医療滞在ビザを創設、最長6カ月、3年内なら何度でも

 政府は12月17日、医療サービスを受けることを目的に日本を訪れる外国人向けに「医療滞在ビザ」を創設することを閣議決定した。アジアの富裕層などを対象にした医療サービスの提供を観光とも連携して促進していく。

 滞在期間は最大6カ月間。必要に応じて家族や付添も同伴できる。現行の短期滞在ビザの最長90日間から大幅に伸びた。1回の滞在期間が90日以内の場合には必要に応じ、最大3年間の有効期間であれば何回でも来日できる。

 この決定を踏まえ外務省は1月から海外の在外公館において「医療滞在ビザ」の運用を始める。

家族旅行のシェア増加、旅先で何をするかが“目的”に

黒須宏志氏
黒須宏志氏

 日本ツーリズム産業団体連合会(TIJ、舩山龍二会長)は12月7日、港区にある東京プリンスホテルで「家族とツーリズム―旅が子供を育て、家族をつなぐ」をテーマに「ツーリズムサミット2010」を開いた。家族旅行と子連れ旅行にスポットを当て、日本交通公社主任研究員の黒須宏志氏、じゃらんリサーチセンターセンター長の沢登次彦氏、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事の吉田大樹氏が講演を行った。

 黒須氏は「データから見る家族旅行の動向」というテーマで講演。旅行市場全体が縮小するなか、同行者タイプ別のシェアでは、家族旅行は86年に30%以下だったものが06年には40%を超えていることを紹介した。80年代は団体旅行、90年代は家族旅行と友人旅行、00年代は家族旅行とトレンドが推移。家族旅行は、子連れ旅行、夫婦旅行、3世代旅行と幅広いタイプでシェアを伸ばし、旅行形態が多様化している。

 

沢登次彦氏
沢登次彦氏

 子連れ旅行の変化をみると、とくに小学生以下の層が大幅に減少。この10年くらいの動向では、夏休みなどの特別期の低廉価施設を利用した連泊旅行が大きく減った。

 また、家族生活の満足度が高い「家族指向」グループと、仕事や余暇、友人関係など家族以外の部分での満足度が高いその他の層とに分け、子連れ旅行の目的別に比較すると、スポーツと自然(キャンプなど)の2つで大きな差が出た。旅行目的にスポーツを挙げたのは家族指向グループで17・1%、その他で2・9%。自然では家族指向グループで3・3%、その他で15・9%。スポーツは旅行先で突然行うことはほとんどなく、日ごろから一緒に慣れ親しんでいることが多い。

 一方、普段子供とあまりコミュニケーションをとっていないその他の層では、比較的敷居の低いキャンプなどの自然に接する傾向が強いと考えられる。黒須氏は「『旅行すること』が直接的な目的ではなく、『行って何をするか』に重点が移った。また、旅行先の選択に親の好みやこだわりが反映されるようになってきた」とまとめた。

吉田大樹氏
吉田大樹氏

 沢登氏は「子連れ旅行商品開発への取り組み」について講演。はじめに最新の観光宿泊者数の傾向と実態を紹介した。宿泊旅行の実施率は06年の66・1%から10年の60・3%と大きく減少。「このままでは10年後には50%を切る」と警告した。市場の縮小、旅行の安近化、ミドル層・若年層の旅行離れ、地元の食や旧跡・町歩きへの関心など、4つのポイントを説明した。また、「乳幼児連れの家族旅行活性化プロジェクト」や、父子の2人旅行「雪遊び―パパはヒーロー」の実施結果を報告し、「ニーズにあった新しい価値とマーケットを創造していかなくては」と語った。

 吉田氏は「父親の子育て参画と家族旅行」について講演し、父子旅行をすることのメリットとして(1)母親が子育てから開放されてリフレッシュできる(2)父親の子育てスキルがアップするなどのメリットを挙げた。「まずは日帰りや近場など無理のない範囲で始めて、徐々に場所や時間を広げていけばよい」とアドバイスした。

賛成派3府県、カジノ合法化へ議連と意見交換

(左から)坂本副知事、橋下府知事、松沢知事、古賀会長
(左から)坂本副知事、橋下府知事、松沢知事、古賀会長

 カジノを中心とした複合観光施設整備の合法化を目指す「国際観光産業振興議員連盟」(民主党・古賀一成会長)は12月16日、参議院会館で第11回の総会を開いた。今回は、同連盟が来年の通常国会の提出を目指している「特定複合観光施設区域整備法」について、3府県の知事らが意見を述べた。出席した神奈川県と大阪府、千葉県はいずれも大枠では賛同し、県内への誘致にも意欲的な姿勢を見せた。

