無秩序な地熱開発反対、ヘルスツーリズムにも対応(日本温泉協会)

 日本温泉協会(滝多賀男、1558会員)は6月22日、福島県・穴原温泉の匠のこころ吉川屋で2010年度会員総会を開いた。今回の総会には(1)無秩序な地熱開発反対(2)温泉の合理的利用(3)日本の温泉文化を守ろう――の3つのスローガンを掲げ、今後の事業運営の根幹としていく考え方を示した。

 滝会長は冒頭のあいさつで、「昨年は創立80周年記念事業の一環として、横浜市などで国際温泉会議を開き、世界12カ国から多数の参加があった。海外の温泉地を学ぶとともに日本の温泉文化を広く世界に発信できた」と述べ、温泉の価値が多方面で認識された成果を評価した。

 また、温泉排水問題への対応では、水質汚濁防止法排出基準への猶予として定められている暫定基準が6月30日で期限を迎えるなか、さらに3年間延長されたことを報告。「01年からほう素、ふっ素を含む排水の規制対象となっているが、すぐに基準を達成することが困難な業界。旅館などが導入可能な低廉な処理装置がないことなどを訴え、暫定基準の継続を環境省に要望。このほど13年6月まで3年間の延長が確定した。今後は、自治体の関与も含め地域で集約して処理する考え方も必要ではないか」と語った。

 地熱開発については、CO2削減に向けて、地熱開発に対する社会の関心が強まるなか、地熱開発による膨大な量の熱水や水蒸気を含む周辺温泉源への影響、環境破壊など極めて憂慮される問題を孕んでいるとの視点から、「既存の温泉に影響を及ぼす恐れのある地域での無秩序な地熱開発には反対していく」とし、協会として自然環境や温泉の保護を優先していく立場を明らかにした。今後も地熱対策委員会を中心に情報収集に努めていく。

 そのほか、観光地づくりの取り組みのなかでヘルスツーリズムへの期待が大きいため、滞在型温泉地づくりにも取り組む考えだ。

 今後の総会開催地については、11年度は山梨県甲府市の湯村温泉、12年度は長崎県雲仙市の雲仙温泉に決まった。

GW混雑緩和で、国内旅行需要 1兆円創造

 GW混雑緩和で1兆円の国内旅行需要創出――。観光庁は6月28日、今年のゴールデンウイーク(GW)における観光旅行の動向調査をまとめた。これによると、GW期間中の旅行消費額は約1兆4千億円と算出。このうち宿泊旅行が約9272億円、日帰り旅行が4454億円となった。インターネットで2万4767人を対象に調査した。

 GWにおける国内旅行の実施率は、宿泊旅行が20・2%、日帰り旅行が35・0%。国内旅行の同行者は、「家族」が70・5%と最も多く、次いで「1人」が11・7%。

 一方、全国252施設、424観光地から回答を得た調査では、5月1―4日の客室稼働率は平均92・3%。4月29日―5月5日の期間における宿泊料金の水準は、平日を100とした場合130という料金設定。また、同期間中に宿泊予約を断った件数は1施設当たり約101件にのぼる。昨年のGWと比較して入込客が「増加」した観光地は47%、「減少」した観光地は25%。「ほぼ同じ」は27%となった。さらに、休暇分散化の効果を推計するために行った分析では、GWの混雑緩和によって創出される国内旅行需要は約1兆円(9890億円)と試算する。

 溝畑宏観光庁長官は6月29日に開いた専門紙との会見で、政府が示す全国を5ブロックに分割し、春と秋に大型連休をつくる休暇分散化案について、今秋にも素案をまとめる考えを示し、早ければ年明けに開かれる通常国会への提出を目指す。

 ブロック割りについては、さまざまな意見が多数寄せられるなか、正式なかたちでの代替案も現状では出されていないため、政府の現行案を進める公算が強い。

全国9支部体制に、創立60周年、スロー・トリップ推進(日観連)

 日本観光旅館連盟(近兼孝休会長、3276会員)は6月16日、東京都新宿区の京王プラザホテルで2010年度総会を開いた。節目の創立60周年を迎え、支部組織を国土交通省運輸局と同一地域割りとなる全国9支部体制への再編を承認。支部の名称は地域名の後に支部連合会を付けることとした。

