3カ国交流15年に2600万人、アウトバウンド外資企業規制 中国、年内にも解禁

 第5回日中韓観光大臣会合が8月21日から24日まで中国の杭州市と湖州市で開かれ、日本と中国、韓国の3カ国間を相互に訪問する旅行者数(域内交流人口)を、2010年の1700万人から、15年に2600万人に拡大する目標を共同声明に盛り込んだ。06年に韓国で開いた第1回会合では10年に1700万人を目標としたが、今年の目標達成が確実となっていることも報告された。

 大臣会合には、前原誠司国土交通大臣、中国の邵琪偉(ショウ・キイ)国家旅游局長、韓国の柳仁村(ユ・インチョン)文化体育観光部長官が出席。3国間の観光交流に関する協力をさらに強化していくほか、3国の善隣信頼関係や包括的な協力関係を強化による相互利益をはかり、ともに発展するために努力をしていくことを確認した。

 今回の会合に合わせ中国の邵琪偉局長は、訪中していた前原大臣に対して、早ければ年内にも日本の旅行会社が中国国内での海外旅行業務を解禁する旨を話した。現状では、中国のアウトバウンド業務で外資企業の参入が規制されており、日本の旅行会社が取り扱いできない状況にあるが、前原大臣や溝畑宏観光庁長官らが昨年から粘り強く協議を続けており、ようやく中国側から具体的な期限の設定が公式に出された。解禁される旅行会社の条件や、スケジュールについては明らかにされていないが、年内に関係法令の整備を行い、実証実験なども行う予定で、段階的に枠を広げていく考えだ。

 また、政府が2016年に訪日外国人数2千万人を目標に掲げているなかで、前原大臣は中国人旅行者を09年の約100万人から600万人まで拡大する考えを示した。これに関連して、今年7月1日に中国人個人観光ビザの発給要件を緩和したが、1年間精査したうえで、さらにもう一段進めた緩和策を検討していく意向を表明した。

 8月25日に開いた会見で観光庁の溝畑長官は、中国における外資企業によるアウトバウンド業務解禁について、「訪日旅行のリピーター化や、質の高い観光商品を提供していくうえで非常に意義のあること。日本の旅行会社から強く待望されていた懸案であり、邵琪偉局長の発言が実現されるように、中国側とコミュニケーションをはかっていきたい」と語った。

No.257 全国産業観光推進協議会 - 利益が循環するモデルを

全国産業観光推進協議会
利益が循環するモデルを

 日本観光協会は2004年度に全国産業観光推進協議会を設置し、地域や企業と連携して産業観光を推進してきた。産業観光の普及や発展に向けて、05、07年度と2年ごとに提言を発表。このほど、昨年度の事業で行った「産業観光推進会議」の報告書(第三次)をとりまとめて発表した。産業界との連携によるビジネスモデルの手法として10の事業モデル事例を提示したほか、訪日外国人観光客によるマーケットの拡大なども検討した。

【飯塚 小牧】

 日本での産業観光は、東海旅客鉄道相談役・須田寛氏(全国産業観光推進協議会副会長)が第一人者として提唱し、2001年に日本観光協会が開いた「産業観光フォーラムin愛知・名古屋」を契機に社会的な認知が進んだ分野だ。

 07年には経済産業省が、日本の近代化を支えた炭鉱跡など33件を「近代化産業遺産群」に認定。そのなかの長崎県・軍艦島(端島)は昨年から上陸見学が可能となり、約1年で当初予想の2倍の約5万5千人が訪れた。近年は、神奈川県・京浜工業地帯の工場夜景を観賞するクルーズツアーなども人気を集めている。さらには、訪日外国人観光客も日本の先端技術や伝統産業など、ものづくり文化の視察・体験に興味を示すと思われ、マーケットの拡大に期待がかかる。

 一方で、産業観光の発展には各企業との連携や、地域が自立的に展開するための事業モデルの確立など課題は多い。こうした課題などに対応するため、全国産業観光推進協議会では「産業観光推進会議」(座長=福川伸次機械産業記念事業財団会長)を設置し、検討を進めてきた。これまでの報告書は05年度が産業観光の総論、07年度がまちづくりを中心とした産業観光についての提言。今回は、「産業観光ビジネスモデルの手法~地域に埋蔵された宝を輝かせるために~」と題して、ビジネスモデルの構築や新たな可能性などより具体的な内容をまとめた。

 

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No.256 今年新設の観光系学部 2 - 基礎力のある人材を育てる

1389号特集

今年新設の観光系学部 2
基礎力のある人材を育てる

 2008年に観光庁ができ、「観光」が国の重要な産業としてクローズアップされているなか、全国の大学で観光系の学部・学科が新設されている。「観光」に関わる人材を育てるため、各大学は長期のインターンシップやマネジメント能力の育成など、独自の特色を打ち出している。今春、観光系の学部を新設した東海大学の松本亮三学部長と、阪南大学の吉兼秀夫学部長に、学部の特徴や、地域社会との関わりのなかでどのような人材を育てたいかなどを聞いた。

