No.315 日本旅館協会が10月設立 - 会員数増で影響力拡大へ

日本旅館協会が10月設立
会員数増で影響力拡大へ

 6月21、22日に開かれた国際観光旅館連盟(佐藤義正会長、1058会員)と日本観光旅館連盟(近兼孝休会長、2786会員)の総会で、10月に両団体の合併新法人「日本旅館協会」を設立することが承認された。旧運輸省ベースの国観連と旧鉄道局ベースの日観連が、20年に渡る紆余曲折を乗り越えてようやく結ばれる。近年、会員数の減少に悩む両団体が、合併後は3400会員程に膨らみ、影響力の拡大を狙う。旅館・ホテル業界に新たな風を巻き起こすこととなるか。

【伊集院 悟】

≪初代会長に佐藤氏、次年に近兼氏≫

「当面は両団体事業を継承」

 6月21、22日にそれぞれ開かれた国際観光旅館連盟と日本観光旅館連盟の2012年度総会で、両団体の合併新法人「日本旅館協会」を10月に設立することについて滞りなく承認・可決された。

国観連総会後の懇親会で握手する近兼孝休日観連会長(左)と佐藤義正国観連会長

 国観連は旧運輸省と連携するかたちで、1948年に戦後増大した外国人観光客へ安心して泊まれる優良宿泊施設を提供することを目的に設立。一方、日観連は翌年の1949年に国鉄が推薦する旅館団体として設立された。両団体の合併はこの20年間、何度も話が持ち上がるが、両団体の性格の違いなどから会員の反対により立ち消えとなっていた。紆余曲折を経て、ついに昨年度の両団体総会で合併が承認され、今年度総会で9月30日に両団体が解散、10月1日に合併新法人「日本旅館協会」が設立されることが決まった…。

 

※ 詳細は本紙1468号または日経テレコン21でお読みいただけます。

未来に生き残る温泉地へ ― 温泉も「本物」志向に進む(7/11付)

 家族旅行で旅館に宿泊するときに、私は温泉を重視し、妻は料理を重視するから、なかなか宿が決まらない。温泉が極上で、料理も美味しい宿がベストなのだが、そうすると、私たちの財布が納得しない。それでも、お互いがギリギリ譲り合える線で折り合える宿を探すのはそれなりに楽しい。なんとはなしに生きているうちに、ほぼすべての主導権を失ってしまったかたちの私であるが、温泉宿選びに関しては、私の方が思い入れが強いためか、いつも粘り勝ちだ。妻は「今度は舟盛料理が食べきれないほど出る海辺の宿に行こうね」と言うが、嗚呼、やはり私はどうしても秘湯や、歴史的名湯などの方に心が引きずられてしまうのである。

 「豪華な海鮮料理や上等な肉料理は東京や横浜でも食べられるが、神秘としか思えない極上の温泉だけは、そこに行かなければ浸かれない」という気持が、知らず識らず私の中で温泉を優位に置いてしまう。

 宿選びの基準は人それぞれである。贅を尽くした豪華な楼閣の館を好む人、素朴なご主人が迎える一軒宿を愛する人、料理自慢の宿や、眺めが良く時を忘れられる客室が絶対条件の人、登録有形文化財の宿めぐりに熱中している人、とにかく安ければいい人――などさまざまだろう。だが、温泉地を訪れる旅行者にとって、「温泉」の占める比重は決して小さいものではない。百人百様の目的で宿に宿泊したとしても、温泉は日本人にとって特別なものであり、未来の旅行者は現在よりももっと温泉に対して「本物」志向に進んでいくはずだ。近い将来、温泉の持つパワーがもう一度見直されることは間違いない。

 団体客中心だった宿が、個人客を上手く引きつけることができないでいるのは、料理の問題もあるかもしれないが、温泉の問題も大きいのではないか。団体旅行なら循環方式の大型風呂でもそれなりに楽しめる。けれど、個人客が遠路訪れた温泉宿で求める温泉は、循環方式で使い回した劣化した湯や、プールのような塩素臭の風呂ではないだろう。温泉の湧出量や配湯をはるかに超える規模の大浴場や客室露天風呂に大きな疑問を持たぬ温泉旅館に危惧の念を抱く。湧出量に限界のある温泉地は、在りし日のように共同湯を生かした散策できる温泉地づくりもまた、生き残る一つの道だと思う。

