議長=西田厚聰日本観光振興協会会長)は12月7日、山形県山形市・山形テルサで「震災復興観光推進国民会議 山形フォーラム―風評被害を乗り越えて―」を開く。根強く残る風評被害を払拭するとともに、インバウンドを拡大し、観光で東北を元気にするのが狙い。

 同会議は昨年12月、被災地の復興を観光から目指していこうと、宮城県仙台市でシンポジウムを開催。その後、さまざまなイベントも催されているが多くの地区は風評被害のため、依然として観光産業が復興していない現状にある。加えて、日中国交正常化40周年で期待された中国人観光客も領土問題で逆風にあるなか、風評被害の払拭とアジア各国からのインバウンドを引き続き拡大していくことを目指す。

 フォーラムは、東北観光推進機構会長の高橋宏明氏が「東北の復興について」と題し、現状報告。基調講演は全国旅行業協会(ANTA)会長で衆議院議員の二階俊博氏が登壇する。パネルディスカッションは「観光による東北復興 第3ステージへ」をテーマに議論する。モデレーターはJTB旅行事業本部観光戦略部長の加藤誠氏が務め、パネリストに国土交通省東北運輸局長の長谷川伸一氏と東日本旅客鉄道常務の原口宰氏、ANAセールス社長の稲岡研二氏、日本航空(JAL)専務執行役員の上川裕秀氏、天童温泉ほほえみの宿滝の湯女将の山口隆子氏を迎える。

 また、フォーラムには観光庁の井手憲文長官や吉村美栄子山形県知事ら来賓も出席する。入場は無料。申込みは日本観光振興協会のHP(http://www.nihon-kankou.or.jp/home/index.html )から。

ピンクリボンのお宿セミナー

12月11日、汐美荘(新潟県瀬波温泉)で開催、参加者を受付中

12月7日に発行する冊子
12月7日に発行する冊子

 「ピンクリボンのお宿ネットワーク」(略称:リボン宿ネット、畠ひで子会長)は12月11日、新潟県村上市瀬波温泉の「夕映えの宿 汐美荘」で、会員と地元新潟県内の宿泊施設・観光関係者などを対象にした「ピンクリボンのお宿セミナー」を開催する。セミナーへは本紙読者の参加も可能で、11月30日締切で、申込みを受け付ける。

 リボン宿ネットは、乳ガンを患い、手術を受けて回復の道を歩みながらも、術後の痕を気にして旅をあきらめてしまうという女性の方たちに、もう一度、誰の目も気にせず旅に出かけてもらい、心ゆくまで旅館・ホテルでの入浴などを楽しんでもらおうと、全国の宿、団体・企業、医療関係者などが参画して今年7月10日に発足した。

 現在会員数は宿泊施設が61、団体が3、企業が12の計72会員。会の設立以降、患者やメディア、医療関係者などからの問い合わせが相次ぎ、関心の高さをうかがわせる。

 セミナーでは患者代表でCSRプロジェクト理事・技術士の桜井なおみさん、富山中央病院看護師長・ガン看護認定看護師の酒井裕美さんがそれぞれの立場で講演を行う。講師2人と旅館関係者を交えたパネルディスカッションも行い、具体的な対応や宿泊プラン作りなど参加者と意見を交わす。

 セミナーの開催時間は午後1時から4時30分。参加費は無料。なお、セミナーに合わせ全国の病院や会員の宿などで配布する「ピンクリボンのお宿」も12月7日に発行する=写真。

 セミナー参加は下記に問い合わせ、参加申込書に必要事項を記入して申し込む。

 問い合わせ=ピンクリボンのお宿ネットワーク事務局(旅行新聞新社内)

 電話:03(3834)2718。

安全輸送へ緊急決議、全国バス事業者大会開く (日本バス協会)