【伊集院 悟】

 

 

松本亮三学部長

【東海大学 観光学部観光学科】

 東海大学は今年4月、観光学部観光学科(定員195人)を新設した。2006年に全日本空輸(ANA)と共同で構想し、工学部航空宇宙学科航空操縦学専攻を設置したノウハウを生かし、今回、国が強く押し出す「観光」をメインにした学部の開設に至った。

 カリキュラムは、「観光文化」「サービス・マネジメント」「レジャー・レクリエーション」「地域デザイン」の4つの柱で構成。これらをコース分けではなく科目群とし、学生たちが自分の目指す進路や興味に応じて、自由に選択できるようにした。「観光文化」は、観光客の行動や観光資源の開発・保全・活用など、人類学・地理学・民俗学・心理学・ホスピタリティ論などを学ぶ。

 

吉兼秀夫学部長

吉兼秀夫学部長

【阪南大学 国際観光学部】

 阪南大学は今年4月、1997年に新設した西日本の4年制大学で初の国際観光学科を、それまでの国際コミュニケーション学部から独立させ、国際観光学部(定員150人)としてリニューアルした。
吉兼秀夫学部長は「本来大学が担うべきジェネラリストの育成と、今まで専門学校が主に担ってきたスペシャリストの育成。阪南大学は、この2つを融合させたい」と教育理念について語った。

 

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カジノ整備法の私案発表、秋の臨時国会に提出へ

古賀一成会長

 カジノを中心とした複合観光施設整備の合法化を目指す「国際観光産業振興議員連盟」(民主党・古賀一成会長)は、8月5日に第8回勉強会を開き、「特定複合観光施設区域整備法(仮称)」の会長私案を発表した。各方面の意見を聞いて修正を加え、秋の臨時国会へ提出する方針だ。

 冒頭、古賀会長は「あくまで、パブリックコメントを求める私案なので秋の国会まで広く反応を集めたい」とあいさつ。「さまざまな異論がでてくると思うが、基本的なスキームは心を合わせていかなければならない」と述べた。また、岩屋毅会長代行(自民党)は「国会はねじれているが、この案に関しては望ましい。超党派なので、この現象を活用してプロジェクトを成功させたい」と意気込んだ。

 会合では私案の内容について、大阪商業大学アミューズメント産業研究所長の美原融氏が解説。カジノを核とした「特定複合観光施設」の目的を「国際競争力のある滞在型観光と地域経済の振興を実現するため」とし、国と地方公共団体、民間事業者の関係性などの考え方を説明した。基本的な考え方は、カジノ運営は民間事業者が主体となり、開発・施設整備に国税は使用しないということだ。

 施設数は当初は2カ所、最大でも10カ所に限定。地域の選定は、基本方針を国が定めたうえで、地方公共団体から申し出を募り、国が審査・評価して指定する。指定を受けた地方公共団体は、公募で施設の整備や運営、投資をする民間の特定事業者を選定するが、この後、事業者は国の認証を受ける必要がある。運営・経営も国の厳格な規制対象になるほか、主要株主や経営者、従業員、納入業者なども国の適格性認証の対象になる。

 このため、国の規制機関として内閣府に中立的なカジノ管理機構を設置。主務官庁は、天下りや癒着を防ぐため、複数省庁の共管にし、観光振興の政策側面は国土交通省としている。

 また、美原氏は国民の懸念事項への対応として、地域環境維持のための住民による是正勧告の仕組み創設や、依存症患者の施策実施の必要性も述べた。さらに、今後検討すべき論点として、収益配分の仕方や、収益の使い道などを列挙。「特定の地域だけのメリットにならないように、全国民への還付案としては年金に使用するのも一例」と考えを述べた。また、「規制とエンターテイメントのバランスも考える必要がある」とした。

 会合には約30人の議員を含む60―70人の関係者が参加。連盟のメンバーからは、「日本が先進国から遅れを取っている現状や他の国の規制の在り方、成功例などを示すことで、内容が分からずに反対する人が少なくなるのでは」という意見などがだされた。

岐阜の5旅館がISO取得、グループで自然環境に配慮

 JTB協定旅館ホテル連盟岐阜支部飛騨高山・奥飛騨地区の5旅館が環境マネジメントシステムの国際規格である「ISO14001」を取得し、7月14日に岐阜県高山市のホテルで認証式が行われた。

 認証を受けたのは、本陣平野屋、高山グリーンホテル、スパホテルアルピナ飛騨高山、宝生閣、穂高荘山月の5施設。「美しい飛騨高山を未来へ」をスローガンに、5施設は昨年5月から、「おもてなしの心」「自然環境に配慮した宿」などをテーマに地域活動の維持向上に向けて取り組んできた。

 具体的には、地域の清掃活動や、高山市快適環境づくり市民会議への入会、高山市のごみ分別収集活動、煙草ポイ捨て禁止の啓蒙活動、電力や上水道などの省エネルギー活動、廃棄物の低減活動などを行ってきた。