(編集長・増田 剛) 

名称を一般公募、若者旅行振興を表彰

 観光庁はこのほど、若者の旅行離れが進むなか、若者旅行振興への取組意欲拡大のため、若者の旅行振興につながる取り組みを行った地域や旅行会社などを観光庁長官賞として表彰を行う制度を創設した。現在、若者層が旅行に出たくなるような名称を冠するため、表彰制度の名称(キャッチコピー)を一般公募している。

 表彰対象は、とくに20代を中心とした若者層の国内旅行活性化に寄与した地方公共団体、各種団体、NPO、企業、個人などの取組。2012年12月―13年2月に表彰対象を公募し、13年5月に審査委員による審査会で表彰対象を決定し、6月に表彰する。

 表彰制度の名称(キャッチコピー)の募集期間は12年8月31日まで。発表は9月下旬に採用者へ連絡のうえ、観光庁のホームページで発表。採用者には希望の3つの国・都市の海外ガイドブックと記念品の「MY箸」をプレゼント。応募は、「若者旅行振興の取組に関する表彰制度」の名称(キャッチコピー)、氏名、年齢、職業、住所、電話番号、商品ガイドブックの希望の国・都市名3つを記載のうえ、電子メールで送付する。

 応募先Eメール(wakamono-ryoko@mlit.go.jp)。 

くまモン売り上げ26億円、県のイメージ大きく変化

くまモン関連の商品
くまモン関連の商品

 熊本県の宣伝と営業部長として県産品販路拡大などで大活躍する、ゆるキャラ「くまモン」の関連商品販売が、昨年1年間で25億5千万円に達したことが県の調査で分かった。くまモンの身分は公務員で、民間業者は県から図柄使用の許可をもらって商品化する。商品内容はぬいぐるみ、ストラップなどのグッズから、衣類、食品など2千種類を超えた。発表した売上げ額は、調査対象業者782件のうち、回答のあった413件の合計で「実際の売上げはさらに増える」(県ブランド推進課)とみる。

 くまモンの登場は2010年の3月。夏から県内で活動を本格化させ、秋には大阪などで観光プロモーションに参加。1万枚の名刺を配り認知度アップをはかった。

 とくに昨年は3月12日に九州新幹線が全線開通し、開通前後は熊本県内や福岡、山陽、関西、首都圏などでイベントが集中。昨年1年間、くまモンのイベント出演は2千回を数えた。11月には全国の「ゆるキャラグランプリ」で第1位を獲得し、人気はさらにヒートアップ。今年1月には県の上海事務所開設イベントにも同行し、国際デビューを果たした。

 さらにサンリオとコラボした熊本フェアでキティちゃんと共演。女子サッカーチーム・INAC神戸と協定して、県物産品やグッズをホームゲームで販売。ほかにもジュースや菓子など大手メーカーのくまモン商品も続々と誕生している。ローソンは近畿圏1900店で、5月15日から約1カ月「くまモンよかモンフェアー」を展開し、パンやデザートなど6品目を販売した。

 県観光経済交流局の松岡岩夫局長は「熊本県は武骨とか雄大など男性的なイメージが強かったが、くまモンの可愛らしさ、やさしさで印象が良くなった」と喜ぶ。「くまモンの生まれた熊本に行ってみたい、という観光客も増えている」(同)という。かつて「いつまで続くのだろう」と心配したくまモン評価も、今は「当分は続くだろう」と確信に変わっている。

九州全体でIR誘致、西九州統合型リゾート研究会

西九州統合型リゾート研究会

 九州でカジノを含んだ統合型リゾート(IR)実現を目指す西九州統合型リゾート研究会(会長=前田一彦佐世保商工会議所会頭)は6月11日、長崎県佐世保市のハウステンボスで第6回定期総会を開き、地域の理解を得ながら、九州全体でIR誘致活動を展開する検討部会の発足など活動計画を決定した。

 カジノをめぐる動きでは、昨年8月に「国際観光産業振興議員連盟」(古賀一成会長)が、カジノを合法化し施行するための「カジノ区域整備推進法案」をまとめ、今国会に議員立法で上程する意向をみせるなど、実現に向けた環境づくりは進みつつある。

 同研究会は2007年に長崎、佐賀、福岡県の企業や自治体が参画して発足し、IR実現に向けた研究・活動を行っている。ハウステンボスを候補地に選定した九州・アジア統合型リゾート構想案もまとめ、同日発表した。

