東京駅舎復原でにぎわう東京 ― 金閣寺炎上と江戸城再建

 東京駅の赤レンガ駅舎が10月1日、1914(大正3)年創建当時の姿に復原され、グランドオープンした。今、東京駅周辺では観光客などがカメラを構えて壮麗な駅舎を撮影してにぎわっている。今年5月に、東京スカイツリーが開業し、10月に東京駅舎の復原、そして来春には新しい歌舞伎座が開業する。東京の観光名所が次々に出そろう印象を受ける。

 都市観光の面白いところは、未来的な思想やデザインの輝かしさと、過去の文化の記憶が織り混ざるところだろう。最先端の金融・ビジネス都市の色合いの強いフランクフルトもゲーテの生家が彩りを加えている。

 東京駅舎は、しばらく眺めていても見飽きない。これは「本物」である所以だ。威厳を備え、瀟洒な気品も感じる。

 江戸城の再建も、「江戸城再建を目指す会」を中心に、にわかに盛り上がりつつある。以前、本紙でも取り上げたことがあるが、約350年前の大火で焼失した江戸城を再建する意味を考えたい。日本は天災や戦火などによって、過去の記憶を現代につなげる象徴的な建築物が消滅するケースが多い。○○城址など石垣のみが荒涼とした風景で残されている。戦火や災害、人災による「負の遺産」の保存という視点は、基本に置くべきだ。加えて、失われたものを新たに再建することにどれほどの意味や価値があるのか――という意見も重い。「再建」というのは、難しい問題だ。

 金閣寺は放火によって焼失した。しかし、仮に金閣寺が跡地のみだったら、人々は今ほど「金閣寺跡」を訪れないだろう。京都で平安時代の姿を想像することも難しい。この意味では、火災で焼失した江戸城の再建は賛成である。そして、やるなら忠実に再建してほしいと思う。実際、「木造建築で再建」という構想らしい。東京五輪という花火のような祭典の招致もいいが、永続的な観光という視点からは江戸城再建のほうが、ずっといい。しかし、再建に失敗する例もたくさん見てきた。温泉地でも歴史的な木造建築で、味のある外湯を建て替え、ガラス張りや、鉄筋コンクリート製、○○ランド的なものに生まれ変わって、台無しにした例も多い。高名で自意識過剰な建築家などにデザインを頼まず、本当に愛する者たちが熟考を重ね、、歴史に耐え得る本物をつくるべきだ。

(編集長・増田 剛) 

【10月末まで】旅館100選投票受付中 発表は来年1月に

来年1月の発表で38回目を迎える「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」の投票が10月1日から始まりました。10月31日までの1カ月間、全国の旅行会社の皆様から投票をいただき、「ホテル・旅館100選」、「観光・食事、土産物施設100選」、「優良観光バス30選」をそれぞれ選出します。

発表は来年1月11日(予定)、旬刊「旅行新聞」紙面やこのホームページを通じて行います。

全国の旅行会社の皆様におかれましては、今年も投票協力のほどよろしくお願いします。

100歳以上の長寿企業 、企業平均年齢は35.6歳

旅館・ホテルは535社で5位(帝国データ)

 帝国データバンクはこのほど、長引く不況や震災を機に、長寿企業への注目が高まるなか、企業平均年齢と長寿企業の実態調査を行った。

 2012年の企業平均年齢は35・6歳で、前年を0・5歳上回った。年代別は、最も多かったのが「20―30歳未満」の17・2%だった。

 また、1912年末までに創業された100歳以上の長寿企業は2万4792社で、全体の1・7%を占めた。

 長寿企業の業種細分類別では、旅館・ホテルは535社で5位だった。1位は清酒製造の691社で、以下貸事務所業の581社、酒小売の577社、呉服・服地小売の558社となった。

 主な長寿企業は、創業年(西暦)順に(1)金剛組(寺社建築工事)578年(2)池坊華道会(生花教授)587年(3)西山温泉慶雲舘(旅館経営)705年(4)古まん(旅館経営)717年(5)善吾楼(旅館経営)718年(6)田中伊雅(仏具製造)885年(7)中村社寺(寺社建築工事)970年(8)一文字屋和輔(和菓子製造販売)1000年(9)夏油温泉(旅館経営)1134(10)須藤本家(清酒製造)1141年――で、10社中4社が旅館経営だった。

 業種別は、「製造業」の45・4歳が最も高く、続いて「小売業」の41・4歳、「卸売業」の39・6歳だった。サービス業は、最も低かったが、IT関連をはじめ、比較的先行投資が少なくて済む業態が多く、近年創業されたケースが目立った。

