国土交通大臣賞はワールド航空サービス

兼高さん(中央)に特別賞授与
兼高さん(中央)に特別賞授与

「応募103作品、地方の応募少なめ」

 日本旅行業協会(JATA)はこのほど、「ツアーオブザイヤー2010」(兼高かおる審査委員長)の各部門のグランプリ作品を選出し、9月24日に東京ビッグサイトで開いた「JATA世界旅行博2010」のなかで表彰式を行った。最高賞の国土交通大臣賞には、応募総数103作品(海外82点、国内21点)のなかから、ワールド航空サービスの「韓国のブルートレイン『ヘラン号』でゆく韓国鉄道周遊と城壁の町水原の旅」(パッケージ旅行部門グランプリ)が輝いた。

 観光庁長官賞は、海外旅行でJTBワールドバケーションズの「ルックJTB ケニア大接近!」(審査員特別賞)、国内旅行で新和ツーリストの「花の観察会」(同)が受賞した。

 同賞は、旅行業の企画力やマーケティング力の向上などを目的に、海外旅行・国内旅行で最も優れた旅行商品を表彰する。今回の対象は2009年7月から10年6月までに催行された募集型企画旅行。企画の独創性や販売・集客性、価格の整合性などが審査のポイントとなる。パッケージ旅行部門や市場拡大貢献部門、審査員特別賞などがあり、受賞作品のなかから、国土交通大臣賞と観光庁賞を決定する。

 今年の応募作品について、JATA海外旅行業務部の田端俊文部長は「厳しい状況のなかでも、市場開発や需要拡大に各社努力している。審査員からも『作品のレベルは上がってきている』と評価は高かった」と総括。一方、「残念なのは地方からの応募が少なく、受賞にも入っていなかったこと。今後は、広く応募いただき励みになるような賞にしていきたい。賞を取った商品にどうメリットを付加し、ビジネスにつなげていけるかが課題」とした。

 前記以外の受賞作品は次の通り。

 【海外旅行】
市場拡大貢献部門グランプリ 農協観光「カンボジア農村精米機寄贈キャンペーン」▽デスティネーション開発部門グランプリ トラベル世界「ウクライナ美都物語」▽審査員特別賞 近畿日本ツーリスト(KNT)水戸支店「茨城空港開港記念 復興航空台湾チャーター&茨城ゴールデンゴールズ(欽ちゃん球団)」

 【国内旅行】
パッケージ旅行部門グランプリ 近畿日本ツーリスト(KNT)「トカラ皆既日食観測ツアー」▽審査員特別賞 日本旅行西日本旅行部「おもしろ旅企画ヒラタ屋各種関連ツアー」

 【兼高さんに特別賞】
9月24日の世界旅行博では、海外旅行市場の拡大や発展に貢献したパートナーを表彰する「JATAツーリズム大賞2010」の表彰式も実施。今回は特別賞を設けて日本旅行作家協会会長の兼高かおるさんに授与し、長年の功績を称えた。

 観光局部門はクロアチア政府観光局、パブリシティー部門はテレビ朝日の「世界の車窓から」が受賞した。

トラベランドを分割継承、法人事業は法人東京へ

 JTB(田川博己社長)は10月4日に会見を開き、2011年4月から店舗ネットワークと法人事業の再編、国内商品事業部の仕入機能強化を行うと発表した。インショップを中心とした小規模店舗を全国で運営するJTBトラベランド(415店舗、社員3200人)を、JTBの地域事業会社(JTB北海道・東北・関東・首都圏・東海・大阪・中国四国・九州)へ分割継承し、経営を統合する。

 利益率のいいトラベランドの「小規模利便性重視型店舗」を今後のビジネスモデルとし、店舗展開を実施。重複マーケットにおいては店舗を整理し、空白マーケットへ出店を進める考えだ。マーケットが集中する首都圏などでは、高付加価値を提供する新たなコンセプトを持つ専門店を展開。県庁所在地や地方中核都市では、交流人口の拡大と地域活性化をにらみ、DMC拠点として展開していく予定。

 法人事業では、東京(11店舗)・千葉(3店舗)・神奈川(4店舗)地区の法人営業、官庁営業、教育旅行営業部門をJTB首都圏からJTB法人東京へ集約する。地域密着の観点から埼玉地区(6店舗)はJTB関東へ継承。スキル・ノウハウのさらなる集中化・高度化をはかり、地域交流、MICE事業、セールスプロモーション事業などに力を入れる。