 近兼会長は「25支部から9支部体制になったことで、各地域の運輸局と連携を強め、パイプを太くしてほしい」と述べた。さらに、「(9支部体制の)国際観光旅館連盟との合併の件についても、諸問題がまだまだあるが、体制は一応整った」と語った。そのほか、口蹄疫の影響で大きな観光打撃を受けている宮崎県への義援金を呼び掛けた。

 新公益法人制度への移行については、一般社団法人への移行を目指すことを決めた。

 今年度は創立当初の初心に立ち戻り、「駅長さん推薦の宿」時代の旅に代表されるローカル線を利用した「ゆったりとした鉄道の旅」(スロー・トリップ)を地産地消と絡めながら、JRや地元旅行会社と協力して推進していく。新たな取り組みとしては、株式会社全旅クーポン会のクーポン制度への参加を決めた。

 また、日観連ホームページ「やど日本・英文サイト」への参加施設の増強に加え、中国語、韓国語サイトについても今後検討していく。共通ポイント・カード・システム「ポンタ・ポイント」参加も検討する考えだ。

国内宿泊プラン検索サービス、旅行関連サイトに販売、NECビッグローブ、フォルシア

 NECビッグローブは6月28日、検索プラットフォームを開発するフォルシアと提携し、SaaS型のBIGLOBE旅行「宿・ホテル比較&検索サービス( http://travel.biglobe.ne.jp/saas/ )を、ポータルサイトや全国各地の観光協会など、旅行関連サイトに対して販売を始めた。サービス提供は秋から行う。

 SaaSとは、ソフトフェアの機能のうち、ユーザーが必要とするものだけをサービスとして提供し、利用できるようにしたもの。同宿泊検索サービスの導入は無料。導入サイトは、両社とアフィリエイト契約を結び、サイト訪問者が同宿泊検索サービスを利用して宿泊した成果によって手数料収入を得ることができる。

 BIGLOBE旅行「宿・ホテル比較&検索サービス」は、複数の大手旅行会社のサイトに掲載されている国内宿泊プラン110万件以上の宿泊プランを一括して比較横断検索できる宿検索サービス。この検索連携に貢献するのがフォルシアの検索プラットフォーム、Spook(スプーク)。今年3月に5サイトから9サイトに拡充後、利用者数、予約数ともに4割増となった。

 同宿泊検索サービスを導入する場合、基本的に無料だが、対象サイトの特性に合わせ絞り込みができるオプションサービスもあり、こちらは有料となる。すべての宿泊プランでなく、旅行会社を絞り込んだり、エリア限定の宿泊プランに絞り込んだレイアウトにあらかじめ設定できる。

 販売先として想定しているのは、旅行関連サイト。これから機能を拡充したいポータルサイトや、全国各地の観光協会のサイトなどに提案していく。これまで観光情報の提供に注力していた全国の観光地サイトからも宿予約が容易にできる環境づくりを支援する。今後1年間で100サイトへの導入を目指す。

3社共同で会社設立へ、国際航空券の発券、仕入業務(日旅、トップツアー、KNT)

 日本旅行とトップツアー、近畿日本ツーリスト(KNT)の3社は7月2日、国際航空券の発券と仕入業務を統合するための共同出資会社「ビジネストラベルネットワーク」を今月末に設立するとした。日本旅行とトップツアーについては、業務の統合と会社設立を既に4月に発表していたが、KNTも新たに参画した。

 新会社の資本金は7500万円で、出資比率は日本旅行が46%、トップツアーが36%、KNTが18%。所在地は東京都港区に置く。従業員数は約30人。また、4月の時点ではエヌオーイー(林田建夫社長、東京都千代田区)とエフネス(岡田直樹社長、東京都千代田区)も業務統合に加わっていたが、今回の出資は見送った。

 3社は新会社の設立で、公示運賃国際航空券の発券業務と仕入れ業務を統合し、コストの削減やサービスの向上を目指す。発券ボリュームを背景に、同業務での旅行会社の収益確保を狙う。なお、3社の2008年度の公示運賃取扱実績の合計は、約800億円。

