サンバで熱気と歓声、ほろ酔いウォークと共催

温泉街に元気を届けた
温泉街に元気を届けた

 福島県飯坂温泉で7月13、14の両日、夏の恒例行事「第26回ほろ酔いウォーク2012」が開かれた。昨年に引き続き、14日にはサンバパレード「飯坂deサンバ」も行われ、温泉街は熱気と歓声であふれた。

 サンバパレードは、震災後の自粛ムード払しょくや被災者の応援を目的に企画。昨年は浅草サンバカーニバルの常連チーム「アレグリア」がボランティア協力した。今年は飯坂温泉観光協会が同メンバー約50人を温泉街に招いた。

 飯坂温泉駅前で大勢の観客が見守るなか、楽器隊の演奏を皮切りに、温泉街約1㌔のパレードがスタートした。陽気なリズムに誘われ、大勢の観客が沿道を埋め尽くし、1年ぶりに温泉街を練り歩くアレグリアに、大きな拍手が送られた。一緒に踊る観客もいるなど、約1時間のパレードは盛り上がりを見せた。

 夕刻からは恒例の「ほろ酔いウォーク」が開かれた。税込3500円(当日券は同4千円)で、45軒の協賛店から6軒を選んでまわるという飯坂温泉の人気イベント。宿泊(1泊朝食付)と前売り券がセットになったほろ酔いパック(同1万円)も人気だ。参加者は受付後、早速目当ての店に向かっていった。

15万人の参加目指す、10月から別府で芸術フェス

実行委員会のメンバー
実行委員会のメンバー

 大分県別府市で10月6日―12月2日までの58日間、市民主導の国際芸術祭「混浴温泉世界2012」が開かれる。民間企業や行政、NPO法人、教育機関などさまざまな団体が協力する芸術祭で、今回で2回目。2009年の前回は延べ9万2千人を動員したが、今回は15万人を目標にする。総予算は約1億1500万円。

 別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」実行委員会は7月17日、東京都内で会見を開き、山出淳也総合プロデューサーは「前回からさらに地域性を追求したアートプログラムを開催する」と概要を説明した。

 今回は、別府の特徴である8つの温泉郷「別府八湯」から、8つのアートプロジェクトを展開。「8つの想像力の源泉が市内各所に現れる」とし、8カ所で芸術ジャンルを混ぜて各アーティストが作品を発表する。舞台は古い空き屋や商店街などを活用し、まちの活性化をはかる。山出総合プロデューサーによると、各会場は周遊しやすく、1泊2日ですべて鑑賞できるという。

 まちとアートを楽しめるクーポン型金券も発行し、1枚100円相当の券を11枚綴り1千円で売り出す。混浴温泉世界のパスポートのほか、市内の飲食店や温泉で利用できる。混浴温泉世界のパスポートは前売りが大人1700円、当日2千円。中学生以下は無料。

 同時期には別府市内各所で発表される市民文化祭「ベップ・アート・マンス2012」も開催。このほか、混浴温泉世界のパスポート提示で九州各地のアートイベントで特典が受けられるように連携もはかる。とくに、11月3―25日開催の「国東半島アートプロジェクト2012」(大分県国東市、豊後高田市)へは無料で参加できるバスツアーも企画予定だ。

指摘業者28者行政処分も、観光庁が立入検査

 観光庁はこのほど、高速ツアーバスを企画実施している旅行業者に対して行っている立入検査の実施状況を公開した。立入検査を実施した旅行業者59者中、指摘を受けた旅行業者は28者にのぼった。

 井手長官は7月20日の会見で「違反の重いものについては行政処分になるだろう」と語り、処分にまでいかないケースについても「安全対策の強化策の実施状況や順守状況をしっかりと見ていかなくては」と語った。 

世界へ需要回復報告、“下期でリカバリーを”

 観光庁の井手憲文長官は7月20日、6月の訪日外客数が震災前の2010年比で1・4%増となった結果をうけ、世界に対して、震災前の水準への回復や日本の観光の現状について英語でメッセージを発信した。

 日本政府観光局(JNTO)が発表した6月の訪日外客数推計値は震災前の10年比1・4%増の68万6600人となり、震災以降初めて震災前の数値を上回った。これを受け井手長官は、震災前の水準へ回復したことを世界へ英語で発信。「日本を訪問する3つの理由」として、(1)伝統と融合したクールジャパンなど日本が魅力的であること(2)日本への観光需要が完全に回復し、国際会議の開催場所として役立つ準備ができていること(3)正確な放射線量の値や、欧米と比べても厳しい食品の安全基準、治安の良さなど、日本が安全であること――をPRした。

