2022年11月17日(木) 配信
観光庁の和田浩一長官は11月16日(水)に開いた会見で、10月の観光目的での訪日外国人旅行者数が、前月比約15倍の28万8909人と大幅に増加したと報告した。2022年7~9月の旅行・観光消費額でも、19年数値から約8割まで回復。観光が徐々に回復するなかで懸念されるのは人手不足だとして、和田長官は、「需要を受け止めきれない事態を防ぐため、官民連携で従業員の待遇改善への検討を進める」と話した。
22年10月の訪日外国人旅行者数は前月比2・4倍の49万8600人だった。このうち、観光目的での入国者数は28万8909人。9月の1万9013人から約15倍となった。和田長官は、「水際対策の大幅な緩和と円安の影響が数字を伸ばす要因になった」との認識を示している。
また、11月に入ってからの1日当たりの入国者数は、水際緩和前と比べて約10倍に増加しているとも報告した。
11月15日(火)には国際クルーズ運航のためのガイドラインを策定し、受け入れを再開した。23年3月以降に166本の外国クルーズが計画されていることから、今後は各クルーズ船社が、寄港を予定している港関係者と受け入れに関する協議や調整を行い、合意を得て順次運航を再開する予定。
和田長官は、「国際クルーズの再開によって、さらに多くの外国人観光客が日本を訪れてくれるよう期待をしている」とコメントした。
観光回復が進むなか、観光業の人手不足が重要な課題であるとして、「インバウンドの需要があっても全部受け止めきれない可能性がある。とくに宿泊業の賃金水準をはじめとした従業員の待遇改善をはかり、官民連携で雇用を確保することが必要」と話した。
22年7~9月の旅行・観光消費額の伸びについても、宿泊旅行消費額が19年同期比で20・3%減であるものの、国内旅行の旅行単価としては、同7・1%増と伸長している。和田長官は、「旅行マインドがコロナ前に戻れば、さらなる消費額の伸びが期待できそうだ」と語った。
□全国旅行支援開始から一カ月経過 現場の声は
観光庁は、開始当初は問い合わせや予約が殺到し混乱が見られたが、全都道府県に対し、販売実績などに応じて関係事業者への予算配分を適時見直すように通知するなどの対応を行った。この結果、混乱が落ち着き徐々に改善が見られてきている状況にあると報告。
効果としては、多くの観光地において、昨年同時期よりも多くの旅行者で賑わっており、高い需要喚起の効果が現れていると認識を示す。
観光庁では、全国旅行支援開始後の販売予約実績がコロナ前の同時期を超えた旅行会社や、コロナ前の8割前後にまで需要が回復した一部の航空・鉄道会社があることから、「支援事業による効果が実感として得られた」と受け止めている。
「引き続き、多くの方に制度を利用してもらえるように、都道府県と十分に連携をしながら全国旅行支援の円滑な実施に取り組んでいく」考えだ。
□第2次補正予算 複数年度で支援
11月8日(火)に発表した22年度第2次補正予算案のなかで、観光庁はコロナ禍からの需要回復と地域活性化を目指し、「地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化」事業へ1000億円を充当。さらに、複数年度で事業支援できるように国庫債務負担行為で500億円を計上した。
当初、手法の候補として挙げられていた基金化は、基金を管理・運用する法人の選定などの手続きを踏まねばならないため、早期の実施が困難と判断された。手続きを必要とせず基金と同様に複数年度での支援が可能となる手法として、国庫債務負担行為を採用した。