世界第2位の741件、国際会議開催件数

 国際団体連合(UIA)が算出した2010年の国際会議開催件数によると、日本は741件で、アメリカの936件に次ぐ世界第2位を記録した。

 日本のこれまでの過去最高記録は世界第4位となった08年の575件だったが、10年は大幅に増加。件数飛躍の要因は(1)アジアの学会の成長に伴うアジア地域の会議需要の増加(2)APEC、COP10の関連会議開催という特需需要の発生(3)10年を「JAPAN MICE YEAR」と位置づけ、各種の誘致活動による国内会議の外国人参加者数の増加――。などが挙げられる。

 06年の観光立国推進基本計画で、日本の国際会議開催件数の目標を05年の168件(旧基準)から11年には252件(旧基準)と定めたが、10年の741件を旧基準に当てはめ再集計すると、目標値を上回る309件となり、目標を1年前倒しで達成した。

 都市別では、シンガポールが1位で725件。東京は7位で190件。

震災後、若年層に動き、12年の訪日客790万人を予想

12年の動向を予想する黒須宏志氏
12年の動向を予想する
黒須宏志氏

 2011年12月19日に開かれた財団法人日本交通公社主催の「第21回旅行動向シンポジウム」で、主任研究員の黒須宏志氏が旅行マーケットの最新動向と2012年の展望について講演を行った。12年の海外旅行者数は前年比2・7%増の1740万人、訪日外客数は同26・5%増の790万人、国内の観光性の旅行者数は同2―3%増と予測した。

 2011年は震災の影響を受けつつも、国内宿泊旅行のボリューム推移をみると、統計の取れた4―9月中、6―8月で前年を上回るなど、「旅行需要は増えている」と総括。過去1年間の宿泊旅行参加率は10年12月調査の64%に対し、11年11月調査で71%と増加。過去1年間の宿泊旅行回数では10年12月調査の2・5回から、11年11月調査の2・7回と微増した。

 海外旅行をみると、9・11やSARS、リーマンショックなどと比べると、東日本大震災の影響は少なく、「むしろプラスに推移している」とした。また、昨今進む予約のオンライン化が2011年は加速しているという。予約チャンネルの変化では近年、宿泊施設への電話などは減少し、旅行会社のホームページが加速度的に増加。旅行会社の店頭や電話、宿泊施設のWebサイトは横ばいとなっている。

 近年いわれる若年層の旅行離れについては、震災後の変化をあげ新しい動きを紹介。震災後6カ月の出国率をみると、20代と30代前半で高い伸びを示し、「若年層は、お金がないが、旅行のモチベーション自体は高い」と語った。一方、リーマンショック後のトレンドであったシニア層はマイナスで推移した。また、アンケート結果から若年層の意識の変化がみられ、「自分磨き」など旅行の意味の変化を指摘。2012年も、一過性の消費から「蓄積」になるような消費に興味が移り、旅行を「自分の経験を積み増していくような営み」として再発見しようとする動きが出てくると予想した。

 2012年の海外旅行者数は前年比2・7%増の1740万と予測。燃油サーチャー高騰の影響で近場優位の傾向、欧州ではFITシフトの継続の見通し。

 国内旅行は観光性の旅行者数は前年比2―3%増と予測。「実質重視」のマインドが強まり消費単価は下落傾向になるという。そのほか、出発2―3日以内の間際予約、出発2週間以内のオンライン予約が増加する傾向にあり、宿を選ぶ基準では「リピーターだから」という理由が増加傾向にあるという。

 訪日外客数は前年比26・5%増の790万人と予測。11年に比べ飛躍的に回復するも、震災前の水準までの回復は難しいという。

長崎―上海、2月29日、運航開始、HTBクルーズ

長崎ー上海を結ぶオーシャンローズ号
長崎ー上海を結ぶオーシャンローズ号

 長崎県佐世保市のハウステンボスのグループ会社・HTBクルーズ(山本宰司社長)は昨年12月27日、長崎―上海航路に運航する低価格旅客船の第1便を長崎発が2月29日、上海発が3月3日と発表した。出航時間は長崎が午後6時、上海午前10時。