高橋幹会長
高橋幹会長

 日本バス協会(高橋幹会長)は11月14日、神奈川県横浜市内で臨時総会と第57回全国バス事業者大会を開き、安全輸送に向けて緊急決議を採択した。

 高橋会長は冒頭、「今年は、残念ながら高速ツアーバスでの大変な事故が起こってしまった。信頼が大きく損われてしまった今、業界をあげて信頼回復に向けて全力を尽くす」と話し、「貸切バスの安全性を客観的に評価する貸切バス事業者安全性評価認定制度では9月に149社が新しく認定された。11月1日現在、事業者が368社、車両は1万2821両になっている。現在2次募集をしており、これからもより多く認定されるようにまい進していく」と述べた。

 来賓祝辞では、国土交通省の武藤浩自動車局長が「交通基本法や予算案をみんなで協力して調整しているので、これからも応援していただきたい」と述べた。神奈川県の黒岩祐治知事は「バス業界が明るくなることが、経済が豊かになる大きなバロメーターだと思っている。こちらもさらに協力していきたい」と話し、横浜の林文子市長は「バスは頼りになる交通手段。横浜市民意識調査ではバス・地下鉄の利便性が第1位になるほど。今後もお力添えをいただきたい」とあいさつした。

 大会では、安全、安心かつ信頼される公共交通機関として、その使命をまっとうし健全な発展をはかるため、(1)交通基本法の制定および13年度バス関係政府予算の確保(2)バス関係税制(3)バス事業の安全・信頼を回復するための規制の見直し(4)バス利用促進のための輸送環境改善対策(5)高速道路料金施策――についての実現を求める大会決議を行った。

 続いて、安全輸送緊急決議が相次ぐ高速ツアーバス事故などを受け、より一層死亡事故ゼロなどの事故削減目標の達成に向けて、年末の繁忙期を前に(1)基本動作を再確認し、運輸安全マネジメントを推進(2)夜間長距離運行で、適切な運行計画の作成と運行支持など過労運転防止の徹底(3)ゆとり乗降、シートベルトの着用徹底(4)運転者の健康管理体制強化と薬物事案の発生防止策――に重点を置いた取り組みを行うことを誓った。

 2部では、横浜開港資料館調査研究員の平野正裕主任が「横浜開港153年のあゆみ」をテーマに、東海大学の山下泰裕副学長は「夢への挑戦」について講演を行った。

 これに先立って開かれた臨時総会では、熊本バスの岩田昭彦社長、中村靖東京都交通局長が新しい理事に選任された。定款変更については、第39条第2項中「議長」を「代表理事」に改める議案が可決された。

 その後、懇親パーティが開かれ、中国雑技団による公演も行われた。

9万3千人が来場、観光と物産の連携実現

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旅フェア2012、2年ぶりに開く

 日本観光振興協会は11月9―11日の3日間、東京都豊島区の池袋サンシャインシティをメイン会場に2年ぶり、17回目の「旅フェア2012」を開いた。メイン会場は約130の団体が出展し、3日間合計で9万3099人を集めたほか、主要駅や各アンテナショップのサテライト会場には延べ5702人が訪れた。一般公開前の国内旅行商談会は、旅行会社や報道関係者約60人が参加し、16の自治体・団体と商談を行った。

日観振の西田会長
日観振の西田会長

 9日の業界日に開いた開会式で西田厚聰会長は「昨年は東日本大震災の直後でやむなく中止にしたが、今回は“旅のアミューズメントパークが出現”をテーマに、2年ぶりに開催ができた」とし、「メイン会場のほか、JR東京駅や16のアンテナショップをサテライト会場に設け、従来難しかった観光と物産の連携を実現した。21の商工会にも参加いただいたが、観光振興に取り組まれる方の幅が広くなってきて嬉しい。旅フェアが国内観光振興の起爆剤になることを期待している」と語った。

 来賓の観光庁の志村格次長は「観光庁は外国人の訪日旅行促進に取り組んでいるが、観光消費の9割は日本人の国内宿泊、日帰り旅行。旅フェアもこの観点でとても重要だ」と述べた。また、日本経済団体連合会の大塚陸毅副会長と東北観光推進機構の高橋宏明会長が登壇し、それぞれ旅フェアへの期待を語った。テープカットには観光業界団体や大手旅行会社のトップらが並び、各地域のゆるキャラも登場して華々しく幕を開けた。

