ピンクリボンのお宿ネットワーク発足 ― 高い社会的関心に驚き(7/21付)

 「ピンクリボンのお宿ネットワーク」が7月10日、設立された。会長に就任した福島県・穴原温泉の畠ひで子氏(匠のこころ吉川屋女将)は、「高齢者や障害を持たれた方などさまざまなお客様を受け入れる宿にとってピンクリボンのお客様も一つのお客様。誰もが旅を楽しめる環境づくりに賛同される全国の宿泊施設や観光関係団体、企業さんとともに、全国500の主要病院、看護師会、患者さん団体とネットワークをつくりましょう」とあいさつした。実際、規模の大小に関わらず、岩手県から鹿児島県まで全国の40軒を超える旅館が参画してくれた。設立総会後にも一般紙に大きく取り上げられた影響もあり、事務局を務める旅行新聞新社には一時、一般の方々からの問い合わせや、参加方法を知りたいという宿泊施設からの電話が「鳴りっぱなし」という状態になった。これほどまでに社会的な関心が高いとは思わなかった。

 設立総会には、乳がん患者を代表して、CSRプロジェクト理事の桜井なおみさんが講演した。桜井さんは「温泉の脱衣所では、胸を隠せる壁際を選びます。洗い場では目の前に鏡があると後ろから見られているのではないかと気にしてしまうので、仕切り板などがあるところはすごく助かります。入浴着もありますが、私たちは、自ら(乳がん患者だと)手を挙げているようでなかなか着れないのです。それよりもむしろ、脱衣所にタオルが積み重ねてあり、『体を洗う時、拭く時にご自由にお使い下さい』とさりげなくメッセージが添えてあるだけで私たち十分なのです」と話した。講演後には会場の女将さんや経営者からさまざまな質問が桜井さんに寄せられた。

 乳房再建手術の第一人者といわれる市立四日市病院形成外科部長の武石明精氏も設立総会に出席した。武石氏は「私たちも一生懸命にやっていますが、年間約5万人の患者さんのうち、乳房再建手術を受けられる患者はせいぜい2千人。乳がん患者さんの生存率は80―90%と非常に高く、何十万人の方が乳房がないままです。乳房を再建した人だけが温泉に行ければいいのかという問題ではないし、病気だけ直せばいいというのは一昔前の医療。このネットワークによって、乳房再建ができない方々も温泉に行けるようになってほしい」という言葉が胸に刺さった。

(編集長・増田 剛) 

今年度は22地域目指す、ジャパン・オンパク総会

ジャパン・オンパク総会にて記念撮影
ジャパン・オンパク総会にて記念撮影

 一般社団法人ジャパン・オンパク(鶴田浩一郎代表理事)は5月30日、東京都内で2012年度ジャパン・オンパク総会を開いた。

 11年度の事業報告では、「構成する会員数は7地域増加し、全体で17地域となった。社団が運営を支援している全国のオンパク実施地域は5地域増加して全体で35地域となった。構成する17地域では、これまでに4522種のプログラムが企画・運営され、地域の資源・人の発掘を行った。そのプログラムには延べ9万2516人が参加し、プログラムの定員稼働率は62・2%となった。2011年度は1210種のプログラムが企画・運営され、2万2150人が参加し、定員稼働率は55%だった」と発表した。

 役員改選では、NPO法人ハットウ・オンパクの鶴田浩一郎氏が代表理事に再任したほか、川北秀人理事、里見喜生理事、小松俊昭監事が再任、牧田正浩監事が新任で承認された。

 新体制のもと、社団の運営力・支援力の向上とネットワーク強化をはかる目的で、理事会を補佐する機関として3幹事会が新設された。幹事会は(1)普及拡大部会(北澤勝己幹事長兼部会長)(2)育成支援部会(末田加良子部会長)(3)基盤強化部会(市来広一郎部会長)で構成される。

