国内展示拡大へ、9月20―23日開催(JATA旅博2012)

 日本旅行業協会(JATA、金井耿会長)はこのほど、主催するアジア最大級の旅行イベント「JATA国際観光フォーラム・旅博2012」を9月20―23日に東京ビッグサイトで開くことを発表した。

 「新たな旅文化の創造へ」を基本テーマに、情報流通の変革、ビジネスモデルの変化、世界的な経済の低迷継続などの環境のなかで、旅博から新しい旅文化の創造メッセージを発信し、市場の創出、拡大、旅のスタイルの多様化を推進する。

 今年は国内展示をさらに充実させ、海外バイヤーを招聘してインバウンド分野へも事業拡大。海外・訪日・国内旅行の三位一体の総合的なイベントに発展させる。海外バイヤーはインバウンド主要15市場から招聘し、名称も「JATA大商談会」から「JATA国際商談会」へ改名。日本をベースにしたアウトバウンド・インバウンドの商談のみならず、第三国間の商談もできるユニークな機会を提供し、東アジア最大の大商談会を目指す。 

中国へハイレベルミッション、中部・北陸運輸局が派遣

 国土交通省北陸信越運輸局と中部運輸局、中部(東海・北陸・信州)広域観光推進協議会は5月6―10日まで、中国の個人・団体観光旅行や教育旅行、インセンティブツアーなどの誘致促進のため、富山県の石井隆一知事を団長とするハイレベルミッションを中国の北京市と広州市へ派遣することを発表した。

 北陸信越運輸局と中部運輸局、中部広域観光推進協議会では、日中国交正常化40周年の節目で辰年の12年を、中部北陸9県の観光エリアを龍に見立てて「昇龍道」と命名し、魅力的な観光資源が凝縮している中部北陸圏を強力にプロモーションしていく方針を打ち出している。今回、富山県知事を代表とし、北陸信越運輸局と中部運輸局、中部北陸9県地域の観光関係者からなるハイレベルミッションを北京市と広州市に派遣。中部北陸の魅力・特性を幅広くPRすることにより、需要の回復をはかり、中部北陸地域への来訪促進の働き掛けを行う。現地では、中国国家旅游局、広東省政府、航空会社などを訪問し、旅行会社などを対象とした観光説明会、商談会などを開催する予定。 

旅館女将ら15人が受賞、12年観光功労者大臣表彰

 国土交通省は4月16日、2012年観光関係功労者大臣表彰の受賞者を発表し、23日に国土交通省内で表彰式が行われた。受賞は、旅館関係が6人、ホテル関係が8人、観光レストラン関係が1人の計15人。

 受賞者は次の通り(敬称略)。

【旅館業・経営者】
指宿ロイヤルホテル会長・有村佳子(鹿児島県指宿市)

【旅館業・女将】
大観女将・佐藤總子(岩手県盛岡市)▽丸栄ホテル副社長女将・渡辺利子(山梨県南都留郡富士河口湖町)▽柊家大女将・西村時枝(京都府京都市左京区)▽国際観光旅館鍋屋本館女将・富田千鶴子(熊本県人吉市)

【旅館業・従事者】
霧島ホテル支配人・福冨龍一(鹿児島県霧島市)

【ホテル業・経営者】
日本ホテル協会会長兼森ビルホスピタリティコーポレーション社長・大橋寛治(京都府京都市左京区)

【ホテル従事者】
ホテルグランドパレス料飲部シェフ兼総料理長・鈴木通照(東京都府中市)▽富士屋ホテル湯本富士屋ホテル宿泊課・長尾廣幸(神奈川県小田原市)▽帝国ホテル調理部宴会調理課専門職課長・長沼和雄(千葉県習志野市)▽京王プラザホテル料飲部専門副部長・戸邉孝明(埼玉県熊谷市)▽名古屋観光ホテル総料理長・森繁夫(愛知県名古屋市港区)▽阪急阪神ホテルズ大阪新阪急ホテル調理部専任部長・塚本三十志(滋賀県湖南市)▽ロイヤルホテル常務兼リーガロイヤルホテル大阪総支配人兼リーガロイヤルホテル大阪オペレーション統括部・品質管理部担当兼オペレーション統括部長・田辺能弘(大阪府柏原市)

【観光レストラン業・経営者】
国際観光日本レストラン協会副会長兼瓢亭社長・髙橋英一(京都府京都市左京区)

