450キロ以上は運転士交替、安全確保指針を制定

中央は村瀬茂高会長
中央は村瀬茂高会長

 高速ツアーバスの企画実施会社、バス運行会社、受託販売会社(インターネット販売)で構成する、高速ツアーバス連絡協議会(村瀬茂高会長、89会員)は5月16日、「高速ツアーバス安全確保指針」とする安全対策のための自主ルールを制定した。夜行運転で実車走行距離が450キロ以上のコースについては、交替運転士の配置を必須とした。国土交通省は、運転士の1日の最大運行距離670キロという指針の見直しを表明している。

 安全確保指針は、企画実施会社、バス運行会社、受託販売会社の業種別に8―12のチェック項目を設けた。それぞれの関係、役割を書面で事前に確認し明確化する。また、企画実施会社と利用者の関係、利用者への義務についても募集広告のなかに明記することを求める。悪質業者を排除するために、受託販売会社は、企画実施会社に対して指針を著しく守らない場合、販売停止や契約解除の措置があることも書面で通達する。

 16日、国土交通省で行われた会見で同協議会の成定竜一顧問は、今回の事故ついて「企画実施会社が、法令順守状況が良くないバス会社に運行を依頼したことが原因の1つとして考えられる」との見方を示した。指針では、どのような安全管理、法令順守のバス会社であるかということを企画実施会社が書面で把握をしたうえでバスの運行を依頼するということを取り決めている。

 会員へは指針対応を徹底させるために協議会への報告義務を課す。報告内容は、6月初旬から協議会ホームページ上で掲示。安全の見える化を実践する。

 これとは別に企画実施会社に対し実態調査も行う。バス会社選定における各社の安全基準、利用者への情報提供(交替乗務員、任意保険など)、運行依頼先の見直し予定を調査する。村瀬会長は、「まずはできることから始めている。指針は事故解明や国土交通省からの指導を含めて、断続的に見直し強化することを考えている」と語った。

 今回の指針は4月に「バス事業のあり方検討会」が発表した「新高速バス制度」を先取りする形で策定した。新制度では、高速ツアーバスの企画実施会社はすべて、一定のバス車両を保有する乗合バス事業者に業態転換が求められる。委託に際しては個別に国の許可が必要になり、委託者にも運行責任が課せられる。新制度移行は今後2年をかけて行われる予定だったが、今回の事件を受けて同協議会は、すみやかに移行できるように会員への支援を進める。 

<人気ブロガーに聞く> 招待ツアーは補助でも十分

山本峰子さん
山本峰子さん

 山本峰子(ハンドルネーム)さんは、gooブログアクセスランキング100番台の人気ブロガー。“旅が大好きな温泉ソムリエ&フードアナリスト”が綴るブログ「コダワリ女のひとりごと」のアクセス数は1日当たりIP約2千、PV約1万(月間IP約6万、PV約35万)を誇り、企業の商品イベントや地域が主催するブロガーツアーにも多数招かれるなど、精力的に情報を発信している。人気ブロガーにブロガーツアーや観光地への率直な意見を聞いた。

【飯塚 小牧】

 

 ――ブログを始められたのはいつですか。

 8年前、2004年の夏からです。当時、仕事がIT関係だったので、仕事の一環として「今話題だから」と始めました。最初は、エッセイや小説のようなものを書いていて、人気はランキングで100番台に乗るぐらいありましたが、今ほど力を入れていたわけではありません。その後、5年前に札幌から東京に移り住んで、仕事を辞めてから本格的に始めました。企業のイベントに参加するようになったのは3年前で、ブロガーの招待ツアーは昨年から参加するようになりました。

 ――主催者は発信力を求めると思いますが、ブロガーの方々はどのようにイベントやツアーに参加されるのですか。

 ホームページで募集している場合もありますし、ブロガーのプロダクションのようなものもあります。手法はさまざまですが、アクセス数などの条件があるので、応募して審査に通れば参加できます。私の場合は、固定の読者さんがいらっしゃるのでアクセス数は安定していますが、テレビなどで話題になったものはアクセスが急に上がったりします。このため、時事ネタを盛り込んでいるブログはアクセス数が多くなる傾向があります。