 29日(長崎発)から3月14日(同)は週1往復、16日(上海発)以降は週2往復運航する。ただ、出発曜日、時間が固定される定型運航方式はとらない。

 片道運賃(燃油サーチャージ料金、国際港湾利用料金別)は1人9800円で、14日前の早割りは7800円。プレミアム座席利用は3千円の追加が必要。個室は窓なしのインサイドから窓ありのスイートまで5タイプあり、料金は1室1万5千円―6万4千円。

 レストランでの食事は朝、昼、夕の3食セットをエコノミー2千円、スタンダード5千円、ハイグレード1万円の3種類用意。

 なお予約は1月6日から受け付けている。

家族の時間づくりプロジェクト、観光庁が、参加市町区村を公募

  観光庁は、休暇取得・分散化促進の取り組みの一環として、2010年度から進める家族の時間づくりプロジェクトの2012年度実証事業に参加する市町区村を公募している。

 10年度は全国9地域、11年度は全国10地域で実施。地域単位で、有給休暇の取得による大人の休暇と、学校休業日の柔軟な設定による子供の休暇とのマッチングをはかり、地域ぐるみの家族時間の創出を目指す。応募資格は、学校休業日が設定可能で、それにより3日以上の連続した休日を創設可能な小中学校が1校以上あること。公募締切は1月27日。選定後、応募の市町区村に連絡するほか、同庁ホームページで公表する。

19―22歳のリフト無料、福島県のスキー場で

  福島県は県下のスキー場で今シーズン、19歳から22歳までのリフト代を無料にするキャンペーン「雪マジ!ふくしま」を実施している。冬季の緊急対策事業として、若年者へのPRに力を入れる。

 3月31日まで、県内25のスキー場のうち、猪苗代スキー場やあだたら高原スキー場など16のゲレンデで実施している。リクルートじゃらんが全国で実施している19歳のリフト代無料化キャンペーン「雪マジ!19」(福島県では20のスキー場が参加)とも効果的に連携をはかりながら、取り組む。

 現地で年齢が確認できる免許証や学生証など、身分証明書を提示するとリフト券がもらえる。詳細はHP(http://www.tif.ne.jp/19-22free/)。

原発の賠償地域拡大、千葉の16市町村も対象に

 東京電力は1月10日、福島第一原子力発電所の事故による観光業の風評被害の損害賠償対象に、千葉県の太平洋沿岸16市町村を加えることを決め、請求の受付を始めた。政府の原子力損害賠償紛争審査会が示した賠償対象4県以外への拡大は今回が初めてとなる。

 これまで東電は、観光業の風評被害の賠償対象を、昨年8月の原子力損害賠償紛争審査会の中間指針に則り、福島・栃木・茨城・群馬の4県に限定。その他の地域は訪日外国人のキャンセル分についてのみ賠償するとしていた。

 これに対し、千葉県内の観光業者は、風評被害を受けたとして損害賠償を要求。12月28日に千葉市内で開かれた県と東電、観光業者による検討会議を経て、今回の賠償対象地域拡大に至った。当初、損害賠償を求めていたのは千葉県内全54市町村の観光業者とみられるが、今回認められたのは太平洋沿岸の16市町村のみ。賠償基準は先の4県と同じになる。

 損害賠償に関する東電の問い合わせ先は以下の通り。福島原子力補償相談室 電話:0120(926)404。受付時間は午前9時―午後9時まで。

 賠償対象拡大の千葉県太平洋岸16市町村は次の通り。

 銚子市、旭市、匝瑳市、横芝光町、山武市、九十九里町、大網白里町、白子町、長生村、一宮町、いすみ市、御宿町、勝浦市、鴨川市、南房総市、館山市

はとバス ひと足早い成人式、バスガイド18人が新成人

  はとバス(東京都大田区)は1月6日、毎年恒例のはとバスガイド成人式を行った。51回目を迎える行事で、祝日に当たる成人の日が業務多忙のため、成人者が各自治体で行う式典に出席できない場合があり、同社独自の成人式を行っている。はとバス本社車庫で記念撮影を行った後、バスで明治神宮に移動し、絵馬記入、玉串奉納、参拝を行った。