 新年度の事業計画は、「構成する会員数を5地域増やし全体で22地域を目標とする。オンパク手法の導入地域は前年度末の35地域から7地域増やして42地域を目標とする」とした。研修事業に関しては研修助成制度を新設し、全国の4地域での初級研修の開催を目指す。会員を対象としたマネジメント研修は7月に岡山県総社市、来年2月に静岡県熱海市で開催する。オンパク立ち上げの支援は、「企画運営支援として4地域、立ち上げ前の研修事業として2地域、講演などの事業を5地域程度目標とする」と発表された。

 また、システム事業に関しては「旧システムから新システム(オンパククラウドASPシステム)への移管を進め、システムは全体の利用地域を現行の10地域から5地域増やして、新旧全体で15地域を目標」とする。

 なお来年度のジャパン・オンパク総会も5月末に東京都内で開催する予定という。

ジャパン・オンパク 会員リスト(2012年5月末現在)

とうきょうスカイツリー駅でアクセスの良さをPR(日光市女将の会)

26人の女将らが夏の日光の魅力をPRした
26人の女将らが夏の日光の魅力をPRした

 日光観光協会と東武鉄道は6月22日、とうきょうスカイツリー駅(東京都墨田区)で観光PRキャンペーンを行った。東京スカイツリー開業から1カ月を迎えたこの日、改めて東京スカイツリーや浅草から日光市へのアクセスの良さをアピールすることを目的に、日光市女将の会から女将ら26人を含む約40人が参加。同駅を利用する観光客らへパンフレットやうちわを配り、夏の行楽シーズンに向け魅力をPRした。

 日光市女将の会は日光・鬼怒川をはじめ川治・奥日光湯元・湯西川・今市のホテル旅館の女将らにより構成される。同会の臼井静枝会長(鬼怒川温泉「花の宿 松や」女将)は「スカイツリー観光と合わせて、木々の緑や花々が美しい季節を迎える日光市へお越しいただきたい。そして女将一同、皆様の思い出づくりのお手伝いができれば」と意気込みを語った。

 また日光地区観光協会連合会の新井俊一会長は、鬼怒川・川治の「龍王祭」(7月20―22日)や湯西川の「竹の宵まつり」(8月5日まで)など夏のイベントや、スカイツリー開業にちなみ特別公開している日光東照宮五重塔など見どころを紹介した。「奥日光は夏の涼しさも自慢のひとつ。この夏は魅力溢れるエリアが集まる日光市に、東京スカイツリーとともにぜひ足を運んでいただきたい」とアピールした。

コース内で乗降車自由、スカイホップバス運行開始

富田浩安社長
富田浩安社長

 日の丸自動車興業(東京都文京区)は、6月30日から2階建てオープンデッキの「スカイホップバス」の運行を開始した。コース内の停留所を自由に乗り降りできるのが特徴だ。これまではバスで走りながら景色を楽しむのみの周遊型観光バスであったが、乗客の「実際に降りて散策したい」との要望に答えるかたちで「スカイホップバス」が誕生した。「ホップ」は乗り降り自由を意味するHop on Hop offに由来する。同社は年間利用者を6万人と見込んでいる。

 運行に先立ち開かれた会見では、来賓で登場した神谷俊広国土交通省関東運輸局長が「国は観光立国を成長の柱の一つにしている。スカイホップバスは意義深いものだ。首都東京の名所を乗り継いで見れることと4カ国語に対応しているので海外客にもいい」とあいさつした。

 富田浩安社長は「スカイバスの都市観光で東京にもっと人が訪れてくれる。主要都市では観光に欠かせないものになっている。自由に楽しく快適に東京の観光を楽しんでもらいたい」と運行開始の動機を話した。コースは3つ、「六本木・東京タワーコース」、「浅草・東京スカイツリーコース」、「お台場コース」が運行している。「乗り継げばスカイツリー、六本木、東京タワーにも行ける。丸の内に行けばどこにも行ける」と同社長は利便性を強調する。