“観光に成長性あり”JNTOとの役割明確に

井手憲文観光庁長官
井手憲文観光庁長官

 4月1日付で新しく観光庁長官に就任した井手憲文長官は4月20日に、就任後初となる会見を開き、(1)インバウンドなどの需要の創造と強化(2)観光産業全体の強化(3)観光庁の組織力アップなど就任の抱負を語り、「観光は成長性のある分野」と力を込めた。

 井手長官は就任の抱負として「中長期的に冷え込む日本経済のなかで、観光は成長性のある分野。坂の上の雲を目指して力を尽くしたい」と語った。

 インバウンドでは、「震災からの回復に万能薬はなく、これまで行ってきた海外メディアの招聘や海外の旅行会社への情報発信など、さまざまな手段を組み合わせて着実に行っていく」と語り、「国別だけではなく需要のセグメントに分け、きめ細かい対応が必要」と話した。また、観光客数の数値だけでなく、観光産業全体の強化について強調した。

 観光庁の組織運営については、「観光は幅広い分野なので、観光庁職員には幅広く深いノウハウと熟練のスキルが必要となる。

 観光プロモーションのイベントを実施して終わりなど、表面的なことに満足せず、職務をまっとうしたい」と力を込めた。

 また、日本政府観光局(JNTO)との役割分担について触れ、「企画をする観光庁と、海外事務所を通じての発信などの実務を行うJNTOとの役割分担をもっと明確にし、連携を深めたい」と話した。

 溝畑宏前観光庁長官については、「リーマンショックよりも落ち込みの激しい一番難しい時期に、大変な努力をしていただいた」と評価。前長官へ海事局長時代に、風評被害への対策として中国・韓国へのトップセールスや放射線量の数値発表を助言したことを明かし、「海事局でも、欧米の定期船が東京湾に入れないなどの状態になり、放射線量の数値を計測し発表するなど、対応に追われた。溝畑前長官とは、震災後の国土交通省の会議で隣に座り、励まし合いながらともにがんばった」と語った。

<東北への数次ビザ、夏までには解禁へ>

 3月末に開かれた第3回観光立国推進本部で、外務省が、沖縄を訪問する中国人観光客への数次ビザを、被災地3県へ拡大するよう関係省庁と協議を始めていると明かした件について、「外務省と話しており、夏くらいまでには、東北への数次ビザが解禁できるのではないか」と見通しを語った。

No.309 熱川プリンスホテル - スタッフ全員で「整理整頓」

熱川プリンスホテル
スタッフ全員で「整理整頓」

  品質の高いおもてなしで、お客様の強い支持を得て集客している旅館は、従業員の職場環境を整え、お客様と真摯に向かい合える仕組みができているのが特徴だ。「いい旅館にしよう!」プロジェクトのシリーズ第3弾は、静岡県・熱川温泉の熱川プリンスホテルの嶋田愼一朗社長と、産業技術総合研究所の工学博士・内藤耕氏が客室を潰してパントリーに改装することによって、スタッフから「働きやすい」という声が上がったほか、バックヤードを「徹底的に整理整頓する」ことで生産性が大きく向上した事例などについて話し合った。

【増田 剛】

 

≪「いい旅館にしよう!」プロジェクト≫ シリーズ(3) 
熱川プリンスホテル

【対談者】

嶋田 慎一郎(しまだ・しんいちろう)氏
熱川プリンスホテル代表取締役
×
内藤 耕(ないとう・こう)氏
産業技総合研究所サービス工学研究センター副研究センター長(工学博士)

■嶋田:もともとは農家だったのですが、伊豆急行が開通する際に、「これからは観光の時代だ」と、1959年にみかん畑を潰して旅館を建てたのです。1971年に先代の父が「ニュー熱川プリンスホテル」として新たに会社を立ち上げました。父の代は、伊豆大島近海地震や当館が1983年に火災するなど苦労が絶えませんでしたが、取引業者への支払いは必ず期日に支払ってきましたし、景気の良いときにも大型の設備投資もせずに安定した経営をしていました。そして、5年前に私が経営を引き継ぎました。

 現在の館内は、増築を繰り返し、複雑な構造になっています。2棟に分かれていて、客室は52室です。お客様を案内する際も、導線が長いなどのデメリットもあります。食事の提供では、調理部との導線にも課題がありました。バックヤードがなかったので、お客様と同じエレベーターで料理を運ばなければならず、評価が下がるようなこともありました。しかし、この数年はお客様アンケートの声などを取り入れながら、改善点を見出し、少しずつリニューアルを重ねてきています。…

 