 古賀会長は冒頭、「4月の中旬から開始し、11回を迎えた。大観光時代といわれるなかで明るい施策をと、超党派で一致して活動を進めてきた。来年の通常国会では当初から、波高いことが予想されるが、我われの地域主権の試みや広域行政の試み、国際ハブ機能戦略のビジョンは必ず活路を見出すと確信している」とあいさつした。

 会合では、まず神奈川県の松沢成文知事が法案内で区域を10地域と定めていることに、地域数は設定せずに柔軟に対応できるようにすることや地方への十分な収益の配分など、地域活性化をメインに位置付けることを求めた。また、オーストラリアのカジノ視察の経験なども語り、「先進国でカジノがないのは日本だけ。法律を作り、体制を整えれば弊害は必ず防げる。カジノは賭博場ではなくホテルやコンベンション、飲食などがあるエンターテイメントシティの1つの要素。より魅力的な都市を作り、世界中からお客様を集めるという発想で取り組まなければならない。議員連盟の皆さんにはできるだけ早く結果をだしていただきたい」と期待を込めた。

 一方、大阪府の橋下徹府知事は「国の成長戦略の位置付けの意識を国民全員に持ってもらう必要がある」と主張。「これは都市部の問題かもしれないが、闇の賭博場があるのは事実だ。法案の目的として闇経済や不法団体の排除をうたってもいいのではないか。とにかく、国民が納得するものを提示しなければならない」と意見した。また、基礎自治体の単位を県や市、広域地域にするかなど指定プロセスを明確化することなどを求めた。

 さらに、千葉県の坂本森男副知事が出席。千葉県では、成田空港緊急戦略プロジェクトのなかで、空港周辺のMICE機能強化の必要性を議論し、カジノを含めた複合施設の誘致も検討している。「外国人専用カジノ」も想定するが、収益性の問題などもあるという。一方、日本人利用を可能にした場合は依存症などの懸案事項がある。坂本副知事は「社会的に否定的な側面の縮小方法が大きな問題。懸念事項のなかで、利用者側の対応については地方自治体の手に余る」とし、依存症対策や入場規制などの具体策の提示と国の積極的な関与を求めた。

 3者の意見発表後は各議員や知事らが質問や意見を出し合った。古賀会長は「来年の上程に向けて、今日の意見も参考にしながら法案の修正をしていきたい」と語った。

予算確保へ折衝中、11年度はアジア1位へ

 観光庁は12月17日、第3回MICE推進協議会を開き、溝畑宏長官は冒頭あいさつで事業仕分けについて触れ、必要なものを確保するため折衝中であることをアピールした。そのほか、10年度の観光庁と協議会メンバーによるMICEの取り組みを紹介、11年度の基本方針「アジア1位を目指す」ことなどについて話し合った。

 溝畑長官は「シンガポールや韓国などがアジアで競争力を高めている。立ち向かうためにより一層、国・地方自治体・民間と一体になって取り組まなければいけない」と語り、事業仕分けで予算見送りとされたことに触れ「今まで以上に国をあげて取り組むために、必要なものを確保するよう最大限の努力中だ」と予算確保へ注力していることを報告した。

 日本は2009年の国際会議開催件数で世界第5位の538件。観光庁は09年度と10年度のこれまでの誘致に成功した国際会議を紹介し、誘致活動について報告した。
日本商工会議所観光委員会の須田寛委員長は、各地の商工会議所でのMICEへの取り組みを紹介し、観光庁へは「国際会議や国内の全国レベルの会議などの情報をもっと発信してほしい。会議があることを分かっていれば、サイドイベントなどもできる」と「情報共有の重要性」について要望を述べた。

 そのほか各団体が取り組みについて報告し、要望を伝えた。開催件数の多い展示会の位置づけやMICEの国民への意識定着、会場などのハード整備、ユニークベニューのアピール、中・長期的な視点と取り組みなどについて協議。官民一体の取り組みの推進、トップセールスの必要性、ハード面での活用などを11年度の課題に挙げた。11年度のスローガンは「アジア1位を目指し、MICEで日本を元気に!」が提案された。