東京スカイツリーも間近に
東京スカイツリーも間近に

 バスは屋根のない2階建てオープンデッキバス、幌付きオープンデッキバス、屋根がガラス張りになっている新型のスケルトンタイプバスの3タイプで運行する。雨に濡れたくない人でも安心して乗車できる。

 3コースターミナルは丸の内三菱ビルで、3コースのどれかに乗り換えられるのはこのターミナルのみになる。東京タワー停留所は六本木・東京タワーコースとお台場コースが乗り換えられる。浅草・東京スカイツリーコースの停留所は、丸の内三菱ビル、日本橋三井記念館、秋葉原(末広町)、上野駅前(9月予定)、東本願寺前、とうきょうスカイツリー駅前、駒形、上野松坂屋など。

 六本木・東京タワーコースは、丸の内三菱ビル、ホテルニューオータニ、東京ミッドタウン、六本木ヒルズ、東京タワー。

 お台場コースは、東京タワー、フジテレビ、アクアシティお台場、ヴィーナスフォート、東京ベイ有明ワシントンホテル、豊洲(ららぽーと豊洲)、築地銀座。バスガイドによる観光案内も付く。各コースとも1時間おきの運行となる。スカイホップバス公式ガイドブック(オフィスR―reco制作)が名所なども網羅している。

 料金は時間制を採用し、1日券(1800円・子供900円)と2日券(2500円・子供1200円)をそろえる。たとえば夕方からの利用開始時間であれば翌日にまたいで使用できるのが特徴だ。午前10時から午後8時まで運行する。

 問い合わせ=電話:03(3215)0008。

知ってもらうことが、環境保全の第一歩

小笠原村観光局主任 根岸 康弘氏
小笠原村観光局
主任 根岸 康弘氏

 小笠原諸島が昨年、ユネスコ世界自然遺産に登録されてから1年が経った。世界遺産登録後に出てくるのが、屋久島などに代表される、観光客急増による環境破壊の問題だ。観光振興と自然環境保護、一見相反する2つの取り組みのバランスをどう取るべきか。登録から1年を経た小笠原諸島の観光の現状と自然環境保全の取り組みを、小笠原村観光局の根岸康弘主任にうかがった。

【伊集院 悟】

≪自主ルールで自然環境の保全≫

 世界遺産登録前の小笠原は、観光客数が年1万2、3千人くらいで、若者層やリピーターなどが多く、ダイビングやホエールウォッチングなど目的性の高い人がほとんどでした。

 自然環境の保全については、世界自然遺産登録を目指す前からすでに意識を高く持ち実跡しており、幹はできていたので、登録前後に慌てることはなかったです。エコツーリズムという言葉がまだなかった1988年のホエールウォッチング開始時から、持続可能な利用に取り組みました。ホエールウォッチングに関しては、国内での統一ルールなどはないので、野生のクジラにストレスを与えないように、一度にアプローチできる船の数や、船がクジラに近づける距離を制限するなど、自主ルールを決めています。

 固有種を守るために、山へ入る際には外来種の種子や動物を持ちこまないよう靴底洗浄を徹底しています。また、登録前後から、島民の意識もそれまで以上に非常に高くなっています。小笠原は移住者が多い島。島を気に入って移住してきて、後世にもこの宝を残したいという思いが強い。ビーチなどは、島民による自主的な活動によって常にキレイに保たれています。

 登録後は、定期船での観光客はこれまでの1・7倍。400―500人乗れるクルーズ船での入島も含めると2倍ぐらいになります。閑散期に増えたことや、クルーズ船客はあまり森へ深入りしないことから、心配される自然破壊は起きていません。小笠原の場合は、他の世界遺産地と違い、ボトルネックが細い。入島は基本的には6日に1便の定期船によるもので、今後も便数が増える予定はないので、観光客数は物理的に絞られてきます。