 計画では初期投資500億円で、ハウステンボス内に地上10階建ての新カジノホテルを建設し、ホテルヨーロッパ内にカジノ施設を設置。年間500万人の来場者で、940億円の売り上げを想定する。

 西九州エリアでの経済波及効果は2544億円、1万人以上の雇用者誘発効果を見込む。

 九州全域への波及には交通インフラの整備や魅力的なコンテンツ導入、一体的な周遊観光の仕掛けとプロモーション活動などを課題に挙げる。

 来賓の古賀氏も「西九州はアジアに一番近い。総合リゾートの概要もできている。九州が国際観光戦略の一環として一丸となって頑張ってほしい」と期待を述べた。

対談~Tourism For All~池山メディカルジャパン・池山 紀之社長×旅行新聞新社・石井 貞徳社長

池山紀之社長×石井貞徳社長対談

ピンクリボンのお宿ネットワーク
7月10日、設立総会 ―すべての人が旅を楽しめる環境づくりへ―

 「ピンクリボンのお宿ネットワーク」(発起人代表=畠ひで子・匠のこころ吉川屋女将)の設立総会が7月10日、開催される。同ネットワークの設立に向けて協力してきた、池山メディカルジャパンの池山紀之社長と、旅行新聞新社の石井貞徳社長が「Tourism For All」をテーマに、すべての人が等しく旅を楽しめる環境づくりについて語り合った。また、一般社団法人CSRプロジェクト理事長の桜井なおみさんからもメッセージをいただいた。
【本紙3面に関連】

旅館で温泉に入る喜びを―石井社長

観光と医療の橋渡し役に―池山社長

旅行新聞新社 石井貞徳社長
旅行新聞新社 石井貞徳社長

■石井:旅行新聞は「Tourism For All」(すべての人に等しく旅行を)をテーマに、これまで「ユニバーサルデザイン(UD)セミナー」の開催などに取り組んできました。今回設立される「ピンクリボンのお宿ネットワーク」は、社会貢献事業の一環としても、ぜひ立ち上げたいと考えていました。

 国内の乳がん患者は現在約50―60万人といわれ、若い年代にも広がっていると聞いています。そのような方々も悲観ばかりするのではなく、以前と同じように楽しく旅ができる環境づくりが我われ観光業界には不可欠です。とくに日本の文化である旅館で、温泉に入って喜びを感じられるような仕組みづくりが必要でしょう。そのためには受入側の旅館がネットワークをつくることによって情報の交換や共有化ができないかと思いました。

 設立時には、大規模旅館、中小規模旅館など40―50会員に参画いただく予定で、今後もネットワークが広がっていくことを願っています。この趣旨に賛同される企業や、団体、自治体の方々の参画も歓迎致します。

■池山:私たちは乳がん患者さんのためのオーダーメイドの人工乳房をつくっています。日々患者さんと接するなかで、多くの方が「以前のようにまた温泉旅館に行きたい」と強く望んでいることを、観光関係者には意外と知られていません。誰かが声を上げない限り、このことはわからないのです。一方、病院の医師や看護師、そして私たちも、患者さんから「どこの温泉に行ったらいいの? どの宿が私たちを受け入れてくれるの?」といつも聞かれるのですが、残念ながら、どの旅館が患者さんを心地よく受け入れていただけるのかという知識や情報がまったくありません。ですから、そのようなお宿さんのリストがあれば、病院の医師や看護師といった医療関係者は、患者さんとコミュニケーションを取るなかで紹介することができるのです。

 ただ、宿のリストをつくることに関しては、そんなに難しくはないでしょう。でも、それだけでは世の中は何も変わらないのです。できることなら、乳がんの手術を受けた多くの方々が温泉旅行を我慢している現状を広く旅館側にも知っていただいくことが大事だと思います。設備投資といったものではなく、患者さんの気持ちを「理解してあげる」という心の問題なのです。

 「ピンクリボンのお宿ネットワーク」は、観光業界と医療業界をつなぐ橋渡し役になればいいと考えております。全国の主要500病院や看護師会などと連携しながら、患者さんを受け入れる宿が全国に広がり、1人でも多くの方々が等しく温泉の旅を楽しめる社会になってほしいと思います。 

