“環境と経済が共鳴”、コウノトリ復活のまち紹介、豊岡市

 兵庫県豊岡市(中貝宗治市長)は11月10日、東京・六本木のベルサール六本木で「豊岡エキシビジョン」を開いた。「なくした大切なものを取り戻す。そして守り、育て、伝える」をテーマに、コウノトリ復活のまち・豊岡市の歴史や食、伝統、文化などを首都圏のマスコミや旅行会社などにPRした。

 第1部の「コウノトリ悠然と舞うふるさと」では、中貝市長が「一度日本の空から絶滅したコウノトリを自然界に再び帰す」という豊岡市の壮大な取り組みを紹介した。

 日本のコウノトリは、1971年に豊岡市を最後に日本の空から姿を消した。同市は65年から粘り強く人口飼育に取り組み、05年に放鳥に成功した。現在、137羽のコウノトリが生息し、38羽が自由に飛んでいるという。コウノトリは現在、世界でわずか2500―4千羽程度まで減少している。

 中貝市長は「コウノトリの野生復帰の取り組みの過程で環境と経済が共鳴し発展することに気づいた」とし、「環境という資源を生かし経済的に自立する地域づくりを目指す」と語った。

 パネルディスカッションでは、俳優で、日本野鳥の会会長、コウノトリファンクラブ会長の柳生博氏がコーディネーターを務め、環境創造型農業(コウノトリ育む農法)の開発者や生産農家の代表者による取り組みの発表や、城崎温泉の紹介を行った。城崎温泉旅館協同組合理事の高宮浩之氏は、城崎温泉では旅館内に売店を設置せず、旅行者にまち歩きをさせる取り組みを語った。また、浴衣を着れば、現金を持たなくても買い物や飲食、外湯での入浴ができる「ゆかたクレジット」の導入に向けた取り組みなどを紹介した。

 第2部「豊岡のチャレンジ」では、ブランド米「コウノトリ育むお米」や但馬牛、出石皿そば、津居山かになどの試食に加え、地域ブランド「豊岡鞄」などがブース出展し、積極的にPRした。

ぴあライブ・エンタテインメント白書2009

 ぴあ総合研究所が2008年のライブ・エンタテインメントの動向をまとめた「ぴあライブ・エンタテインメント白書2009」によると、08年の市場規模は前年比1・2%増の1兆1600億円となり過去最高を記録したという。音楽、ステージ、映画、スポーツ、遊園地・テーマパークの5ジャンルの市場について、公演回数や動員数、市場規模(チケット販売市場)の3つを基本指標に市場実態を把握した。

「市場規模は1兆6000億円、遊園地・テーマパークは苦戦目立つ」

 市場は01年以降、1兆1千億円台をほぼ横ばいで推移。08年も微増だが、日本経済が低迷するなかでは「健闘している」と評価。音楽やステージ、スポーツが前年を上回った。一方、動員数は1・0%減の3億4118万人で、1人当たり単価の上昇が市場規模を押し上げる結果となった。

 各ジャンルの概要は次の通り。

 音楽(市場規模3・9%増の1503億円 動員数2・8%増の2440万人)市場規模、動員数のいずれも前年を上回り、再び増加に転じた。ポップスが市場規模で6・5%増、動員数で5・0%増と好調だったことが全体を牽引。韓国アーティストのコンサートが活況で、来日公演は29・6%増。国内公演もアリーナクラス以上の大規模公演が盛況だったほか、07年に失速したロック・フェスティバル市場も復調した。その一方で市場規模の約2割を占めるクラシックは、来日公演の不振で市場規模0・9%減、動員数1・1%減とやや不調だった。

 ステージ(3・9%増の1671億円 3・4%増の2325万人)市場規模、動員数とも伸長。市場規模は、パフォーマンスほかを除く5分野すべてで前年を上回った。とくに市場規模全体の5割を占めるミュージカル(市場規模7・4%増、動員数17・2%増)と1割弱のお笑い/寄席・演芸(15・2%増、17・2%増)の好調が寄与した。ミュージカルは劇団四季や宝塚歌劇団、東宝ミュージカルの安定した動員に支えられながら、芸能プロダクション制作の新しいミュージカルなどでここ数年は増加基調。

