11年春に基本計画改定、各ワーキングチーム検討状況報告

11月22日に開かれた第2回会合
11月22日に開かれた第2回会合

 11月22日、国土交通省で第2回観光立国推進本部が開かれた。同本部は観光立国実現に向けて省庁間の連携を強化し、政府として一体的・総合的に観光政策を推進するために設置。国土交通大臣を本部長とし、全府省の副大臣などをメンバーとする。第2回は本部の下に設置する外客誘致ワーキングチーム、観光連携コンソーシアム、休暇分散化ワーキングチームの検討状況や観光立国基本計画の改定スケジュールを報告。意見交換が行われた。

  池口修次国土交通副大臣は「観光は地域経済を支える産業の背骨として、内需を牽引していく基幹産業。地域活性化や国民の生活の質の向上を実現し、元気な日本を復活させる起爆剤にしていきたい」とあいさつした。

  外客誘致ワーキングチームでは、中国を含めたアジアからの観光客取り込みを重点課題とし、5月、中国人観光客の「査証容易化」について検討を行った。

  なお観光庁では外客誘致について、2013年1500万人、2016年2千万人、2019年2500万人を目標としたロードマップを描く。溝畑宏観光庁長官は09年の入国者数が韓国782万人、シンガポール749万人に対し、日本が697万にとどまっていることを示し「素晴らしい観光資源を持っていながら日本よりも人口の少ない韓国、シンガポールの後塵を拝している。ここから一気に駆け上がりたい」と話した。

  観光連携コンソーシアムではニューツーリズム、医療観光、産業観光など、多様な観光メニューについて、関係省庁の連携による総合的な振興策の検討を行った。溝畑長官は「歴史的文化財や自然環境などと観光の連携については、国が率先してリーダーシップを取るべき分野。その他の観光連携分野については各省局長クラスの幹事会による施策のフォローアップが必要」と語った。

  休暇分散化ワーキングチームでは、休暇分散化による効果について関係団体からヒアリング調査を実施。全国展開するサプライチェーンや本支店間の連絡調整、銀行決済への影響といった企業活動における問題点や、通勤先や通学先の所在地により家族・友人の休みが異なる懸念などが指摘された。溝畑長官は「休暇分散化はメリット、デメリットがあるなか、国民の生活に根ざしているので国民的な合意形成が不可欠。国民会議や世論調査、ワーキンググループでの議論を踏まえながら検討していきたい」と語った。

  観光立国基本計画の改定は、観光をめぐる情勢の変化などを踏まえ、おおむね3年を目途に見直しを行うもの。交通政策審議会観光分科会や観光立国推進本部の各ワーキンググループ、業界・自治体からの要望、パブリックコメントなどを踏まえながら改定し、2011年の春ごろの閣議決定を目指す。

  ちなみに10年目標の訪日外客数1千万人、海外旅行者数2千万人、国内における観光消費額30兆円、国内旅行における宿泊数4泊、国際会議開催件数252回に対し、現状は679万人(09年)、1544万5千人(09年)、23・6兆円(08年度)、2・36泊(08年度)、538回(09年)〈従来基準では246回〉。

事業仕分けに「残念」、予算確保に尽力

 観光庁の溝畑宏長官は11月24日に会見を開き、事業仕分けで観光庁の7事業が廃止や予算半減などの厳しい判定結果を受けたことについて、「残念」「納得いかない」などの声をあげ、全力で予算確保に取り組む旨を話した。

 昨年、国の成長戦略の柱として「観光」予算が大幅増となったものの、事業執行半年で大幅削減の判定となったことに対し、「期待していた地方自治体や民間に対して申し訳ない。政務3役と協議しながら、全力で予算確保に努める」と力強く語った。

 中国を除き3分の1へ削減と判定されたビジット・ジャパン事業については、「効果測定の意識は高く、訪日外客が過去最高の数値で伸びているなど、実際に効果も出ている」と自信を見せた。