 また、入島方法も船からだけなので、管理がしやすい。今では靴底洗浄を入島、入林時だけでなく、竹芝桟橋の乗船時点で行うなど、より徹底させています。

 登録後はトレッキング目的の観光客も増えました。冬のシーズンは日本列島の多くの山は閉山しますが、小笠原はトレッキングに最も適した季節なので、それを目的とした方達が小笠原に来られています。通常、トレッキングシューズは何足も持っているものではないので、前の週に別の山に登られた方が、その山の種子などを靴底につけたまま小笠原に来られることもあります。

 環境保全において一番重要なことは、観光客に取り組みを知ってもらうことです。観光客の協力なしには自然環境の保全はできません。協力してもらうために、取り組みの意義を意識してもらえるよう、靴底洗浄などを実施しています。

≪観光客の質が変化、旅行会社へ丁寧なレクチャーを≫

 登録後の観光客の動向は、量の増加にくわえ、質の変化も見られます。それまでのダイビングやホエールウォッチング目的のお客様に加え、中高年のトレッキング客や、小笠原に来るというよりは「世界遺産の島」に来るという物見遊山的な添乗員つきのツアーが増えました。これによるミスマッチが起きているのが現在の課題です。

 添乗員つきのツアーはこれまでほとんどなかったので、添乗員の方も小笠原のことをよく知りません。また、トレッキングのお客様は「○○山に登る」などある程度行程や山の特徴を頭に入れて来られるので、ギャップやミスマッチが起きにくいのですが、物見遊山的なお客様の場合は、小笠原諸島がどういう所なのかということを知らずに来られる場合が多いです。島に来た時点で半分目的を達成し、初めて観光協会の窓をたたき、「小笠原では何ができますか」と尋ねられる方もいらっしゃるようです。

 とくに多いのが、「小笠原=南の島=リゾート」という思い込み。リゾートをイメージして来られるお客様も多いですが、実際の小笠原はリゾートとはかけ離れています。父島の南西にある「南島」という無人島は絵的にキレイなので、多くのメディアで使われますが、写真や映像は一部を映しているだけなので、誤解されやすいです。多くのお客様が抱くイメージは「大きな遊覧船で行って桟橋に降りる」というもので、ハイヒールを履いた方や杖をついた方が来られたりもします。しかし、南島の現実は、桟橋などの人工物は一切なく、10人乗りくらいの小さいボートで近づき、舳先から尖った岩場に飛び移り、そのまま3㍍ほどの岩壁をよじ登らないといけません。残念ながら、杖をついた方やハイヒールの方では難しいのです。

 これらの情報は、旅行会社やパンフレット、観光協会などでも案内しているのですが、お客様の意識には残らない。そういったお客様が小笠原に来られてからイメージと現実とのギャップにガッカリされるのは、迎える私達も非常に残念です。このミスマッチを無くすため、マスコミに向けたPRよりも、お客様一人ひとりへの丁寧な説明はもちろん、旅行会社のツアー造成者やカウンター業務者、添乗員などへのレクチャーに力を入れています。「小笠原はリゾートじゃない」「南島ツアーは比較的ハード」「自分の足で歩かないといけない」ということを理解してもらい、ギャップを埋めるよう努めています。

≪旅館のサービスなど受け入れ体制の充実も≫

 今後は、今実施している自然環境保全への取り組みを一層強化していくことと、その取り組みを知ってもらう活動により力を入れていきたいです。また、多様なニーズに対応できる受け入れ体制を作ることも考えています。宿のスタイルは、今までは、風呂・トイレ共同の相部屋が中心でしたが、これからは、風呂・トイレ付個室や、お客様が自由に組立てられる食事サービスの提供なども必要かもしれません。さらに、現在の小笠原観光は「歩く、動く」などのアクティビティ中心ですが、中高年層向けにあまり体力を使わずに周遊できるライトアクティビティも必要かもしれない。小笠原らしさはきちんと残しつつ、多様なニーズにもある程度応えられるよう、選択肢を増やしていければと考えています。