 映画(1・8%減の1948億円 1・7%減の1億6049人)2年連続の前年割れ。大規模ヒット作に恵まれなかった洋画の市場規模が、23・9%減の790億円と大幅に縮小したのが原因。邦画は「崖の上のポニョ」(興行収入155億円)を筆頭に興行収入10億円以上が28作品と恵まれ、22・4%増の1158億円と健闘。1スクリーン当たり動員数および市場規模は、1998年をピークに減少に転じ08年も歯止めがかからず、それぞれ4万7779人、5800万円と減少した。

 スポーツ(1・6%増の1057億円 2・3%増の2816万人)市場規模、動員数ともいずれもプラス成長。野球、サッカー、相撲の3ジャンルが双方とも前年を上回ったのが要因。とくにサッカーは、Jリーグ発足以来最高の813万人の動員数を記録し、6・0%増の伸び。08年はJ1昇格クラブをはじめ好成績を収めたクラブの動員数が増加したほか、J2に新規チームが加入したことで試合数も増え、市場拡大につながった。野球も個人向け一般チケットの売上が好調で、05年以降市場規模の拡大が続いている。また、相撲は4年連続で前年を上回った。

 遊園地・テーマパーク(0・9%増の5420億円 2・5%減の1億488万人)景気低迷によるレジャー需要の落込みと円高に伴う外国人客減少も加わり、苦戦した施設が目立った。動員数上位施設をみても、トップ20施設のうち過半数の11施設で前年割れとなった。一方、市場規模全体の5割のシェアを占める東京ディズニーリゾートは、ディズニーランド開園25周年を迎え、08年4月から実施した周年イベントが寄与し、動員数は過去最高の2684万人(前年比4・7%増)、市場規模は2942億円(同7・6%増)と好調に推移した。

東京“三つ星”は11軒、「世界一の美食の都市」に、ミシュランガイド東京2010

 ミシュランは11月17日、東京都庁第一庁舎の45階南展望台で「ミシュランガイド東京2010」の記者会見と出版記念パーティーを開いた。

 3年目となる東京の2010年度版は、最高の三つ星レストランが11軒と09年度版の9軒から2軒増え、パリの10軒(09年度版)を抜いて世界最多となった。新たに三つ星レストランとなったのは、えさき(新日本料理)、鮨さいとう(寿司)、幸村(和食)の3軒。二つ星は42軒、一つ星が144軒、計197軒(09年度版は173軒)と、2位以下を大きく引き離し総軒数は3年連続で世界一の都市となった。今回は居酒屋、串揚げ、焼き鳥、精進料理などのジャンルの店が新たに加わった。

 ミシュランガイド総責任者のジャン=リュック・ナレ氏は「東京は世界一の美食の都市」と賞賛。出版記念パーティーで本保芳明観光庁長官は「東京のミシュランガイドが出版されるのを待って、どこが世界一の美食の街かと議論される。外国人旅行者と日本人の良きガイドになってほしい」とあいさつした。

 三つ星を獲得したレストラン11軒は次の通り。

 石かわ▽えさき▽かんだ▽カンテサンス▽小十▽ジョエル・ロブション▽すきやばし次郎本店▽鮨さいとう▽鮨水谷▽幸村▽ロオジエ

20代独身男女旅行意識調査、気軽に誘える友人がカギ、JTBアンケート

 JTBはこのほど、20代独身男女を対象にアンケート調査を実施、過去3年間に自発的に旅行した人としなかった人を比較しながら、旅行に関する意識を調査した。

 旅行経験の有無は、一緒に出かけられる親しい友人の存在がカギとなっており、とくに女性は、「旅行した」人の48・4%が「自分から気軽に誘って会える友人」が「4―5人」いるのに対し、「旅行しなかった」人では25・7%と半減した。「2人で泊まりがけで出かけることができる友人」に関しても、「旅行した」女性の67・3%、男性は41・7%が「2―3人」以上いると回答した。調査は10月にオンラインで実施。サンプル数はインターネットによるアンケート会員1200人。内訳は「旅行した人」600人(男女各300人)、「旅行しなかった人」600人(男女各300人)。

 理想の同行者は、すべての層で「パートナー(恋人)と2人」が最も多くなった。「旅行した」女性は47・0%、男性は48・7%と半数を占めた。一方で、現実的な同行者は、「パートナー」は「旅行した」層で30%に減少。「旅行しなかった」層をみると女性は「親や兄弟姉妹」が38・3%、男性は「1人旅」が32・0%とそれぞれ1位となった。

