帝国データバンクが9月末時点で行った、主に国内に航路を持つ旅客フェリー会社(外航、遊覧船事業が主業の会社は除く)の調査・分析結果によると、2008年度決算は過半数が赤字で、4社に1社が2期連続赤字――ということが分かった。対象は08年度(08年4月期―09年3月期)の収入高が判明している141社。
【国内フェリー141社の経営実態調査】
141社のうち07、08年度の収入高が分かる103社について2期間を比較すると、08年度に減収となった企業は55社(構成比53・4%)で5割強を占める。当期純損益が判明した82社をみても赤字が42社(同51・2%)と過半数で、このうち20社(同24・4%)が2期連続赤字。
年商規模は1億円未満が41社で、全体の約3割。一方、100億円以上は10社と7・1%にとどまる。50億円以上でみても13社と全体の1割にも満たない。このことから今回の調査対象には含まれていないが、離島などを結ぶ単独の航路しか持たない個人経営業者も含め、小規模な業者が多いとしている。
収入高上位企業をみると、舞鶴・敦賀・新潟・秋田と北海道を結ぶ新日本海フェリー(大阪)が360億7800万円でトップ。2位は商船三井100%出資子会社で、大洗・苫小牧間などの航路を持つ商船三井フェリー(東京)の230億600万円、3位は名古屋・仙台・苫小牧を結ぶ太平洋フェリー(愛知)の147億2600万円。いずれも主要都市を結ぶ中長距離航路を持つ大手フェリー会社。
07、08年度の収入高が分かる103社の2期間を比較すると、08年度は増収が48社に対して減収は55社。このうち全体の4社に1社にあたる27社が2期連続減収。一定の固定利用者がいるため収入高の大幅な増減はなかったものの、大手企業の多くが増収となる一方、比較的小規模企業では減収が目立ったという。
08年度の当期純損益が分かる82社をみると、黒字40社に対して赤字は42社となり、赤字企業が半数を超えた。このうちの20社、4社に1社が2期連続赤字という厳しい損益状況。なお、82社のうち07年度との比較可能な72社をみると、増益が25社に対し、減益が47社に達するなど、6割強の企業が利益水準を落としている。減益企業47社のうち29社は減収減益。
国内フェリー会社141社の本社所在地は広島県が21社でトップ。以下、愛媛県18社、長崎県16社と続き、九州、中国、四国の3地域で全体の73・8%を占める。広島県は瀬戸内海の離島や四国間の航路が多い。愛媛県は隣県の広島、山口、大分をはじめ、福岡を結ぶ航路などもある。長崎県は五島列島や離島間の航路が点在する。
最近5年間の倒産件数の推移は、年に1―2件の発生にとどまっているという。理由は一定の固定利用者に支えられ、比較的安定した収益を確保できたこと、過大な設備投資負担さえなければ資金ショートする恐れは少なかったことが背景にあるとみている。
しかし、景気低迷による観光需要の減少や原油高騰に伴う運賃値上げに加え、高速道路料金1千円割引制度でフェリー離れが加速。9月30日には大分ホーバーフェリー(大分 負債5億7300万円)、10月1日には防予汽船(広島 同97億円)がそれぞれ民事再生法の適用を申請した。このように業績が悪化したフェリー会社の倒産が発生していることから、「今後は高速道路と競合する航路を持つ業者を中心に影響拡大が懸念される」としている。
また、08年度決算には今年3月末から始まった高速道路料金1千円割引制度の影響は織り込まれていないことから、「大手、中堅のフェリー会社を中心に、09年度決算は収入高、損益ともにさらに落込むことが予想される」とみている。