 都道府県別は、山形県が41・7歳と最も高く、次いで京都府の40・7歳、新潟県の40・6歳と続いた。最も若かったのは沖縄県の25・9歳、次に東京都の31・6歳、千葉県の32・1歳だった。 

「くまもっと県」CP、熊本県とJR西日本

「くまモン」のロゴマーク
「くまモン」のロゴマーク

水害からの復興アピール

 熊本県と県観光連盟は、JR西日本と共同で関西をターゲットにした観光キャンペーン「期待を超えるぞ!くまもっと県」を10月から来年3月まで展開する。

 7月の熊本広域大水害からの復興PRと山陽・九州新幹線を活用した誘客をはかるため、大手旅行会社3社と連携したタイアップキャンペーン。人気の県営業部長「くまモン」を活用し、「もっと知りたい」「もっと行ってみたい」と思われる「くまもっと県」をPRする。

 関西の旅行会社店頭で、毎日先着1千人の来店者に「くまモンオリジナルティーバック」など「くまモングッズ」をプレゼントするほか、対象の旅行商品成約者に「純金くまモン」が抽選で15組に当たる。10月22日は日本旅行TiS大阪支店に「くまモン」も登場する。

 期間中、県内9温泉(郷)87施設の協賛旅館・ホテルに宿泊すると、先着10万人に1軒無料入浴できる3日間有効の「くまもと湯巡手形」を配布。県特産品詰め合わせが当たる特典もある。

 阿蘇エリアでは、阿蘇市観光協会加盟宿泊施設(45軒)の宿泊者先着5万人に1千円から1万円分の買物券や特産品が当たる抽選会(Wチャンス)を実施。阿蘇温泉観光旅館協同組合は、宿泊者限定で参加できる「阿蘇カルデラツアー」として、幻想的な夜の阿蘇山麓で星空を眺めながらロマンチックな乗馬が体験できる特別企画を用意する。

 黒川温泉では来年1月から、宿泊者を対象に温泉街11店舗でスイーツなどと交換できる「黒川温泉湯る~っとクーポン」を抽選で500人にプレゼントする。

 ほかにも毎月エリアを変え「食」「温泉」などの魅力を紹介するガイドブック「月刊くまもと」(各月20万部)をJR西日本の主要駅や旅行代理店、県内の観光施設などで配布。JR西日本は、JR豊肥線(熊本駅―宮地駅間)の普通、特急列車(あそぼーい!含む)普通車指定席、産交バス阿蘇登山線が乗降り自由、阿蘇山ロープウェー乗車券と観光施設の入場券もセットにした3日間有効の「阿蘇ミニぐるりんパス」を販売する。 

自然・文化遺産復興を支援

 第2次公募を開始、日本ナショナルトラスト

 日本ナショナルトラストはこのほど、東日本大震災により被災し、存続の危機に瀕している自然・文化遺産の所有者などが行う修理や復旧を支援する「東日本大震災自然・文化遺産復興支援プロジェクト支援事業」の第2次支援事業の公募を開始した。

 同事業では、修理・復旧に要する経費の一部を助成し、住民が地域風土に根差した暮らしを取り戻すとともに当該遺産の観光資源としての保護活用への礎を築く。

 対象は、青森県・岩手県・宮城県・秋田県・山形県・福島県・茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・新潟県・山梨県・長野県内の(1)有形文化財(建造物等の不動産文化財)(2)記念物(遺跡・名勝地・天然記念物・文化的景観)(3)民族文化財および無形文化財で、地域のシンボルとして地域住民に認識・周知されているものか、地域において保存・活用の気運のあるもの、歴史的・文化的・景観的な要件のいずれかの価値を認められるもの。

 募集は11月2日までで、審査・事業の採択は2013年1月中旬ごろ。詳しくは日本ナショナルトラストHP=http://www.national-trust.or.jp/shinsaishien.html

全旅連青年部×学観連 合同事業

グループごとに宿泊プランを発表
グループごとに宿泊プランを発表

若旦那・若女将に密着、学生20人が4泊5日で実体験

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会青年部と日本学生観光連盟の合同事業「若旦那・若女将密着体験プロジェクト」が8月20―25日の4泊5日の日程で行われた。

 昨年は静岡県で実施された第1回「若旦那・若女将密着体験」に引き続き企画されたもので、今回は首都圏の大学生20人が参加し、北関東信越ブロック内の群馬県・新潟県の旅館で研修を行なった。受入施設は「越後湯澤HATAGO井仙(新潟県・湯沢温泉)」、「雪国の宿高半(同)」、「ひなの宿千歳(新潟県・松之山温泉)」、「蛍雪の宿尚文(群馬県・みなかみ温泉)」、「別邸仙寿庵(同)」の計5軒。