 旅行以外の消費動向については、「旅行した」女性は、「ファッション関連の買物」(35・0%)、「エステ・美容院・ネイルサロン」(24・7%)などに関心が高く、ショッピングやエステなど外出を伴う消費に積極的であることがわかった。一方、「旅行しなかった」層では「家でDVD、CD、ゲーム」(女性41・7%、男性44・7%)、「家でネットやブログ」(女性29・0%、男性30・0%)が高く、それぞれ「旅行経験あり」の2倍以上となった。

 さらに、「旅行した人」の83・2%が、小学校時代に1年に1回以上家族旅行を経験。一方、「旅行しなかった人」は58・7%。子供の頃の旅行経験が、大人になってからの旅行に与える影響が大きいことがうかがえた。  「今、旅行したいか」という質問には、「旅行した」女性の94・0%、男性の87・7%、「旅行しなかった」人でも女性の71・0%、男性の48・3%が「したい」と回答した。年収による旅行意欲の違いもほとんどなかった。

 「今、旅行したくない」と回答した人に旅行するための条件を質問したところ、男女ともに「混雑していないなら」がトップ。男性は「一緒に旅行したい同行者ができれば」(34・8%)、女性は「おもしろいところに連れて行ってくれるなら」(35・6%)などが高く、受動的ではあるが、お膳立てしてもらえれば、旅行に行きたいという姿が見られた。

 20代の若年層が敬遠しがちとみられる「周遊型旅行」や「団体旅行」のイメージを聞いたところ、「旅行しなかった」人は「乗り物や宿の心配をしなくてよいので楽」(61・7%)、「旅行費用が安くて済むならよい」(39・0%)と回答。「楽に」「安く」旅行できることを長所と見ていた。

 「旅行した」人は「ガイドから詳しい説明を聞ける」(31・5%)、「多くの見どころを楽に回れる」(31・3%)などの回答が多く、「説明つきで」「効率よく」旅行できることを長所と捉えていた。また、「旅行先で参加する旅行」であれば参加したいという回答も32・3%あった。

デザイン都市づくり、神戸で全国観光振興大会、日本商工会議所

 日本商工会議所(岡村正会頭)は11月20日から22日まで、地域観光の促進を目指す「全国商工会議所観光振興大会2009in神戸」を開き、関係者約1700人が参加した。

 6回目となる今回は、兵庫県神戸市を主会場に「デザイン都市づくりと生活文化体験型観光の推進」をテーマにした基調講演やパネルディスカッションを実施。2日目は神戸市や姫路市で分科会が行われた。

 初日の本大会で、岡村会頭は「今大会の成果を各地に持ち帰り、個が光る地域の魅力を確立する契機としてほしい」とあいさつ。続いて開催地である神戸商工会議所の水越浩士会頭があいさつし「神戸市は昨年、名古屋と共にアジア初のユネスコのデザイン都市に認定され、新しい魅力を発信している。また、5月に新型インフルエンザ感染者の発生により深刻な風評被害に見舞われた。今大会を通じ、元気な神戸をアピールしたい」と意気込みを述べた。

 「全国商工会議所きらり輝き観光振興大賞」表彰では、「昭和30年代」の町づくりで商店街活性化に成功した大分県の豊後高田商工会議所が大賞を受賞。振興賞は鳥取県の境港と佐賀県武雄の2商工会議所が選ばれた。境港は、地元出身の漫画家・水木しげるさんの「妖怪」をテーマにしたユニークなまちおこしを評価。武雄市は空港からの利便性や30分圏内に10のゴルフ場を持つ条件のよさを生かし、旅館ホテルの従業員への韓国語講座を開くなど韓国人ゴルファーへの誘客促進の取り組みが評価された。

 続いてマーケティングコンサルタントの西川りゅうじん氏が「デザイン力による《地域“イキイキ化”》戦略」と題して基調講演。

 「五感を満足させる観光」をテーマにしたパネルディスカッションでは、日本観光協会常務理事の丁野朗氏をコーディネーターに、作家の玉岡かおるさんと山口浩神戸北野ホテル総支配人・総料理長、サラダや洋惣菜ブランドなど全国約340店を展開する岩田弘三ロック・フィールド社長がパネリストを務めた。