 また、国内商品事業部の現地仕入部門を強化し、マーケットへの迅速な対応やサプライヤーとの関係強化による企画商品の高付加価値化、ラインナップ強化を目指す。さらに、インバウンド、地域交流ビジネスの販売拡大を目指し、宿泊施設営業の要員増強も行う。

 なお、今回の店舗再編により、JTBトラベランド社員の人員整理はせず、全員を地域事業会社へ転籍させる考え。また、当面はJTBトラベランド自体も存続させる見通し。

車中泊のルールづくりへ、東北の「道の駅」で社会実験

 近年、「道の駅」で増加している車中泊利用者の長時間駐車や、マナー違反によるトラブルを防ぐため、国土交通省は道の駅敷地内の一部に、車中泊専用車両区画や仮設設備を設置する社会実験を行う。

 東北「道の駅」車中泊研究会が提案したものが採用された。

 実験は、山形県飯豊町の道の駅「いいで」(10月8―17日)と、福島県いわき市の道の駅「よつくら港」(10月22―31日)の2カ所で行われる。車中泊専用区画の設置規模は、「いいで」が12台程度、「よつくら港」が17台程度。加えて、流し場や洗濯機、テントの設置、ゴミの引取サービスなども行う。車中泊専用区画は先着順で、アンケート調査を実施する。車中泊利用者の実態やニーズ、受入側の施設の状況、一般利用者からみた課題などを把握することで、今後の道の駅車中泊のルールづくりについて考える。また、道の駅の新たな活用策を提言する考え。

 問い合わせ=東北「道の駅」車中泊研究会事務局(NPO法人奥州街道会議) 電話022(722)3380。

対中交流、軸はぶれない、状況見極め臨機応変に対応

 観光庁の溝畑宏長官は9月29日に会見を開き、中国との観光交流について、軸はぶらさず、交流を進めていくことの重要性などについて語った。

 溝畑長官は、日本政府観光局(JNTO)の中国事務所からの報告により、9月20、21日に、中国の地方政府観光局から地元旅行会社へ、旅行自粛を促す口頭指導があり、9月28日の時点で口頭指導は解除されていないことを明かした。

 中国からの公務やインセンティブ旅行はキャンセルがかなり出ており、国慶節の期間の個人旅行のキャンセルは少ないながら、新規予約は昨年と比べると大幅に減っているという。溝畑長官は現在の状況を踏まえ、「この時期に積極的にプロモーションを行うのは、費用対効果の面で得策ではない。状況を見極め臨機応変に対応したい」としつつも、「日中の観光交流の拡大は必須であるとの軸はぶらさず、着実に交流を積み重ねていく」と中国との観光交流ついて話した。

 また、JNTOが9月29日付けで、中国語HPや中国の現地旅行会社やメディアへのメールで、訪日誘客のメッセージを発信したことを紹介し、溝畑長官は「適時的確に対応してくれた」と評価した。

 10月21日にオープンする羽田空港第4滑走路については、羽田から国内線へ乗り換えて地方への旅行拡大となることを見越し、「新たな観光ルート発掘、インバウンドの起爆剤となれば」と期待を寄せた。

 今年度末で一区切りを迎える観光立国推進基本計画では、「交通政策審議会の観光分科会や観光立国推進本部で次期に向けて見直し、1、2月までには取りまとめ、3月には閣議決定し通常国会へ報告したい」とスケジュールについて語った。

 また、休暇分散化について、国民的なコンセンサスを作るため、国民各界を代表する委員から構成される「休暇改革国民会議」を立ち上げることを報告。第1回は10月6日に、新日本製鐵の三村明夫氏を座長に開催。11月末の第2回あたりを目途に休暇分散化案を固め、来年の通常国会に間に合わせるため、「3月に予定する第3回までには最終的な取りまとめをしたい」とした。

No.261 上牧温泉の健康プラン - 温泉病院核に滞在型企画を

上牧温泉の健康プラン
温泉病院核に滞在型企画を

 群馬県・みなかみ町の上牧温泉旅館協同組合(石坂欣也理事長)は、2011年7―9月にJRグループと県が展開する「群馬デスティネーションキャンペーン」(群馬DC)に向け、温泉地内転泊のプランとして「月夜野 上牧温泉ダイエットプラン(仮称)」を企画した。9月16、17日の1泊2日で報道関係者など約10人を招いたモニターツアーを実施し、企画内容の体験を通した意見交換会などを行った。取り組みの経緯やツアー内容などを紹介する。