■石井:池山さんは医療業界と観光業界をつなぐさまざまな活動を行っていますね。

池山メディカルジャパン 池山紀之社長
池山メディカルジャパン
池山紀之社長

■池山:昨年のことですが、「人工乳房を装着したまま、この温泉に入ることは大丈夫ですか?」と患者さんが旅館に尋ねたそうです。旅館の方から病院に問い合わせがあり、その病院の看護師さんからお宿に「大丈夫ですよ」と返答があったそうです。医療業界では当たり前の知識でも、患者さんや旅館の方々が知らないことが多いことが分かり、シリコーン製の人工乳房が全国の温泉や温浴施設に浸けても大丈夫なことを確認する「おっぱいリレー」を10月に実施しました。温泉に行きたいのに行けずにいる多くの女性の不安解消にも取り組んでいます。

 私の妹も乳がんの手術を受けてから15年間、母親や家族と温泉旅館に行くことができませんでした。これは、私の妹に限ったことではなく、日々乳がん患者と接するなかで聞かれる声は、たとえ本人がふっきれたとしても、「肉親が自分の傷跡を見て悲しむ顔が辛い」「傷跡を見て驚かせては申し訳ない」と言うのです。

 私たちがつくる人工乳房は決して安いものではありません。私たちも一生懸命作っていますが、せいぜい年間500人程度です。現在の日本では、年間約5万人の方々が乳がんを患い、乳房を切除しているのが現状です。私たちが人工乳房を供給できているのは、わずか1%に過ぎません。残りの99%の方々は我慢しなければならない状態です。「胸をつくっていただいて、20年ぶりに温泉に行けました」との手紙をいただいたり、喜びの声をたくさん聞きます。何とか一番楽しみにされている温泉に入れるようにしてあげたいなと思っています。 

■石井:乳がん患者さんが宿に来られた時、旅館側はどういう対応をすればいいのか、実際のところわからないところも多いと思います。

■池山:乳がん患者さんだからといって特別なサービスなどはまったく必要なく、特別なプランなんかも必要ないのです。

 たとえば脱衣所でお着替えをする際に、少し照明を落とすとか、ついたてを置くとか、洗い場に仕切りがあるというだけで「すごく安心感がある」と言われます。また、ピンクリボンのステッカーやロゴマークなどが館内に掲出されているだけで、「旅館の経営者が自分たちのことを理解してくれているのだ」と温かい気持になるのだと言います。脱衣所は消防法の関係で、30ルクス以上でなければなりませんが、30ルクスというのは本当に暗いのです。ですから、8時以降は少し暗くするというのも一つのアイデアだと思います。きっと、このような取り組みに賛同していただける旅館は日本全国にたくさんあるだろうと思います。そしてこのようなつながり(ネットワーク)がどんどん広がっていけば、乳がん患者さんだけでなく、「すべての人が安心して、どの旅館にも行けるような社会になる」と思うのです。

 私たちは、全国の主要500病院の医療関係者に、乳がん患者さんのことをこれまでより少しだけ理解していただけるお宿さんを紹介することができます。

■石井:参画される旅館の規模やスタイルなどさまざまなだと思います。しかし、大切なことは、人的な部分で、どういうお声掛けをして、どう対応していくかを、「ピンクリボンのお宿ネットーワーク」では、セミナーや現地視察などを通じて、教育・啓蒙にもつなげていけたらいいなと思っています。

■池山:私たちも最初は患者さんにどう接したらいいかわからなかったのですが、旅館の女将さんや仲居さんが普段されている「おもてなし」で十分なのです。ちょっとだけ、患者さんや病気に関する知識を得てもらえば、何も特殊なことが必要ではないのです。

 患者さん本人が温泉に行けなければ家族も行くことができません。家族や近親者を含めると、その数は200万人を超えると言われています。その需要をぜひ観光業界の方々、温泉旅館の方々に掘り起こしていただきたいなと思います。

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CSRプロジェクト 理事長 桜井 なおみさん
CSRプロジェクト
理事長 桜井 なおみさん

「診断後も人生を楽しみたい」

CSRプロジェクト理事長 桜井 なおみさん

 ピンクリボンのお宿ネットワーク設立、おめでとうございます。

 私は、今から8年前、2004年7月に乳がんの診断を受け、右側の乳房を全摘出しました。水泳が大好き、旅行、温泉が大好きだった当時30代の私にとって、術後に見た胸部の光景は今でも忘れられません。