 7月20日の会見で井手長官は「韓国・ドイツ・フランスの戻りは遅いが、ようやく10年比でプラスに転じた意味は大きい」と語り、「1―6月の累計でマイナス3・6%だが、後半でリカバリーできるよう頑張っていきたい」と力を込めた。 

初の震災前超え、6月の訪日外客数

 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)が発表した6月の訪日外客数推計値は、前年同月比58・6%増の68万6600人。震災前の2010年と比べると1・4%増と、震災以降初めて震災前の10年比を上回った。これまでの過去最高の08年を約5千人上回り、6月単月として過去最高を更新した。2012年1―6月累計ベースでは3・6%減となっている。

 放射能汚染への懸念や円高などが訪日旅行の回復に悪影響を与えたが、航空座席供給量の拡大や大型クルーズ船の寄港、個人旅行の回復などによりプラスとなり、プロモーション効果も回復を後押ししている。

 各市場の動向をみると、韓国は10年同月比15・1%減、11年同月比46・5%増の15万2100人。放射能への不安の継続、円高による訪日旅行の割高感が影響した。

 中国は、大型クルーズ船の寄港や個人旅行需要の拡大などにより、10年同月比25・0%増、11年同月比111・0%増の12万9600人と、6月として過去最高を記録。また、上半期(1―6月)でも10年上半期を3万9900人上回る74万3900人と過去最高を更新した。

 台湾は、10年同月比10・4%増、11年比43・3%増の12万5700人。日台間の航空座席供給量の拡大や、個人旅行の増加、団体旅行の本格回復などで、6月単月では08年に次いで多い結果となった。

 香港は、10年同月比6・9%減、11年同月比55・0%増の4万4200人。東日本地域への回復の遅れや円高の進行が影響した。

 タイは、訪日旅行プロモーションの効果で10年同月比36・5%増、11年同月比81・2%増の1万3600人と6月単月で過去最高を記録。上半期でも10年上期を2万400人上回り過去最高を更新した。

 そのほか、マレーシアが10年同月比1・3%増、11年比79・4%増の8400人、インドネシアが10年同月比19・6%増、11年同月比95・7%増の9500人、ベトナムが10年同月比0・4%増、11年同月比29・3%増の3500人と、それぞれ4月単月、上半期ともに過去最高を記録した。

 なお、出国日本人数は、10年同月比12・4%増、11年同月比16・4%増の147万5千人と、6月として過去最高を記録。上半期としても01年上期を約26万8千人上回り、過去最高を更新した。

発着回数30万回へ、関空と伊丹、統合運営開始

 新関西国際空港(安藤圭一社長)は7月1日、関西国際空港と大阪国際空港(伊丹空港)の統合運営を開始したのにともない、3年間の経営方針を示す経営戦略を作成した。これによると、2空港の合計で14年度に発着回数を30万回、旅客数は3300万人、売上は1500億円を目指す。

 7月13日に国土交通省で開いた会見で室谷正裕常務は「2空港が一体となり、1つの主体でみることでお互いの強みを有効的に活用し、関西の航空パイを増やしていきたい」と運営統合への意気込みを語った。

 今回発表した経営戦略によると、基本コンセプトを「空を変える。日本が変わる。」に据え、空港のビジネスモデルの変革を目指す。最終的に完全民間運営化(コンセッション)を目指すため、段階的に補給金の引き下げを行い、自立した経営の実現や事業価値の最大化をはかっていく。

 このための戦略の1つ、「航空成長戦略」はネットワークのさらなる拡大と両空港の特性を踏まえた全体最適をあげる。関空は乗継機能強化などで、国際拠点空港として再生強化をはかる。具体的には、今年度冬ダイヤから国際線着陸料を5%引き下げ、今後3年の間に現行から約10%減少させ、成田空港並みの料金を目指す。伊丹は都市型空港としての利便性向上や環境に優しい空港に向け、低騒音機材導入を促進する料金体系の導入などを検討する。両空港の一体運営としては、アクセス強化や旅行商品開発などで、伊丹から関空国際線への内際乗継機能の強化をはかる。

 また、「ターミナル成長戦略」は、伊丹のターミナルビルを運営している大阪国際空港ターミナルとの一体化の早期実現や共同仕入会社の設立などを掲げるほか、魅力ある商業エリアの創造などを盛り込んだ。 