 ディスカッションの中で、デザイン都市・神戸市の歴史・文化、有馬温泉などの魅力を写真などで紹介。玉岡さんは「神戸の夜景に加え、夕景の美しさもセットでアピールすれば新たな魅力になる」と提案し、「旧居留地などの歴史ある建物の見学だけでなく、生活感を体感してもらう工夫が必要」と述べた。

 山口さんは神戸の魅力を「常に新しいものが入ってくるなかで、何でも取り入れるのではなく、本物を見極める力があること」とし、「料理をコミュニケーションツールに、時代にあった料理を提供すれば人は集まる」と述べた。岩田さんは「旧居留地など歴史的建造物とウォーターフロントを一体化するまちづくりが必要」と強調した。丁野さんは「水辺を身近に感じるまちづくりや、エコなど観光以外の視点も取り入れた新しい視点からのデザイン都市づくりが期待される」と述べた。

 最後に、「観光とデザインのコラボレーションを通じて、都市や地域の滞在性を引き出す運動に取り組む」など3つの「神戸アピール」を採択。  次回は青森県青森市を主会場に2011年2月3、4日の2日間、「旅と健康」などヘルスツーリズムをテーマに実施する。

2月から新ブランド展開、環境変化を前に商品戦略、ANA

 全日本空輸(ANA)は2010年2月の成田―ニューヨーク線の新造機・ボーイング777―300ER機の導入を機に、新プロダクト・サービスブランド「Inspiration of Japan」の展開を開始する。ハード面からサービスまで、新ブランドコンセプトに基づいて全面的にリニューアルし、空の旅の新しい発見や体験の提案を目指す。長距離の欧米線から導入し、順次拡大していく予定。

 11月10日に開いた会見で伊東信一郎社長は「2010年、首都圏空港の利用量拡大で航空業界を取り巻く環境は大きな変化を迎える。この激変する時代を前に、商品戦略を成長戦略の一つの柱に位置付けた」とし、「これまでの、人が織りなすANAブランド『あんしん、あったか、あかるく元気!』をベースに、新ブランドサービスで強みを発揮したい。アジアナンバーワンのステージから、よりグローバルなステップアップを目指す。その原動力になるのが新ブランドだ」と構築の経緯を説明した。会見にはCMキャラクターで俳優の本木雅弘さんも登場した。

 新ブランドのキーワードは「イノベーティブ」「際立つ個性」「モダンジャパン」の3つで、新しい発見やワクワクする体験、期待を超えた歓び、日本発の技術や細部への心遣い・こだわりの提供を目指す。

 具体的なサービスは、機内外のサービスがホームページ「ANA SKY WEB」で新ページの開設や、ファーストクラス・ANAダイヤモンドサービスメンバー対象で専用チェックインサービス「ANA SUITE CHECK―IN」(10年秋開始予定)の導入、個室感の高いパーソナルルームの新設など、空港ラウンジをリニューアルする。このほか、オリジナルのアロマやサウンドを開発するなど「五感に響く体験」も提案していく。

 機内のサービスは、各クラスで新シートや新機内食を導入する。全クラス共通の新エンターテイメントサービスは、映画やビデオ、音楽、ゲームなど約160のチャンネルや機内販売などをタッチパネルで操作できる画面を装備。ファーストクラスとビジネスは画面から機内食や飲み物などを、自分の好きな時間に注文できる(10年4月開始予定)。

 また、新サービスの目玉のビジネスクラスはシートに国内初のフルフラットシートの採用や、互い違いの配列で居住スペースの拡大、全席通路側設計などが特徴。機内食は料理家の栗原はるみさんが監修したものなど、和・洋の30種類のメニューからアラカルトで選ぶことが可能だ。

 なお、新ブランドの開発コストは約150―170億円。毎年、約50億円の増収を見込み、3―4年での回収を目指す。

キャッチフレーズ決定、青森開業とDCで 三村知事 「四季それぞれに発見が」

 青森県(三村申吾知事)は11月6日、青森市内のホテルで記者会見を開き、2010年12月の東北新幹線青森開業と11年4―7月までの青森デスティネーションキャンペーン(DC)の際に使用するキャッチフレーズを「行くたび、あたらしい。青森」に決定したことを報告した。