訪日中国人のビザ手続きが簡略に、VisaがJNTOと連携

 Visaはこのほど、中国人観光客の訪日促進のため日本政府観光局(JNTO)と連携することを発表。7月1日から、中国のVisaカード会員に対し日本への観光ビザ申請手続きが簡略化され、雇用証明書のほかに、過去6カ月のVisaクレジットカードの請求書コピーを提出するだけで、ビザ申請できるようになった。

 申請が通れば、5営業日以内にビザが認可される。ビザの申請手続きは、今までの北京、上海、広州の大使館と領事館に加え、瀋陽、大連、青島、重慶の各領事館でも可能となった。

国内、海外ともに旅行意欲高まる、JTB夏休み旅行動向

 JTBがこのほど発表した2010年度の夏休み(7月15日―8月31日)の旅行動向によると、国内旅行人数は前年比4.0%増の7412万人と好調に推移する見込み。一方、海外旅行も同8.4%増の244万人と大幅な増加が予想され、景気の回復基調により、夏の旅行意欲は高まる見通しだ。

 1人1回当たりの平均費用は、国内旅行が同2.9%増の3万5300円、海外旅行が同3.0%増の21万8700円と上昇が期待される。

 国内では、ETC割引利用経験者の86.1%が今夏の旅行でも利用の意向を示したのが大きな特徴。海外は、ハワイやグアム・サイパン、中国に加え、円高でお得感が増した欧州が人気を集めている。

多摩大・望月ゼミ/珍しいディベート授業

『理論構築力を競う「D―1」、今後の海外DCは? 「アフリカVS南米」』

 多摩大学経営情報学部の望月照彦教授のゼミナールは、日本の大学では珍しく、ビジネスディベートを授業に取り入れている。今回は、2つのチームに分かれ、課題に対して自分たちが支持する方の研究・分析を行い、テーマへの知力や理論構築力の優秀を競い合う「D―1」(闘論)を開いた。

 6月9日の授業では3年生がディベートを行った。課題内容は、今後10年間の海外旅行の重要デスティネーションにすべきなのは「アフリカか、南アメリカか」。A・B両チームが、それぞれの地域の比較優位な魅力や売りなどを論じ合った。

 企業メンバーの構成は大将1人、参謀2人、兵士2人、豪傑1人の計6人。また、レフリーを1人立てている。ディベートは、第1ラウンドで大将が地域の優位性を10分ずつ論述。第2ラウンドのクロスインパクト・ディベート20分間は、自己の優位点のアピールや相手の論理の弱点などを攻め合う。2つのラウンドを踏まえて、チーム内で考え方や論述の構成を補強する会議を10分間行い、最終論述として第3ラウンドで、自己の優位性を5分間で論じる。

 南アメリカチームは、「有名観光地以外の市場開拓」をテーマに、植民地だったことを生かして「南米のヨーロッパ」などを売りに、魅力をアピール。自然や温泉なども盛り込んで紹介した。「世界遺産以外は、注目されにくいが、実は穴場スポットが多い。旅行代金は相場で50―100万円と高いが、値段に見合う価値がある」とまとめた。

 一方、アフリカチームは、日本人に元気や活力を取り戻させるには圧倒的な大自然が必要だと定義。そのうえで、日本で知られていない地域を紹介し、またその文化のなかで息づいている「音楽」を軸にプレゼンテーション。「日本を救う活力になる」とすべての音楽の起源であるアフリカで、大自然と伝統音楽を楽しむツアーを提案した。

 これらに対し、両者はお互いの弱点を突いて質問し、また、質問したことを逆に優位性として自己アピールするなどの論法で攻め合った。

 ディベート終了後、望月教授は「20分間に、これからの観光産業の重点が5つあがった。もちろん結論はでなかったが、これだけのポイントが議論され、とてもいいディベートだった。新しい旅のデザインの提案がでればもっとよかった」と評価した。また、「観光は光を観るというが、これからは影も観なければならない。闇の部分をどう解決するかが重要な問題になる」と今後の観光についてのポイントをいくつか語った。