【飯塚 小牧】

「他産業連携で地域活性化」

 取り組みのきっかけは、来年実施される12年振りの群馬DC。現在、県内では、各市町村が観光素材の洗い出しと磨き上げに精を出している。みなかみ町は18の温泉地や近年、国内外でも話題のアウトドアスポーツの集積地という個性を生かした展開をしているが、合併した広域の町ということもあり、旧地区単位での素材を求められた。 そこで月夜野地区は、石坂理事長やみなかみ町観光協会の活動なども多く手掛ける辰巳館の深津卓也社長など若旦那衆を中心に、改めて自分たちの地域の魅力を考えることになった。

活発な意見交換会
活発な意見交換会

 当初はなかなか方向性が決まらなかったというが、石坂理事長は「関係者の方々と話しているなかで、上牧温泉病院があるじゃないかと指摘された。自分たちは、あるのが当たり前だと思っていたので、はっとさせられた」と改めて自分の地域の魅力に気付いた。温泉が多い群馬県内でも、温泉病院があるのは、上牧温泉と沢渡温泉のみ。この大きな特徴と温泉そのものを生かした取り組みを地域が一体となって展開するため、「温泉病院を核に滞在型の健康プランを企画しようということで、病院の協力を得て各旅館の転泊プランに行き着いた」。そのなかで、ラフティングを中心としたアウトドアスポーツを展開しているカッパクラブの小橋研二社長も参加してくれることになり、温泉とアウトドアスポーツなどの体験を組み合わせるという大枠ができ上がった。

 

※ 詳細は本紙1396号または日経テレコン21でお読みいただけます。

信州DCに向けて、ネット3社と共同誘客

 長野県旅館ホテル組合会(小野誠会長)は、10月から12月にかけて展開される信州DC(デスティネーションキャンペーン)に合わせ、大手ネットエージェント3社(楽天トラベル、じゃらん、るるぶトラベル)と共同のプロモーションを行う。DCの歴史のなかでも初の試み。各サイトは、「信州DC」特集ページを設置し、利用者に信州の魅力をPR。ネットからの宿泊予約の取り込みをはかる。取り組みは9月1日から11月30日まで。

 9月21日、長野県東京事務所で行われた説明会で小野会長は「1300会員の共通のメリットとして、実際の誘客につながるアクションを起こしたかった。ネットエージェントには登録しているが活用しきれていない宿も多い。DC後の集客にもつながるものにしたい。信州には隠れた魅力、食材、お宿があると、広く周知していきたい」と語った。

 武井功担当委員長は「ネット販売で陥りがちな安売りはやめようというのも大きな課題。値付けは旅館自ら行う。商品を磨き上げて単価をアップさせたい。宿の魅力づくりはお客様との真剣勝負」ともう1つの課題をあげた。

 各サイトの特集ページでは、長野県をエリアごとに分け、全組合会の宿泊プランを掲載。また「ココロに効く」や「カラダに効く」など、信州DCのテーマごとの切り口でも宿泊プランを紹介する。信州DCに合わせ旅館ホテル組合会青年部を中心に開発した健康食「まぁーず」についても取り組む宿をまとめて紹介。「まぁーず」とは信州の食材、「味噌」「酒粕」「野沢菜」を使う健康食。基本は調味料なので、さまざまな食材と合い、アレンジも自由自在という。

うまさぎっしり新潟、旅行関係者120人が交流会

「観光PRイベント1500人来場」

 新潟県産業労働観光部観光局と、新潟県観光協会、新潟県旅館組合は、9月14日にホテルメトロポリタン池袋(東京都豊島区)で、16社120人の旅行エージェントを招いて、商談会と「うまさぎっしり新潟」観光交流会を開き、意見交換や交流をはかった。

 新潟県旅館組合の野澤幸司理事長は冒頭で「昨年はJRと旅行会社の方に大変お世話になった。今日は、新潟からのスタッフ70人がおもてなしをするので、新潟の食材やお酒を堪能してほしい」とあいさつした。