 今回は各地に行かなければできない“体験”を重視し、テーマエリアは6つ用意した。「東北観光エリア」は観光復興に取り組む各地域の魅力を発信。いわて・三陸ブースの海女の衣装でサッパ船と撮影できるコーナーや、福島県ブースの絵ろうそくの絵付けなど体験メニューも充実させた。雪やウィンタースポーツをモチーフにした「ウィンターリゾートエリア」には、子供たちが遊べるようにスノーパークを設置して雪を降らせる演出も行った。また、「すごいぞ!日本エリア」は世界に誇る日本の巧の技を紹介。中国ブロック広域観光振興事業推進協議会ブースは、石見神楽の実演や島根県松江市・八重垣神社の小銭を使った良円占いのレプリカを用意し、来場者を楽しませた。

ツアー登山遭難事故 ― 根元原因の検証が必要

 11月3日に、万里の長城登山ツアー参加者3人が死亡するという遭難事故が発生した。「万里の長城グレート・ウォール100キロトレッキング9日間」という壮大なツアーを主催したのは、アミューズトラベルという登山を専門とする旅行会社。まだ記憶に新しい2009年7月に、北海道トムラウシ山での遭難事故も同社が企画した。

 今回の事故で、ショックだったのは、登山ツアーを専門とする旅行会社が主催した募集型企画旅行であったにも関わらず、ツアー造成に際して、下見がなされていなかったという点だ。 観光庁は遭難事故を受けて、11月9日、13日と同社に立ち入り検査を行い、今後も事実関係を把握していく予定だが、事故の根本原因が何かをしっかりと検証しなければ、今後も似たような事故は続くだろう。

 今年4月に発生した高速ツアーバスの事故もそうだが、安全性に目を瞑らなければ存在し得ない状況にあるのだとしたら、旅行者にとっても、旅行業界にとっても、これほど不幸な環境はない。

 10年近く前、幾つかの専門旅行会社を取材した。FIT(Foreign Independent Travel)から、SIT(Special Interest Tour)に注目が集まっている時期だった。登山ツアーやモンゴルなど特定の地域を専門とする旅行会社、さらにはロシア美女ヌード撮影ツアーなどを企画する、かなり専門性に特化した旅行会社をいくつか取材した。そこで感じたのは、旅行者が旅行会社を信頼しているからこそ成り立っている世界だということだった。大手旅行会社のように大々的な広告展開はできないが、愛好家が集う場として、成立していたような気がした。旅行会社の原点は、このようなものではないかと思ったことを覚えている。

 その後、ネット社会になり、販売に関してはネットエージェントが強大化している。旅行会社の存在意義は、深い知識や経験に裏打ちされた企画力や、修学旅行などの安全性と管理能力、登山ツアーなどの専門性や信頼性に限られるのではないかと考えていた。その旅行会社の最後の砦であり、“魅せ場”ですら、ままならない状況にあるのかとショックを受けた。

 今回の遭難事故が、旅行会社が自らの存在理由と意義を考えるきっかけになってほしいと願う。

(編集長・増田 剛)

“多頻度昼行路線守れ”、新制度の活用法など紹介(高速バス・マネジメント・フォーラム2012)

成定竜一代表
成定竜一代表

変化対応で選ばれるバスに

 高速バスマーケティング研究所(成定竜一代表)は10月24日、東京都内で「高速バス・マネジメント・フォーラム2012」を開き、国土交通省が4月の高速ツアーバス事故を受け移行期間を短縮した、高速乗合バスと高速ツアーバスを一本化する「新高速乗合バス」制度の活用法などを紹介した。そのなかで成定氏は「地方、多頻度昼行路線をどう守るか」とし、変化に対応して選ばれるバスになる重要性を説いた。