閉校式で熱心に講義を聞く参加者の学生たち
閉校式で熱心に講義を聞く参加者の学生たち

 学生は4泊5日のインターン体験合宿で5グループに分かれて各施設に入り、若旦那のスケジュールに合わせて研修・作業を行った。具体的には、夕食の準備の手伝い、お客様の出迎え、客室への案内補助、調理部作業補助、客室への女将あいさつ同行、予約作業・電話対応などの手伝い、宿主人との懇談会など、館内での実務作業を中心に密着体験を実施した。

 活動期間中には各施設に合ったユニークな宿泊プランを作成してもらい、優秀な宿泊プランに関しては後日、ホームページや宿泊予約サイトなどで実際に販売するという試みも行われた。

 最終日の閉校式では、若旦那から学んだ各宿の経営理念を踏まえ、密着体験を通して考えた宿泊プランをグループごとに提案発表した。

 宿泊プランのうち「雪国の宿高半」グループが発表した、父と息子をターゲットにした「雪国でかまくら作り体験!冬休みに行く初めての男2人旅★」が全旅連青年部賞を受賞。大切な奥様に普段素直に言い出せない感謝と愛の気持ちをもう一度「1日1組限定=セカンド・プロポーズ応援プラン」を発表した「別邸仙寿庵」グループがリクルート賞を受賞した。

 このほか、個人賞としてプラン発表中もっともプレゼンが上手く、話し方が美しかった柳沢実紀さん(立教大学観光学部3年)の〈女性3名から・忙しい女性のための白雪姫プラン〉が若旦那賞を受賞した。

 今回の研修は、若い世代に就職先として旅館に興味を持ってもらうことを目的として企画されたもので、実際に参加した学生からは「通常のインターンシップでは経験できない、経営の裏側を見ることができて、とてもいい体験ができた」という声が多く聞かれた。

 本プロジェクトを主催した全旅連青年部・夢未来創造委員会の宮澤知晴委員長は「今回参加した学生のほとんどが、旅館の若旦那・若女将がどんな環境でどのような役割をしているかを知らない生活を送っていました。それは古くからの旅館へのイメージやさまざまな産業の氾濫により旅館の魅力を体験できる機会がなかったからだと思います。私たち夢未来創造委員会は今期、日本学生観光連盟との2年間のサポーター契約を結び、学生達と交流するチャンスに恵まれました。現役の大学生が今、何を考え、何を感じ、何を求めているかを知り、観光業界のなかでも中枢を担う宿泊業界への関心と興味を持ってもらうために、今回の若旦那・若女将密着体験を企画しました。短い日程ですが、若手経営者の『かばん持ち』として日常を体験し、地域との連携や観光客誘致のための仕掛け作りなど、いろいろな様子を見て体験し感じ取ってもらう事ができたのではないでしょうか。彼らが将来、旅館のスタッフや経営に携わる優秀な人材となるきっかけ作りになれば、これ以上うれしいことはありません。ご協力いただいた皆様、ありがとうございました」とコメントした。

1千人を東北へ派遣(JATA)

商品開発で復興支援

 日本旅行業協会(JATA)はこのほど、12月3―4日の2日間、協会役員や会員会社社員、国内外の観光関係団体など計1千人を東北6県に派遣すると発表した。「東北復興支援1000人プロジェクト」と題し、菊間潤吾会長を委員長とする同名の推進委員会も設置。東日本大震災で落ち込んだ東北地方の観光需要を旅行会社本来の役割で盛り上げるため、現地視察を通して商品開発につなげるのが狙い。

 震災から1年半が経過し、東北の観光は回復基調にあるが、直接的な被害や風評で回復が遅れている地域もある。こうしたなか、観光庁が実施している「東北観光博」などで官民あげて需要回復に努めているが、JATAとしてより具体的な復興支援を形にする。国内・訪日の担当者だけではなく海外専門の旅行会社や政府観光局、報道関係者にも参加を呼び掛けるという。

 9月14日に開いた会見で、菊間会長は「JATA会員にもっと国内旅行へ目を向けてもらいたい」とし、「大きなイベントを開くことで、会員の意識向上につながる。一過性ではなく、我われが継続的に東北の観光振興に取り組み、商品化して送客を続けることが一番の支援だ」と考えを述べた。