 泉田裕彦新潟県知事は「昨年は新型インフルエンザやリーマンショックの影響で、各県とも軒並み入込み数を落としているなか、新潟は6・8%増となった。これはひとえに、新潟が地域の宝を大切にしているのと、送客に力を入れていただいている旅行会社の皆さんのおかげだ」と感謝の意を述べた。

 交流会では、新潟産の食材をふんだんに使った料理33種と、〆張鶴や久保田などの地酒12種、新潟女将の会が作る「温泉街スイーツ巡り」8品がふるまわれた。

 また、交流会前には、8月11日に起きた佐渡汽船カーフェリー故障による運休と観光振興策に関する説明会が行われ、大野裕夫新潟県副知事や、高野宏一郎佐渡市長、木村英太郎佐渡観光協会理事長、小川健佐渡汽船社長などがあいさつした。

 佐渡汽船の小川社長は迷惑をかけたことをお詫びし、「原因究明や、メンテナンス体制の見直しと充実、万一の際の対応マニュアルの整備に力を入れる」と話した。運休をしていた佐渡汽船「おおさど丸」は10月1日から順次復旧し、11月からは運休前のもとのダイヤに戻る予定という。

 翌日、翌々日には、日本橋・にいがた館NICOプラザで、新潟の秋の味覚をひと足早く体感できる新潟県観光PRイベント「うまさぎっしり新潟の秋」を開催。県内の温泉地選りすぐりの逸品を試食・試飲・購入ができ、2日間で1500人ほどが来場した。

地域の個性を発信、きたかた喜楽里博

 福島県喜多方市で11月20日まで、キラリと光る個性的な取り組みに「喜」多方は「楽」しさいっぱいの「里」というメッセージを託し発信する催し「きたかた喜楽里(きらり)博」が開かれている。

 期間中200以上のイベントを実施している。特定の博覧会会場を設けず、パビリオンを街並みや山々に、案内人を喜多方市民に見立てた手づくりの博覧会だ。

 イベントを「歩く」「食べる」「観る」「体験する」「出会う」という5つの区分に分類し、パンフレットやホームページ(http://kirari.kitakata-kanko.jp)で紹介している。

 おもなイベントは、街なかを歩きながら芸術鑑賞をする「蔵のまちアートぶらリー」(10月1―31日)や「岩越(がんえつ)鉄道(=現磐越西線)山都駅開通100周年記念イベント」(10月16、17日)、各地で行われる「そば打ち体験」など。手作りイベントというだけあり、「蔵とラーメン」だけでない、意外な穴場やメニューを見つけられるかも。

 取り組みは昨年に続き2回目となる。06年の市町村合併で新生喜多方市が誕生し、自然体験や歴史・文化、食など、観光素材も多彩になった。博覧会を通じて、これらを一元化し、広くPRするという。

国際観光ホテルの登録に新基準、外客接遇主任の専任など

 観光庁は、これまで日本観光協会が代行していた国際観光ホテル整備法に基づく旅館・ホテルの登録事務を、10月1日から長官自ら実施するのに伴い、新たに登録基準を設けた。施設は外客接遇主任者の選任など、外客が安心して泊まれるような一定の基準を守らなければならなくなる。

 ハード面では外客に対応した館内表示などが求められ、ソフト面では外客接遇主任者に英検3級以上などの要件がつく。申請は宿泊料金や宿泊約款を定め観光庁長官に届け出る。変更も同様。

 問い合わせ=観光庁観光産業課 電話03(5253)8111。

8月の訪日外客数は18.2%増、個人ビザ緩和の中国は57.6%増に

 日本政府観光局(JNTO)が発表した2010年8月の訪日外客数(速報値)は前年同月比18.2%増の80万3300人と10カ月連続で前年を上回った。昨年8月は円高、景気低迷などの影響で同8.4%減と減少したが、今年はその反動が生じ増加幅が拡大した。中国、タイ、フランス、ドイツが8月として過去最高を記録した。

 主な市場別にみると、韓国は同29.3%増の24万6900人、訪日個人観光ビザの発給条件が大幅に緩和された中国は同57.6%増の17万1800人、台湾は同1.2%減の11万3400人、香港は同9.5%増の5万1600人となった。

 出国日本人数は同9.4%増の165万9000人と6カ月連続の増加。