将来の宿像を談論

 旅館の魅力は土地の魅力、宿文化を語る会

東京・浅草の「助六の宿 貞千代」で
東京・浅草の「助六の宿 貞千代」で

 旅行作家で現代旅行研究所代表の野口冬人氏が会長を務め、旅館の若手経営者や経営者候補など旅館業界の次世代を担う若手メンバーが今後の旅館業界や理想の宿像などについて語り合う「宿文化を語る会」の第2回会合が8月28日に「助六の宿 貞千代」(東京・浅草)で開かれ、自身が経営したい将来の宿像をテーマに話し合った。

 オブザーバーとして参加した貞千代の宿のご主人・望月友彦氏は、貞千代の現在のスタイルについて「交通の便が良く駅から近ければ、ビジネスホテルの方が経営し易かったが、ここは駅から距離があるので観光旅館にした。観光旅館の魅力は、その土地その土地の魅力を味わえることだと思うので、貞千代は江戸の町衆の雰囲気を前面に出した」と語った。

 「日本の宿 古窯」専務で「悠湯の郷ゆさ」を経営する佐藤太一氏は古窯とゆさのターゲット層や価格帯の違いを紹介。将来の宿像としては「10室くらいの自分だけで見きれる小さい旅館」をあげ、「大きい旅館はマーケットインの手法を使い多くのニーズを意識せざるを得ない。それとは対照的に、小さい旅館ならプロダクトアウトで宿の個性を出しそのコンセプトに合う客だけを迎えることができる。将来の夢としては現在の2旅館に加え、10室くらいの小さい旅館をやってみたい。シュミレーションしているが、オペレーションの仕方によっては10室でも黒字を出せる」と自信をのぞかせた。

 「雀のお宿 磯部館」社長の櫻井太作氏は宿の将来像として「日本人に分かるキメの細かいサービス」をあげた。「今は、学生や医者、薬業界などの会議や研修、法事など、どちらかというとニッチなニーズの団体を拾っているが、将来の夢としては、日本人に分かるキメ細かいサービスが売りの宿をやりたい。日本人のキメの細かさは世界一だと思う」と語った。

 旅行作家で現代旅行研究所専務の竹村節子氏の「日本旅館は何がベースか」の問いに、「ホテル 対滝閣」常務兼若女将の大澤昌枝氏は「日本文化や伝統の継承」をあげる。宿の将来像については「親のやってきた伝統を継承したい。日本文化をしっかりと繋いでいくことが一番大切」と語る。ただほかのメンバー同様に「自分の見える範囲の小さい旅館もやってみたい」との夢も抱く。

 そのほか、竹村氏からは外国資本が旅館を買い占める現状について、野口氏からはリタイア後の男性1人旅の増加や、連泊と何カ月にもおよぶ住みつきの違いなどについて提起され、参加者全員で意見交換。また、クレーム後の社員へのフィードバックや困った客への対応など、同業者だからこそ分かる悩みや迷い事について熱く意見が交わされた。

 なお、第3回の会合は来年1月下旬か2月上旬を予定。参加希望者は旅行新聞新社内にある「宿文化を語る会」事務局まで。電話:03(3834)2718。

三位一体の総合イベント

旅ファン拡大につなげる、旅博2012(JATA)

 日本旅行業協会(JATA)は9月20―23日に東京ビッグサイトで「JATA国際観光フォーラム・旅博」を開く。23回目を迎える今年は、海外旅行・訪日旅行・国内旅行の総合的なイベントとして、さらなる旅行業界の発展、〝旅ファン〟の拡大を目指す。

 21日は、旅行業界関係者は無料で参加可能。豪華な講師陣を迎え、「業界日セミナー」も行われる。すぐに役立つ旅行業界のタイムリーな情報を発信。

 国内外旅行関連をはじめ、苦情対応、人材教育、バリアフリー関係やリスクマネジメント、昨年好評だった鉄道写真家によるセミナーなどバラエティに富んだ内容になっている。

 今年初の試みで、同日18―20時に「JATA FESTA(ジャタフェスタ)」も開かれる。旅行業界関係者、出展者を対象にしたネットワーキングで、同業者の親交促進、旅博参加バリューの向上が目的。