中国こども大使を招待、KNT「旅通じて子供に笑顔を」

 近畿日本ツーリスト(KNT)は7月26―30日の5日間、2008年に中国・四川省で発生した大地震に被災した子供たちを「中国こども大使」として日本へ招待した。同社創立55周年プロジェクト「みんなの笑顔が見たいから」の一環として、「旅を通じ子供たちの笑顔をとりもどしたい」をテーマに企画。子供たちは小学4―5年生の35人。山梨県甲府市で小学生と交流、記念植樹を行ったほか、富士山や箱根周辺、東京ディズニーランドなどの観光を楽しんだ。

 28日夜には東京都内のホテルで「中国こども大使交流会」が行われた。26日、北京まで「こども大使」を迎えに行ったKNTの吉川勝久社長は「国家旅遊局の祝副局長ともお会いし、『素晴らしい事業である』と高い評価と謝意を受けた」と報告。「両国の人口からすると、とても少人数の交流ではあるが、このような中日間の良好な関係が、子子孫孫、世々代々に渡って育まれることを願ってやまない」と語った。また、子供たちに「元気に旅をしていますか。帰ったら、みんなに日本のことを話してあげてください」と話しかけ、元気な返事を受けた。

 在日本中華人民共和国大使館の張成慶参事官は「この旅により、子供たちがパワーをもらい、四川に戻って新しくスタートできると信じている。日本の良さ、日本の方々の親切さを中国の皆さんにたっぷり伝えていただきたい」と語った。こども大使からは、感謝の気持ちを込めて、歌や踊りなどが披露された。

第2回観光甲子園、10校が本選大会出場(8月29日)

昨年の観光甲子園
昨年の観光甲子園

 高校生が主役となって地域の観光資源を再発見・再発掘して作り上げた「地域観光プラン」を競い合うコンテスト、第2回「観光甲子園」(主催・大会組織委員会、委員長・石森秀三北海道大学観光学高等研究センター長)の本選大会出場10校が決定した。

 大会は昨年に第1回を開催し、応募してきた69校、157プランの中からグランプリなどを決定した。今回は「ディスカバーマイタウン・マイエリア」をテーマに、4月1日から全国の高等学校6200校を対象にプランを募集した。

 応募は前回を上回る75校、125プラン(今回から1校3プランに制限)と増え、参加都道府県も30から36に拡大した。7月9日に締め切られ、審査委員による予備選で本選出場の10校を決定した。

 本選大会は8月29日に、兵庫県神戸市の神戸夙川学院大学を会場に開催。10校の生徒が、審査委員を前にしたプレゼンテーションを行い、その中からグランプリの文部科学大臣賞と観光庁官賞など各賞を決定する。

 本選出場校(都道府県)は次の通り。

 私立東北生活文化大学高等学校(宮城)▽県立置賜農業高等学校(山形)▽私立清真学園高等学校(茨城)▽横浜市立みなと総合高等学校(神奈川)▽県立法隆寺国際高等学校(奈良)▽県立新翔高等学校(和歌山)▽松江市立女子高等学校(島根)▽県立上浮穴高等学校(愛媛)▽県立新居浜商業高等学校(同)▽県立島原農業高等学校(長崎)

国産食料の流通活性化、子供たちに「たから」発掘

 日本青年会議所(JCI)は7月24日、神奈川県のパシフィコ横浜で、食料の国産商品流通の活性化をはかるためのイベント「地域活性たから市」を開いた。ローカルファースト確立委員会(秋山洋一郎委員長)を中心に、日本の食料自給率の向上や地域の「たから」を発掘する試みとして、初めて実施。横浜市内の小学校などにPRし、約1万人を集客した。

秋山委員長

 秋山委員長は「日本の国土は力があるが、生産者が減少し、消費者もファーストフードの利用などで、何がおいしいのか分からなくなっている。ふるさとの味もなくなっているなかで、作り手と消費者をつなぐ出会いの場を作りたいと思いイベントを開いた」と経緯を話す

 JCIは、さまざまな産業の関係者が参加し、全国で地域資産の活用や永続的な地域の発展、地産地消の呼び掛けなどの活動を行っている。そのなかで、今回は「未来の子供たちのための食を通した日本経済の再興」を目的に、「たから市」を実施した。

 今回は、地域の青年会議所や企業が協力して44ブースを出展。知名度の高いものからあまり知られていないものまで、安心・安全の国内産食材、料理を並べた。出展を断ったものもあるというが、「適正なものを適正な価格で提供する。手間がかかるものは、それなりの値段になる。それが分かる人たちのブース。企業の利潤追求ではなく、人と人との信頼関係を築くことを主に、新たな産業構造を築くためのもの」と強調する。

 今後は、このような小さいイベントを各地域で行えないかと考えている。「日本には約1700の自治体があるが、地元の人が地元のモノに出会う機会を作りたい」と意気込みを語る。