 ――ブログを拝見すると旅の記事も多いです。ブロガーツアーについてお聞かせ下さい。

 もともと旅は好きなので、自分でもよく出掛けますが、ブロガーツアーは昨年、7回程参加しました。旅好きのブロガーにとっては、昨今の地域が主催するブロガーツアーはとても魅力的です。形態は地域によって違い、全額招待のツアーもあれば、「3万円を補助するので好きに周って下さい」というものもあります。もちろん、全額招待はうれしいですが、もし本当に旅好きのブロガーを集めたい場合は全額を出すのではなく、補助の方がいいかもしれません。私たちは一般消費者でマスコミではないので、旅が好きであれば、足がでるだけでも宿泊だけでも意欲がでて出掛けていきます。同じ予算なら単純に10人より20人呼んだ方が効果的ではないでしょうか。なかには謝礼が発生することで、旅にあまり関心がない参加者も見受けられるので、少し残念な気もします。また、せっかく予算をつけているのですから、記事以外にも参加者から意見を聞くなどフィードバックを求めるべきです。

 ――ご自身でもよく旅をされるそうですが、その際は何を参考になさいますか。

 「どこかへ行こう」と思ったらまずインターネットで検索します。ガイドブックも買いますが、雑誌だと情報量が限られてしまいます。他の方のブログも参考にし、クチコミを見て調べます。ブログは画像が見られることが大きな魅力です。しかも、それはプロが撮っているわけではないので、偽りのない姿で信頼性があります。また、同じ場所に行っても視点はそれぞれ違うので、自分では気付かなかったところを他の人がクローズアップしているのを見るのは楽しいです。自分のブログでも、文章よりも画像を多く使い、写真で見せるようにしています。

 ――消費者目線で観光地に対する意見を教えて下さい。

 全般的に言えることは、自分たちの魅力に気付いていないということです。とても珍しいものもPRしていない。青森に、日本でも数人しか持っていないウィーン菓子のマイスター資格を保有する方のお店があるのですが、地元の方はまったく知らないので「もったいない!」と思い、何度も紹介するうちに徐々に知名度が上がってきたという例もあります。地方ではブログの書き込み自体が少なく、発信力も低いので、埋もれてしまっているお店はとても多い。地元の人が売り出したいものと、来訪者のニーズが一致していないのかもしれません。食べ物などは、とくに東京から訪れる人は“おいしいもの”は求めていないと思います。東京で何でも食べられますから。それよりも、“珍しいもの”“新鮮なもの”を求めているので、無理に東京ナイズする必要はないですし、やはり郷土料理のようなものが歓迎されると思います。

 ――今後、ブログはどうなっていくと思いますか。

 ブログがなくなるという人もいますが、私はなくならないと思います。Facebookも楽しいですが本名の人が多数なので、恐らく友人内の限られたものです。比較して、ブログは最初から不特定多数に発信するものなので、今後もブログの発信力には魅力があると考えています。

 ――ありがとうございました。

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【山本さんから宿や観光地へ一言】

 「私は旅が大好きなので、ホテルや観光地紹介などのブログ記事投稿のお誘い大歓迎です!直接メールでご連絡下さい」。

 山本峰子さん=メール(fuekitty@goo.jp )、BLOG( http://blog.goo.ne.jp/fuekitty )、Facebook( https://www.facebook.com/fuekitty )、Twitter( https://twitter.com/Fuekitty )。

ピンクリボンのお宿ネットワーク7月10日設立 参画宿・企業募集中

<全国500の病院と連携、多くの人に温泉旅行を>

 全国50―60万人という乳がん患者の旅をサポートする「ピンクリボンのお宿ネットワーク」(代表発起人・石井貞徳旅行新聞新社社長)が7月10日に設立されます。

 乳がんにより、毎年5万人の女性が胸の切除や温存手術を受け、8割以上の方が回復されている一方で、そのことを気にして、大きな楽しみである旅をあきらめてしまう人が多いという。その数は患者さんと家族を含めると約200万人にのぼるといわれています。

 そこで、全国の旅館・ホテルや観光行政・団体とのネットワークを持つ旅行新聞は、乳がん患者の団体や、サポートする看護師、病院などと協力しながら、患者さんを受け入れる宿が参加する会を設立し、1人でも多くの方々が温泉の旅を楽しめる環境づくりに取り組んでいきます。

