11年訪日客1100万人へ、「中国と韓国が大きな柱に」

 観光庁の溝畑宏長官は1月26日に定例会見を開き、2011年の訪日外国人数を「1100万人に限りなく近く」と目標設定した。

 2010年の訪日外客数が発表され、前年比26・8%増の861万1500人となり、大阪万博が開催された1970年(同40・4%増)以来の伸びを記録。溝畑長官は「今後のインバウンド促進への大きな前進」と語った。

 しかしながら、観光立国推進基本計画の目標であった「2010年までに1千万人」には届かず、中国漁船衝突事件や大幅な円高などの外的要因による不足分を除くと、厳しく見て約90万人足りないと報告。要因として(1)プロモーションの効果発現までのタイムラグ(2)プロモーション戦略・体制などの不十分さ(3)国内受入環境整備の遅れを挙げた。

 11年についてJTBが920万人と予想するなか、「1100万人に限りなく近い水準」と強気の目標を設定。「13年に1500万人」という目標達成から逆算しての11年の目標設定だが、溝畑長官は「無理な数字ではない」と力を込める。09年の東アジア太平洋地域の国際観光市場は1億8千万人、これが2020年には4億人にも増加。中国の10年の海外旅行者は4790万人だが、2020年には最低でも1億人、場合によっては2億人まで増えるとの検証を紹介。「大幅に拡大する中国のシェアをおさえ、韓国の240万人(10年)を300万人台ぐらいまでもっていければ十分勝算はある」と語った。中国を大きな柱に据えるリスクの分散にも触れ、「経済成長著しいタイ、マレーシア、ベトナムの取り込みや、リーマンショック後落ち込んだアメリカ市場の復活にも尽力したい」と話した。

 11年は(1)プロモーションの強化(2)受入環境の整備(3)他省庁との連携をポイントに進める。

●MICE推進まったくぶれず
予算見送りとされたMICEについては、「推進の姿勢はまったくぶれない」とし、VJ予算内でMICEのプロモーション、セールス、環境整備の支援、人材育成などに注力。「地方自治体・民間レベルでも高まるMICE意識をさらに大きくしたい」と話した。

●与党案ベースにS・W先行で検討
休暇分散化については、第2回休暇改革国民会議の結果を受け、シルバーウィーク先行で、ブロック分けについては再検討を進め、議論中の与党案をベースに国民の意識調査や、各関係団体や地方自治体へのヒアリングを実施し詰めていくという。

10年訪日客861万人に、韓国54%増、中国41%増

 日本政府観光局(JNTO、間宮忠敏理事長)が1月26日に発表した、2010年の訪日外客数(推計値)は前年比26・8%増の861万1500人と、世界各国の景気回復や訪日旅行の宣伝効果、10月末からの羽田空港の国際定期便就航などによる追い風を受けた結果となった。

 前年比の伸び幅としては、この半世紀の間で、大阪万博が開催された1970年(同40・4%増)に次ぐ数値となり、重点15市場すべてで前年比増となった。

 地域別では、最大市場の韓国が、新型インフルエンザの流行や景気低迷で大きく落ち込んだ前年からV字回復をし、同53・8%増の243万9800人となった。次いで、地域別で台湾を抜いて2位に躍り出た中国が同40・5%増の141万3100人。好調な経済成長や訪日個人観光査証(ビザ)の発給条件緩和などの好影響を受け、爆発的な伸びを記録するも、10月以降は中国漁船衝突事件の影響で一転、落ち込んだ。

 そのほかでは、タイが同21・0%増で初めて20万人を突破し、シンガポールは同24・6%増と躍進。好調な経済を反映したドイツが同12・4%増と欧米で唯一の2ケタ増を記録し、経済成長著しいマレーシアが同27・9%増と過去最高の伸びを記録した。

 JNTOの間宮理事長は、目標の1千万人に139万人足りなかった結果を踏まえ、「リーマンショックや円高、尖閣問題、上海万博の影響で座席の供給量が足りなくなったことなどが原因」とした。

 また、重点15市場で訪日外客全体の90%以上を占めることを挙げ、「15市場の選定やプロモーションの効果は出ている」と話した。

 今後の課題としては、中国内陸地の需要の取り込み、中国個人客やリピーターへのプロモーション強化、ターゲットセグメントへのプロモーションの質向上、SNSやフェイスブックなどの新しい宣伝ツールの活用などを挙げた。

 11年に関して本紙の取材に対し、「中国・韓国の重要性に加え、中国の投機マネーで潤うマレーシア・タイ・シンガポールなどの東南アジア諸国がキーになる。訪日需要がなかなか回復しない米国も、今後の政治による日米関係強化によっては復活もありうる」と語った。

 一方、出国日本人数は同7・7%増の1663万7千人と、4年ぶりに増加した。

第36回「100選」表彰式開く、パーティーに550人出席

総合1位に輝いた加賀屋の小田真弓女将(右)
総合1位に輝いた加賀屋の小田真弓女将(右)