【飯塚 小牧】

 

 

フォーラムの全体風景
フォーラムの全体風景

 同フォーラムは、高速バスマーケティング研究所が既存の高速乗合バスを対象に昨年から開催しているが、今回は全国の会社から153人が参加。昨年の81人と比較すると約2倍の参加となり、関心の高さが窺われた。

 成定代表は冒頭のあいさつで、4月の高速ツアーバスの事故に触れ、自身が高速ツアーバス連絡協議会の顧問を務めていることから「今でもあの事故がなぜ防げなかったのか、考えてしまう」と心境を語る一方で、「事故から得たものを再発防止や業界の成長に活用しきらなければならない」と強い決意も表明した。

国交省・小熊氏
国交省・小熊氏

 フォーラムは導入として、国土交通省自動車局旅客課バス産業活性化対策室長の小熊弘明氏が、事故後の安全対策や新制度について語った。小熊氏は事故後の国交省の対応として、旅行会社と貸切バス事業者間の書面取引の義務化や、消費者からの情報を受ける「高速ツアーバスの安全通報窓口」の設置などを報告。今後は、今年3月まで開いていた「バス事業のあり方検討会」の再設置や各種安全対策の検討会の設置などを講じることを紹介した。

 新制度については、事故以前に設置した「バス事業のあり方検討会」で協議した結果、両者を一本化する「新高速乗合バス」制度を導入するに至った経緯を語り、事故が起きたことで、移行期限を来年7月末と大幅に前倒ししたことを説明した。会場に集まった既存の高速乗合バス事業者にとっては、運行計画や運賃・料金の事前届出期間が短縮されるなど優位な点も示しながら、「ビジネスチャンスを広げる機会だと捉えてほしい」と理解を求めた。現在、停留所を持たない高速ツアーバスにも停留所が義務づけられることに関しては「本来は事業者が独自で取得するものだが、社会的問題として行政が関与して環境整備をしていきたい」と述べた。

 本題のマネージメントについては、成定氏が持論を展開。成定氏によると高速バスの成長フェーズは、高速ツアーバスの登場などで現在、第3フェーズの「バスを選んで乗る時代」にあり、大都市間路線では既に定着し、都市と地方を結ぶ夜行路線にも着実に進展しているという。その波は高速乗合バスの“本丸”である地方向けの多頻度昼行路線にも押し寄せるとし、「従来のまま生きた化石になってしまうのか、その変化に大きく対応していくのか問われている。勇気を持って変革を」と語気を強めた。

 今後の変化としては、「ポスト4・29」を提示。「事故の背景に、旅行会社が搾取しているため安全にお金が回らないという声があるが、それは間違い。コスト削減圧力や販売側に力があるのはどの業界でも同じだ。だからといって他の業界は生産側が小売店に不良品や腐ったものを納品することはない」と言及。そのうえで、バス業界の特殊性として規制産業で同基準だったものが、規制緩和で「松竹梅」が出てきたことをあげ、「目に見える品質は高速ツアーバスを中心にウェブ活用で差異化に成功し、がんばっている会社が利益をあげるサイクルができたのに対し、安全という目に見えない品質は誰も手を付けてこなかった。最低限の法令遵守以上にがんばった会社が報われないのが問題」と語った。しかし今後は「安全が選ばれる基準になる。当たり前に行っていることでよいので、画像と数字と固有名詞で具体的に、なぜそうなのかを利用者に明確にすることが必要だ」と、ウェブを活用した安全の可視化を訴えた。

 また、新制度移行にともない「高速バス・ビッグバン」が訪れると主張。現在の高速ツアーバスとの競争だけではなく、既存業者間の競争も激化するとし、「共同運行の関係はいい意味でお互いにプレッシャーを掛けあう関係になっていかなければならない。既存の関係性の再構築が求められている」と述べた。

