2022年11月14日(月) 配信
先日、飛行機が遅れて到着し、空港は台風の影響で激しい雨になっていました。傘を持たずに出張していたので、タクシーで自宅に帰ることにしました。
大阪空港は近距離・長距離と行き先でタクシー乗り場が異なります。だから、案内係が居て必ず「どこまで」と聞いてきます。私は近距離なのですが、乗り場はいつもタクシー待ちが多く、こんな雨の日はとくに待たされることを覚悟していました。
ところが、その日は台風のためか、いつもと違ってタクシー乗り場に居る案内係の姿が見えません。エスカレーターで乗り場に降りてみると、タクシーのドア前にブレザーを着た身なりの良い人が立っていたのです。
私の前に近付き「タクシーをご利用でしょうか」と尋ねてきました。とっさにうなずくと、ドアを開けて「頭にご注意くださいね」と声を掛けて、乗車させてくれました。
その人はタクシードライバーだったのです。その行動に強い興味がわき、車内で思わず声を掛けると「空港は、その街の顔ですから」と返事をしてくれました。
それは、タクシードライバー研修時に、私がいつも話す言葉でした。「すごいドライバーに出逢った」と、これだけで出張の疲れは吹き飛んでしまいました。
先日に訪ねた観光地のことです。その日も激しい雨が降っていました。車を入れようと駐車場に向かいましたが、入口には満車の看板が置かれていました。
よく見かける光景ですが、その駐車場のスタッフは、雨の中で看板の後ろに立って、申し訳なさそうな顔をしながら頭を下げていたのです。
一旦そこを離れて、一周まわってその駐車場に戻って来ると、予想通り空車ができて、無事に駐車できました。すると先ほどのスタッフが駐車料金の受け取りに来たとき、その会話がまた素晴らしいものだったのです。
「本日は雨の中、お越しくださりありがとうございます」と頭を下げて、施設の入口を案内したあと、「少し回り道にはなりますが、こういうルートで行っていただければ、雨を少しでも避けて歩いてもらうことができます。施設には、少し急な階段がありますが、がんばって行ってくださいね」。
たったひとりの行動で、その街の印象は大きく変わるものです。それは、企業においても全く同じです。自分だけがやっても何も変わらないなどとあきらめないで、思うままに実行してみることです。
誰かが始めなければ何も変わらない。小さな仕事であっても強い想いを持ってやり続けることで、やがて周りの人たちに広がり、大きな成果を生み出すと私は信じます。
コラムニスト紹介
西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。