 世界の料理が堪能でき、大道芸やネイルサービス、占いコーナー、DJによる音楽パフォーマンス、豪華賞品があたる企画など、フェスティバルにふさわしいアトラクションを用意。代表・役員から若手社員まで、カジュアルに楽しみながら交流を深めることができる。出展者による小間内レセプションも同時開催。

 22―23日は一般来場者向けで、150を超える国と地域から出展。総出展小間数は史上最大規模の1100小間に迫る数を記録している。各国の趣向を凝らしたブースやステージパフォーマンスが楽しめる。

 また、異業種とのコラボレーションも充実。創立100周年を迎えた吉本興業(よしもとクリエイティブエージェンシー)のグッズ販売や、人気芸人のステージパフォーマンスがある。

 さらに、毎年11月に同会場にて開かれている「東京ネイルエキスポ2012」も出展。〝お支度から楽しむ旅〟をテーマにネイルの無料体験や、ゲストを招いたトークショーも行う。

 22日の顕彰事業「ツアーグランプリ2012」や、23日のグランドフィナーレで行われる「おもしろ旅大集合!」の表彰式も注目プログラムの一つ。

 詳しくはURL=http://www.jata-jts.jp/

訪日外国人消費動向調査12年4―6月(観光庁)

 ビジネス客が増加、FITは「再訪意向」高い〈震災前年同期と比較

 観光庁はこのほど、2012年4―6月期の訪日外国人消費動向調査の結果から10年4―6月期と比較し、震災前後の訪日外国人客の属性変化と観光目的の個別手配客の特徴をまとめた。それによると、12年4―6月期の訪日外客は前々年と比べてビジネス客・リピーター・個別手配客が増加。個別手配率は韓国で56%、台湾で37%、中国で23%にのぼる。また、個別手配客は再訪意向の「必ず来たい」が多い傾向にある。

  日本政府観光局(JNTO)が発表する訪日外客数によると、12年4―6月期はおおむね震災前の10年並みの水準に回復している。国別では台湾・中国・タイ・マレーシアが10年と比べて増加。一方、韓国・香港・シンガポール・インド・英国・ドイツ・フランス・ロシア・米国・カナダ・オーストラリアは震災前の水準まで回復していない。

 訪日外国人の1人当たりの旅行中支出額をみると、震災前の10年と震災直後の11年を上回る11万4千円。国籍別では中国・英国・カナダで年々増加傾向にある。ほとんどの国籍で宿泊料金・飲食費・交通費が10年より増えているほか、中国では買い物代も増加した。

 属性をみると、12年のビジネス客は74万4千人と10年の1・4倍に増え、とくに台湾・中国・韓国での増加が顕著。 来訪目的では「その他ビジネス」や「親族・知人訪問」が増加し、「観光・レジャー」が大きく減少した。来訪目的別の消費単価では「観光・レジャー」で1万6千円、「展示会・見本市」で2万8千円増加し、「その他ビジネス」「親族・知人訪問」では単価が下落している。

 同行者をみると、ビジネス客増加の影響で「自分ひとり」「職場の同僚」が増え、観光・レジャー客減少の影響で「家族・親族」「友人」が減った。

 訪日回数では「10回以上」のリピーター客が41万1千人で10年の1・3倍に増え、「1回目」が減少。「10回以上」のリピーターは韓国・台湾でとくに増えている。

 手配方法をみると、パッケージツアーを利用しない個別手配客は150万3千人で、10年の1・1倍に増加。パッケージツアー利用客は10年より18万3千人減っている。とくに中国・台湾での個別手配客の増加が顕著。個別手配客の比率をみると、韓国が56%、台湾が37%、中国が23%となった。手配方法別の消費単価では、パッケージツアー利用客では大きな変化はないが、個別手配客の単価は年々増加し、12年は13万7千円と、10年に比べ1万2千円アップしている。