 会では、全国500の病院や看護師団体と連携し、年1回の総会・シンポジウムを開き、それぞれの立場、考え方の理解を深めるほか、業界のみならず広く社会に向けて啓発の輪を拡大していきたいと考えています。また、お宿の冊子を発行して、旅行新聞読者以外にも全国500の主要病院や看護師団体を通じて配布します。乳がん患者に限らず、高齢者や障がいのある方、病院の医師、看護師をはじめ、職員の方々とご家族にも旅を楽しんでもらう環境をつくっていきます。

 ぜひ多くの旅館・ホテルや観光地、旅館組合、賛同される企業の皆様のご参画をお待ちしております。

 「ピンクリボンのお宿ネットワーク」の組織は(1)【会員(正会員・準会員)】乳がん患者を受け入れる全国の旅館・ホテル、観光地・温泉地の行政、観光団体、旅館組合等(2)【協力会員】全国約500の病院、乳がん看護認定看護師(約160人)、池山メディカルジャパン(3)【賛助会員】企業等。

 年会費は正会員(1施設)3万円、準会員(1団体)5万円、賛助会員2万円。

 設立総会は7月10日、東京都内で開く予定です。

 「Tourism For All」をテーマに、すべての人が等しく旅を楽しめる環境づくりに取り組む旅行新聞新社が事務局となります。

 問い合わせ=旅行新聞新社東京本社 電話:03(3834)2718。 関西支社 電話:06(6647)5489。 

4社で約35億円投資、箱根の新たな魅力づくり

新日帰り温泉施設(イメージ画)
新日帰り温泉施設(イメージ画)

 小田急箱根ホールディングス(和田雅邦社長)は5月14日、東京都内のホテルで会見を開き、グループ内の4社で総額約35億円の設備投資をすると発表した。箱根のさらなる魅力向上をはかり、リピーターへ再訪を訴えるのが狙い。

 冒頭、和田社長は小田急電鉄が策定した箱根エリア戦略の「わかりやすい箱根」「まわりやすい箱根」の実現に向け、小田急箱根グループが2004年にHD体制を構築したことや、9年間で約120億円の投資を行ってきたことなどを説明。5つの重点課題を中心に取り組みを行った結果、周遊券の箱根フリーパス発売枚数は09年度に74万2千枚と過去最高を記録したという。今回の設備投資はその延長線上で、「箱根はすでに訪れている人が多いので、マンネリ化している部分もある。行政や地元と協力し、新しい魅力づけでリピーターを増やしたい。我われの血管を通じて、箱根全体にシャワー効果をもたらせたい」と強調した。

 今回、設備投資を行うのは、箱根観光船(渡辺浩司社長)と箱根ロープウェイ(齋藤康弘社長)、箱根施設開発(和田雅邦社長)、箱根登山鉄道(同)の4社。会見では、3人の社長が各案件の概要を説明した。

 それによると、箱根観光船は2013年3月、芦ノ湖に新型海賊船の就航を予定する。18世紀フランスの第一級戦艦「ロワイヤル・ルイ」をモデルにし、船内はバリアフリー化に対応し、アミューズメント性を向上させる。建造費は約10億円。

 また、箱根ロープウェイは、13年4月下旬に大涌谷の新駅舎を完成させる予定だ。風力発電装置やLED照明の導入など省エネ・自然環境の保護に配慮するほか、レストランの設備を大幅に拡充する。総工費は約10億円。

グループ会社の社長が発表
グループ会社の社長が発表

 一方、箱根施設開発は現在営業している日帰り温泉施設「ひめしゃらの湯」を大幅に拡充した、新しい日帰り入浴施設を13年3月にオープン予定。「里山 湯治村」をコンセプトに、貸切個室露天風呂は首都圏最大数の19室を用意する。総事業費は約7億円。

 さらに、箱根登山鉄道は、箱根登山電車の新型車両を17年ぶりに製造。運転開始は14年4月を予定する。既存の車両に連結し、3両編成ができるため、繁忙期の利便性が向上する。箱根の風景を存分に楽しめるよう、展望窓や側面ガラスの大型化などの車内レイアウトを目指すという。総製作費は約8億円。

 なお、箱根フリーパスの発売枚数は、11年度は震災の影響などで61万枚まで落ち込んだが、12年度は73万6千枚を目指し、13年度は投資効果の期待から75万6千枚を見込む。