 最後に「『旅とは何か』をもう一度考える時代がきた。皆さんの年代の旅行者が減少しているが、ぜひ世界的なトラベラーになってほしい」と学生に呼び掛けた。

「産業観光」で連携、観光協会が協定調印(川崎市と米子市)

 工場夜景見学ツアーで話題の神奈川県川崎市観光協会連合会(斎藤文夫会長)と、「大人達の社会見学」と称し地元産業施設を新しい観光の目玉として売り込む鳥取県米子市観光協会(杵村善久会長)は6月25日、川崎市内のホテルで「産業観光に関する協定書」を交わした。相互の交流を進め、取り組みの発展につなげる。

 川崎市観光協会連合会事務局の亀山安之次長が、米子市観光協会の「首都圏観光大使」としても活躍していることが縁で、今回の連携が実現した。

 協定の調印に先立ち、米子市観光協会の宇田川英二副会長ら11人は、JFEスチールや川崎マリエン、工場夜景などを視察。「京浜工業地帯に観光のイメージはなかったが、参考になる取り組みも多い」(宇田川副会長)と実感した。

 川崎市には産業文化財から実際に稼動している工場まで、多くの企業が立地する。市では07年からホームページを開設し、「スタディー・ツーリズム」として広報に力を入れている。なかでも工場夜景の見学は、はとバスの定期観光コースに採用されるなど話題を集めている。

 一方の米子市も07年から、王子製紙米子工場や米子市水道局、サントリー天然水のブナの森工場などで工場見学を行い、名水の街をアピールしている。旅行商品としても採用されるなか、昨年度末までに73件、約2千人の参加があった。

 調印後開かれた交流会では、川崎市の斎藤会長が館長を務める「川崎・砂子の里資料館」が所蔵する六十余州名所図会(歌川広重)の1枚に「伯耆 大野大山遠望」があることから、「これらを米子市美術館で展示できないか」(斎藤会長)と提案があり、早速交流の輪が広がった。

第1種会員の入会金値上げ、ANTA、一般社団法人への移行

 全国旅行業協会(ANTA、二階俊博会長、5541会員)は6月22日、東京都内のホテルで第46回通常総会を開き、一般社団法人への移行や第一種会員の入会金改定などについて承認した。

 昨年から対応を検討してきた公益法人制度改革については、認定要件の一つである公益目的事業比率の50%をクリアできないとして、公益社団法人ではなく、一般社団法人への移行を決定。木村茂男副会長は「条件がそろえば、一般社団法人から公益社団法人への移行も可能なので、他の法人の状況などをみながら検討していく」と将来的な公益社団法人への移行にも含みを持たせた。また、全旅協旅行災害補償制度を廃止し、新たな見舞金制度を創設することを取り決めた。

 入会金の改定については、第1種会員と2・3種の規模・資金の差などを考慮し、第1種会員の入会金80万円を150万円とした。第2種会員の65万円、第3種会員の55万円は据え置きとなった。

 また、口蹄疫の影響を被った宮崎県を支援する決議が承認され、二階会長は冒頭あいさつで「事が起こった際には皆で立ち上がることが大切」と強調し、「この問題の根本的解決後には、宮崎・鹿児島を元気づけるために、多くの観光客を送り込むことが我われにできる重要な任務だ」と呼びかけた。

 10年度は、「国内観光活性化フォーラム」の開催など着地型旅行の推進と地域活性化への貢献、地域資源を利用したエコ・グリーン・ヘルスツーリズムや高齢者に優しい旅行、バリアフリー旅行などの推進、インバウンドの強化などに力を入れる。

 なお、第8回国内観光活性化フォーラムは来年4月26・27日に富山で行う。 「第1種の被申出人ナシ、ANTA09年度弁済業務」  全国旅行業協会の09年度の弁済業務については、被申出人13社に対する認証申出人は1754者(社)、申出額1億1381万6千円に対し、認証決議された申出人は1746者(社)、認証決議額は5249万9千円。被申出人13社の種別は第1種0社、第2種9社、第3種4社。昨年度認証決議額の6割を占めた第1種が0社となった。