 今年の成人ガイドは秋田・群馬・東京など11都県出身の18人。本社車庫に集合した時間は午前8時。寒空の下、新成人バスガイドの元気な声が響いた。

 成人ガイドの1人、福島県出身の二瓶日馨(はるか)さんは、「仕事も頑張って、すてきな大人になりたいです」と抱負を語った。郡山の実家はひびが入るなど、震災の被害を受けた。「東京にいるからには、東京から元気を発信したい。東京のお客様を笑顔にできたらいいですね」と語った。

12年度観光予算は103億円、復旧・復興枠は3.3億円に

2012年度観光庁関係予算

 観光予算は103億円に――。昨年12月24日に2012年度政府予算案が閣議決定され、12年度の観光庁関係予算は11年度予算(101億4800万円)比2%増の103億3800万円となった。ただし、特別枠となる東日本大震災からの復旧・復興枠3億3400万円を除くと、前年比1%減の100億400万円。9月30日にまとめた概算要求では、11年度予算の8%増となる109億9100万円を要求したが、財源不足に悩む現状を受け、かろうじて前年並みを維持する厳しい予算となった。

【伊集院 悟】

 事業別にみると、「訪日外国人3000万人プログラム第1期」事業は、前年度比4%減の82億9千万円。そのうち、中核となる訪日旅行促進事業(ビジット・ジャパン事業)は、11年度に続き予算削減され前年度比19%減の49億2700万円となった。現地消費者向け事業は、中国・台湾・米国・香港に対し、KPI測定結果を踏まえた効果的な広告宣伝とメディア招請事業を行っていく。一方、韓国はKPI結果が有意義でないことを踏まえ他市場と同事業を取りやめ、個別で対策。安全・安心のメッセージを主要媒体やオピニオンリーダーなどを活用し、タイムリーに発信していく。

 震災で大きく落ち込んだ東北6県と北関東3県(茨城・栃木・群馬)の訪日需要を回復するため、風評被害の払拭や観光振興のPRなどを行う東北・北関東インバウンド再生緊急対策事業には新しく6億2400万円を計上。それと連動し、訪日外国人旅行者の受入環境整備事業は前年度比41%増の8億5400万円となった。また、観光庁の溝畑宏長官が12月の会見で体制強化をうたっていた日本政府観光局(JNTO)の運営費交付金は、18億8400万円と、前年度比4%の削減となった。

 観光地域づくりプラットフォームなど地域活性化へ取り組む「観光を核とした地域の再生・活性化」枠では前年度比27%減の3億4300万円。11年度予算で計上を見送られたユニバーサルツーリズム促進事業は、今回予算計上されるが、9月の概算要求より1千万円少ない900万円。

 「観光人材の育成」枠は、前年度比44%減の1億2400万円と、大きく削減。「ワークライフバランスの実現に資する休暇改革の推進」枠は、同3%減の8千万円となった。

 「日本再生重点化枠」で概算要求していた「国内旅行活性化のための環境整備事業」は「ワークライフバランスの実現に資する休暇改革の推進」枠内で5千万円計上され、「国立京都国際会館の整備・運営に係るPFI事業手法調査」は訪日外国人3000万人プログラム第1期事業内のMICE誘致・開催の推進で展開する効果測定に組み込まれた。一方、「日中国交正常化40周年記念少年招請事業」は外務省主導で行うことになり観光関連では未計上。1万人の外国人を日本に招き世界へ発信してもらう「Fly to Japan!事業」は、国の予算を個人の旅費に当てるのは難しいと予算計上されなかった。

12年度に本格調査を開始する「観光統計の整備」には概算要求よりも4200万円多く、前年度比87%増の8億8700万円となった。

 また、東日本大震災からの「復旧・復興枠」では概算要求通り3億3400万円を計上。東北地方全体を観光の博覧会場に見立てる東北観光博(仮)など、東北地方への旅行需要回復と新たな観光地づくりのモデル構築をはかる「広域連携観光復興対策事業」は2億5千万円を盛り込んだ。「災害時における訪日外国人旅行者に向けた情報提供のあり方に関する調査事業」は3千万円。被災地向けに条件を緩和した「観光地域づくりプラットフォーム支援事業(被災地分)」は5400万円となった。 