 予算計上の見送りとなった国際会議の開催・誘致については「納得いかない」とし、「民間や自治体ではリスクが大きく時間もかかるので、国が先導するべきだ」と強調した。予算10億円を計上する韓国やシンガポールを引き合いに出し、「世界と逆の動き。MICEで世界5位となり、シンガポールを抜こうというときに、水をかけるようなものだ」と不満を述べた。

 国内5事業に対しては「指摘のあった効果測定などもう1度見直しが必要だが、効果が出始めているのでしっかりと進めたい」と話した。

 観光立国推進基本計画見直しの検討状況については、「前提条件である社会情勢が変化している」と、現在の5つの目標自体の変更の可能性も示唆し、「目標値の設定など、今の社会情勢に合ったものにし、来年春までに閣議決定したい」と話した。

 また、11月17、18日には中国国際旅游交易会に参加するため中国を訪問し、中国国家旅游局の邵琪偉局長と尖閣諸島沖事件以降初めてとなる会談を開いたことを報告。さらに中国の旅行会社とも懇談した結果、訪中の日本人客が減り、中国側も危機感を持っていることを話した。今後について、「年末年始や2月の春節に向けて大型のPR広告を展開していく」と、落ち込んだ訪日中国人客のV字回復に向けて意気込みを語った。

大賞は松之山温泉支部、旅行新聞新社賞は長野県

青年部長賞の新潟県松之山温泉支部青年部(右)
青年部長賞の新潟県松之山温泉支部青年部(右)

旅行新聞新社賞の長野県青年部(右)
旅行新聞新社賞の長野県青年部(右)

 全旅連青年部全国大会では、青年部らしい若々しく、アイデアと活力がみなぎる事業活動を表彰する青年部褒賞制度の表彰式が行われた。今回は全国の都道府県支部やブロックから過去最高となる69事業がエントリーされた。事業の主体性や、地域を巻き込んだ協調性などを主眼に置いて審査を行った。

  グランプリの「全旅連青年部長賞」は、新潟県松之山温泉支部青年部の「おいしい朝ごはんプロジェクト『里山の朝まんま』農商工連携で里山の原風景を守れ!」が受賞。副賞として50万円が贈られた。「準全旅連青年部長賞」は、山形県かみのやま温泉旅館組合青年部の「かみのやま温泉 ゆかたの似合う町づくり事業」が受賞し副賞20万円を獲得。「全旅連青年部OB賞」は、神奈川県湯河原温泉支部青年部の「日本の情緒~十五夜の宴」が受賞し副賞10万円を得た。

  旅行新聞新社賞には、長野県青年部の「世界に誇る長寿県『長野青年部』プロデュース~第4の味・健康長寿食の開発事業~」が受賞し、副賞として10万円が贈られた。

井上体制から横山体制へ、766人結集し、バトンタッチ

井上善博部長(右)と横山公大次期部長
井上善博部長(右)と横山公大次期部長

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会青年部(井上善博部長)は11月25日、島根県松江市のくにびきメッセで「第20回全旅連青年部全国大会in縁結びの地しまね」を開き、全国から766人の青年部員が一堂に会した。

  「誇りば持とう青年部~『誇り』『絆』『友情』~」をテーマに、各委員会などで活動してきた井上体制2年間の集大成の場として、委員会報告、青年部褒賞表彰式、懇親パーティーなどで盛り上がりを見せた。

  井上部長は「今期は全国から150人近い出向者を迎えることができ、本当に感謝の気持ちでいっぱい。我われ青年部は、次代を担う責任世代として我われの業界の発展、地位の向上、さらには個々の経営力の強化などを勉強し、さまざまな問題意識や危機意識、当事者意識を持ちながら活動してきた。たかが青年部、されど青年部だと感じている」と語った。また、「私の期で、次期・20代青年部長に2人の立候補の届け出があり、初めて47都道府県部長による選挙を今年9月に実施した。『次は自分が青年部長をやりたい』という気概を持った人材がたくさんいる。これは未来に希望が持てる業界であることの証明」と次期に期待の言葉を投げかけた。