 個別手配観光客の特徴をみると、20―30代の訪日リピーターが多い。訪問先は東京・大阪に集中し、買い物では服・かばん・靴の支出額が高い。情報源は個人ブログや日本在住の知人に頼ることが多く、現地情報のニーズでは交通手段情報のニーズが高い。

 再訪意向はツアー客に比べて高く、韓国では個別手配客の42%、台湾では個別手配客の73%、中国では個別手配客の61%が、「必ずまた来たい」と答えている。

No.320 対談・古代史「ホツマツタヱ」の旅 - “縄文観光”で日本各地を巡ろう

対談・古代史「ホツマツタヱ」の旅
“縄文観光”で日本各地を巡ろう

 古代史「ホツマツタヱ」をもとに、日本各地の神社・イワクラ・遺跡を巡る旅をしている一糸恭良氏(東神商事代表取締役)と、東洋大学准教授の島川崇氏が「縄文観光を楽しもう」をテーマに対談した。ホツマツタヱは古代文字による縄文時代の歴史書で、紀元前5000年ごろから始まる天皇の出来事がつづられている。さまざまな歴史論争とは関係なく、古代(縄文時代)の祖先が詠んだ和歌や、水田づくりなどの起源を想像しながら、日本各地を旅する「縄文観光」を楽しむきっかけにしたい。

【増田 剛】

「伝承」を訪ね、歴史を知る
論争ではなく古代を楽しむ

島川:歴史をテーマとする観光をどのように構築していけばいいか――。いつも大きな示唆をいただいている一糸さんに今回は「縄文観光を楽しもう」をテーマに、ヒントになる話を期待しています。  それでは、まず、「ホツマツタヱ」という一般には耳慣れない言葉ですが、そこからご説明をお願いします。

一糸:「ホツマツタヱ」というのは古代文字による縄文時代の歴史書です。1966(昭和41)年に「現代用語の基礎知識」(自由国民社)の初代編集長、松本善之助(まつもと・よしのすけ)さんという方が古代のことに非常に関心が強く、さまざまな文献などを探しているうちに、東京・神田の古書店で「ホツマツタヱ」を紹介する本に出会いました。

 

※ 詳細は本紙1474号または9月15日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

大型旅館の責任と輝き ― 地域の旗館に羨望の視線

 高山に向かう途中の下呂駅に「ワイドビューひだ」が到着したときに、女性の乗客たちは車窓から、「ほら、あれが水明館よ」と指さすと、一斉に視線が集まった。地域を代表する旅館に向けられた多くの旅行者の羨望の眼差しに出会った瞬間だった。その視線は、和倉温泉の加賀屋や、かみのやま温泉の日本の宿古窯なども同じであろう。日本や、地域を代表する大型旅館には、多くの羨望を集めるだけの輝きを有しているのだ。

 旅館業界は長らく苦戦している。とくに、大型旅館といわれる宿は、団体旅行が減少傾向にあるなか、個人や小グループ客で客室を満たすには、相当な経営努力が必要だろうと思う。

 世間一般には、「旅館は小規模の時代だ」「小さな旅館の方が宿の個性を出しやすい」といった論調が主流で、超弩級の大型旅館は、どこか時代遅れの匂いが漂っているように捉えられがちであるが、一流と言われる大型旅館の経営者の手腕と努力は、凄まじいものである。

 小規模旅館と比べて「個性に乏しい」などというのは、経営者は百も承知である。過大な期待を胸に訪れる“あらゆる層”の宿泊客に、事前の期待を損なわないよう満足していただく」という、不可能に近い挑戦を日々行っているのである。その切磋琢磨が、大きな楼閣にオーラのような輝きを纏い、旅行者に「あれが○○旅館か……」と憧れの眼差しに変えるのだ。