阿蘇ダイエットプログラム、標高差利用の運動、美味しく食べて痩せる

標高差利用の運動プログラム
標高差利用の運動プログラム

 熊本県阿蘇市の阿蘇温泉観光旅館協同組合が、阿蘇の標高差や温泉を活かしたダイエットプログラムを開発。今年度から本格的な商品化に向けて動き出した。

 事業は経済産業省の地域資源活用促進法の認定・支援を受け、今年度から4カ年で、モニターツアー実施や健康コーディネーター、インストラクターの養成、専用予約サイトの開設、情報発信、大手企業健保組合や旅行会社などへの販路開拓などを進める。

 開発したのは「阿蘇高原滞在型ダイエットプログラム」で、25軒の旅館が加盟する旅館協同組合が主体となって取り組む。地域一体の本格的なダイエットプログラムとしては、全国初という。

 プログラムは2010年から、7軒の旅館・ホテルが中心になり2泊3日のダイエットプログラム開発に着手。その実効性を確認して、今回組合全体の本格事業として乗り出した。プログラムの特徴は5つ。最大の売りが「血糖コントロール理論」に基づいた「楽しく痩せて、美味しく痩せる」ダイエットプログラムと、500―1500メートルの標高差を活かした運動プログラム。

食事のカロリー制限はなし
食事のカロリー制限はなし

 血糖コンロール理論は、日本ダイエット協会会長で慶応大学講師の戸田晴実氏が提唱。糖質量を調整して、タンパク質と繊維質を多く摂取する。炭水化物の含有量を調整し、血液中の糖分濃度を抑えるという、食物エネルギーではない、血糖値を基準にした理論。

 一般的なダイエット法と比べ、糖質をコントロールした食事内容になるため、カロリー制限もなく、美味しいものを食べながら痩せられる。食事制限のストレスが少ないのが大きな特徴だ。

 もう1つのポイントは、標高差利用の運動プログラム。東海大学スポーツ医学研究所が発表したデータでは、1時間歩いたエネルギー消費量が平地の33キロカロリーに対し、1500メートル高地では39キロカロリーと18%も増加。脂肪推定消費量も21キロカロリーから27キロカロリーと28%増加するという。

 阿蘇では旭化成などの実業団や大学・高校・中学の陸上チームが合宿に毎年訪れるなど、すでにその高地トレーニング成果は実証されている。

 旅館ホテルが集中する内牧温泉街の標高は500メートル。外輪山の展望所・大観峰が1千メートル、中岳火口は1500メートルで標高差利用の運動には最適地といえ、高地運動と血糖コントロールの相乗効果で、短期間での体質改善効果も期待できる。

 さらに阿蘇の温泉はリチウムを含み、これがストレス解消に効果があるという。健康プログラムの指導やアドバイスを行う専門スタッフも配置して、強力にサポートする。

 プログラムは2泊3日が基本だが、4泊5日も予定。糖質量をコントロールした食事と、標高差を利用してのゴルフや乗馬、クロスカントリー、ウォーキング、トレッキングなどの運動メニューを実践し、温泉療法などのプログラムをこなす。

 過去に実施のモニターでは参加者の体重が、実施後平均2キロ減少する結果も出ている。

 主要ターゲットは20―50代の女性。ある調査ではこのうち7割以上がダイエットに高い関心を持つといわれ、市場規模は1兆6600億円以上と推計される。さらに2400万人以上といわれるメタボ予備軍も市場と見込む。

 料金は2泊3日が4万9800円、4泊5日は6万1800円を予定する。売り上げは3年後に2千万円、4年後に倍を目指す。

韓国・台湾・香港に配布、翻訳版100選冊子を発行

翻訳版「旅館100選」冊子
翻訳版「旅館100選」冊子

 旅行新聞新社は、今年1月に発表した第37回「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選(以下、旅館100選)」のランキング一覧や入選施設の情報を翻訳した冊子を発行し、韓国・台湾・香港の旅行会社約2300社に無償配布しました。

