観光庁は8月27日、2011年度予算の概算要求をまとめた。観光庁関係の概算要求10年度予算(126億5200万円)に対し、1・03倍の130億8200万円。政府は6月、7つの新成長戦略分野の1つとして「観光立国・地域活性化戦略」を閣議決定。「訪日外国人3000万人プログラム」と「休暇取得の分散化」を国家戦略プロジェクトに選定した。「訪日外国人3000万人プログラム第1期」は10年度予算比1・01倍の95億6200万円。概算要求の73・1%を占める。訪日外国人旅行者の誘致戦略を引き続き着実に推進する。
「東アジアを最重点市場、訪日旅行を着実に推進」11年度予算概算要求
主要事業は(1)訪日外国人3000万人プログラム第1期(2)観光を核とした地域の再生・活性化(3)観光産業の競争力強化・ニューツーリズムの推進(4)ワークライフバランスの実現に向けた環境の整備(5)観光統計の整備――の5本柱。このうち(3)については、新たに項目を設けた。
2013年までに訪日外国人旅行者1500万人を目指す「訪日外国人3000万人プログラム第1期」は95億6200万円を要求。中核となる訪日旅行促進事業(ビジット・ジャパン事業)は88億6700万円(10年度予算は86億4800万円)を求めた。東アジア4市場(中国、韓国、台湾、香港)はプロモーションをさらに強化。とくに中国については特別枠25億6千万円を要求した。
「スペイン、イタリア中東も重点市場に」
重点市場は従来の15市場から19市場に拡大。訪日旅行者数の伸びが著しいスペイン、イタリア、直行便の就航により旅客増が見込まれる中東(UAE、サウジアラビア)を加えた。
MICEの開催・誘致の推進は4億4300万円(10年度は4億4900万円)。「Japan MICE Year」と定め、狭義の国際会議からMICEへの施策の対象範囲を拡大した10年度に続き、MICE推進の機運の浸透と定着、拡大をはかる。
訪日外国人旅行者の受入環境整備事業は10年度予算比1・47倍の2億5100万円を要求。受入環境整備については、10年度に策定した評価システムの評価を踏まえ、国が受入サポーターを自治体に派遣。受入環境の改善を支援する。また、全国に5カ所程度、国費を投じた戦略拠点を整備する。
そのほか、ツイッターを活用した訪日外国人向け情報提供に約5千万円、医療観光に向けた環境の整備に約3千万円を要求。日本の旅行会社などが、日本の受入病院と外国人患者などとの間に立ちさまざまなコーディネート業務を行う。
「観光圏事業を ステップアップ」
「観光を核とした地域の再生・活性化」は10年度予算比0・96倍の6億400万円。このうち観光地域づくりプラットフォーム事業は、10年度予算比増減なしの5億4200万円を要求。3年目を終えた観光圏事業をステップアップする。当確地域の資源を活用した着地型旅行商品を企画・販売するなど、滞在型観光につながる持続的な取り組みの素地はできつつあるとし、今後は市場との窓口機能を担う「観光地域づくりプラットフォーム」の形成を促進しつつ、着地型旅行商品の企画・販売、人材育成などを行う取り組みを支援する。支援制度の概要は、1年間の設立準備段階を設け、審査を通過した観光圏整備法に基づく協議会に500万円を補助。その後、原則2年として法人格を有する「観光地域づくりプラットフォーム」に事業費の4割を支援する。
全国45地域が認定されている観光圏整備実施計画認定地域(10年7月27日現在)の認定は、今年度も継続して行う予定。
「スポーツ観光など新規事業立ち上げ」
「観光産業の競争力強化・ニューツーリズムの推進」は10年度予算比2・88倍の1億1500万円。継続事業の大学における観光経営マネジメント教育支援は2500万円。そのほか、着地型旅行商品流通促進支援事業、ユニバーサルツーリズムネットワーク構築支援事業、スポーツ観光支援事業については、それぞれ皆増の3千万円を要求した。着地型旅行商品流通促進支援事業は着地型旅行商品を広く消費者に普及させるため、商品の情報流通の課題を抽出するとともに、情報流通モデルの策定・検証を通じて商品流通の円滑化をはかる。
「ワークライフバランスの実現に向けた環境の整備」は10年度予算比3・5倍の9800万円を要求した。休暇取得の分散化導入を促す。休暇取得分散化が国民生活にもたらす影響・効果などについて普及啓発活動を実施。企業における祝日法改正への対応事例の形成を行う、地域ごとに休暇分散化の具体的な取り組みを実施する――など導入準備を経て、繁忙期における旅行動向、需要平準化の状況など、導入効果を検証する。