 地域を代表する旅館のほとんどは、地元の食材を使い、地域の雇用を守っている。それだけの重い責任を背負っている。これら旅館が駄目になってしまえば、地域の火が消えたように寂れてしまうのだ。どうか、誇り高く、地域全体の活性化のために、「地域の旗館」「日本の旗館」として温泉地を引っ張り、いつまでも輝いていてほしい。

 私は温泉地の雰囲気が好きだ。伊香保や城崎、鳴子、野沢、草津、由布院、渋温泉などは優れた旅情があっていい。大型旅館や小規模旅館、歴史的名旅館、民宿などが混在し、共同湯もあり活気がある。先日、早朝の鳴子温泉を歩いていたら、大型旅館の女将や番頭たちが、観光バスに乗り込む宿泊客を大きな声で見送る景色が清々しかった。その近くの小さな宿で、植木に水をあげる見知らぬ若女将とあいさつを交わした。大小さまさま。温泉地は、何より朝が命だ。

(編集長・増田 剛)

全国観光振興大会in高知、10月24-27日、日商など主催

 スローライフ観光のすすめ

 全国商工会議所観光振興大会2012in高知が10月24―27日までの4日間、高知県立県民文化ホール(高知市)を中心に開かれる。主催は日本商工会議所と高知商工会議所、高知県商工会議所連合会。

大会のテーマは「スローライフ観光のすすめ」。本物の豊かさに出会える「土佐流・田舎リズム」が目指すものを探る。

 25日は日本商工会議所の岡村正会頭の開会あいさつのあと、観光委員会共同委員長の須田寛氏による日商報告、観光振興大賞表彰式・事例発表などが行われる。

 続いて、尾﨑正直高知県知事の基調講演「土佐流スローライフ観光が目指す感動体験」、その後尾﨑知事と、高知県観光特使で、日本観光振興協会常務理事の丁野朗氏との対談「観光のこれから~田舎産業をどう見せるか」によって、地方観光発展の課題と展望について語り合う。

 最後に大会宣言が出される。その後、27日までに分科会として5つのコースに分かれてエクスカーションが行われる。Aコースは「日本最後の清流四万十川! 人と自然にふれあう田舎暮らし」、Bコースは「四国西南端の山川海で、自然のままの暮らしにふれあう」、Cコースは「三菱始祖の地と、元気をつくる田舎産業」、Dコースは「黒潮の恵みにふれながら、環境都市づくりを学ぶ」、Eコースは「高校生ガイドと行く土佐の城下町めぐり」を設定。

 24日には三翠園で前夜祭が開かれ、よさこい鳴子踊りなどのアトラクションも予定している。

 問い合わせ=高知商工会議所 電話:088(875)1170。

国内宿泊旅行1・37回、宿泊数は2・17泊に

12年度観光白書

 国土交通省がこのほどまとめた「2012年度観光白書」(11年度観光の状況・12年度観光施策)によると、11年の国民1人当たりの国内宿泊観光旅行回数は、前年比2・2%増の1・37回(暫定値)だった。宿泊数は同2・4%増の2・17泊。今回の白書は従来の数値に加え、新たな「観光立国推進基本計画」の策定や東日本大震災の影響と復興について触れている。

 観光庁の「宿泊旅行統計調査」によると、日本人国内宿泊者数は同4・1%減の延べ3億968万人。3月は前年同月比25・8%減となったが、減少幅は徐々に縮小し、12月は同2・7%増まで持ち直した。前年同月比の推移で、震災の影響が大きかった東北3県の岩手県、宮城県、福島県と全国を比較すると、ビジネス客中心の宿泊施設は4月以降、一貫して大きな増加傾向を示しており、震災の復旧・復興の関係者や被災者が多く宿泊したためと推察する。観光客中心の宿泊施設も同様の需要があったと思われるが、7月以降は減少に転じており、観光需要は十分に回復していないと分析する。