取消料徴収の仕組みを、事後カード決済問題を協議

楽天トラベルと事後決済問題を協議
楽天トラベルと事後決済問題を協議

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(佐藤信幸会長)は5月8日、「事後オンラインカード決済サービス」導入によるキャンセル料の取扱いの問題で、楽天トラベル(岡武公士社長)と協議会を開き、楽天トラベル側から、事後決済サービスにおいても今後キャンセル料を徴収する仕組みを作る方針であるとの回答を得た。

 この問題は楽天トラベルが4月4日に宿泊予約サイトのシステムを変更し、「事後オンラインカード決済サービス」を開始したことに端を発した。従来は、カード決済であれば、予約の時点で決済する事前カード決済や現地宿泊施設でのカード決済だけであったが、新たにチェックアウト翌日に自動決済する事後カード決済を導入。これに対し、宿泊施設側はキャンセル料の徴収について反発した。事前のカード決済であれば、キャンセル料の決済も自動で行われていたが、事後カード決済では、宿泊施設側が予約者に対し直接請求しなければならず、キャンセル料の未回収という事態の多発や、消費者にキャンセル料徴収を免れる方法という印象を与えかねない懸念があった。

 全旅連では、楽天トラベルのカード決済システム変更後、青年部が主導して、事後決済サービス導入の延期や、ユーザー向け説明ページでの「キャンセル料発生対象日におけるキャンセル時にはキャンセル料が請求される」ことの明示などの要望を行っていた。

 5月8日の協議会には全旅連側からは、佐藤会長、大木正治会長代行、総務委員会の宮村耕資委員長、広報小委員会の永山久徳小委員長、伊藤真司委員、横山公大青年部長、利光伸彦特別対策担当副部長、内田宗一郎特別対策委員長、新山晃司財務担当副部長が出席し、楽天トラベル側からは岡武社長、齋藤克也常務執行役員、吉崎弘記国内営業部マネージャーが出席した。この席で楽天トラベルは「クレジットカードで決済(安心のチェックアウト後払い)」説明ページ内に、キャンセルの際はキャンセルポリシーに則りキャンセル料を支払うよう説明が記載されたリンク先のページへ誘導するような改善を行ったことを報告。さらに今後、事後決済サービスにおいてもユーザーの同意を得ることを前提にキャンセル料を徴収する機能の付加を進めている旨の説明があった。

リクルートとキャンセル対策を協議
リクルートとキャンセル対策を協議

 合わせて、楽天トラベルから、事後決済サービスのリリース後に見られるカード決済比率、キャンセル率等の傾向、ユーザー動向などを報告。クレジットカードの決済比率はリリース前よりも10%増加して30%程度となり、キャンセル率、キャンセル料の請求対象となる予約日3日前のキャンセル率は減少傾向にあるという。

 また、ユーザーが事後カード決済と現地でのカード決済を混同することがある点については4月16日に改善。領収書が即時に発行できない問題については、事前カード決済に誘導するよう改善していく説明があったという。

 一方、2大ネットエージェントとして楽天トラベルと双璧をなすリクルートとは、前日の5月7日に宿泊予約キャンセル対策について協議。リクルート側からは宮本賢一郎営業1部部長、満田修治営業2部部長、秋山純じゃらんnet編集長、事業推進部の青木貴洋氏が出席した。(1)オンラインカード決済の予約は現地決済より8%程度低い(2)宿泊日の2日前がキャンセル件数のピーク――というデータを紹介。キャンセル防止対策としては、キャンセルポリシーの設定による直前のキャンセル防止、キャンセルが発生した場合もキャンセル料の徴収が可能になる「オンラインカード決済専用プランの活用」が効果的と施設側に勧めた。

 また、4月にじゃらんnet内でキャンセル料請求について消費者に向けて注意喚起を強化したことや、今後もキャンセル料請求に関する啓蒙をはかっていくことが説明された。

No.311 一の湯グループ - 「人時生産制」で経営効率化

一の湯グループ
「人時生産制」で経営効率化

 お客様の強い支持を得て集客している旅館は、従業員の職場環境を整え、お客様に真摯に向かい合える仕組みができているのが特徴だ。「いい旅館にしよう!」プロジェクトのシリーズ第4弾は、神奈川県・箱根を中心に8軒のグループ旅館を展開している「一の湯」の小川晴也社長と、産業技術総合研究所の工学博士・内藤耕氏が対談。従業員1人が1時間に稼ぐ粗利益を示す「人時生産性」(にんじせいさんせい)を用いて、バックヤードの効率化をはかった成功例について語り合った。