 キャッチフレーズは四季折々の表情を見せる青森県の魅力を、訪れるごとに新しく発見してほしいというもので、「旅」と「度」をかけたという。また、ロゴデザインは春夏秋冬、いつ行っても、どこを訪れても多彩な発見があることを、たくさんの木のイラストで表現した。

 三村知事は「青森には四季それぞれに発見するものがたくさんある、ということを伝えていきたい」と強調。開業が12月ということで冬季観光への事業展開についても説明。「開業の事前告知の必要性から年明けの1月11日から24日までは東京の表参道一帯で観光PRを展開するともに、JRの山手線と京浜東北線の車内モニターでも12月から1月にかけて温泉や食、冬の三大まつりなどの青森の魅力を紹介する」と述べた。

 また、記者会見には青森県観光連盟の林光男理事長、東日本旅客鉄道の福田泰司盛岡支社長、河野浩一秋田支社長も出席。「観光地の紹介と新たな青森ファンの獲得のため、この11月には仙台で、翌12月には大宮駅でキャンペーンを展開する」(林理事長)、「ガイドブックやポスターを各駅に置くほか、旅行商品も数多く設定する」(福田支社長)、「リゾート列車やイベント列車なども運行。官民が一体となって既存観光のブラッシュアップと新規観光の開拓をして、おもてなしの心で訪れる観光客をお迎えしたい」(河野支社長)と語った。

08年度決算は過半数赤字、今後の高速道路無料化を懸念

 帝国データバンクが9月末時点で行った、主に国内に航路を持つ旅客フェリー会社(外航、遊覧船事業が主業の会社は除く)の調査・分析結果によると、2008年度決算は過半数が赤字で、4社に1社が2期連続赤字――ということが分かった。対象は08年度(08年4月期―09年3月期)の収入高が判明している141社。

【国内フェリー141社の経営実態調査】

 141社のうち07、08年度の収入高が分かる103社について2期間を比較すると、08年度に減収となった企業は55社(構成比53・4%)で5割強を占める。当期純損益が判明した82社をみても赤字が42社(同51・2%)と過半数で、このうち20社(同24・4%)が2期連続赤字。

 年商規模は1億円未満が41社で、全体の約3割。一方、100億円以上は10社と7・1%にとどまる。50億円以上でみても13社と全体の1割にも満たない。このことから今回の調査対象には含まれていないが、離島などを結ぶ単独の航路しか持たない個人経営業者も含め、小規模な業者が多いとしている。

 収入高上位企業をみると、舞鶴・敦賀・新潟・秋田と北海道を結ぶ新日本海フェリー(大阪)が360億7800万円でトップ。2位は商船三井100%出資子会社で、大洗・苫小牧間などの航路を持つ商船三井フェリー(東京)の230億600万円、3位は名古屋・仙台・苫小牧を結ぶ太平洋フェリー(愛知)の147億2600万円。いずれも主要都市を結ぶ中長距離航路を持つ大手フェリー会社。

 07、08年度の収入高が分かる103社の2期間を比較すると、08年度は増収が48社に対して減収は55社。このうち全体の4社に1社にあたる27社が2期連続減収。一定の固定利用者がいるため収入高の大幅な増減はなかったものの、大手企業の多くが増収となる一方、比較的小規模企業では減収が目立ったという。

 08年度の当期純損益が分かる82社をみると、黒字40社に対して赤字は42社となり、赤字企業が半数を超えた。このうちの20社、4社に1社が2期連続赤字という厳しい損益状況。なお、82社のうち07年度との比較可能な72社をみると、増益が25社に対し、減益が47社に達するなど、6割強の企業が利益水準を落としている。減益企業47社のうち29社は減収減益。

 国内フェリー会社141社の本社所在地は広島県が21社でトップ。以下、愛媛県18社、長崎県16社と続き、九州、中国、四国の3地域で全体の73・8%を占める。広島県は瀬戸内海の離島や四国間の航路が多い。愛媛県は隣県の広島、山口、大分をはじめ、福岡を結ぶ航路などもある。長崎県は五島列島や離島間の航路が点在する。

