「550人の出席者でにぎわう」
旅行新聞新社が主催し、全国旅行業協会(ANTA)と日本旅行業協会(JATA)が後援する、新春恒例のイベント「第35回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」および「第30回プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」「第19回プロが選ぶ優良観光バス30選」の表彰式と祝賀パーティーが1月22日、東京都新宿区の京王プラザホテルで開かれた。ホテル・旅館総合100選では石川県・和倉温泉の加賀屋が30年連続の1位を獲得した。表彰式では「もてなし」「料理」「施設」「企画」の各部門の入選施設が表彰された。また、旅館100選35周年特別表彰として、30年連続連1位、35年連続トップ10入選を果たした加賀屋と35年連続トップ10入選を果たした山形県・かみのやま温泉の日本の宿古窯が表彰された。表彰式後の祝賀パーティーには約550人の業界関係者が出席し受賞を祝った。
表彰式で、旅行新聞新社の石井貞徳社長は「このイベントも歴史を重ねて、観光業界の皆様のみならず、一般のユーザー、海外にまで待ち望んでいただき、旅行商品の参考にしていただいていると聞いている。当初1回目のときは、全国8万軒の旅館から100軒を選ぶのは無謀だという声もいただいたが、回を重ねるとはこういうことなんだなと主催者としてたいへんありがたい」とあいさつ。また、最近の宿泊料金の低廉化をあげ、「21世紀は観光の時代だといわれて10年が過ぎようとしているが、業界になかなかいい風は吹いてきていない。よく考えると、我われが未だに20世紀型の営業をしているのかもしれない」と述べ、「価格を下げるのではなく、付加価値のある商品づくりが大事なとき。一人ひとりが知恵を出し合い、スピードアップをして業界を持ち上げていかないと、お客様も我われの方に目を向けてくれないのではないか。今年は寅年。レッツトライの精神で、いろいろなものにトライをしていこう」と語った。
全国旅行業協会の木村茂男副会長は「私は旅行業を45年やっているが、毎年この時期、100選のニュースが来ると、どこの施設がいいのか再確認し、これを基準にしてやってきた。考えてみると、これは『プロが選ぶ』ではなく『お客様が選ぶ』でもある。それを旅行会社が見て、あそこの施設はいいな、個性的だな、サービスが行き届いているなと評価して、投票している」と紹介。「今、デフレで価格破壊が進み、観光業は厳しい状況が続いている。しかし、価格を下げて、いいもてなしができるわけがない。適正な値段でしっかりしたサービスをすればお客様も納得する。私ども全旅協は全国に約6千の会員がいて、お互いに情報交換している。結果的にお客様に絶対喜んで帰ってもらえる施設を選んでいる。受賞された皆様は自信を持って、観光業界発展のためにがんばっていただきたい」とあいさつした。
審査委員を代表して、現代旅行研究所代表取締役の野口冬人氏は「旅館を評価するときに前々から時代のエースという言葉を使っている。例えば、ユース・ホステルや民宿、高級旅館など、さまざまな歴史があった。本日ここに集まっている皆様は、まさに今の時代のエース」と総評。「若い方がたくさん出席されていて、とても会場全体が若返って見えた。業界が発展していくためには若い力が必要。喜ばしいこと。不況と盛んに言われているが、それを吹き飛ばすように、旅館や、施設、バス会社の方、皆様に新しい日本の観光を打ち立てていただき、大衆を旅行に誘っていただきたい」と激励した。
表彰式では総合、施設部門1位の加賀屋(石川県・和倉温泉)、もてなし部門1位の稲取銀水荘(静岡県・稲取温泉)、料理部門1位のホテル秀水園(鹿児島県・指宿温泉)、施設部門2位の白玉の湯泉慶・華鳳(新潟県・月岡温泉)、企画部門1位の日本の宿古窯(山形県・かみのやま温泉)ら上位10位のホテル・旅館に表彰状と記念品が贈られた。
観光食事と土産物では浅間酒造観光センター(群馬県長野原)が6年連続で両部門1位に、優良観光バス部門でははとバス(東京都大田区)が9年連続の1位となった。 また、今年は旅館100選35周年を記念して特別表彰を実施。30年連続1位、35年連続トップ10入選を果たした加賀屋と、35年連続トップ10入選を果たした日本の宿古窯が表彰された。
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会場を移した祝賀パーティーでは、旅行会社や案内所、一般関係者も加わり各施設の受賞を祝った。後援団体を代表して日本旅行業協会の米谷寛美理事・事務局次長は「新年会はいくつもあるが、この会が1番華やか。毎年楽しみにしている」とあいさつ。JATAの取り組みとして、「もう一泊もう一度(たび)」や「ようこそ!JAPAN(VJC)」、「もっと!海外へ(VWC)」を紹介。「三位一体で取り組んでいる。厳しい話ばかりしていても仕方ない。今年こそ反転して上がっていく年になると信じ、皆さんと協力して元気に進みたい」と語った。
来賓としてあいさつした観光庁の甲斐正彰審議官は「昨年、新政権ができてから、国土交通省では、第1の政策として観光が取り上げられている。また、政府がまとめた経済成長戦略のなかでも観光が1つの柱として位置付けられている」と強調。「観光は国際・国内ともに双方向の交流が非常に大事だ。とくに国としてはインバウンド政策に力を入れているが、いずれにせよ国だけで観光立国は実現できない。皆様と一緒に成長していきたい」と語った。
日本観光協会の吉田正嗣専務理事は、次の旅で何をしたいかを聞いた同協会の調査で、「地元の食材を食べたい」という回答がトップに上がったことや、ツーリズム・マーケティング研究所の海外旅行に関する調査で、どこに行くかよりも、誰と行くかが、動機として逆転したことなどを紹介し、「お客様の志向が変わり、どう対応していくのか、先を見越して努力されていると思う。業界のリーダーである皆様に、回答を出していただきたい」と語った。
受賞者として登壇した加賀屋の小田真弓女将は「ご支持いただいた皆様に、心より御礼を申し上げたい。と同時に、一つの目標に一緒になって頑張ってくれた社員をほめてあげたい」と喜びを語った。また今秋、台湾にオープンする台湾加賀屋をあげ、「日本の旅館文化の発信に力を入れながら、いろいろなものにトライしていきたい。これからも目標高く一歩一歩、着実に頑張っていきたい」と語った。
はとバスの松尾均社長は「厳しい状況だが、社員一同、この賞を財産にして、またバネとして使わせていただこうと思う。観光バス事業者として安全運転を第一に、バスガイドをはじめ、社内サービスのさらなるグレードアップをはかり、お客様に満足いただけるように、今年もさらに頑張っていきたい。レッツトライ。新しい試みにも挑戦していく」と語った。
続いて、選考審査委員特別賞「小規模和風の宿」の表彰式が行われた。受賞施設は三ツ又温泉(秋田県・三ツ又温泉)、吾妻屋(福島県・高湯温泉)、ONSENRYOKAN山喜(栃木県・板室温泉)、たから荘(東京都・蛇の湯温泉)、さかえや(石川県・湯涌温泉)、酒井屋旅館(長野県・美ヶ原温泉)、松宝苑(岐阜県・新平湯温泉)、陶の宿あやとり(静岡県・船原温泉)、美奈川(三重県・湯の山温泉)、御客屋(熊本県・黒川温泉)の10施設。
最後に今年7月6日に東京都千代田区の帝国ホテルで開かれる第21回「全国旅館おかみの集い」(女将サミット)の運営委員(畠ひで子委員長)が集いへの参加と協力を呼びかけた。