 本紙主催の旅館100選は、今年1月の発表で37回を数え、観光業界の新春恒例事業として広く認知いただくようになりました。旅行商品造成はもちろん、さまざまな企業様の販売促進キャンペーンなどにも活用頂いております。今年は旅館100選の事業価値をさらに高めるため、初めて翻訳版「旅館100選」冊子を発行しました。

 日本の観光業界は、海外からの旅客誘致も業績向上の重要な要素となっています。 とくに、韓国、中国、台湾、香港からの訪日者数は全体の65%以上を占め、最大の市場です。 昨今、個人旅行も盛んになってきましたが、これらの地域では、旅行会社を介しての旅行が主です。

 今回は、繁体字版・ハングル版の2版の翻訳版「旅館100選」冊子を発行し、7月上旬に国際郵便で韓国、台湾、香港の旅行会社(訪日旅行の取扱い資格を持った正規旅行会社)・旅行関連団体、約2300カ所に無償配布いたしました。本紙購読の皆様には、見本として「繁体字」版をお届けしましたのでご覧ください。

地熱対策活動費を、一般社団化へ新役員選出

廣川允彦会長
廣川允彦会長

 日本温泉協会(廣川允彦会長、1492会員)は6月26日、長崎県・雲仙温泉の九州ホテルで2012年度会員総会を開き、13年4月1日から移行する一般社団法人化に向けて新役員を選任したほか、会員提出議題として、自然保護・温泉源保護・温泉文化保護の見地から「無秩序な地熱発電開発に反対」する決議を承認した。

 廣川会長は冒頭、「日本温泉協会の喫緊の問題は地熱発電。地熱発電周辺の温泉地の方々から、温泉が枯渇したり、泉質が変わったり、地震が起こったりというさまざまな報告があった。このことを全国の温泉関係者に知ってもらうために、昨年度は2回、都道府県の温泉協会に呼び掛け、連絡協議会を開いた」とし、「協会としては、地熱発電に反対する地域と一緒になって活動を応援していきたい」と語った。さらに「協会ホームページ『温泉名人』を会員に役立てるために、i.JTBの国内旅行予約『るるぶトラベル』と連携して、7月中旬までに予約サイトとして稼働させたい」と述べた。手数料(システム利用料)は8%で、内訳はJTBが6%、日本温泉協会が2%と設定している。

佐藤好億地熱対策特別委員長
佐藤好億地熱対策特別委員長

 来賓の環境省自然環境局の大庭一夫自然環境整備担当参事官は「環境省はエネルギーのセキュリティの観点から、分散型、地産地消型に取り組んでいる。一つは温泉熱を利用するヒートポンプ、もう一つは温泉付随ガスを利用したコージェネレーションについて09年度から補助事業を行っており、現在30件以上の実績が上がっている。また、温泉発電については新たに掘削するのではなく、すでに流出している既存の温泉熱を発電に利用しようというもの。地元の小浜温泉のバイナリー発電施設も参考になるのではないか」と述べた。

 今回の総会では、地熱対策特別委員会の佐藤好億委員長から「自然保護・温泉源保護・温泉文化保護の見地から無秩序な地熱発電開発に反対する」決議が提出され、承認された。

 決議文には「地熱発電開発にあたっては、電力確保と温泉資源保護の2つの公益が共存することが前提」とし、無秩序な開発を回避するために(1)地元(行政や温泉事業者等)の合意(2)客観性が担保された相互の情報公開と第三者機関の創設(3)過剰採取防止の規制(4)継続的かつ広範囲にわたる環境モニタリングの徹底(5)被害を受けた温泉と温泉地の回復作業の明文化――の5点を提案した。現状では、原発事故などと違い、たとえ温泉が枯渇したとしても賠償規定がないことを問題視している。