 最近5年間の倒産件数の推移は、年に1―2件の発生にとどまっているという。理由は一定の固定利用者に支えられ、比較的安定した収益を確保できたこと、過大な設備投資負担さえなければ資金ショートする恐れは少なかったことが背景にあるとみている。

 しかし、景気低迷による観光需要の減少や原油高騰に伴う運賃値上げに加え、高速道路料金1千円割引制度でフェリー離れが加速。9月30日には大分ホーバーフェリー(大分 負債5億7300万円)、10月1日には防予汽船(広島 同97億円)がそれぞれ民事再生法の適用を申請した。このように業績が悪化したフェリー会社の倒産が発生していることから、「今後は高速道路と競合する航路を持つ業者を中心に影響拡大が懸念される」としている。

 また、08年度決算には今年3月末から始まった高速道路料金1千円割引制度の影響は織り込まれていないことから、「大手、中堅のフェリー会社を中心に、09年度決算は収入高、損益ともにさらに落込むことが予想される」とみている。

ハイ・サービス日本300選に、星野リゾートなど

 サービス産業生産性協議会(代表幹事=牛尾治朗ウシオ電機代表取締役会長)は10月26日、「ハイ・サービス日本300選」の第7回選定として、リゾート運営・再生を手がける星野リゾート(長野県)やイベントプロデュースの小布施堂(同)、学習塾の開倫塾(栃木県)、まちづくり推進のまちづくりトップランナーふじのみや本舗(静岡県)、観光・集客のパム(沖縄県)など計27の企業・団体を決定した。同29日には東京都内で表彰式を行った。

 「ハイ・サービス日本300選」は、サービス産業全体のイノベーションや生産性向上に資する先進的な取り組み事例を表彰するもので、2007年から始まった。前回までに165企業・団体が表彰されている。今回はとくに教育・学習に関するサービス業を中心に、リゾート運営、金融機関、ITコンサルタントなど幅広い分野で選んだという。

 今回選ばれたうち、星野リゾートは、バブル崩壊後の業界低迷、リゾート法の改正などに危機感を覚え、1995年に事業内容をリゾート運営業に特化。顧客満足度調査結果を重視したサービス提供を実施するとともに、従業員のモチベーション向上・労働生産性を向上させる諸施策を導入し、経営破たんした多くのホテル・リゾートの再生黒字化に成功している。

 また、開倫塾は経営品質向上活動に取り組み、(1)社内ベストプラクティス(2)同業他社(3)異業種それぞれのベンチマークを行い、自社のサービスレベルおよびベストのサービスレベルを知り、PDCAサイクルによってより良いサービスの提供を徹底している。

第2回「観光甲子園」の開催決定、本選は10年8月29日、募集は4月から

 高校生が主役となって地域の観光資源を再発見・再発掘して作り上げた「地域観光プラン」を競い合うコンテスト「観光甲子園」の第2回本選大会が、来年8月29日の開催と決定した。10月18日に兵庫県神戸市中央区の神戸夙川学院大学で発表された。

 観光甲子園は同大会組織委員会(委員長・石森秀三北海道大学観光学高等研究センター長)が主催し、神戸夙川学院大学が共催。文部科学省、観光庁など20団体が後援して今年8月23日に、第1回本選大会が同大学で開かれた。

 大会は4―7月までにプランを全国の高等学校を対象に募集。応募してきた全国69校、157プランから、予備選で10校を本選出場校として選出し、8月には10校の生徒が審査委員を前にしたプレゼンテーションを行った。第1回グランプリには文部科学大臣賞に島根県立隠岐島前高校、観光庁長官賞に神奈川県横浜市立みなと総合高校が輝いた。

 第2回は「ディスカバーマイタウン・マイエリア」をテーマに開催。1月下旬に開催案内を発送し、4月1日からプランの募集を始める。締め切りは7月9日で、20日に予選・審査発表。8月29日に本選大会を行い、審査・表彰を行う。

 応募基準は全国の高校生を対象に、学校長の推薦がある3人以上の連名で申請する、グループプランであること。1校のプランは3本までに限定する。応募目標として75校、130プランを目指す。

 発表に先立ち、第1回本選出場校の教師と大会実行委員会関係者との意見交換会も開かれた。このなかで、具体的な商品化への課題も多く上がったが、学校と地域、生徒と地域の結びつきが強まり、地域活性化への一助になった、と評価する声も多かった。