日本ツーリズム産業団体連合会(TIJ、舩山龍二会長)は12月7日、港区にある東京プリンスホテルで「家族とツーリズム―旅が子供を育て、家族をつなぐ」をテーマに「ツーリズムサミット2010」を開いた。家族旅行と子連れ旅行にスポットを当て、日本交通公社主任研究員の黒須宏志氏、じゃらんリサーチセンターセンター長の沢登次彦氏、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事の吉田大樹氏が講演を行った。
黒須氏は「データから見る家族旅行の動向」というテーマで講演。旅行市場全体が縮小するなか、同行者タイプ別のシェアでは、家族旅行は86年に30%以下だったものが06年には40%を超えていることを紹介した。80年代は団体旅行、90年代は家族旅行と友人旅行、00年代は家族旅行とトレンドが推移。家族旅行は、子連れ旅行、夫婦旅行、3世代旅行と幅広いタイプでシェアを伸ばし、旅行形態が多様化している。
子連れ旅行の変化をみると、とくに小学生以下の層が大幅に減少。この10年くらいの動向では、夏休みなどの特別期の低廉価施設を利用した連泊旅行が大きく減った。
また、家族生活の満足度が高い「家族指向」グループと、仕事や余暇、友人関係など家族以外の部分での満足度が高いその他の層とに分け、子連れ旅行の目的別に比較すると、スポーツと自然(キャンプなど)の2つで大きな差が出た。旅行目的にスポーツを挙げたのは家族指向グループで17・1%、その他で2・9%。自然では家族指向グループで3・3%、その他で15・9%。スポーツは旅行先で突然行うことはほとんどなく、日ごろから一緒に慣れ親しんでいることが多い。
一方、普段子供とあまりコミュニケーションをとっていないその他の層では、比較的敷居の低いキャンプなどの自然に接する傾向が強いと考えられる。黒須氏は「『旅行すること』が直接的な目的ではなく、『行って何をするか』に重点が移った。また、旅行先の選択に親の好みやこだわりが反映されるようになってきた」とまとめた。
沢登氏は「子連れ旅行商品開発への取り組み」について講演。はじめに最新の観光宿泊者数の傾向と実態を紹介した。宿泊旅行の実施率は06年の66・1%から10年の60・3%と大きく減少。「このままでは10年後には50%を切る」と警告した。市場の縮小、旅行の安近化、ミドル層・若年層の旅行離れ、地元の食や旧跡・町歩きへの関心など、4つのポイントを説明した。また、「乳幼児連れの家族旅行活性化プロジェクト」や、父子の2人旅行「雪遊び―パパはヒーロー」の実施結果を報告し、「ニーズにあった新しい価値とマーケットを創造していかなくては」と語った。
吉田氏は「父親の子育て参画と家族旅行」について講演し、父子旅行をすることのメリットとして(1)母親が子育てから開放されてリフレッシュできる(2)父親の子育てスキルがアップするなどのメリットを挙げた。「まずは日帰りや近場など無理のない範囲で始めて、徐々に場所や時間を広げていけばよい」とアドバイスした。