2022年11月9日(水) 配信
東京商工リサーチがこのほど発表した2022年10月の宿泊業倒産は4件(前年同月は8件)だった。負債総額は前年同月比95・0%減の4億2000万円となり、倒産件数と負債がともに3カ月連続で減少している。22年1~10月の累計倒産件数は65件で、前年同期の78件を下回っている。同社は、22年の年間件数が「コロナ禍の20年以降で最少になる可能性が高まっている」と見ている。
新型コロナ関連倒産は3件だった。
地区別では、関東が2件、中部と近畿で1件ずつ発生した。
おもな倒産事例では、ニューサンピア(群馬県高崎市)が10月21日(金)、前橋地裁高崎支部から特別清算開始決定を受けた。負債総額は約2億円。
同社は1991年に開業し、当初は「ウェルサンピア高崎」として厚生年金事業振興団が運営を行っていたが、民間への施設売却で2009年から同社が運営を引き継ぎ、施設名を「ニューサンピア」に変更した。客室のほかにも会議室や展望風呂、レジャープール、テニスコート、多目的アリーナなどの設備を備えていた。
新型コロナ感染拡大を受け、施設の老朽化も進むなか、22年3月末の株主総会で解散が決定した。
割烹旅館「富士屋」を経営していた富士屋ホテル(千葉県木更津市)は9月26日(月)、千葉地裁木更津支部から破産開始決定を受けた。負債総額は1億3047万円。
富士屋は広い日本庭園がある老舗割烹旅館として知られていた。バブル期の過剰投資が原因で経営危機に陥ってからは、リニューアルなどの経営再建に着手して一時的に業況が改善した。
しかし、18年3月期に債務超過に陥り、19年には大型台風による臨時休業、20年以降は新型コロナ感染拡大が立て続けに起こり、集客が激減した。回復の見通しが立たず、20年12月に事業を停止した。
また、22年10月の旅行業の倒産は3カ月連続で発生しなかった。1~10月までの倒産件数は14件で、前年同期から11件減。年間で見ると、2000年以降で最少を更新する見込みだ。
同社は、水際措置の大幅な緩和や全国旅行支援の開始に触れ、「宿泊を伴う遠方への旅行に対する機運も高まっている」と認識。一方で、「長期化する円安が海外旅行の需要低下を招く恐れもあり、経営への影響が懸念される」と注視している。