21代部長に山口氏(山形県天童温泉滝の湯専務)、2候補がビジョン語る

次期青年部長に選任された山口敦史氏
次期青年部長に選任された
山口敦史氏

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の青年部(横山公大部長、1460会員)は7月18日、東京都内のホテルで臨時総会を開き、第21代青年部長に、現・研修部担当副部長の山口敦史氏(山形県天童温泉・ほほえみの宿 滝の湯専務)を選任した。史上初の選挙となった前回の青年部長選挙に続いて今回も山口氏と、現・監事の山本剛史氏(群馬県草津温泉・ホテルニュー高松代表取締役)の2人が立候補。各都道府県部長47人による投票、即日開票により、25票対22票の僅差で山口氏が次期青年部長となった。
【増田 剛】

 青年部長を決める選挙は現部長の横山公大氏と、政策担当副部長の森晃氏が競った前回に続いて2回目となった。5月26日から6月1日までの受付期間に立候補したのは、山口敦史氏と山本剛史氏の2人。

 横山部長は冒頭、「山口候補、山本候補ともに未来のことを熱く語り合っていた。次期も大変な2年間になると思うが、どちらに託しても素晴らしい青年部に向けて牽引してくれるだろうと思う」と激励。来賓として17代部長の佐久間克文氏、18代部長の永山久徳氏、19代部長の井上善博氏も両候補にエールを送った。

横山部長(左)と握手する山口次期部長
横山部長(左)と握手する山口次期部長

 臨時総会では、立候補受け付け順に山口氏、山本氏の順で15分間の最終演説を行った。

演説する山本氏
演説する山本氏

 山口氏は「未来を変える三本の矢」として(1)組織力の強化(2)魅力ある事業の創出(3)災害支援ネットワークの構築――を挙げた。魅力ある事業の創出では、旅とスポーツ、ファッション、健康など異業種とのコラボレーション事業などにも取り組みたいとし、「明るい未来のために変わり続けよう」と呼び掛けた。

 一方の山本氏は温泉枯渇につながる地熱発電に反対する姿勢を打ち出し、「地熱発電対策協議会の立ち上げ」を提案。さらに数字に強い経営者の育成や、食材リベート防止の研究などの必要性を強調し、最後に「自発的な青年部組織へ」と訴えた。

 その後、全国47都道府県の部長による投票と、開票により、山口氏が25票、山本氏が22票と僅差で山口氏が第21代青年部長に選任された。

 山口 敦史氏(やまぐち・あつし) 1971年生まれ。40歳。94年専修大学経営学部経営学科卒業後、滝の湯ホテル入社。現在、ほほえみの宿 滝の湯専務取締役。

 【青年部経歴】1999―2000年度に全旅連青年部情報ネットワーク委員会委員、07―08年度に山形県旅館ホテル生活衛生同業組合青年部部長、09―10年度に全旅連青年部観光まちづくり探究委員会委員長、11―12年度に全旅連青年部研修担当副部長。

投票する都道府県部長
投票する都道府県部長

≪懇親会で多数の議員と意見交換≫

 臨時総会終了後の懇親パーティーには、観光振興議員連盟会長の川内博史氏、元首相の鳩山由紀夫氏ら多数の国会議員が出席し、当日午前中に行った消費税の総額表示反対などの陳情活動に続き、地元選出議員と青年部員が意見交換を行った。

鳩山由紀夫氏
鳩山由紀夫氏
川内博史氏
川内博史氏

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

No.317 おごと温泉 湯元舘 - 旅館経営を科学する

おごと温泉 湯元舘
旅館経営を科学する

  高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客様の強い支持を得て集客している旅館がたくさんある。社員の職場環境を整え、お客様と真摯に向かい合える仕組みができているのが特徴だ。「いい旅館にしよう!」プロジェクトの第6弾は、滋賀県・琵琶湖畔おごと温泉「湯元舘」代表取締役会長の針谷了氏と、産業技術総合研究所の工学博士・内藤耕氏が、社員による改善活動によって働きやすい職場づくりが継続されている事例や、旅館の科学的経営について語り合った。

【増田 剛】

 

 

 

≪「いい旅館にしよう!」プロジェクト≫ シリーズ(6)
湯元舘

【対談者】

針谷 了(はりたに・さとる)氏
湯元舘 代表取締役会長
×
内藤 耕(ないとう・こう)氏
産業技総合研究所サービス工学研究センター副研究センター長(工学博士)