  横山公大・次期青年部長は「2000年11月28日に兵庫県で第15回全国大会が開かれ、不安と期待を持って私は初めて青年部の全国大会に参加した。会場の一番後ろに座り、舞台上で輝く先輩たちに憧れの気持ちが湧き起った。それから10年が経ち、今日は私にとって新しい夢の一歩を踏み出すことになった」と述べた。「来期のテーマは『~利他精神~夢を語り背中を魅せる』。私は旅館が大好き。日本を代表する宿文化にたくさんの夢を掲げて、夢に溢れる業界にしたいと本気で考えている。主役は皆さん一人ひとり。来期は1人でも多い出向者を願っている」と語った。

No.266 京浜工業地帯の夜景クルーズ - 工場夜景を新しい観光資源に

京浜工業地帯の夜景クルーズ
工場夜景を新しい観光資源に

 近年、各地域が産業観光で地域活性化をはかろうと取り組んでいる。そのなかでも企業の工場は、内部の見学から外観の観賞まで観光客にとっても人気が高い資源だ。ケーエムシーコーポレーションは、京浜工業地帯の夜景を海の上から観賞する工場夜景クルーズの先駆者として、2008年に運航を開始。今年11月4日には、神奈川県の第1回かながわ観光大賞を受賞し、県を代表する観光資源としても認められた。その事業経緯やプランの魅力を紹介する。

【飯塚 小牧】

第1回かながわ観光、大賞魅力ある観光地づくり部門
先駆性が評価され受賞

 神奈川県が11月4日に行った「第1回かながわ観光大賞」の表彰式で、ケーエムシーコーポレーション(熊澤喜一郎社長)の「工場夜景ジャングルクルーズ」は、「魅力ある観光地づくり部門」で大賞を受賞した=既報。これは観光立県を掲げている同県が今年から創設した賞で、県内への誘客増や地域活性化などに大きく貢献した取り組みを表彰するもの。このほか「観光プロモーション部門」「観光による地域活性化部門」「受入体制おもてなし部門」「外国人観光客部門」があり、それぞれの部門で大賞を選出した。

松沢知事(左)から熊澤社長(右)に表彰状
松沢知事(左)から熊澤社長(右)に表彰状

 同日、表彰式に出席した同県の松沢成文知事は「工場夜景ジャングルクルーズ」に対し、「神奈川県には歴史、文化、自然と多様な観光資源があるが、これに工場夜景という新たな資源を生み出した。羽田空港の国際化に伴い、来日される外国人観光客にとっても神奈川の魅力がまた1つ増えたのではないか。今は、他の工業地帯でも類似の見学ツアーが開催されているとのことだが、この先駆性は大いに評価されるべきだ」とコメントし、受賞を称えた。

 また、ケーエムシーコーポレーションの熊澤社長は「受賞を契機に、お客様の特別な時間とクルーズを通した新しい価値の創造、という我われのミッションを再確認し、今後も新商品の開発で観光に尽くしていきたい」と喜びを語った。同社は、マリーナ運営を中心に展開する一方、1998年にパーティークルーズ事業を開始。2004年には旅客定期航路事業許可を取得した。――

 

※ 詳細は本紙1403号または日経テレコン21でお読みいただけます。

トラベルの営業益18%増、三木谷社長「近い将来国内2位に」

 楽天(三木谷浩史会長兼社長)が11月9日に発表した2010年12月期第3四半期決算によると、営業利益は前年同期比14・5%増の442億200万円で、第3四半期では過去最高となった。売上高は同16・4%増の2525億5600万円、経常利益は同15・4%増の431億1500万円、純利益は44・2%減の264億5900万円。

 EC事業の主力・楽天市場は、冬物の出遅れがあったものの、流通総額が同17・3%増と好調で、EC全体の売上高は同24・9%増。ポータル・メディア事業は同34・9%増、トラベル事業も同19・9%増といずれも高い成長で増収増益。