※ 詳細は本紙1460号または5月8日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

旅行会社の可能性 ― 新たな団体旅行復活を(5/1付)

 強すぎる横綱は憎まれる。昭和の大横綱・北の湖は恵まれた強靭な肉体と圧倒的なパワー、巨体に似合わぬ敏捷性を備えていた。さらには過去の対戦をすべて記憶する頭脳を持ち合わせて、同時代のライバルを圧倒した。そのあまりの強さに平幕力士なんぞに敗れた瞬間には、館内の座布団が嵐のように土俵に舞い上がった。大横綱が負けるということは、これほど一大事なのだと、小学生だった私はひどく感動したものだった。その後現れた千代の富士も強かったが、小錦など巨漢力士との対決では、綱渡りのような相撲もあり、憎まれるほどの絶対的な強さは感じなかった。以後、北の湖と同じくらい憎々しく映るほど強かったのは、平成の大横綱・朝青龍くらいだろう。

 さて、観光業界では、昭和の終わりから平成の初めにかけて、旅行会社の最強っぷりは、まさに憎まれるほどの大横綱だった。航空会社も、宿泊施設も、バス会社も、ドライブインも旅行会社のあまりの強さに、「打つ手なし」という様相だった。しかし、その後団体から個人化へ、さらにはIT化の進展で勢力地図は書き換えられようとしている。旅行会社はこのまま、宿泊予約サイトに取って変わられてしまうのだろうか。

 この10年は、専門特化が叫ばれ、総合への風当たりが厳しかった。だが、大手旅行会社となれば、団体も個人も、国内も海外もすべての「旅」に関する消費者ニーズに対応したいという自身のプライドとの戦いもあった。多方面展開のなかで、団体旅行は年々減少する一方だし、個人客は宿泊予約サイトに取られてしまい、今や「ジリ貧やむなし」という諦観も見える。

 今号の3面のコラムで、旅行作家の野口冬人氏がホテル磯部ガーデンの団体旅行を迎え入れる素晴らしい姿勢について言及している。大型の温泉旅館から企業に「温泉で会議をすることが元気の秘訣である」という発信をすべきであるとの指摘であり、ぜひ参考にしてほしい。

 旅行会社は新たな需要を生み出しているだろうか。団体旅行は本当にこれから尻すぼみなのだろうか。「もう一度、新たな団体旅行を復活させてやる!」という考えやパワーがほしいところだ。個人化対策よりも、都会で急成長するIT企業の大型団体研修を日本古来の温泉地に誘うことが旅行会社の使命ではないか。

(編集長・増田 剛) 

被災者224人を招待、水陸両用バスに体験試乗

スカイダックに体験試乗
スカイダックに体験試乗

 日の丸自動車興業は3月19日、東日本大震災の被災者支援特別ツアーとして「SKY Duck & SKY BUSで江東区散策」を実施した。江東区の東雲住宅に避難している224人をツアーに招待し、水陸両用バスの「スカイダック」の体験試乗のほか、2階建てオープンバス「スカイバス」で江東区内の観光名所などを巡った。

 5台のスカイバスに乗った一行は江東区役所を出発し、国内最大の神輿の展示などがある富岡八幡宮で地元のボランティアガイドと共に参拝した。また、屋根がなく、高い位置にある座席からは迫力のある景観を楽しめるため、見晴らしの良い勝鬨橋や台場からのトンネル走行では参加者から歓声が上がった。バスガイドによるとトンネル内はジェットコースターに乗っているような感覚という。2月に開通したばかりの東京ゲートブリッジを経由して若洲海浜公園で「スカイダック」の試乗会が行われた。

 「スカイダック」は日野自動車のトラックをアメリカで改造したものを運用する。現在2台だが、将来的には約20台を予定している。会見で富田浩安社長は「ボストンではレッドソックスが優勝するとこれでパレードを行う」と国内の運行への意気込みを語ると共に「被災者に少しでも元気になってもらいたいと思った。試乗会で気分がよくなってくれれば」とあいさつした。

 水陸両用バスの発着場は秋に整備が予定され、「早ければ11月上旬に運行を始めたい」と富田哲史常務は話す。運行開始後はトータル90分の乗車時間で、3千円から4千円の料金を想定する。