 このほかフォーラムには全国に先駆けて多頻度昼行路線で高速ツアーバスと激しい競争を経験した、宮崎交通のバス事業本部乗合部乗合業務課・田代景三課長が事例紹介として登壇。ツアーバスとの底のない価格競争の経緯などを紹介した。一方で、「ツアーバスを追いかけてばかりでお客様を見ていなかった。今後は、お客様を見て、より魅力ある商品を展開したい」と本音を語り、会場の同業者から大きな拍手を集めた。

 また、京王電鉄バスによる基幹システムの紹介や、来年から高速乗合バスサービスを展開するリクルートライフスタイルの「じゃらんnet」など各事業者からの事業紹介も行われた。

体験レポート、栃木をEVで観光(日本旅行)

今回利用したプラグインハイブリッドカー(PHV)
今回利用したプラグインハイブリッドカー(PHV)

充電の不安除く努力を

 日本旅行は、栃木県の委託で栃木県レイル&EV(電気自動車)観光モニターツアー「日光・鬼怒川エリア、那須エリアをドライブする観光モニターツアー1泊2日」を企画した。現地までの往復の鉄道とレンタカー、宿泊がセットになった観光モニターツアーで、このうち後半の11月に実施された那須エリアのモニターツアーに参加し、実際に体験した感想をレポートする。
【古沢 克昌】

 同モニターツアーは、日本有数の自然環境を誇る日光・鬼怒川エリア、那須エリアを環境に優しい鉄道(レイル)とEV(電気自動車)・PHV(プラグインハイブリッド自動車)レンタカーでドライブすることで、EV・PHVの走行状況や充電器の利用などについて意見や要望を収集・分析し、今後のEV・PHVの普及につなげることを目的に実施された。今回は首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)在住者が対象で、大人2人1組の申込みが条件。

 利用するレンタカーは、電気自動車(EV)の三菱i―MiEV、日産リーフ、ホンダフィットEV、プラグインハイブリッドカー(PHV)のトヨタプリウスPHVの4車種が用意され、今回はトヨタプリウスPHVを利用してのモニターツアーとなった。

 東京駅から那須塩原駅まで新幹線で移動し、駅前のレンタカー店でPHVを借りた。電気自動車は初めて運転するので充電器の利用方法や運転席のモニターの見方など詳細な説明を受け、出発した。現地では基本的なモデルコースをあらかじめ提示されていたが、宿泊先にチェックインするまでは自由時間なので、優待施設一覧などを参考にしながら自分なりに周遊コースを考えた。

 まず始めに、建築家・隈研吾氏がデザインを手がけたという那須芦野にある「石の美術館 STONE PLAZA」へ向かった。PHVのスタート時は、充電満タンで電気のみで走り出すが、走行可能距離は約20キロ程度なので最初の目的地に到着した時点ですでに電気残量はゼロとなっていた。電気がなくなると自動的にガソリン走行に切り替わる。

 石の美術館は昭和初期に建てられた石蔵を再生した、総石づくりの美術館。石と光のギャラリーなど幻想的な雰囲気がとても印象に残った施設だった。夜になるとライトアップされるので昼間とは違った顔も楽しめる。

 2軒目は紅葉のシーズンなので以前から一度訪ねてみたかったマウントジーンズ那須の「秋の紅葉ゴンドラ」に乗ってみることに。山頂付近はすでに紅葉が終わっていたが、山麓から中腹にかけての紅葉が見頃でとても素晴らしかった。8人乗りのゴンドラは所要時間が約10分間で乗り応えも十分。山頂駅には大展望台のほか、ドッグランもありゴンドラは全犬種乗車可という。

 昼食を済ませた後は午後から「お菓子の城 那須ハートランド」に移動して人気商品「御用邸の月」を購入。隣接の「ザ・チーズガーデン五峰館」では敷地内のカフェ&ガーデン「しらさぎ邸」でチーズケーキのセットをいただく。どちらも観光バスやマイカー客でにぎわっていて、那須町の風評被害もだいぶ払拭されたのではないかと実感した。