 MICE推進協議会のメンバーは日本展示会協会、日本コングレス&コンベンションビューロー、日本経済団体連合会観光委員会、日本ホテル協会、日本旅行業協会、国際観光旅館連盟、日本商工会議所観光委員会、日本PCO協会、日本イベント産業振興協会、日本ツーリズム産業団体連合会、日本政府観光局、日本コンベンション事業協会。

秋のみの分散化も、3月までに修正案

 観光庁は12月16日に、ホテルニューオータニ(東京都千代田区)で「第2回休暇改革国民会議」を開いた。賛否両論さまざまな意見が出るなか、座長の新日本製鐵会長の三村明夫座長は、第3回会合が開かれる11年3月までに修正案を検討する方針を提案した。会議後の囲み取材で溝畑宏観光庁長官は、休暇分散化について秋だけの実施や5ブロック制の変更などを含め現行案の修正を検討する旨を話した。

 観光庁が提案する大型連休の地域ごとの分散化について、産業界、観光業界、教育業界、地方自治体関連など、各界の代表者が集まり意見を述べた。「準備期間をもったうえで実施し、そのうえで課題を修正していく」などの賛成意見が多いなか、中小企業からは資金決済停滞による資金繰りの悪化や全国にまたがる取引先との問題、銀行関連では決済の問題、教育業界からは全国中学体育大会や高校総体の実施・運営の難しさなど、根強い反対意見もあがった。

 内閣府が10月に行った3千人を対象とした特別世論調査では、休暇の分散化について賛成28・1%、反対56・1%という結果が出た。日本労働組合総連合会会長の古賀伸明氏は、調査結果に触れ「国民に根付いている春のゴールデンウイークは対象外にし、秋のシルバーウイークだけを社会実験として分散化し、さまざまな影響を見定めては」と修正案を提案。富山県の石井隆一知事からは秋のみの実施に加え「現行の地域を5ブロックに分けるのではなく、2、3ブロックくらいがちょうど良いのでは」との意見も出た。

 座長の三村会長と溝畑長官は会見後に囲み取材を行い、三村会長は「問題点の指摘には納得できるものも多く、56・1%の反対という結果も無視できないので、現行案そのままというのは難しい。秋の実施については反対意見は多くなかったのでは」と述べた。溝畑長官は「政務三役と相談しながら、実施時期、ブロック分け方法なども含めて修正案を検討しなくては」と話した。

JTB 2011年旅行動向見通し

「国内は“3連休増加”で微増」

 JTBがこのほど発表した2011年の旅行動向見通しによると、国内旅行人数は前年比1・2%増の3億200万人とわずかに前年を上回る見込み。

 一方、海外旅行は円高の継続や、羽田空港の国際化で近隣アジアへの旅行が増加することが見込まれ、同3・7%増の1730万人とプラスで推移する見通しだ。

「海外は羽田国際化で3.7%増」

 訪日外国人数も羽田空港の国際化により便数が増えた韓国、中国、香港、台湾といった東アジアからの旅行者の増加が見込まれ、同5・7%増の920万人と堅調な伸びを予測する。

 国内旅行は、土・日・祝日の3連休が前年に比べて3回も多いほか、10年12月には青森、11年3月には鹿児島まで新幹線が延伸することで、遠距離旅行が増加するとみている。

「訪日外国人は5.7%増の920万人」

 海外旅行は、1月には羽田空港からニューヨーク、2月にはロンドン、3月にはバンクーバー便が就航し、海外旅行の選択肢が増える。さらに、地方から羽田経由で目的地に向かうルートや、往路は羽田便の深夜便を利用し、帰路は成田空港を使うというルートも可能となる。LCC(格安航空会社)が乗り入れ空港を増やす動きもみられ、選択肢の多様化が一層進むことが予想される。

旅館業の職業能力基準策定、全体の人材力底上げが目的

 厚生労働省は、職業能力を客観的に評価するための「職業能力評価基準」で、新たに「旅館業」と「施設介護業」の基準を策定し、昨年12月24日から中央職業能力開発協会のホームページ(http://www.hyouka.javada.or.jp/)で公開している。これまでに42業種で同基準を策定しており、仕事に必要な技術・技能、知識について4つのレベルを設定し、業種別、職種・職務別に整理・体系化している。

 今回、策定した旅館業は、主に和風様式の構造や設備を整え、宿泊サービスを提供する施設が対象。経営環境が厳しいなか、集客力を強化しコスト削減が重要な課題になる一方、人材確保や教育体制の構築といった問題も抱えている旅館業界の活性化をはかるのが目的。サービス向上で旅館全体の人材力底上げを目指す。ホテル業の基準については2004年に完成しており、NPO法人などで活用されている。