 旅行新聞新社が主催する「第36回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」および「第31回プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」「第20回プロが選ぶ優良観光バス30選」の表彰式と祝賀パーティーが1月21日、東京・新宿の京王プラザホテルで開かれ、観光関係者約550人が出席した。

 主催者あいさつで石井貞徳社長は「私たちが観光業界で一番古くから手掛けたこのイベントも36回と歴史を刻んできた。今や業界のみならず、一般の旅行者まで発表を待ち望んでくれているイベントに、大きく育ち本当にうれしい。みなさんも大いにこのイベントを利用して、お客様にPRしてほしい」と強調。また、「厳しい時代、誰も助けてはくれない。一人ひとりが足元を見直し、事業の意義を考え、自信と誇りを持ってがんばってほしい。みんなで観光業界を盛り上げましょう」とエールを送った。

 石川県和倉温泉の加賀屋の手島孝雄総支配人は「36年という歴史ある賞の重みを感じている。この賞は、女将を筆頭に社員一人ひとりが1年間努力した結果。受賞をさらなる励みに、今年も笑顔でがんばりたい」と語った。

 「優秀バスガイド」「もてなしの達人」の表彰式は2月18日、東京都港区の世界貿易センタービル内・浜松町東京會舘で午後1時から開く。

No.269 旅館・ホテル現代考 - 旅館の強みをホテルに

旅館・ホテル現代考
旅館の強みをホテルに

 日本のマーケットにおいてうまく併存してきた和風旅館とホテル。宿泊施設の形態は細分化され、出尽くしたともいわれるが、ここ数年、東京都内に旅館とホテルを融合させた新しいスタイルの宿泊施設が生まれてきている。2009年5月オープンの「庭のホテル東京」(東京・千代田)と同年6月オープンの「ホテル龍名館東京」(東京・中央)。ともに基本はホテルだが、長年、旅館で培ってきた強みを活かす。さりげない和を感じるホテルが今後、増えていきそうだ。

【沖永 篤郎】

「居心地のいい和を追求」

 水道橋駅東口から徒歩3分、日本大学経済学部の隣に建つ「庭のホテル東京」。09年5月にオープンした。近隣は大学や出版社が多い場所柄、一見ビジネスホテルのようにも見えるが、館内に一歩足を踏み入れると、明らかにそれとは違う温かな雰囲気が感じられる。中庭からエントランスに続く水の流れ。ふんだんに日の光が差し込むフロントロビー。そこに配された巨大な行灯のような照明。いたるところに和のおもてなしの心がさりげなく表現されている。

 木下彩社長は、この場所で1935年に創業した旅館、森田館の3代目。旅館は1970年代の高度成長期、東京グリーンホテルという名でビジネスホテルに転身。日本のビジネスホテルの先駆けとなった。庭のホテル東京は、そのホテルの1つ東京グリーンホテル水道橋を施設の老朽化に伴い建て替えた。

 「今の東京で新しいホテルを建てるのであれば、どういう形が望ましいのか。大手ホテルチェーンと同じ土俵で張り合っても、やがては価格競争するしかなくなってしまう。10年、20年とたったときに何で勝負できるのかといろいろ考えました」(木下社長)。新しいホテルの構想を作り上げるまでには5年近い歳月を費やした。1つのヒントになったのが事業の原点である旅館だ。70年以上にわたる伝統や、スタッフの家庭的な雰囲気、ホスピタリティといった強みを活かせないかと考えた。若い世代の間や海外では日本の伝統美や和のデザインが見直されてもきている。そしてたどりついたのが和の趣と現代人のニーズに見合う機能性を併せ持つ「美しいモダンな和」というコンセプト。「難しかったのは、どのくらいの和にするのか。京都の雅な和ではなく、さっぱりとした江戸の和。今の東京で居心地のいい和を追求しました」(木下社長)。

 

※ 詳細は本紙1409号または日経テレコン21でお読みいただけます。

伊東で山焼き

 国の天然記念物に指定されている大室山で2月13日に「第53回大室山山焼き」を行う。山焼きは700年の伝統がある。当日は午前9時30分からは山頂のすり鉢上の傾斜部を焼く「お鉢焼き」、11時からの式典後、正午に山肌全体を焼く「全山焼」の順で行われる。

 問い合わせ伊東観光協会電話:0557(37)6105。

成徳大・秋山教授が景観セミナー

千葉県と県内の鎌ケ谷市は、1月30日の午後2時から鎌ケ谷市総合福祉保健センターで、景観セミナー「魅力あるまちづくりと景観」を開く。第1部は鎌ケ谷市の事例紹介、第2部は講演会を行う。