 10年の国内旅行消費額は同6・1%減の23兆8千億円。この結果、生産波及効果は49兆4千億円(国内生産額の5・5%)、雇用効果は424万人(全就業者の6・6%)と推計される。

 一方、11年の海外旅行者数は同2・1%増の1699万人。前年同月比をみると、12月が最も伸び率が高く、3―6月は落ち込んだ。

 また、11年の訪日外国人旅行者数は前年比27・8%減の622万人。2月までは前年を上回るペースで推移していたが、震災の発生で3月は前年同月比50・3%減と大幅に減少。5月以降は、減少幅が徐々に縮小し、回復基調にあるが、東北地方は依然として厳しい状況に置かれているとした。外国人延べ宿泊者数は前年比36・2%減の1756万人泊。

 なお、12年度の主な施策は(1)国際競争力の高い魅力ある観光地の形成(2)観光産業の国際競争力の強化および観光の振興に寄与する人材の育成(3)国際観光の振興(4)観光旅行の促進のための環境の整備――などを掲げる。 

JATA国際観光フォーラム2012

昨年のフォーラム
昨年のフォーラム

生産的、積極的な産業へ、シンポジウムで対応模索

 日本旅行業協会(JATA)は9月7日まで、9月20、21日に東京ビッグサイトで開く「JATA国際観光フォーラム2012」への参加者を募集している。今回は、インバウンド・アウトバウンドのいずれもパラダイムシフトが求められている状況を見据え、旅行業界の現状を見つめ直し、生産的で積極的な産業の対応を模索する。

マイケル・フレンツェル氏
マイケル・フレンツェル氏

 9月21日、午前10時30分から行う基調講演は、世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)会長でTUI AG会長のマイケル・フレンツェル氏が「これからの旅行市場の変化をどうとらえるか?アジア・日本市場は?日本ツーリズムへの提言」をテーマに登壇。WTTC・TUIの会長として将来の旅行市場の変化をどう読んでいるのか、その変化はアジア市場や日本市場でどう具現化すると予想するのか。そして、そのなかで旅行会社にはどのような変化が求められるのか――。世界のツーリズム業界をリードするトップマネジメントが旅行市場・旅行産業の行方、旅行会社の近未来のビジネスモデルを語る。

 同日午後1時30分からはインバウンドをテーマにシンポジウム(1)「これでいいのか?日本のインバウンド~真の観光立国となるために~」を開く。日本が真の観光立国になるためには、どのような考え方が求められ、いかなる対応が迫られているのか。インバウンドに成功している諸外国や国内自治体などの例を多角的に分析しながら、それらの政策やプロモーション活動への理解を通し、日本の取るべき道や相手国のジャパン・アウトバウンド会社、訪日旅行社が求める日本旅行産業の対応を探る。

 ファシリテーターはびゅうトラベルサービス社長の高橋敦司氏が務め、パネリストには韓国観光公社日本チーム チーム長のイ ビョンチャン氏と近畿日本ツーリスト旅行事業本部訪日旅行部長の稲田正彦氏、日本ミシュランタイヤ執行役員・社長室長の森田哲史氏、飛騨・高山観光コンベンション協会会長の堀泰則氏の4人を迎える。

 シンポジウム(2)はアウトバウンドがテーマの「新たなマーケットの可能性と旅行会社の役割」。なぜ日本の海外市場規模が過去数年間に渡って停滞状況にあったのか。これまでの停滞を総括し、明日に取り組むことが求められているなかで、既存の市場(顧客)の再活性化と新規市場の開発に焦点をあて、旅番組の変遷やそのニーズの捉え方などを参考に、旅行地素材提供会社との強力なパートナーシップに基づく旅行会社の役割や、新たなビジネスモデルの方向性を導く。