 プロジェクトは、東北6県(青森と岩手、宮城、秋田、山形、福島)の各県に100―350人を派遣し、実施踏査を行う。現地視察に加え、セミナーや現地担当者らとの意見交換も行う。内容は各県と調整中だが、各県4コースを設ける予定で、着地型旅行商品や体験型旅行商品など新商品開発のため、新しい魅力を発見するコースを想定する。コース案は「世界遺産『平泉』と遠野・釜石コース」「土湯・温泉遊びと会津・八重の軌跡をめぐるコース」など。東日本旅客鉄道(JR東日本)の協力で、東北新幹線の専用貸切列車を利用するが、福島方面は貸切バスコースのみ。

 募集は10月中に開始予定で、全国のJATA支部で受け付ける。 

通訳の保険を開始、日本旅館協会と損保ジャパン

 5カ国語の24時間通訳も

 日本旅館協会(佐藤義正会長)はこのほど、損害保険ジャパンと共同で「外国人宿泊客サポート費用保険」を開発し、12月1日から保険利用施設に対して24時間365日5カ国語対応の電話通訳サービスを提供する。

 「外国人宿泊客サポート費用保険」は、日本に住居を持たない外国人が、保険加入の宿泊施設でチェックインからチェックアウトまでの間に、体調不良やケガにより医療支援を要望した場合に、宿泊施設がその対応に要した費用を保険金として受け取れる。対象費用は、(1)医療機関での医師、看護師と外国人宿泊客との間の電話通訳費用(2)医療機関まで往復した公共交通機関の交通費――の2点。

 附帯サービスの「24時間多言語電話通訳」では、24時間365日、英語・中国語・韓国語・ポルトガル語・スペイン語の5カ国語の電話通訳サービスを受けられ、日常業務のなかで発生した言語トラブルに安心して対応できるようになる。

外客数77万6千人、8月では過去2番目(JNTO)

 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)が発表した2012年8月の訪日外客数推計値は、前年同月比42・0%増の77万5900人だった。過去最高だった10年8月と比較すると3・3%減だが、次いで2番目となった。

 また、中国、台湾、タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナムは8月の過去最高を更新した。とくに、マレーシアとインドネシアは、イスラム教の断食明け大祭の連休で、大幅に増加した。

 各市場の動向をみると、韓国は前年同月比37・4%増の20万2千人となったが、10年同月比では18・2%減と、放射能汚染の不安の継続に加え、円高の長期化が影響した。

 中国は、前年同月比88・8%増の19万3800人。10年同月比でも13・0%増で、夏休みの家族旅行需要の回復や、個人旅行需要の増加、大型クルーズ船の寄港などにより、8月では過去最高を記録した。

 台湾は、前年同月比27・9%増の12万6800人と単月で過去最高。10年同月比でも11・8%増と2ケタのプラスとなった。

 そのほか、米国は前年同月比13・6%増の5万3200人、香港は同15・8%増の4万4500人、タイは同36・7%増の1万1800人となった。

 なお、出国日本人数は、前年同月比10・0%増の196万5千人。10年同月比では11・8%増となった。

環境相らに要望書提出(日本温泉協会)

環境省・坂本参事官(右)に要望書を提出
環境省・坂本参事官(右)に要望書を提出

「無秩序な地熱開発に反対」

 日本温泉協会(廣川允彦会長)は9月6日、自然保護・温泉資源保護・温泉文化保護の立場から「無秩序な地熱開発に反対」する要望書を環境省の細野豪志大臣、国土交通省の羽田雄一郎大臣、経済産業省の枝野幸男大臣らに提出した。

経産省資源・燃料部(右)にも訴えた
経産省資源・燃料部(右)にも訴えた

 日本温泉協会は2012年度会員総会で、地熱発電所周辺の自然環境や、既存の温泉地の温泉資源と温泉文化に悪影響を及ぼす恐れのある「無秩序な地熱発電開発に反対」することを決議。さらに、社会に悪影響(混乱)を及ぼす無秩序な開発を回避するために、(1)地元(行政や温泉事業者等)の合意(2)客観性が担保された相互の情報公開と第三者機関の創設(3)過剰採取防止の規制(4)継続的かつ広範囲にわたる環境モニタリングの徹底(5)被害を受けた温泉と温泉地の回復作業の明文化――の5点を提案している。

 要望書を提出したのは、廣川会長、佐藤好億地熱対策特別委員長、寺田徹専務理事。

 提出先は次の通り。

 【環境省】細野豪志大臣▽伊藤哲夫自然環境局長▽坂本文雄自然環境局自然環境整備担当参事官
【国土交通省】羽田雄一郎大臣▽井手憲文観光庁長官▽新垣慶太観光地域振興部観光資源課長
【経済産業省】枝野幸男大臣▽高原一郎資源エネルギー庁長官▽保坂伸資源・燃料部政策課長▽福島伸一郎資源・燃料部燃料政策企画室長