 佐藤委員長は「この半年間、全国の現場を個人の実費で調査してきた。しかし、今後さらなる調査や情報収集には現状の予算ではどうしようもない。学術委員の先生方にも現地視察できるように、地熱対策委員会に寄付行為をお願いしたい」と訴え、賛成多数で承認された。さらに福島での地熱発電問題にも協会として反対していくことが確認された。

 来年度の会員総会の開催地は福井県のあわら温泉に決まった。

 なお、来年4月1日に移行する一般社団法人日本温泉協会の役員は次の各氏(副会長以上)。

 【会長】廣川允彦(松川屋那須高原ホテル)
 【常務副会長】石村隆生(仙郷楼)
 【副会長】山村順次(学術部委員長)▽根津文博(御園ホテル)▽佐藤好億(大丸あすなろ荘)▽岡村興太郎(法師温泉長寿館)▽森行成(さかや旅館)▽八木眞一郎(あわらの宿 八木)

JATA・菊間会長就任会見、会員の意見が上がる仕組みを

菊間潤吾・JATA新会長
菊間潤吾・JATA新会長

<風通しのよい組織に>

 日本旅行業協会(JATA)は6月22日、菊間潤吾新会長の就任会見を開いた。菊間会長は就任後「中小の旅行会社の方々から激励をいただき、改めて身の引き締まる思いがした」とし、「改めて一般の会員にとってJATAは遠い存在だと感じた。会員にとって魅力ある風通しのよい組織にしていきたい。会員の大半は中小なので、その意見が上がってくる仕組み作りが必要だ」と意気込みを語った。

 JATAの課題については「委員会活動で成り立っているが、現状、機関決定の場となっている懸念がある。委員会を議論の場にしなければならない。それを支える事務局も意識を高めていく必要がある」と職員の意識改革の必要性も指摘。「さまざまな問題はあるが、全体の議論を経て大きなうねりを作って改革をしていきたい」と考えを示した。

 事業方針は基本的に金井耿前会長の路線を踏襲し、今年度の事業計画のもと各種事業を展開するが、今年度から新たに展開する「政策検討特別委員会」でJATAの活動を改めて見直していく。

 各分野についても触れ、海外旅行に対しては「例え2千万人を達成したとして、どれだけ旅行会社を通したお客様がいるかが問題だ。お客様が求める旅行会社になっていかなければならない」と強調。また、訪日旅行は携わっている会員が少ない現状を述べ、「もっと参画する機運を高めていかなければならない。主体的に動いていける環境整備が必要」とした。

 一方、国内旅行については「商品を見て感じることは、もう少し幅広いテーマ性のある、海外旅行のようなSIT商品が出てきて初めて各地域が脚光を浴びてくると思う。サプライヤーの直販化の問題など環境の変化のなかで、さまざまな分野に意欲的に取り組む必要がある。それをJATAとして応援していきたい」と語った。

女将120人が仙台で“輪”結ぶ、第23回「全国旅館おかみの集い」盛大に開く

第23回全国女将サミット2012仙台
第23回全国女将サミット2012仙台

 「全国旅館おかみの集い」運営委員会と旅行新聞新社は7月3日、宮城県仙台市のホテルメトロポリタン仙台で「全国旅館おかみの集い―第23回全国女将サミット2012仙台―」を開いた。東北、東日本の観光復興大会として、初めて東北で開催したが、例年を上回る約120人の女将が全国から参加した。(次号詳細)

 今回のテーマは「『集い』―旅こそ支援、ありがとう 『学び』―経験を伝えることが恩返し 『結ぶ』―仲間の輪、23年の絆」。冒頭、磯田悠子運営委員長(ホテル松島大観荘)は「震災はどこでいつ起こるか分からない。我われの経験を全国の女将と共有したい」とあいさつした。

 会では歌手のさとう宗幸氏が歌を交えながら講演を行ったほか、4つの分科会を実施して女将同士が語り合った。夕方からの懇親パーティーには多数の来賓も駆けつけ、約230人が一堂に会した。