国土交通省は10月1日、観光庁発足から1周年を記念して、前原誠司大臣や辻元清美副大臣、藤本祐司大臣政務官ら観光政策を担う国のトップと民間の観光関係者が意見交換を行う場として、「今後の観光庁及び観光政策に関する懇談会」を開いた。前原大臣は関係者を前に、「観光は日本の成長戦略の核」とし、改めて観光立国を推進していくことを表明した。
懇談会は、国交省から大臣ほか観光庁の本保芳明長官など7人が出席。民間から観光庁アバイザリーボードの生田正治氏、鳥羽若女将うめの蕾会会長の江崎貴久氏、日本経済団体連合会観光委員長の大塚陸毅氏、由布院温泉観光協会会長の桑野和泉氏、日本ツーリズム産業団体連合会(TIJ)会長の舩山龍ニ氏、日本政府観光局(JNTO)理事長の間宮忠敏氏の6人が参加した。
本保長官は冒頭、集まった関係者に「観光行政のトップの直接的な考えに触れて、今後の展開や活動に生かしていただきたい」とし、「私ども事務方は懇談会の内容を踏まえて、しっかり三役のサポートをしていきたい」とあいさつした。
前原大臣は「日本が置かれた状況を考えたときに、いかに成長分野を育てていくかが重要だと思う」とし、「観光立国を進めるうえで皆さんの役割は極めて大きい」と期待を寄せた。また、「先日、本保長官に『訪日外客数の目標が2020年に2千万人ではだめだ。すぐにでもできるような案を考えてほしい』とお願いした。皆さんにもどうしたら早く達成できるか意見をいただき、これを生かした政策立案をしていきたい」と述べた。
続いて、民間側の意見を求められた生田氏は、「観光はほとんどの省庁に関係しているが、行政は縦割りで観光庁が持っている権利や責任範囲では限度がある。政治の力で観光庁には幅広い権限を与え、整合性のある施策ができるようにしてほしい」と要求した。また大塚氏は「観光は、単に観光産業だけではなく、製造業や流通業、第一次産業までオールジャパンで取り組んでいくべきものだ」と主張。さらに舩山氏は、「家族旅行を考えたときに、子供の夏休みや親の有給休暇などそれぞれ休暇に大きな壁がある。休暇制度について大きく転換してほしい」と語った。
これらの意見を聞いた藤本政務官は「私も15年間、シンクタンクで地域振興に携わってきたが、観光はリーディング産業として非常に重要だ」とし、「資源は多くあるが、どう生かし、どうPRして商品化するのかという点が大きな課題」と語った。休暇制度については「柔軟に休みを取れる仕組みが重要。メリハリのある休暇がいかに企業経営にプラスになるか訴えていかなければならない」と述べた。
また、懇談会の後半はインバウンド振興について意見が集中したが、生田氏は「2千万人はすぐにでも達成できると思っているが、観光にも負荷がある。国内でも外国人が増えることに抵抗がある人もいる。数が増えたときに、いかに秩序ある成長を果たせるのか、今から考えていく必要がある」と訴えた。一方、江崎氏は「観光に携わっていない国民のおもてなしの心をいかに育てるか。誘客のPRも大切だが、人の心を育てるPRも大切では」と語った。
すべてを受けて、辻元副大臣は「縦割り行政の廃止というご意見を多くいただいた。大臣も、観光が日本を変える牽引の1つと捉えている。私も副大臣会議に出席するなかで各省に問題提起しながら、横のつながりとして関係省庁との連絡会議などができるように、相談していきたい」とまとめた。