【増田 剛】

 

  

 【対談者】

「引き算」の経営を断行
産業技総合研究所サービス工学研究センター
副研究センター長(工学博士)
内藤

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作業の発生元から取る
一の湯代表取締役
小川

 

※ 詳細は本紙1463号または日経テレコン21でお読みいただけます。

東京スカイツリー開業 ― ふっきれた高さに敬意(6/1付)

  5月22日に開業した東京スカイツリーは、「希望の塔」なのかもしれない。近年、暗いニュースばかりが日本を覆っていた。いや、バブル経済が崩壊してから20年以上、日本は自信を喪失することの方が多かったが、久々に空を見上げ、明るい表情になったような気がする。

 エッフェル塔も東京タワーも、東京スカイツリーも、自立式電波塔としては誕生時に高さ世界一。賛否両論があっても、次第に愛されていくのだろう。

 小さな頃に読んだ本に、世界三大無用長物というのがあった。エジプトのピラミッドと、中国の万里の長城、そして日本の戦艦大和と書いてあったが、どれもその壮大なスケールが、今もドラマチックに魅了する。

 観光地は、それぞれが「オンリーワン」であるため、一つの舞台上で競争することはできない。しかし、「ナンバーワン」であることが、必然的に人気観光地になることが、今回の東京スカイツリー誕生を見て感じたことだった。世界一のものに対して、人々は、それが自然物であれ、人間の建造物であれ、敬意を示すものなのだ。

 たとえば、莫大な費用をかけて世界で2番目に早いスポーツカーを造るのなら、むしろ「オンリーワン」の車を造った方がいいだろう。世界で2、3番目に大きなサッカースタジアムを造るのなら、もう少し頑張って、世界最大のサッカースタジアムを造った方が絶対にいい。地方議会などでは、良識派の議員や首長が、あと一歩のところで思いとどまり、適正規模より中途半端にデカイものを造って大赤字を出してしまうケースが全国で散見される。だが、どうせデカイものを造るなら、思いっきりふっきれた方がいい。投資に対する見返りがきっと大きいはずだ。だからといって、陳腐な発想や、思いつき程度のハリボテではまったく意味がない。市民の血肉を注ぎ込んだ、歴史に耐え得るドラマチックな建造物でなければならない。

 東京スカイツリータウンの「開業5日間で来場者100万人突破」は恐るべき数字だ。仙台市と同規模の人口が、わずか5日間で訪れたことになる。この現象は当分続くだろう。来場者の多くは、両手いっぱいにお土産やグッズを買って帰る。浅草や隅田川周辺との新旧文化の対比も面白い。ぜひ世界の人々にも東京、日本の魅力を感じてほしい。

(編集長・増田 剛)

上高地開山祭に2000人、観光シーズンの幕開け

式典には2000人が集まった
式典には2000人が集まった

 冬季間、閉ざされていた長野県松本市の北アルプス・上高地(標高約1500㍍)で4月27日、本格的な登山、観光シーズンの幕開けを祝う恒例行事「第44回上高地開山祭」が梓川にかかる河童橋のたもとで開かれた。当日は穂高連峰がくっきりと姿をあらわす好天に恵まれた。登山者など約2千人が集まり、開式時間の午前11時には、河童橋のなかほどまでびっしりの人で埋まった。

 式典はアルプホルンとアコーディオンの演奏でスタート。アルプホルンは2㍍以上の長さの木製の管楽器。本場スイスの民族衣装に身を包んだ乗鞍アルプホルン愛好会が厳かな音色を響かせた。続いて山の安全とにぎわいを祈願する神事が行われた。

乗鞍アルプホルン愛好会
乗鞍アルプホルン愛好会

 開山祭実行委員長の青柳薫上高地町会長は「昨年、上高地は土石流被害で大変だったが現在、関係官庁の支援を受けて本格的な改修工事が進んでいる。私たちは素晴らしい自然の恵みをいただきながら営業している。お客様のためにこれからも防災関係などの対策を一生懸命やっていきたい」とあいさつした。菅谷昭松本市長は「私たちは山や自然から多くの恩恵を受けている。一方でここ上高地では、梓川の河床上昇や、山岳トイレ、登山道の維持管理、ニホンシカの侵入対策などさまざまな問題も抱えている。岳都松本の責務を果たすべく、こうした問題に真摯に向き合い解決の道を探っていきたい」と述べた。