 今回の宿泊先は「ホテルエピナール那須」。事前に入手していた充電設備ポイントマップには、那須地域の充電器設置場所が記されているが、同館の備考欄には「お問い合せ下さい」と記載されていたため、少し早めにチェックインして充電設備の有無を確認。どうやらつい先日設置されたばかりでマップの印刷時には間に合わなかったようだ。駐車場の一角には確かに充電設備はあった。車にプラグを差し込んで約1時間半でフル充電状態に。しかしながら大型宿泊施設にも関わらず、充電器がまだ1台分しかないため、利用者が重なった場合を考えるとまだあまり実用的ではないように思えた。

「那須どうぶつ王国」
「那須どうぶつ王国」

 翌日はチェックアウト後にカピバラが見たくて「那須どうぶつ王国」へ向かった。今年7月にオープンした「カピバラの森」は、カピバラと直接触れ合うことができるコーナーで子供だけでなく大人も楽しめるテーマパーク。おやつのエサやり体験など、子供以上に大人が楽しんでいた。昼食はユニークなオリジナルメニューの「カピバランチ」や「アルパカレー」がおすすめだ。午後は「那須ガーデンアウトレット」に立ち寄り、おみやげのショッピングや外食を楽しんだ。

 2日間の走行距離は合計136・7キロ。レンタカー返却時に駅前のガソリンスタンドで満タン証明を出してもらうため、給油に立ち寄るとガソリンは1・28リットルしか消費していなかったので給油代金は200円でお釣りがきた。このまま電気自動車が普及するとガソリンスタンドも商売が成り立たなくなるのではと心配になったが、レンタカー店の店長は「そのうちガソリンスタンドでも電気を売る時代が来ると思いますよ」と語っていた。

 PHVを利用しての今回の感想。(1)運転していて一番気になったのが電気残量。エアコンを使用していると思っていた以上に電気消費量が大きかった(2)都市部と違って周囲に何もない観光施設の場合、そこに充電設備がないととても不安になる(3)宿泊施設の場合、泊っている間に充電しておけばいいのだが、EV・PHVの利用客が多くなった場合もスムーズに対応できるのか疑問。利用者が少ない深夜時間帯に充電できるスキームを早急に考えてほしい――。

 化石燃料の価格高騰やいずれ枯渇することを考えると、環境保護の観点からもEV・PHV利用の方向性は間違っていないはずなので、まずは利用者が増えるための工夫、心配を取り除く努力が必要だと強く感じた今回のモニターツアーだった。

日本一のおんせん県、大分が温泉資源前面に

西田 陽一会長
西田 陽一会長

おんせん県観光誘致協議会 西田会長に聞く

 源泉数、湧出量、泉質数ともに日本一を誇る大分県はこのほど、豊富な温泉資源を前面に打ち出した「日本一のおんせん県」として名乗りを上げた。8月下旬から9月上旬には広瀬勝貞大分県知事をはじめ、観光関係者が大阪で大規模なプロモーションや旅行会社とのキャンペーンを展開した。その中心的役割を担う「おんせん県観光誘致協議会」の西田陽一会長(ホテル白菊社長)に、今後の取り組みなどを聞いた。

【平賀 葉子】

≪官民一体で誘客促進、温浴効果高める「機能浴」PR≫

 「おんせん県」のきっかけは、昨年の東日本大震災や九州新幹線全線開業など大分県観光にとっての逆風が吹いたこと。県の観光予算はこれまで全国最下位という状況だった。民間がいくら個々の力で頑張っても、それだけでは観光誘致はできない。官民一体となった大きな観光戦略が必要だ。そこで昨年11月に別府と湯布院の旅館組合が共同で広瀬知事への提言を行い、今回の観光戦略につながった。

 まず今年7月に民間主導で、県内110の宿泊施設や観光施設、タクシーやバス会社、観光協会などで組織する「おんせん県観光誘致協議会」を設立。ぼやけていた大分県観光の統一イメージを「おんせん県」と定めたことで、日本一の温泉の魅力を「錦の御旗」に掲げ、官民一体で全国にアピールする土台ができた。