No.299 清野社長に聞くJR東日本の観光戦略 - 地元とともに資源発掘

清野社長に聞くJR東日本の観光戦略
地元とともに資源発掘

 東日本大震災後、「つなげよう日本」という掛け声のもと、早期に復旧した東北新幹線は、首都圏と被災地を結ぶ懸け橋となり、多くの日本人を勇気づけた。鉄道が動かなければ、経済活動、まして観光業は成り立たない。震災は、その重要性を改めて認識する出来事でもあった。「今年こそ観光再生の年に」との期待を込めて、東日本旅客鉄道の清野智社長に、観光戦略を中心に聞いた。

【聞き手=旅行新聞新社社長・石井 貞徳、構成=沖永 篤郎】

<合言葉は「つなげよう、日本。」>

 ――鉄道の復旧・復興の状況や乗客数の推移について。

 震災発生後、JR各社や、工事関係業者、地元の皆様など、ありとあらゆる方面からご支援をいただき、東北新幹線をはじめ多くの線区で運転を再開することができました。しかし、三陸沿岸の仙石線や、常磐線などの一部区間では現在も運転を見合わせています。

東日本旅客鉄道 清野 智社長

 

※ 詳細は本紙1449号または日経テレコン21でお読みいただけます。

一つのアンチテーゼ ― ボロ宿に「本質」を問う(1/21付)

 学生時代や20代前半のころは、旅をしてもほとんどが無名のボロ宿に泊まる貧乏旅行だった。若かったし、お金もないし、ほとんどが薄汚い格好の1人旅なので、旅館にも入りづらい。有名旅館、高級旅館なんて存在は、敷居があまりに高すぎた。天守閣のような素晴らしい楼閣を眺めながら、取り囲む高い塀をぐるりと回って、どこか自分の身の丈にあった駅前旅館や落ちぶれた宿を探した。それは、海外旅行でも同じでガイドブック片手にボロ宿を探し歩いた。 この世界に入って、卓越した経営者や、先進的な取り組みをしている宿を訪れ、取材ができることに今でも信じられない気持でいる。さらに、このような仕事をしているせいで、有名旅館に宿泊させていただき、身の丈を越える厚遇を受けたことも何度かある。その洗練されたおもてなしや心遣いに感動し、宿の「本質」を見た気がした。

 私は昨年の秋から冬にかけて3カ月間で全国の秘湯宿を24軒めぐった。毎週末に2軒の割合だ。まだまだ旅を続けたいのだが、金銭的に限界がきた。

 しかし、なぜこんな無謀な旅を思い立って、実行してきたか。おそらく、宿というものの「本質」を、秘湯の宿という素朴さから、もう一度しっかりと考えてみたかったからだった。

 つげ義春は、全国のボロ宿を好んで巡り歩いた。かつて山梨県の鶴鉱泉を訪れた際には「ひどいボロ宿で感激した」と洩らすほどのボロ宿好きだ。そして、ボロ宿が好きなのは、何もつげ義春に限ったものではない。明治、大正、昭和の多くの作家も、実は安いボロ宿に泊まり執筆した。それが今となっては有名作家が宿泊した宿として格が上がった宿も意外と多い。

 昨年巡った宿のほとんどは日本秘湯を守る会の会員宿で、ある意味で“ブランド宿”である。どの宿も鄙びているが、主の心遣いはきめ細かいし、無造作に見えても、木々の一本一本まで計算されて植えられていたりもした。遠くまで来た甲斐もあったと感嘆したものだった。そして多くの滋養がそこにあった。

 有名旅館の優れた経営哲学や、秘湯宿の素朴な温かみは、間違いなく素晴らしい。そのうえで、私はアンチテーゼとして、現代の旅行者の視線から外れてしまった「落ちぶれたボロ宿」の視点に立ち、宿の「本質」を問い、新鮮に見えてくる世界を探したい。^t(編集長・増田 剛)