 上高地は年間約150万人の観光客が訪れるが、昨年は震災の影響で20万人ほど減少。今年は観光客数の回復が期待されている。12年のイベントスケジュールは6月30日まで上高地ウォークラリーを開催。上高地を歩きスタンプを集めると施設の優待商品などがもらえる。6月2、3日は第66回ウェストン祭を開催。上高地や日本アルプスを世界に紹介した英国人宣教師ウォルター・ウェストンの功績をたたえる。9日は上高地音楽祭。10月8日は穂高神社奥宮例大祭。自然観察会(ガイドウォーク)はシーズン中受け付けている。そして11月15日の上高地閉山式で幕を閉じる。

北茨城のシンボル復活、五浦六角堂の再建が完了

再建された五浦六角堂
再建された五浦六角堂

 東日本大震災の津波により流出した茨城県・北茨城市のシンボル「五浦六角堂」の再建工事が完了し、4月28日から一般公開が再開された。復旧を記念して5月31日まで無料公開している。

 

 五浦六角堂は1905(明治38)年に岡倉天心が設計したもので「観瀾亭」と名付けられた赤い六角形の堂。五浦海岸の茨城大学五浦美術館研究所内にあり、天心が思想にふけった場所といわれる。

 ベンガラ彩色に板張りの床、中央には六角形の炉が切られ、約1世紀前に天心が自ら設計した当時の六角堂が太平洋の前に姿を現わした。創建時の姿を忠実に再現するため、写真や地域住民への聞き取りなどで図面を復元。窓の板ガラスは当時の製法を持つイギリスに発注し、小型の瓦も当時の手法を用いて特注するなど細部に渡って復元にこだわった。

 4月26日にはライトアップの点灯式が行われ、一般公開となった28日から新生六角堂が夜間ライトアップされている。また北側岩場には1・7㍍の「雪見灯ろう」も近く設置予定で、107年ぶりの風景復活となる。

 開館時間は4―10月は午前9時から午後5時、11―3月は午前9時から午後4時30分、休館日は毎週月曜(祝日の場合は翌日が休館日)と年末年始。観覧料300円予定、中学生以下は無料。

 近くには天心記念美術館があり、ゆかりの人々の作品も鑑賞できる。

 問い合わせ=茨城大学五浦美術研究所 電話:0293(46)0766。

箱根 ジオパーク申請へ、多様な動植物や温泉も魅力

 神奈川県と箱根町、小田原市、真鶴町、湯河原町などで組織する「箱根ジオパーク推進協議会」は4月20日、「箱根ジオパーク」の誕生を目指し、日本ジオパーク委員会へ申請を提出した。地域の自然や歴史などの資源に、地質的な視点を加えることで魅力を向上させ、地域住民に地域への関心を深めてもらうと同時に、観光や地域振興をはかることを目指す。

 ジオパーク認定を目指す「箱根ジオパーク」は、富士箱根伊豆国立公園に属する箱根火山を中心とする神奈川県西部の1市3町(箱根町、小田原市、真鶴町、湯河原町)で、フィリピン海プレートなど3つのプレートの境界上に位置し、多様な火山地形・堆積物が見られるのが特徴。温暖な相模湾に面し、高低差がある起伏に富んだ地形にさまざまな動植物が生息するほか、多様な泉質を誇る温泉、特色ある歴史・文化など多くのジオパークの魅力を持っているという。

 これらの地質を生かすため、県と1市3町は、2011年5月に観光・商工団体や民間企業、NPO、行政など64団体で構成する箱根ジオパーク推進協議会を設立し、協働・連携してPR活動やガイド育成講座、ジオツアーなど、さまざまな取り組みを実施してきた。ジオサイト(見どころ)を巡るコース例は、不動滝・長尾峠・大涌谷などを巡る「箱根火山の生い立ちにふれる道」や小田原城、石垣山一夜城などを巡る「歴史をめぐる道(古代から戦国時代まで)」などを企画する。

 今後の予定は6―9月に現地審査が実施され、認定されれば11月に高知県で開かれる、日本ジオパーク全国大会で認定式が行われる。

 なお、4月現在、日本ジオパークに認定されているのは全国で20地域。そのうち、5地域は世界ジオパークに認定されている。