 トラベル事業は、前年に比べシルバーウイークの反動があったものの、夏の需要取り込みが奏功。売上高は171億6800万円、営業利益は同17・6%増の75億5100万円。三木谷社長は「レジャーが好調で、健全な伸びを果たした」と語った。日本航空(JAL)との提携で9月1日から「JAL楽パック」を売り出し、ダイナミックパッケージの強化を行ったことや、スマートフォンに対応したアプリケーションの開発を行ったことなどがプラス要因。

 三木谷社長は4―6月の各社の伸び率などを提示し、「大手旅行会社のなかでも大きな存在を示してきた」とし、国内の取扱額が4位になったことで「近い将来2位になり、最終的にはトップを目指す」と意気込んだ。

観光関連も例外なく事業仕分け、廃止や縮減続出

 菅政権の「事業仕分け」第3弾が11月15日から始まり、観光庁関連では、「観光地域づくりプラットフォーム支援事業」が予算要求の半減、「ビジット・ジャパン事業」が予算要求の3分の1縮減、「国際会議の開催・誘致の推進」が予算計上の見送り、「着地型旅行商品流通促進支援事業」「ユニバーサルツーリズムネットワーク構築支援事業」「スポーツ観光支援事業」は廃止と、厳しい判定が下された。

 前回の仕分けで「縮減」と判定されながらも増額を要求した「ビジット・ジャパン事業」には、海外での広告宣伝の効果がどれだけ訪日客増加につながるかの検証が不十分と指摘された。

“旅行先選びのお手伝い”海外キャンペーンを刷新

 旅行総合情報サイト「フォートラベル」(井上英樹社長、東京都新宿区、http://4travel.jp/ )はこのほど、海外旅行ガイドページを大幅にリニューアルした。

 同社が今年5月、サイト利用者を対象に実施したアンケート調査によると、旅先選定の際に参考にする情報源では「旅行情報サイト」と回答した人が約5割に達し、「ニーズが高いことがわかった。また、『目的重視』で旅行先選びがトレンドとして年々増加している」ことを受けて、旅行者のニーズに応えられるサイトへリニューアルした。コンセプトは“旅行先選びのお手伝い”。同社がこれまで蓄積してきたユーザーからのリアルな旅行情報を、観光地やホテル、ショッピングなどの各カテゴリーに分けてランキングやチャート式で紹介。さらに、サイトデザインやナビゲーションも一新した。さまざまな切り口からエリア情報を提供することで、利用者の旅行先選びをサポートする。

 今後は国内版のリニューアルも予定している。

LCCツアー実験的に、長期的には座席の買収も(JTB)

 JTBの田川博己社長は、11月11日に行われたニュージーランドのジョン・キー首相兼観光大臣のJTB訪問後の囲み取材で、JTBが発表したLCCを利用したツアー商品についての質問に対し、「需要をはかるため、あくまで実験的」と語った。

 「整った機内環境や手厚い機内サービスに慣れている日本人に、LCCがどれだけ受け入れられるかは未知数。国内など短時間の移動にはよいが、長距離移動やビジネスマン、高齢者には厳しいのでは」と疑問を呈すも、「学生など確実に需要はある」と話した。「需要に対して適切な商品開発はするが、全体の需要がLCCに流れるわけではない」と大幅な路線変更は考えていないことを明かした。

 また、航空座席の買い取りについて、「今後、手数料だけではなかなか生き残れない。日本の独特のスタイルがあるので現状は難しいが、中長期的にはやらなくてはいけないだろう」と長期ビジョンでの航空座席の買い取りへ意欲を見せた。

旅館軒数5万軒割る、前年から1879軒減少

 厚生労働省がまとめた2009年度の「衛生行政報告」によると、2010年3月末現在で営業している旅館軒数は4万8967軒となり、5万軒の大台を割った。09年3月末時点では5万846軒で、この1年間で1879軒減ったことになる。【次号詳細】
 一方、ホテルの営業軒数は9689軒となり、1年間で86軒増えた。