 看護師さんから「傷あとを見てどのように感じた?」と聞かれた私は「のっぺらぼうの砂漠のようだった」と答えました。砂漠という言葉は、当時の私の心も表現したものでした。

 フィットネスクラブを退会し、家族との温泉旅行も諦めました。胸の傷跡を、周囲の人や、年老いた親に見られたくなかったからです。

 乳房喪失。

 生命を守るためには仕方のない手段でしたし、自分からも望んだことでしたが、実際の喪失感は大きいものです。こんな私でもお風呂に入るときは今でも眼鏡をはずし、鏡に映る自分の姿をみないようにしています。

 乳がんは今や16人に1人が診断を受ける病です。診断後も変わりなく、人生を楽しめるよう、皆様の取り組みの発展に期待します。

桜井なおみ=1967年東京生まれ。一般社団法人CSRプロジェクト理事長、NPO法人HOPEプロジェクト理事長、キャンサーソリューションズ㈱代表取締役社長。2004年夏、30代でがんの診断を受ける。その後、自らのがん経験や社会経験から小児がん経験者や働き盛りのがん経験者支援の必要性を感じ、2005年から、がん経験者・家族支援活動を開始。設立1年後を契機にNPO法人化、現在に至る。07年には、東京大学医療政策人材養成講座に参加。筆頭研究者として「がん患者の就労・雇用支援に関する提言」を発表。以来、一貫して社会と医療の間を結ぶさまざまな問題に取り組む。

日本観光施設協会へ、「旅の駅」をアピール

西山健司会長
西山健司会長

 日本ドライブイン協会(西山健司会長、229会員)は6月18日、東京都港区のチサンホテル浜松町で2012年度通常総会を開き、今秋を目途に一般社団法人日本観光施設協会に移行することを確認した。

 

 また、会員拡大を目指して活動した結果、昨年の91会員から、229会員まで増強した。内訳は、中・四国観光施設協会60会員、関西観光施設連盟40会員、群馬観光施設協会33会員、静岡県ドライブイン協会28会員、千葉県ドライブイン協会10会員など。

 西山会長は冒頭のあいさつで、「公益性のある事業を行うことによって、我われは社会性を持ち、ユーザーからの支持も得られる」と述べ、「道の駅」との関係については、「すでに存在しているものは認めざるを得ない」とし、「我われの『旅の駅』をいかにアピールしていくかが今後の課題。今年度は300会員、2年後には400会員を目指していきたい」と語った。

 特例民法法人日本ドライブイン協会は33年の歴史を持つが、時代の変遷とともに、旅行形態の多様化への対応も迫られている。一方で、観光産業の発展の担い手として、「ドライブン」という限定的な枠組みのなかでの活動には限界もあった。一般社団法人への移行にあたって、全国のさまざまな観光施設が大同団結し、「日本観光施設協会」という一つの旗のもとに結集し活動していく考えだ。

 内閣府から認可され次第、日本ドライブイン協会は消滅し、新団体に移行する。

 今年度の主な事業計画は、高齢化社会に適応したバリアフリーへの取り組みや、AEDの設置、災害時における情報提供などに取り組むほか、ウェブで会員施設を結ぶことも検討していく。

 なお、西日本の会員が増えたため、来年度の総会は関西で開くことも話し合われた。

陳述書で処分に反論“業務停止は相当性欠く”

主宰は寺田吉道観光産業課長(右)
主宰は寺田吉道観光産業課長(右)

 観光庁は、関越自動車道で事故を起こした高速ツアーバスを手配したハーヴェストホールディングスへの立入検査の結果、旅行業法の違反が見られることから処分を検討し、6月18日に聴聞会を開いた。同社は聴聞会を欠席したが、事前に観光庁へ陳述書を提出し、違反の指摘3点について誤解である旨を訴えた。

 観光庁は同社に対し(1)1月2日―4月30日の間に、高速ツアーバスの乗車場所で所定の外務員証を携帯しない者に外務員の業務である旅行代金の収受を合計66件行わせていたこと(2)4月27日の募集型企画旅行で当初発地予定であった東京ディズニーリゾート(TDR)から東京駅に変更し、発地および着地のいずれもが当該貸切バス事業者の営業区域外となる運送サービスの提供を斡旋したこと。また、同様に別の貸切事業者2社に対し合計28件の営業区域外の運送サービス提供を斡旋したこと(3)4月27日の東京発および4月28日の金沢発の募集型企画旅行において、当該貸切バス事業者に配車指示書が到達したことの確認を行わなかったこと――の3点を不利益処分の原因として指摘。旅行業法第12条の6第1項、第13条第3項および第12条の10に違反するとして同社に対し業務停止命令を予定している。