 ファシリテーターはトップツアー社長の石川邦大氏。パネリストは、朝日旅行執行役員海外旅行担当東京支店海外旅行部長の鹿野真澄氏とアルパインツアーサービス代表取締役会長・CEOの黒川惠氏、SPIあ・える倶楽部代表取締役CEOの篠塚恭一氏、日本旅行西日本海外旅行商品部商品企画チームマネージャーの山本文子氏、フジテレビジョンクリエイティブ事業局専任局次長の谷至剛氏、ミキ・ツーリスト代表取締役社長の檀原徹典氏の6人。

 20日は午前8時30分から英語で日本の旅行業の現状などを説明する基礎セミナー「Japanese Travel Market Update」を開く。

 JATA国際観光フォーラム全プログラムの参加登録料はJATA会員が1人税込1万円、非会員が1万2千円。プログラムは基礎セミナーが3千円、各シンポジウムが会員5千円、非会員6千円。申込みはURL(http://www.jata-jts.jp/tf/ )から。

5カ国で過去最高、中国単月で初の20万人台

 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)が発表した2012年7月の訪日外客数推計値は、前年同月比50・5%増の84万5300人と史上2番目に多かった。10年7月と比較すると3・8%減となり、マイナスに転じたものの、市場全体では引き続き回復傾向にある。とくに中国、台湾、タイ、インドネシア、ベトナムは過去最高を記録。このうち中国は単月で初めて20万人台を記録している。

 各市場の動向をみると、韓国は10年同月比19・6%減、11年同月比35・4%増の18万9700人と震災直後と比べるとやや持ちなおしたものの、19万人を割り込む結果となった。放射能汚染や地震発生予測への不安の継続に加え、円高の長期化した影響が大きい。

 中国は、10年同月比23・6%増、11年同月比134・4%増の20万3800人と過去最高。震災直後の11年4月を除き韓国を上回った。夏休みの家族旅行や個人旅行の需要が増し、大型クルーズ船の寄港などが訪日の増加に拍車をかけたとみられる。

 台湾は、10年同月比4・2%増、11年同月比40・4%増の15万9300人と単月で過去最高、香港は10年同月比25・5%減、11年同月比26・6%増の5万1300人。そのほかでは、タイは10年同月比15・4%増、11年同月比34・6%増の1万6400人、インドネシアは10年同月比26・2%増、11年同月比69・8%増の7800人、ベトナムは10年同月比40・1%増、11年同月比51・9%増の4600人と単月過去最高を記録している。

 なお、出国日本人数は、10年同月比13・5%増、11年同月比8・8%増の159万5千人。 

領土問題の影響注視、韓国の福島渡航緩和に期待

 観光庁の井手憲文長官は8月17日の会見で、韓国外交通商部から7月23日に発表された福島県への渡航情報の緩和について言及し、これを契機に震災後、回復が遅れている韓国人訪日観光の早期持ち直しに期待をにじませた。

 今後の韓国人訪日観光の対策として、九州・関西・北海道エリアを中心とした商品販売促進、LCCの共同キャンペーン実施、テーマ性がある旅行情報の発信に尽力していく方針を決めた。

 また、12年7月の訪日外客数に触れ、東南アジアの好調さについて「とくにタイは毎月記録を更新する勢いを見せており、日本は幅広い層で人気のデスティネーションとなっている。引き続き東南アジアはビザの緩和も視野に入れて、集客をはかっていきたい」と語った。

 一方、中国と韓国との領土問題は「観光は平和へのパスポート。外交と関係なく、観光が活発になるように期待している」と話した。同庁が行っているモニタリングによると、会見時点で訪日旅行の目立ったキャンセルはないが、引き続き注視していく。

 さらに、8月2日に発生した高速ツアーバスの事故に関して「7月20日に適用された交替運転者配置基準の1つとして、1人の運転者の乗務時間が10時間を超えないよう義務付けを行っていた。しかし、事故を起こしたバス会社はこれを順守していなかった」と原因を挙げたうえで、今後の措置として、すべての旅行会社に緊急対策の申請を行い、安全確保に向けて再徹底を行っていく方針を固めた。