 

■針谷:湯元舘は祖父が1929(昭和4)年に創業し、おごと温泉では一番の老舗旅館です。
私が同志社大学に入学して4カ月が経った18歳の夏休みのこと。社長だった父親に呼ばれ、一言「湯元舘が潰れる……」と言われました。数年前に増築したのですが、それが大失敗だったのです。翌70年に大阪万博でたくさんの予約が入っているという理由で銀行が潰さなかったのですが、事実上の倒産でした。…。

 

 

※ 詳細は本紙1470号または8月7日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

訪れたくなる宿 ― 包み隠さず誠実に(8/1付)

 先日、箱根に仕事があった折に、「強羅花壇」をちらっと見て行こうかと思い、ほんの一歩敷地に入ると、玄関付近のスタッフに気づかれ走って来られた。私は宿泊客でも何でもないただの通りがかりの人なので、「どうしよう」と思ったがそのまま逃げるのも怪し過ぎるので佇んでいた。「どうぞ、こちらへ」「いえ、あの、ちょっとどのような旅館なのか見てみたいと思っただけなので……」と帰ろうとすると、「どうぞ館内をご見学下さい」と案内された。宿泊棟やレストラン棟を眺め、お香の焚かれた涼しげな館内に入ると、洗練されたスタッフと擦れ違うたびに感動が続いた。「いつかは泊まりたい」と思いながら、館内を見歩き、売店でレターセットを買って帰った。

 静岡県・伊豆の船原温泉に「湯治場ほたる」がある。謳い文句は「サービス/それなりに三流、施設/お金をかけていません、二流、お湯/特上・豊富、一流」。なんだか面白そうだと思い、行って来たが、謳い文句とは少々違っていた。

 お湯は、お地蔵さんの石像がたくさん入っている広い湯船に源泉かけ流しという贅沢なものだった。渓流を眺めながらゆっくりと浸かった。お湯に関しては、間違いなく一流だった。施設は二流とあるが、館内は清潔で、無料マッサージコーナーもあり、不満に感じるものはなかった。そして、サービスは対応してくれたスタッフが皆、親しみやすく案内してくれ大満足だった。宿にとって「サービスは三流」とはなかなか謳い文句に書けないものである。しかし、旅行者の中には、サービスよりも料理や部屋の雰囲気、温泉、ロケーションに重きを置く人が必ずいる。そのときの私もそうだったが、あまりサービスに期待をしないで訪れた分だけ、余計にスタッフの笑顔が輝いて映った。宿も人と同じように、良い面も悪い面も包み隠さずに、最初から正直に出す誠実さが好結果を生むのかもしれない。

 山形県・瀬見温泉の喜至楼は歴史的な建物として有名。同館のホームページには「全館内は建物も古く、他の旅館・ホテル様の設備には到底かないません。設備や内装等でもご満足頂けないとは思いますが、宜しければ日常と変わった時の流れをお感じに、お越し頂けましたら幸いです」とある。こんな風に書かれると、人は訪れたくなるものだ。

(編集長・増田 剛) 

漆器と食でワンランク上のもてなし 会津・麗の食スタイル

漆器に盛り付けたお料理(イメージ)

 福島県会津若松市では会津が誇る「漆器」と「食材」を提供できる仕組みをつくり、宿泊施設や飲食店で上質なサービスとして提案することを目指す「会津・麗(うるわし)の食スタイル」という企画を実施しています。

会津漆器の良さは「食に寄り添った」使いやすさと言われています。郷土料理「こづゆ」の手塩皿に代表されるように、その形は食を最大限に引き立てるためにかたどられています。取り組みでは、食器洗浄機が使えない等の理由で、旅館でも見かけることの少なくなった漆器を、バイキング料理のメーンディスプレイとして、また、お宿からお客様への心のこもった一品の器として活用します。

食材は「生産者がわかる」食材を使うことに力を入れています。宿と生産者双方に会員を持ち、受発注の一元化を担ってきたNPO法人素材広場のノウハウを生かしました。お出しする食材は、国の放射性物質の基準値を超過しないことが確認されたものだけを使っています。

7月から9月末までは、ホテルグランデコや庄助の宿瀧の湯など10軒の宿の食事で「会津麗」コーナーを実施。専用パンフレットを作製したほか、グルメ情報などを紹介するホームページ「Yahoo!ロコ」にも掲載しています。

夏に企画を実施している10軒のお宿情報は「素材広場」のホームページでご覧いただけます。