 「おんせん県」はバーチャルな観光PRではなく、我われの顔が見えるリアルな活動が中心だ。宿泊施設では「おんせん県」のロゴが入ったそろいのポロシャツでお客様をお迎えした。都市圏の旅行会社へのセールス活動などでは、成果を数値化して検証し、旅行会社や旅行者のニーズをつかむ。

 今後は8月に県が策定した「おんせん県ツーリズム戦略」に基づき、「日本一のおんせん県おおいた(温泉マーク)味力(みりょく)も満載」をキーワードに、今年から3年計画でとくに関西圏へのPRを強化する。観光入込客数目標は10年度比100万人増の1900万人、宿泊客数は同16万人増の520万人と定め、25階建ての大分駅ビルや県立美術館も完成する2015年には大分にデスティネーションキャンペーンを誘致したいという目標もある。

 また、温泉の魅力を高める入浴法として「機能浴」をPRしていく。「機能浴」は世界にある12種類の泉質のうち11種類を持つ「おんせん県」ならではの入浴法であり、異なる泉質の温泉を2湯巡ることで温浴効果を高める。たとえば美肌コースなら、まず別府の明礬(みょうばん)温泉の強酸性の湯で皮脂や汚れを取り除き、次に保湿効果の高い鉄輪(かんなわ)温泉の湯に浸かれば、シャンプーとリンスをした後のような美肌効果が得られる。

 ほかにも女性には超ウルトラ美肌コース、企業向けにはストレスフリー、メタボが気になる男性向けにはダイエットなど、効果別のコースを設定してPRする。

 大分の素晴らしいところは5分、10分の距離に異なる泉質の温泉が湧いていること。そして別府や由布院以外にも、天ヶ瀬や日田、九重九湯、長湯温泉などほぼ全市町村に温泉があり、さまざまな泉質の温泉を巡る「おんせん県」でしか体験できない旅の楽しみ方を提案していく。注意事項など入浴ルールなどをまとめた「温泉攻略法」も制作中だ。

産官学の新しい展開へ、全国大会に井手長官が講演(日本国際観光学会)

松園俊志会長
松園俊志会長

 日本国際観光学会(会長=松園俊志東洋大学国際地域学部国際観光学科教授)は10月27日、東海大学代々木キャンパス(東京都渋谷区)で第16回全国大会を開いた。「産・官・学の新しい展開をめざして」をテーマに、基調講演には井手憲文観光庁長官が登壇、さらに「LCC時代の航空経営」について、ANA総合研究所代表取締役副社長の小堤雅史氏が講演した。

 松園会長は開会のあいさつで「観光業界はグローバル化のなかで、今はまさにパラダイムシフトの時期。観光庁長官の講演をはじめ、各研究発表者やコメンテーターとの真摯なる討議を期待している」と語った。

 

井手憲文観光庁長官
井手憲文観光庁長官

 井手長官は「日本は観光分野においては将来性のある新興国」とする一方で、隣国・韓国が訪韓旅行者数1千万人達成が確実な勢いに対し、「残念ながら日本が遅れている要因の1つに、予算の制約がある」と述べた。アジア各国の観光予算は、日本が111億円に対して、韓国は704億円、台湾は290億円、タイは199億円など。今後の展開については「ASEAN(アセアン)地域を成長させたい」と語った。

 ANA総研の小堤氏はLCC「ピーチアビエーション」の今年3―8月の実績をもとに、20―30歳代、高齢者、女性の利用率が高く、目的としては知人・親戚訪問需要が多い。一方、ビジネス需要は1割以下と紹介した。

 研究発表では、東洋大学国際地域学部国際観光学科准教授・島川崇氏の「自然災害の惨禍を集客施設として保存する決断をした立役者に関する研究」や、日本旅行広報室長・矢嶋敏朗氏の「旅行会社と観光系学部・学科の関係についての考察~旅行会社への就職の願いを叶えるには~」など36の発表が行われた。