 夫婦で参加していた稲元さんは「視点が高いので見晴らしも良く楽しめた。スカイダックには今度もっと長く乗ってみたい」と感想を述べた。

全国との絆、今夏開花、福島ひまわり里親プロジェクト

匠のこころ吉川屋 企画室長 畠 正樹さん
匠のこころ吉川屋
 企画室長 畠 正樹さん

 福島県と全国各地との絆づくりや、原発事故被害の風化対策に取り組む「福島ひまわり里親プロジェクト」(半田真仁代表)が今年2年目を迎えた。全国から福島県へ届けられたヒマワリの種が県下各地に植えられ、今夏大輪の花を咲かせる。活動メンバーの一員で、各温泉地との橋渡しに奔走する匠のこころ吉川屋(福島県・穴原温泉)の畠正樹企画室長に事業の概要を聞いた。

【鈴木 克範】

≪復興の象徴として≫

 昨年、福島復興のシンボルとして、土壌から放射性物質を吸収するヒマワリを植える動きが広がった。効果については後日、農林水産省が実証実験で「除染効果は実用的でない」と結論づけたが、ヒマワリには見る人を元気にさせる力がある。県内の多くの場所でたくさんヒマワリを植え、被災した人たちに元気と勇気を与える活動はできないか。そんな思いから「福島ひまわり里親プロジェクト」が発足した。

≪事業の目的は4つ≫

 里親プロジェクトは、ヒマワリの育成を通じて、福島と全国各地が結ばれる仕組みだ。プロジェクト事務局からヒマワリの種を購入し、育ててくれる里親を全国から募る。そこで収穫した種を今度は福島県下に植えていく。

 事業には、県内の雇用対策、風化対策、絆づくり、観光振興という4つの目的がある。販売する種の袋詰めを県内の障がい者の作業所に依頼し、雇用を生み出した。里親としての関わりは「福島を忘れない」という風化対策につながる。さらに交流サイクルを築き、続けることで絆を深めていく。観光面では、県外から直接ヒマワリの種を届けてもらうことや、咲く姿を見に来てもらうことが期待できる。

 昨年は福島以外の全国46都道府県、約1万6千カ所に里親が誕生。収穫された種は手紙やメッセージとともに続々と届けられた。早速、福島交通飯坂電車で直筆メッセージを展示した「ひまわり復興列車」が運行(5月連休まで)されるなど、新しい取り組みの輪も生まれた。3月からは新しい里親の募集も始まった。

≪里親との交流も≫

 全国の里親さんとの交流も必要。福島県旅館ホテル生活衛生同業組合青年部が中心となり、ヒマワリをキーワードにした研修会も行われた。応援メッセージの展示やヒマワリの迷路づくり、見学バスツアーなど、アイデアは尽きない。このほど誕生したマスコットキャラクター「ひまぽぽ」君の商品展開も考えたい。

 届いたヒマワリの種は福島復興への思いが詰つまった「希望の種」。大きな財産を役立てられるよう、仲間と取り組みたい。

 プロジェクトの近況は公式ホームページ(http://www.sunflower-fukushima.com/ )から。

加賀の温泉文化の魅力

「加賀片山津温泉 街湯」の外観
「加賀片山津温泉 街湯」の外観

≪新たな総湯でにぎわい創出 加賀片山津温泉 街湯≫ 4月21日オープン

 石川県と石川県観光連盟は3月22―23日の2日間、能登コースと加賀コースに分かれて視察事業を行った。本紙は今回、加賀コースに参加し、4月21日にオープンする片山津温泉の新たな総湯「加賀片山津温泉 街湯」や、小松市のご当地グルメの「小松うどん」づくり体験、能美市の「九谷焼資料館・陶芸館」の見学と絵付けなどを体験した。22日の夜は、山代温泉の名旅館「たちばな四季亭」に宿泊し、加賀温泉郷の歴史ある温泉とおもてなしを体験した。

【増田 剛】

 「小松うどん」

シンプルだがつるつるした食感が美味しい
シンプルだがつるつるした食感が
美味しい

 今回の視察では、まず小松市のご当地グルメである「小松うどん」を実際に作った。小松うどんは「1689(元禄2)年、松尾芭蕉が奥の細道の道中、小松に立ち寄ったお礼に小松の俳人塵生が乾うどん2箱を山中にいた芭蕉に届け、賞賛された」という300年を超える歴史を持つ。

 2010年には小松市が市制70周年を機に、小松うどんで地域ブランド化の取り組みをスタート。加盟店は61店舗を数える。特徴は、細くてほど良いコシのある麺と、ウルメやムロアジ、サバなどの雑節と昆布の合わせだし、地元の醤油で色薄く作る透明感のあるだしは、ツルツルとした麺によく合い、とても美味しかった。