ハーヴェストホールディングスは欠席
ハーヴェストホールディングスは欠席

 これに対し同社は聴聞会を欠席。事前に提出していた陳述書で、「業務停止は誤解に基づくもので処分の相当性を欠く。処分しないか、寛大な処分を」と求めた。また、不利益処分の原因3点について以下のように反論。(1)については、乗車場所での集金の指示はしていなく、事前の決済を案内・実施し、その旨をホームページでも明確に記載していることを説明。「支払い忘れの利用客からの要望により、当日乗車場所で集金をした例が66件あっただけ」と弁明した。また同期間のバス利用者は12万人に上るが、そのうちのわずか66人であり「1818人に1人。0・05%の確率」と強調した。

 (2)については、「元々は営業区域内である千葉のTDRを出発地としていたが、運行直前にTDRから乗車する利用客のキャンセルがあったため、次の乗車場所である東京駅へ直接向かうよう当日に変更しただけ」と説明。ツアーバスは路線バスと異なり、乗降する場所以外で停留する必要はないという観光庁の指導に違反していないとした。

 (3)については、「仲介業者にバス会社の手配や配送指示書の送付などを依頼しており、弊社から直接バス会社への確認は必要ないとの認識だった」と説明。さらに、大手旅行会社の例を挙げ反論。同社は大手旅行会社からの依頼でバス運行もしており、自社で賄えない場合に、他社にバス運行の依頼をしているが、その際、「大手旅行会社から直接バス会社へ配送指示書の送付や確認はしていない」とし、同社だけへの処分に疑問を呈した。

 同社は「利用者への多大な被害と迷惑について深く反省し、社会的責任を認識し深く謝罪する」としたうえで、観光庁の指摘する3点については「いずれも事実として存在しないか、軽微な違反」と訴えた。

 観光庁は今回の陳述を踏まえ、後日最終的な処分を決定する。

自前で2400万円の予算、東北観光博ツアーに助成

6月15日に会見を開いた二階俊博会長
6月15日に会見を開いた
二階俊博会長

 全国旅行業協会(ANTA、二階俊博会長、5491会員)はこのほど、ANTA会員旅行会社が実施する東北観光博応援ツアーへの旅行代金を助成する「ANTA東北観光博応援ツアー」と、日中国交正常化40周年記念事業として2千人規模の訪問団で中国の西安を訪れる「弘法大師・空海を偲ぶ日中交流訪問団」を発表した。

 「ANTA東北観光博応援ツアー」では、青森県・岩手県・宮城県・秋田県・山形県・福島県の東北6県と、隣接する栃木県・茨城県・千葉県の被災3県に在住、在勤、在学中の顧客を対象に、各県のANTA会員旅行会社が実施する東北観光博応援ツアー(募集型企画旅行・受注企画旅行および手配旅行)の参加者1万人に対し、ANTAが旅行代金の一部を助成し、東北観光博会場への誘客を支援する。参加者1万人の内訳は青森県1千人、岩手県870人、宮城県1400人、福島県2100人など。実施期間は7月1日―12月31日で、予算額に達した時点で終了。助成額は宿泊が1人1泊あたり3千円で、日帰りが1人1回あたり1千円。

 ANTAは同事業に自前で2400万円の予算を編成。国の補助金などはなく、「東北の人の心に笑顔を灯したい」という会員の思いから実施に至ったという。

<2千人で中国西安へ日中40周年事業企画>

 また、日本観光振興協会(西田厚聰会長、701会員)や日本旅行業協会(JATA、菊間潤吾会長、1127会員)とともに、日中国交正常化40周年記念事業として2千人規模の訪問団で中国の西安を訪れる「弘法大師・空海を偲ぶ日中交流訪問団」を企画した。弘法大師・空海は、平安時代に幾多の苦難を乗り越えて唐に渡り、真言密教を日本に伝えた、2千年を超える歴史を有する日中交流の先人。本ツアーでは、空海ゆかりの地、中国西安を訪問し空海の偉業と日中友好交流の歴史を学ぶ。