 第2部の講師は東京成徳大学観光文化学科長・教授で旅行作家の秋山秀一氏。「『居心地のよい景観』とは・世界中の旅の中で考えたこと」と題して講演する。秋山氏はNHKラジオで旅番組のプレゼンターを務めるほか、旅作家としての著書も多い。

 セミナーの参加費は無料。定員は先着順の50人。申込みは1月26日まで。

問い合わせ=千葉県公園緑地課景観づくり推進室 電話:043(223)3998。ホームページ(http://www.pref.chiba.lg.jp/kouen/index.html)。

船橋でダイヤモンド富士が見られる日

千葉県船橋市のふなばし三番瀬海浜公園は、秋から冬の天候に恵まれた日の朝と夕刻に、美しい富士山を望める。また2月15日は、「ダイヤモンド富士」を見られる日にあたる。

 気象条件が整えば、ふなばし三番瀬海浜公園で午後5時10分に、富士山の頂きへ沈む夕日がダイヤモンドのように輝く光景を見ることができるという。

ダイヤモンド富士は、富士山の山頂部と太陽が重なる大気光学現象のこと。湖面にダイヤモンド富士が映って2つに見える場合は「ダブルダイヤ」と呼ばれている。

片道1000円のシャトルバス、石和温泉―東京・新宿間

 山梨県笛吹市の石和温泉旅館協同組合(山下安廣理事長)は1月11日から、都内のバス業者と提携して東京・新宿駅と石和温泉郷内の「いさわ温泉観光の駅」を片道料金1千円で結ぶ直行シャトルバスの運行を始めた。

 石和温泉郷は今月、高温温泉湧出50周年を迎える。宿泊客の大半を占める首都圏の中高年客が格安で利用できる交通手段を整備することで、集客をはかるのが狙い。

 シャトルバスは中央自動車道を利用。東京駅を午前9時30分発、経由地の新宿駅を午前10時に出発し、石和温泉に正午ごろ到着する便と、石和温泉を午後3時に出発し、新宿駅に午後5時着、東京駅に午後5時30分に到着する便の1日1往復。座席数は45席ですべて自由席。

 ネットと電話での事前予約制で、支払いは原則クレジット及び振込みだが、石和温泉での支払いはシャトルバスの発着場所に隣接する旅行会社に現金でも申込みが可能だ。

 同組合によると、宿泊客の約50%が首都圏在住者のため「石和と東京を格安で結ぶルートを設けることで、車を持たない都市生活者や学生も訪れやすくなるはず」と判断、今回のシャトルバス運行を決めた。

 またシャトルバスの利用者には「1泊2日の日程で楽しめる地元ボランティアガイドによる名所旧跡の観光ツアーなども検討中」(同組合)という。山梨岡神社(笛吹市春日居町)など市内各地にある史跡をめぐるウォーキングルートも作成している。

 山下理事長は「ブドウや桃、温泉だけでなく、名所旧跡など歴史を切り口のひとつに加え、開湯50周年の目玉の1つとしてシャトルバスの運行に期待している」とコメントした。

日本回転寿司協会設立、回転寿司マイスター制度も

 1月11日、一般社団法人日本回転寿司協会(会長=大下孝治エムアンドケイ代表取締役)が設立された。設立総会は5月を予定している。

 回転寿司が誕生して50年を超え、今やあらゆる世代に愛される外食産業となっている。

 さらに、海外でも回転寿司ブームが広がり、本家である日本の回転寿司から離れ、一人歩きしている。これらの現状に対して、海外への日本文化の正しい認識への取り組みや、漁業問題の対応など、個々の店舗で取り組んでいくには限界があるのも事実。そこで、サービスの向上や人材育成、回転寿司文化のさらなる普及などを、業界が一体となって推進していくことで一致した。

 同協会では、美味しい寿司の提供とお客様に喜ばれる接客を目指して、優秀な回転寿司職人を養成する「回転寿司マイスター制度」の実施や、「全国ご当地回転寿司フェスティバル」の開催などを計画している。2月には協会ホームページを立ち上げる予定。

 問い合わせ=日本回転寿司協会 電話03(5368)2446。

中国観光客への対応研修、観光庁、全国50カ所で実施

 観光庁はこのほど、観光に携わる仕事に従事する従業員や経営者、観光業界への就職を検討中の人などを対象に、中国人観光客へのおもてなしに必要な基本的な知識や中国語会話をレクチャーするため、全国50カ所で「明日から使える!中国人観光客との実践コミュニケーション研修」を実施している。

 観光に携わる仕事のやりがいや、中国の基礎的な知識、中国からの観光客の志向・特徴・旅行目的などについて講義。実際の接客場面を収録した映像を見ながらレクチャーし、中国人講師による代表的な接客用語のレッスンも交える。開催日程は2011年1―3月で、参加費は無料。

詳細URL
http://hatalike.yahoo.co.jp/h/r/H1ZZ050s.jsp?hp=%2Fsp%2F101227%2F00%2Findex001.html