 加賀四湯

 粟津温泉、片山津温泉、山代温泉、山中温泉は加賀四湯とも呼ばれ、半径8キロ圏内にあり、それぞれに豊かな個性を持つ。関西圏や中部圏には馴染みの深い1300年の歴史を有する温泉地であるが、首都圏からは、心理的に「遠い」というイメージも持たれがち。しかし、人情に厚い、独特の文化を持つ加賀温泉郷には数多くの名旅館が存在しており、ぜひとも一度は訪れたいところ。それぞれの温泉地には、「総湯」と呼ばれる共同浴場がある。

 山代温泉のシンボルは、明治19年当時の総湯を復元した山代温泉古総湯。外壁は白木仕上げ、浴室は漆塗りの壁に、九谷焼のタイルとステンドグラスが独特の雰囲気を醸し出している。古総湯と向かい合うかたちで、山代温泉総湯がある。こちらは、地域の住民がよく利用している。売店の「温泉たまご」は源泉に8時間つけて温泉の成分がしみ込んだ一品で、とても人気が高い。

山代温泉の古総湯(手前)と向かい合う総湯(奥)
山代温泉の古総湯(手前)と向かい合う総湯(奥)

 総湯は単なる共同浴場ではなく、温泉が本来持っている医療や福祉、観光、歴史、文化、教育などさまざまな要素を満たしている。住民同士が交流を持てる「温泉コミュニティ施設」としての文化的な意味も持っている。総湯を取り囲むように旅館や町並みが形成されていった、歴史的なまちなみ「湯の曲輪(ゆのがわ)」が再生された山代温泉では、にぎわいの温泉文化を堪能することができる。

 片山津温泉には4月21日、新たな総湯「加賀片山津温泉 街湯」がオープンする。日本を代表する世界的な建築家・谷口吉生氏の設計。外観のほとんどがガラス張りで透明感のある建物は、柴山潟、空、海など周辺の自然に溶け込み、建物からは雄大な白山連峰を背景とした美しい柴山潟の眺望が楽しめる。花火祭りなど多種多様なイベントの開催も、予定され、温泉街のにぎわいの創出に大きな期待が寄せられている。今回、訪れることはできなかったが、粟津温泉、山中温泉も1300年の歴史を誇り、総湯を中心に個性的な温泉文化を築き上げており、ぜひ訪れたい。

国内、海外ともに4%増、海外過去最高の2000年に次ぐ

ゴールデンウイークの旅行動向

 JTB(田川博己社長)がこのほど発表した、ゴールデンウイーク(2012年4月25日―5月5日)の旅行動向によると、1泊以上の旅行に出かける人数は前年比4・2%増の2120万8千人。国内旅行は同4・2%増の2064万5千人、海外旅行は同4・8%増の56万3千人と、国内・海外ともに昨年より増加した。旅行動向はJTB予約状況、航空会社予約状況、業界動向、1200人へのアンケート調査などから推計した。

 今年のGWは4月28―30日の3連休と、5月3日―6日の4連休に別れ、5月1、2日を休めば9日間連続の休みとなる。

 旅行の同行者は、家族や親族とのつながりを大事にする傾向が強く、子供連れが43・5%、夫婦のみが18・8%、その他の家族が16・9%と、家族旅行が79・2%を占める。

 国内旅行をみると、5月22日に開業する東京スカイツリーへの関心が高く東京方面への旅行が増加。開業から1年の九州新幹線効果が続く九州も好調だ。

 また、今年は例年より桜の開花が遅く、東北地方を中心にGWに開花のピークを迎えると予想され、東北応援の傾向も強く、東北方面への人出がさらに増えると予測。3月18日に開幕した東北観光博でもGW期間中に各ゾーンでイベントが多数予定され多くの人出が見込まれる。国内旅行の宿泊は5月3、4日が中心となりそうだ。

 海外旅行をみると、円高基調を背景に過去最高の2000年に次ぐ旅行者数の見込み。方面別では長期の休みが取れるGWを利用した欧州方面の人気が高く、ハワイ、韓国、台湾なども人気を集める。ルックJTBの売れ筋コースをみると、欧州ではイタリア、スペイン、フランスの順となり、中欧東欧、チューリップの季節で人気の高いオランダ、ベルギーも例年以上に急増している。また、ルックJTBの予約状況からみると、遠距離の欧州、米国、ハワイは4月28日、近隣のアジアやグアム・サイパン方面は5月3日が出発日のピーク。