 基準の策定については全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会と国際観光旅館連盟、日本観光旅館連盟との連携で、包括的な委員会を設置して検討。旅館業の主要な職種として4職種・10職務を対象にした。職種と職務の種類は職種の「接客サービス」がフロントと客室、宴会・食堂、販売の4職務で、「調理」は1職種1職務、「営業・マーケティング」は営業・マーケティング、予約管理の2職務。「旅館管理」は経営管理と衛生・環境管理、施設・設備管理の3職務を用意した。

 また、レベルは4段階を設定。レベル1(担当者)は担当者として定例的な業務を確実に遂行するために必要な能力水準を求めている。例えば「接客サービス」のレベル1では、快適なロビー周辺の維持や客室への案内などの能力細目があり、必要な知識は自旅館の宿泊約款や外国語などが設定されている。

 レベル2の役職イメージは主任、チームリーダーでレベル3は課長やマネージャー、ベテランスタッフ(スペシャリスト)、またレベル4は本部長や部長など。

2011年新春対談 地方から日本を元気に

地方から日本を元気に

第22回「全国旅館おかみの集い」運営委員長
有村 政代さん
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熊本県知事
蒲島 郁夫さん

 2011年の本紙「新春対談」は、熊本県知事の蒲島郁夫さんと、熊本県人吉温泉の清流山水花あゆの里女将・有村政代さんに登場いただいた。蒲島知事は高校卒業後、農協に就職。農業研修で渡米した後、ハーバード大で政治学を学び、東京大学の教授就任という異色の経歴を持つ。一方の有村さんは今年6月28日に福岡県福岡市で開く第22回「全国旅館おかみの集い」の運営委員長を務める。「地方から日本を元気に」をテーマに、女将や旅館文化、地域活性化、外客誘致など、2人は熱く語り合った。 【対談は本紙9面】

(司会進行=旅行新聞新社取締役関西支社長・有島 誠、鈴木 克範)

 

※ 詳細は本紙1406号または日経テレコン21でお読みいただけます。

JALグループ統合へ、国内、海外統一で効率化

 ジャルパック(大西誠社長、東京都品川区)とジャルツアーズ(同)は12月6日、両社の臨時株主総会での承認を前提に、2011年4月1日に統合することを発表した。国内、海外旅行の商品事業を統合し、経営基盤の強化や効率化をはかる。

 11年度の新商品は、国内・海外ともに商品ブランドを「JALパック」に統一。品質とブランド認知度の向上に努める。

 新会社名は「株式会社ジャルパック」で、存続会社のジャルツアーズが来年4月1日に商号変更する。所在地は現在、両社が入居する東京都品川区東品川2―4―11 野村不動産天王洲ビル。

営業益110億円増、大幅な増収益で黒字転換

 JTBグループの2010年度上期(4―9月)の連結決算によると、売上高は前期比5・4%増の6095億円、営業利益は同110億円増となる57億円(前期は53億円の損失)、経常利益は62億円(前期は39億円の損失)、当期純利益は23億円(前期は53億円の損失)と、前期を大きく上回り黒字に転換し、大幅な増収増益となった。

 円高による海外出国者数の増加、海外経済の好況による訪日外客数の増加、法人需要の持ち直しなどにより、中核である旅行事業は取扱額が同6・2%増、売上高が同5・6%増と、リーマンショック以前の水準には未だ達していないが回復基調にあることを示した。

 海外旅行は、新型インフルエンザの反動もあり、日本人出国者数が大きく伸長し、取扱額が同20・3%増、売上高が15・2%増、取扱人員が7・4%増の170万7千人となった。個人では、「JTBグランドツアー&サービス」や「JTBメディアリテーリング」などが好調。団体は、上海万博の取り組み強化や法人需要が回復し前期を大きく上回った。

 国内旅行は、旅行市場規模が縮小傾向のなかで取扱額は同1・9%減、売上高は同2・6%減となった。個人は、予約の間際化・直販化が進み、企画商品「エースJTB」宿泊単品販売が低迷。団体は、教育団体は前期を下回ったが、一般団体は堅調に推移し、取扱額はほぼ前年並みとなった。

 10年度下期は、羽田空港の国際化、東北新幹線や九州新幹線の全線開業などの機会を活かし、通期の業績予想では、経常利益80億円を見込む。