 「弘法大師・空海を偲ぶ 西安の旅」は、8月26―29日の4日間、8月27―30日の4日間、8月26―8月30日の5日間、8月27―31日の5日間の4コースを設定。旅行代金は1人9万9800円―10万7800円。8月28日には現地で西安市青龍寺での法要と祈願、訪問記念植樹、日中友好交流の歴史を学ぶ講演会、日中国交40周年を祝うイベント、日中関係者の懇親会を予定している。

一般社団化で不安露呈、受け皿組織設立に難色も

ANTA第47回通常総会

<8月2日に支部長説明会開く>

 全国旅行業協会(ANTA、二階俊博会長、5491会員)は6月20日、ホテルラフォーレ東京で第47回通常総会を開いた。一般社団法人移行にともない、各都道府県に受皿組織として新たに「一般社団法人○○都道府県旅行業協会」を設立する方針を確認したが、受皿組織の必要性に疑問を呈す意見や、納得できないなどの声が多数あがった。ANTAでは8月2日に支部長説明会を開くなど、今後、各支部や会員に対しての説明に力を入れていくという。

 二階会長は高速ツアーバスの事故を受け「観光業界全体でもっと反省をして、2度と起こさないという強い決意が必要」と強調。また、ANTAで行う「東北観光博応援ツアー」について触れ「皆で助け合って福島を中心とする東北を支援していかなくてはいけない。観光業界が明るくなれば、世の中は必ず良くなっていく」と力を込めた。

 来賓の又野己知観光庁次長は「今年度の観光は今までの量的な拡大に加え、質的な豊かさや満足度を強化していく」と話し、高速ツアーバス事故を受けて「どう克服・改善するべきかを、業界の皆さんと手を携えて考えていくことが大切」と強調した。

 2011年度は東日本大震災を受け、「東北・東日本観光復興支援キャンペーン」の実施や「第8回国内観光活性化フォーラム」の開催、国際交流事業では韓国の麗水世界博覧会への協力、震災からの回復を目指した「日中観光交流の集い」への参画などに尽力。11年度の苦情弁済業務については、苦情相談件数は436件と前年度の半分以下となった。認証申出では被申出人13社に対する認証申出人322者(社)、申出総額4912万548円に対し、認証決議された申出人は317者(社)、認証額は3805万9830円。被申出人11社の種別は、第1種1社、第2種4社、第3種6社となった。また、JATAとの共催による苦情対応セミナーを全国3都市で開き、ANTA会員84人が参加。中身について国内関連が少ないとの声を受け、今年度はANTA独自でセミナーを開催する。

 12年度は国内事業では引き続き「東北・東日本観光復興支援キャンペーン」の実施や「第9回国内観光活性化フォーラム」を開催。高速ツアーバス事故を踏まえ、貸切バスの安全対策全般の見直しへの積極的な協力に尽力していく。また、東北6県と隣接する栃木県・茨城県・千葉県の被災3県を対象に、ANTA会員旅行会社が実施する東北観光博応援ツアーへの旅行代金を助成する「ANTA東北観光博応援ツアー」を立ち上げた。

 海外事業では、韓国の麗水世界博覧会への協力、日中国交正常化40周年記念事業となる2千人規模の訪問団で中国の西安を訪れる「弘法大師・空海を偲ぶ日中交流訪問団」の送客に取り組む。

 一番の懸案となっていた一般社団法人移行にともなう諸問題については、「一般社団法人移行に係る支部の基本的な考え方」として、(1)移行後の支部は「協会支部」として本部の指揮監督の下で業務を行う(2)協会会費は本部会費と支部会費を合算徴収する(3)各都道府県に受皿組織として「一般社団法人○○都道府県旅行業協会」を新たに設立する――などの方針を発表。会員からは、「受皿組織を新たに設立する必要性が分からない」「協会支部がその業務を行えないか」「協同組合を受皿組織にできないのか」などの質問・要望が上がった。有野一馬専務理事はこれまでの任意団体から法人格を有するより強固な団体への移行や、協同組合では法律上業務範囲が限定されること、協会支部と受皿組織の性格上の違いなどを説明したが、難色を示す声や説明不足の指摘が止まなかった。ANTAでは8月2日に支部長説明会を開くなど、今後、各支部や会員に対しての説明に力を入れていくという。

 総会後の懇親会には、奥田建国交副大臣や井手憲文観光庁長官も駆け付けた。